寝木裕和さんの映画レビュー・感想・評価 - 6ページ目

寝木裕和

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小さき麦の花(2022年製作の映画)

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ただ、美しい自然豊かな風景の中で、不器用なまでに実直で寡黙な二人の愛の育みをそっと観る作品なのか。
それともその深いところに通底している、長年に渡る中国という国がしてきた改革・開放政策の横暴な部分を暗
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イニシェリン島の精霊(2022年製作の映画)

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「ある日唐突に古くからの旧友から、” オマエの話しがつまらないから絶交したい ”と告げられる映画。」と説明されたら、多くの人はコメディであろうと想像すると思う。

しかしながら、この作品はそんなふうに
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対峙(2021年製作の映画)

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『 人は、人を、赦せるのか。 』
…というテーマを、こんなにも静かに、しかしながら生々しく描いた作品があっただろうか。

ほぼ、ある一つの部屋に閉じこもった4人の会話のみで構成された作品。
… にも関
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モリコーネ 映画が恋した音楽家(2021年製作の映画)

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誰しもが一度は聴いたことのあるメロディー。その裏側には美しいメロディーを抽出した人物の、作品を生み出す際の苦悩、葛藤などがあったのだと知ると神経質なイメージが先行していたマエストロに対しても、妙に親近>>続きを読む

ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ(2021年製作の映画)

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実在した、猫ちゃん専門イラストレイター、ルイス・ウェインを描いた物語。
世間に馴染めず、社会に迎合できず、ある意味我が道を行く…が揺るがない、独創的クリエイター。… 変人として見られることも多かったの
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スワロウテイル(1996年製作の映画)

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久しぶりに、そして公開してからもう幾度となく観たであろうこの作品を、ふとしたきっかけで、つい先日、観る機会を得た。


… この国は、猛烈なスピードで、『一見すると』戦後、驚異的な経済的発展を遂げた
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MEN 同じ顔の男たち(2022年製作の映画)

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これは… かなり強烈な問いかけ方の、「愛についての」作品だ。

男性と女性の、性の違いによる、理解し得ない部分…それによる衝突…そしてその時に、特に男性から女性に対して力によってねじ伏せようとする欲求
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THE FOOLS 愚か者たちの歌(2022年製作の映画)

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表現方法として、無骨なまでに、実直に、自分自身の「やりたいやり方」を貫く。それは言葉にすれば容易く聞こえることなのだけれど、首尾一貫してそれを通せる人は稀有である。
そして時代の変遷とともにその表現の
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ケイコ 目を澄ませて(2022年製作の映画)

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生まれつき聴覚障害のあるひとりの女性が、ボクシングを始めて、プロの資格まで取り懸命に勝負に挑んでいく物語…
というと、多くの人は凡百のスポ根モノを想像するかもしれない。

この作品は、そういった過剰に
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ランディ・ローズ(2022年製作の映画)

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ランディ・ローズという一人の伝説的なギター・プレイヤーが残した、美しく炸裂する閃光のようなギターの調べは、今でも世界中の音楽ファンに崇高ともいえるほどの感動を与えてくれる。

なぜ彼の爪弾く音楽が、彼
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アフター・ヤン(2021年製作の映画)

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劇場で鑑賞しているリアルタイムでも大いに心動かされたのだけれど、この作品は、観終わったあとにゆっくり咀嚼しながら、この登場人物たちが伝えようとしていることはなんなのだろうか…
と考え直すことが、また
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秘密の森の、その向こう(2021年製作の映画)

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大好きだったおばあちゃんを亡くした8歳のネリーが、森の中で自分と同い年である8歳の頃の母親と出会って、少しずつ仲良くなり心と心が繋がっていくことによって、理解しがたかった大人の状態の母親の哀しみや喪失>>続きを読む

エイブのキッチンストーリー(2019年製作の映画)

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少年役の子は思春期特有の繊細な心の揺蕩いを巧みに表現していて良かったし、コック役のSeu Jorge も、本業のシンガーとしてだけでなく、なんだか役者としても貫禄が出てきたように感じられた。

それか
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レディ・バード(2017年製作の映画)

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なるほど、『フランシス・ハ』の、グレタ・ガーウィグ監督作品なのか… と、鑑賞後に知ったのだけど。(グレタ・ガーウィグは、『フランシス・ハ』で主演もしているが、脚本も書いている。)

作中、なんども風合
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リコリス・ピザ(2021年製作の映画)

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豪華俳優陣、多数出演… なのですが、それにしてはポール・トーマス・アンダーソン監督がラブストーリーを描くときの特徴である、なんとも言えない脱力感満載の作品。(『パンチドランク・ラブ』的な。)

ただ、
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音楽(2019年製作の映画)

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脱力。

ほぼ、このアニメ特有の脱力感で進んでいく。

ところが、「間」だらけのこの作品にあって、その「間」から、なにか特別な「意味」があるように見えてしまうから、不思議だ。

考えてみれば、良質な音
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みんなのヴァカンス(2020年製作の映画)

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どんな人にも経験あるような夏の思い出。
でも、あまりにも朧げで儚くて、思い出すことも無かったような。
そんなふわっとした、どこかの誰かのひと夏の体験を、たまたま居合わせたBARのカウンターで、盗み聞き
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バビロン(1980年製作の映画)

