寝木裕和さんの映画レビュー・感想・評価 - 3ページ目

寝木裕和

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スーツ(2003年製作の映画)

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この作品を観て、Tracy Chapman の『Fast Car』という曲を思い出してしまった。

心ぶれた雰囲気のアメリカ郊外に住むワーキングプアの女性が、その貧困から逃れようと、「あなたの車でいっ
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バーナデット ママは行方不明(2019年製作の映画)

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『スクール・オブ・ロック』みたいな大衆向け娯楽作品から、『テープ』や『スキャナー・ダークリー』みたいな、なかなか実験的な作品まで、多岐に渡る作風で物語を紡ぐリチャード・リンクレイターの2019年作。な>>続きを読む

少年、機関車に乗る(1991年製作の映画)

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少年、アザマットが人懐こく可愛らしい。
でもかなりの食いしん坊キャラのその弟を、兄ファルーは口煩く叱る。

フドイナザーロフ監督のその後の作風にも通じる、乗り物が重要な役割を担っている。
ここではそれ
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人生フルーツ(2016年製作の映画)

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公開当時、大阪の第七劇場で観てすぐ友達にも「ぜったい観たほうがいい!」と電話したドキュメンタリー。
再鑑賞。

これ、ときどき観なきゃいけないな。

自分がこのハイスピードな社会に急かされて心を失くし
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アヤクーチョの唱と秩父の山/アヤクーチョの唄と秩父の山(2019年製作の映画)

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やはりペルーの山岳部、アヤクーチョに住むイルマ・オスノさんのお母さんが、今は遠く日本に住んでいる娘を思って、家族が唄い奏でるのを泣きながら聴いているのが胸に迫った。

かの地でバイオリンを奏でてくれる
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アフロ・ぺルビアン・ビート(2017年製作の映画)

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ペルーのネイティブ文化とアフリカ文化が融合する場所、チンチャ。

そこで行われたカルナヴァルでの音楽の邂逅を映し出す。

思えば自分がペルーに滞在していた時にはアフロ・ペルビアン達の音楽にはあまり触れ
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ヨーロッパ新世紀(2022年製作の映画)

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まず、もの凄い物語に出会ってしまったと思った。
なにが凄いか。
観ている側への問いかけが、とてつもなく大きい。

この作品の舞台、ルーマニアのトランシルヴァニア地方で実際に起きた事を基に書かれた物語。
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ジャン=リュック・ゴダール 反逆の映画作家(シネアスト)(2022年製作の映画)

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ゴダールとトリュフォー。
いつだってこの二人は並べられて語られる。
もちろん、この『反逆のシネアスト』の中にも登場する。

これまでずっと持っていたイメージは、やはり「問題児で叩き上げのトリュフォー」
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不安は魂を食いつくす/不安と魂(1974年製作の映画)

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高年の掃除婦、エミと、モロッコからの移住者、アリの静かな恋愛劇。
エミとアリは20歳以上も年齢差があり、異国からの労働者との恋愛に対する周りの否定的な目… と、それに加えて歳の差婚に対する差別も描いて
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情熱の大河に消える(2019年製作の映画)

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今回、二回目になる『ペルー映画祭』。

ペルーでの旅から自分の人生観にかなり大きな影響を受けた者としては、去年同様とても楽しみにしていた企画。

国民解放戦線の一員となり、21歳の若さで銃撃戦の犠牲に
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エドワード・ヤンの恋愛時代 4K レストア版(1994年製作の映画)

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確かに、…
とても哀しい物語だとも、受け取れる。
なぜなら、ここで登場する主要な人物十人の関係は交錯し、離れ、また出会ったりしないながら、それぞれを求め合う。
その、それぞれに求め合う人が入れ替わるさ
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福田村事件(2023年製作の映画)

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映画というものを、観る「意義」。

それをもしも問われたなら、楽しむためと答える人がやはり多いだろう。

でも、この作品に関してはこんなことが百年前、ここ日本で実際にあったのだと、それを知るための『意
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まだ君を知らない(2022年製作の映画)

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何気ない日常の中の静かな感情のざわめきや他者との関わりから生じる憂いなどを独創的な視点で切り取った四つの物語。

派手さはないけれど何度でも食べたくなってしまう個人経営のお弁当屋さんの幕内みたい。優し
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熊は、いない/ノー・ベアーズ(2022年製作の映画)

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結局、『熊』とは、なんのことを指しているのか。

熊は、いない。

物語の中で、それは熊=脅威 …として、パナヒ監督が村人から注意を促される。

では、その脅威とは。

なぜ、パナヒ監督はこの作品を『
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ロス(2000年製作の映画)

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ジェームズ・ベニングの作品はよく『実験的』という言葉で語られる。

ある一つの場所の風景を、ただ定点で捉えたものの堆積物。そんなふうに評されれば、とても無機質なもののような気がしてしまう。

でも、ど
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美しき諍い女(いさかいめ)(1991年製作の映画)

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エマニュエル・べアールが上映時間のほとんど… 約三時間ものあいだ、ヌードで出演している… ということが一番の話題になってしまった作品。

しかし、もしもその全裸目的で鑑賞した御方がいらっしゃったら、あ
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ファンタスティック・プラネット(1973年製作の映画)

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人間たちに駆除される蚊やハエ、ゴキブリなどの気持ちがちょっと分かったような気になれる作品。

誰しも幼少の時に一度は想像したことあるだろう。

人間よりも巨大な生き物がどこかにいて、私たちを踏みつぶし
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台風クラブ 4Kレストア版(1985年製作の映画)

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台風がくる前のざわざわする感じ、たしかに、10代の頃… 殊にこの作品の主要登場人物のような中学生だった頃って、なんともいえない昂りを覚えた気がする。
興奮と不穏さを併せ持った、祝祭の前触れ感というか。
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苦い涙(2022年製作の映画)

