ENDOさんの映画レビュー・感想・評価

ENDO

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狼の時刻(1966年製作の映画)

4.0

リヴ・ウルマンは撮影時、懐妊していたらしいベルイマンとの蜜月期。バルト海の小島に夫婦で引っ越してきた画家夫婦。子どもの撲殺から一気に危険な雰囲気に。あまりに顔を接写するモノだから画面が狭苦しくて死にそ>>続きを読む

さよならモンペール(1991年製作の映画)

4.2

パパーであるドパルデューは自分の恋人と別れるか否かの瀬戸際で、モーリシャス島のバカンスに突入!娘の恋愛に全力で乗っかる。気もそぞろになるよね。否が応でも成長する娘との最後の思い出。夏の思い出が凝集され>>続きを読む

ロードゲーム(1981年製作の映画)

4.2

チューニング中にギターの弦による絞殺、やたらとエモい荒野の野宿のあとに稲妻の明滅、2体多い冷凍肉に結露など所々に不穏な空気が立ち込めるのだが、キーチとカーティスの牧歌的やり取りによって上書きされる。ボ>>続きを読む

ビリー・ザ・キッド/21才の生涯(1973年製作の映画)

4.0

コバーンもクリストファーソンも集団には属さずに(コバーンは政府の犬だけど、心は孤独)、お互いにひとり終わりつつある西部という天国を彷徨うような映画。人生を謳歌し尽くして死にゆくビリーの伝説は男のロマン>>続きを読む

愛しのタチアナ(1994年製作の映画)

4.0

思った以上にゆるゆるなロードムービーかつ奥手を極めているペロンパーとさらに上をゆくコーヒー中毒者ヴァルトネン。ここぞとばかり記念写真を撮りまくるオウティネンさんが好き。The Renegadesの『G>>続きを読む

白い花びら(1998年製作の映画)

4.0

フィンランドの古典『ユハ』を現代(?)劇に。とにかく画面の強度のために大袈裟である。サイドカー付きバイクの疾走は10秒にも満たない。スタンダーサイズにして奥行きを生かしたショットがもう少し多ければ面白>>続きを読む

コンドル(1939年製作の映画)

4.2

冒頭の港の人々の蠢きと、酒場でのアーサーの指揮とピアノのグルーヴに興奮。ウキウキ南米モノかと思いきや、冒頭から若者の死。管制塔と飛行機特撮を行き来する閉塞感のある映画。無線によるコミュニケーションは、>>続きを読む

狙撃者(1952年製作の映画)

4.2

『結婚式のメンバー』の主人公の理想となる兄が極悪。今で言うインセル。まあ戦争によるPTSDという概念が『光あれ』で何となく分かりかけてた時代の産物。性犯罪とスナイパーが直結するのはヘイズコード上のパラ>>続きを読む

ドント・クライ プリティ・ガールズ!(1970年製作の映画)

3.8

いなたいファルセットボイスの説明過多ポップスがひっきりなしにかかっていて発狂しそう。いつ終わるとも知れない(反転すればいつでも終われる)ゆるゆるな画面。切り返しのない会話。俯瞰しすぎでアルトマン。空撮>>続きを読む

ふたりの女、ひとつの宿命(1980年製作の映画)

3.8

代理出産という提案が個人的な友情を引き裂く上に、ナチス政権下のハンガリーで公的迫害のダブルパンチ。見てるだけで気分が鬱々としてくるが、そういった嫌悪を抱かせることが目的なのか。メーサーロシュの主題はい>>続きを読む

ハムレット・ゴーズ・ビジネス(1987年製作の映画)

4.0

『罪と罰』はドフトエフスキーだし今作はシェイクスピアの翻案。つまり巨匠を前に肝が据わってるカウリスマキ。すごい。ハムを喰むハムレット、水にに浮かぶゴムのアヒルで敗者復活を狙う会社、バスタブに浮かぶオフ>>続きを読む

真夜中の虹(1988年製作の映画)

4.0

主人公が勤めるラップランドの炭坑は閉山、当て所もなく都会へ。おなじみの突発的暴力で一文なしに。ムショで出会ったペロンパーと強盗。古典的ハリウッドの演出を衒いもなくやり通す剛腕ぶり。復讐のために放たれる>>続きを読む

タイムズ・スクエア(1980年製作の映画)

4.0

『Cause I'm A Damn Dog』のサ"Feed me"が耳にこびりつきました。ファンたちのゴミ袋衣装最高です。巨大な廃工場を自分の城に改造するあの物に満ち満ちた部屋を参考にしたい。ティム・>>続きを読む

オッペンハイマー(2023年製作の映画)

4.0

科学者の前で我々はその恩恵を求め跪く。そしてその技術はあっという間に敷衍して連鎖する。その閃きを視覚化する手際、例えばグラスにビー玉が敷き詰められるとそれは核燃料のメタファーとなる。思考が動きに直結す>>続きを読む

過去のない男(2002年製作の映画)

4.0

カウリスマキ史上最も貧しい人々。記憶をなくして辿り着く河口付近のコンテナで暮らす主人公。その川面の揺らぎだけで映画。お馴染み犬を飼っている警備員クオスマネンさんの汚い言葉とは裏腹な慈愛。救世軍にいるオ>>続きを読む

浮き雲(1996年製作の映画)

4.0

のちの『希望のかなた』に通ずるレストランの連帯。オウティネンさんの沈黙の中にある不屈の精神を見習いたい。トラムを運転する夫の肩に静かに寄りかかる場面、どこまでも映画。アル中シェフのペルトラさんがいい味>>続きを読む