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私たち自身、普段の会話の中で、ふいに「バビロン」という言葉を使う時がある。

「都会はバビロンだから」「日本の社会なんてどこ行ってもバビロンさ」とか。

確かに、ここ日本も、貧富の差は広がるばかりで、
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3つの鍵(2021年製作の映画)

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3つの家族のストーリーが、あまり絡むことのないまま、ある種淡々と進んでいくのだが、彼らに巻き起こる問題〜それによる苦悩、過った道の選択… などがけっこうヘビーなので、観るものにライトな緊張感を保たたせ>>続きを読む

彼女のいない部屋(2021年製作の映画)

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まず、大切なものを失ったときの絶望と、それを乗り越えていこうと決意した者の清々しいまでの横顔を、かくも美しい描き方をしてみせたこの作品に出会えたことに、感動している。

まるで、辿々しくメロディを手繰
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ムイト・プラゼール(2020年製作の映画)

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この作品は、限りなくドキュメンタリーに近い、劇映画だった。

なにしろここに出演している日系ブラジル人学校の生徒は、実際に経験してきたことを、作中で述べているのだから。

日系ブラジル人への偏見、差別
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マルケータ・ラザロヴァー(1967年製作の映画)

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この作品、かなり深いテーマを取り扱い、静謐な表現で淡々と描いていくので、むしろ観終わった後に何度も何度も反芻してしまった。

中世13世紀のボヘミア王国を舞台にしながら、そこで生きている人間たちの欲望
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ドント・ルック・アップ(2021年製作の映画)

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現代の世界情勢において、かなり辛辣に、そしてリアリティーをもって、政治家や権力者たち、彼らに恩恵を受けている者たちに対する揶揄をたっぷり織り込んだ作品。

それを、シリアスに展開するのではなく、終始ブ
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イントロダクション(2020年製作の映画)

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この『イントロダクション』という作品も、今までのホン・サンス監督の作品同様、ミニマリズムな指向の映画として、捉えられることも多いと思う。

それは、そうだとも言えるし、そうでないとも言える。

つまり
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英雄の証明(2021年製作の映画)

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現代だからこそ、ソーシャルネットワークがあるからこそ… という問題だけでは言い切れないテーマを持った作品。
つまりこれは、いつの時代でも、どこの国でも起こりうる普遍的な人間の業についての話しだ。
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スウィート・シング(2020年製作の映画)

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冒頭、クリスマスのシーンで始まるのだけれど、ホントにクリスマス・プレゼントみたいに素敵な映画。

久しぶりに、映画らしい映画を観たような…夢見がちな子どもの頃のイノセントな気持ちを呼び起こしてくれるよ
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マイ・ニューヨーク・ダイアリー(2020年製作の映画)

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ともすれば、都会で自分の行く道に迷いながら、少しずつ成長していく女性の物語という、ありふれた言葉で説明できそうなところを、観る者にそれ以上の深い共感を与えることに成功している要因は、誰しも経験したこと>>続きを読む

ローレル・キャニオン 夢のウェストコースト・ロック(2020年製作の映画)

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分かりやすく言ってしまうと、とある時間の、とある場所で起きていた、プレシャスな青春ストーリー。
…なのだけれど、このローレル・キャニオンという場所が’60年代半ば〜’70年代半ばまで放っていた神秘的な
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ウエスト・サイド・ストーリー(2021年製作の映画)

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鑑賞前にいろいろと賛否両論の声があったのも知っていた。
オリジナル映画版と比べてしまえば、「否」の方の声も、ある程度は理解できる。
ただ、個人的にはこのスピルバーグ版も、オリジナル版とはまた違った感動
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カモン カモン(2021年製作の映画)

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たどたどしくも少しずつ…でも確かに、家族の絆みたいなもので繋がっていく、叔父と甥っ子の物語。
…と言ってしまえばシンプルなストーリーなのだけれど、なぜにこんなに淡々と描いていながら、胸に響くものを作れ
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春原さんのうた(2021年製作の映画)

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人が大切ななにかを突然喪失するということ。
その時の胸を引き裂かれるような気持ちを、ただ淡々と、でも丁寧に耽美的ともいえるほど静かに描き出した作品。

人は脆い、でもそれぞれに美しい記憶に救われて、生
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ユンヒへ(2019年製作の映画)

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美しい小樽の風景の中を、静謐に…かつ力強くなにかを問いかけてくる、心に深く染みる作品でした。

映画のみならず、とかく物作りが派手さ…や、スキャンダル性…がもてはやされるような現代において、『ユンヒへ
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ZAPPA(2020年製作の映画)

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10代の頃から、どこか理解不能でありながら、ずっと惹かれ続けて聴き続けているフランク・ザッパの、ドキュメンタリーと聞いて、一抹の不安もあった。それは多くの雑派フリークの方々も思ったであろう、つまり2時>>続きを読む

アネット(2021年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

実のところを言うと、途中、ところどころ感情移入しがたい部分もあり、(ヘンリーの横暴さが振り切れてしまうところ、赤ん坊が人形で表現されているところ)この展開、大丈夫かね…と思ったりもしたのだけれど。>>続きを読む

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