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元ネタのファスビンダー版の方でも記したのだけれど…
観比べてみてどうだったかについて。

例えば、音楽とかでもカバーがオリジナルを超えるということも時としてある。それはアレンジの妙味によってだったり
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ペトラ・フォン・カントの苦い涙(1972年製作の映画)

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フランソワ・オゾン版と見比べてみたく、両方続けて鑑賞。まずオリジナルの方の感想をば。

シネフィルでもあるフランソワ・オゾンがリメイクしたくなるのも分かる、恋の喜びと絶望と諧謔と儚さ… 一瞬の美しさが
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コシュ・バ・コシュ 恋はロープウェイに乗って 4Kレストア版(1993年製作の映画)

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今回の特集上映、『再発見! フドイナザーロフ』の中でも、個人的には最も痛快に感じた作品。

物語は撮影開始してまもなく実際に紛争が勃発してしまった、タジキスタンの首都・ドゥシャンベを舞台にして繰り広げ
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僕の帰る場所(2017年製作の映画)

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家族は、いっしょにいるべきであるし、そう願うだろう。

国籍も、性別も、貧富の差があっても、生きてきた道筋が違っても、それは同じはずで。

海外から難民申請して入国しようとする人々の、その願いを叶えら
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あしたの少女(2022年製作の映画)

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本作は前半と後半で違う二人の主役がクローズアップされる。

そのうちの一人、刑事のユジンを演じたペ・ドゥナがインタビューで話している。
「海外のいろんな人から“私たちのことを描いてくれてありがとう”と
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ママと娼婦(1973年製作の映画)

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監督自身がモデルである主人公の、だらしない恋愛関係… 三角関係を続けながら他の元恋人にも未練たらたらで… を、4時間弱にわたって観続ける作品。

だいたい、原題も同じ、『ママと娼婦』って、なかなかに酷
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ガッジョ・ディーロ(1997年製作の映画)

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音楽ありきの映画であるというのは、確かにそうだと思う。
しかしその、「ロマの人々の音楽をベースにした作品を撮りたいのだ!」という、自身もロマの血を引く者であるトニー•ガトリフ監督の気概によって、物語に
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日本橋(1956年製作の映画)

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大正期のお江戸日本橋。
そこでの芸者二人×贔屓客二人の、火花を散らす色恋の攻防。
… と書くと、猥雑で騒がしいイメージが湧きそうだが、市川崑監督はわりと淡々と描いている。

未読なのだが、原作・泉鏡花
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雨にぬれた舗道(1969年製作の映画)

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例えばロックにおいて、ギターソロというものが花形である時代が、かつてあって。

その中でも、長尺で延々聴かせるスタイルというものがある。

ジェリー・ガルシアのようにふわふわと抽象的なフレーズを弾き続
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ロバート・アルトマンのイメージズ(1972年製作の映画)

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過去の自分と戦う、今の自分。

それを独特の緊張感とイルマティックな描写で紡いでいく監督・ロバート・アルトマンと主演・スザンナ・ヨーク。

自分が過去にしてしまった事に罪の意識が募るあまり、精神的に異
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ラヴ・ストリームス(1983年製作の映画)

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まるで子どものような大人たち、不器用で、直情的で。
でも、人は誰しも多かれ少なかれどうしても捨て去れない子どもな部分があって、その部分こそがその人の個性を、その人が誰とも似てない唯一無二な存在であるこ
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フリーク・オルランド(1981年製作の映画)

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始まって数分の手触りとしては例えばホドロフスキーに通じるものも感じたのだが、ホドロフスキーの作風はある意味 力技的な傍若無人テイストを感じるのだけれど、ウルリケ・オッティンガー監督のこの作品はさまざま>>続きを読む

タブロイド紙が映したドリアン・グレイ(1984年製作の映画)

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こんなふうに、完璧な容姿で生まれる人っているんだ… と思わせるヴェルーシュカ演じる主人公ドリアン・グレイが、ドクトル・マブゼに滑稽なまでに翻弄されるのが不憫でもあるが…。
こういった感じでメディアが創
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(2021年製作の映画)

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ボルヘスやマルケスやマリオ・バルガス・リョサなど、南米には脈々とマジック・リアリズム的手法の文学作家が生まれ出る。

それは南米に行ったことのある人なら分かるだろうと思うのだけれど、街のそこかしこに現
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アル中女の肖像(1979年製作の映画)

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アル中女演じるタベア・ブルーメンシャインの美しさにうっとりするが、なんとも未来的で映像映えする衣装をまとい、一心不乱に飲み続ける彼女が徐々に逞しく見えてくる。

まるでヨルバ人が信仰する神の一人、鉄や
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トビウオのぼうやはびょうきです(1982年製作の映画)

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今年(2023年)8月の、福島原発処理水の海洋放出を受けて、実に41年ぶりにこのアニメを観た。

当時5才だった自分だが、名古屋市港区の公民館でこの作品を観たことを有り有りと覚えている。

とあるミュ
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オオカミの家(2018年製作の映画)

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なんて恐ろしい作品だと思った。

ホラー的な恐ろしさとはまた違う。

主人公マリアの選んだ結末に、心底身の毛がよだつ思いがしたのだ。

結局、支配者の元に戻ることを選んでしまう、被支配者。永遠に続くか
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ミャンマー・ダイアリーズ(2022年製作の映画)

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ミャンマーの、10人の匿名監督による映像作品と、その間を繋ぐ、一般市民によって撮影された動画。

2021年2月1日の朝、たまたま国会前でいつものようにエクササイズの模様をSNS で配信していた女性の
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