街のあかり(2006年製作の映画)

4.2

ブライス・ダラス・ハワードとキム・ノヴァクを足してアクを強くしたようなマリア・ヤルヴェンヘルミのファム・ファタルぶり、というか悪女。友達もいなくて上司からも無能扱いされつつ、カウリスマキの主人公は社会>>続きを読む

ゴースト・ドッグ(1999年製作の映画)

4.0

ゴーマンとかシルヴァとかアク強めの俳優出しておきながら箱庭の中に配置しちゃう大胆さ。『葉隠』のtextに載せて自己陶酔。動きの残存するあの感覚は素敵。ウータンRZAにおける少林寺の扱いと同様、どこまで>>続きを読む

パラダイスの夕暮れ(1986年製作の映画)

4.2

余りにも奥手なペロンパー。ホテルではシングルの部屋二つ借りちゃって。ビンゴ、デートやテープ英会話。でも丁寧な暮らし。いつもの路上での理不尽な暴力は絆を強める。一緒にいると嫌になるけど、相手について考え>>続きを読む

にっぽん・ぱらだいす(1964年製作の映画)

4.0

赤線撤廃前夜。加賀まりこだけが気づく隣の廓『モン・パリー』で夜な夜な行われている折檻、宙吊りの足だけが揺れている不穏さ。唐突!ホキさんの明るい運動だけが救いだ。長門の不気味な哄笑に無人のトルコ風呂の内>>続きを読む

ラヴィ・ド・ボエーム(1992年製作の映画)

4.0

アンリ・ミュルジェールの古典文学『ボヘミアン生活』を映画化。貧乏な画家・哲学者・作曲家が3人で協力して細々生きていく。主題は画家であるペロンパーとイヴリヌ・ディディ演じるミミとの恋愛劇に変貌する。騙さ>>続きを読む

マッチ売りの少女(1928年製作の映画)

4.0

死に近づく幻影の甘美な映像。初期ルノワール は人工的。直前の記憶が夢を作り上げる。サイズ感覚はトチ狂う。人形は人間と同じ頭身となり、すれ違った男は恋人となる。手前から奥へと転がるボールのシーンは強烈。>>続きを読む

罪と罰(1983年製作の映画)

4.0

精肉工場はファスビンダーの『13回の新月のある年に』を彷彿とさせる。葛藤が生じ、倫理的な行動として自主する訳だが。サイドミラー越しのショットや、タバコによる視線の誘導、フェリーからマッティ・ペロンパー>>続きを読む

街をぶっ飛ばせ(1968年製作の映画)

4.0

躁的な多動性、デビュー作で鏡に写る自分を凝視するシャンタルは遺作で母親をスカイプ越しに撮影する。その視点はブレない。表現に取り憑かれ自死する。その開かれた孤独はいつだって観客の心を揺さぶる。

ノー・ホーム・ムーヴィー(2015年製作の映画)

4.0

ポーランド系ユダヤ人としてベルギーで受けたであろう迫害(ショア)を饒舌に語る母は、最後には意識も混濁して息も絶え絶えになる。それでも尚カメラを回し続け、質問を続けるシャンタルのその過酷なまでの記録への>>続きを読む

アメリカン・ストーリーズ/食事・家族・哲学(1988年製作の映画)

4.0

ユダヤ系移民の苦労話がコメディ色を帯びて狂騒となる。屋外で繰り広げられる寸劇。彷徨と諧謔。ノイローゼだけど笑うしかない私たち。

季節のはざまで デジタルリマスター版(1992年製作の映画)

4.0

天国も二重回想も出て来て永遠にイングリッド・カーフェンの歌が反芻する煉獄。貝殻を耳に当てると白波の音、窓から望む人工的な水平線に絶句。永遠って怖いです。サラ・ベルナールと祖父のキス。教授による脱がし芸>>続きを読む

デ ジャ ヴュ デジタルリマスター版(1987年製作の映画)

4.2

あれだけ不穏な空気出しておいて現実に戻ってこられる幸福。記者クリストファーは観客のように歴史の窃視を続けるワケだが、まさかの干渉行為に驚き。クリストファーに向けられる老人やアジア系観光客など衆人環視の>>続きを読む

故郷の便り/家からの手紙(1977年製作の映画)

4.0

紙やインクの質量は失われ、音として還元される母の手紙。過剰な愛情はアケルマンの冷静な声によって相対化され、その声すらも街の騒音で掻き消えてしまう。ほぼ屋外で撮影され、アケルマン的個室の内部は映らないが>>続きを読む

宗方姉妹(1950年製作の映画)

4.2

山村聰が眼帯で登場。すでに死相。猫を愛でるシーンがやたら多く彼が主人公のノワールでもある。千石さんに「キスしてやろうか?」しかも原因不明の突然死。その死によって囚われる田中絹代。狂言廻しでしかない高峰>>続きを読む

泣き濡れた春の女よ(1933年製作の映画)

4.2

北海道へ向かう船。『果てしなき航路』より殺伐とした極寒の海。シケモクを踏み付けて、新品のタバコを差し出す岡田の登場シーンに刮目。階段によって分断される心。子どもは2人を和解させ、かつ分かつ存在。時間経>>続きを読む

東から(1993年製作の映画)

4.2

人が地平線に消えてゆく、又は横スクロールしていく画面。個人の家に入り込む衝撃。家事やら子供たちの戯れを目撃してしまうことに躊躇いつつ、絶対的距離を置いて他者を隅々まで凝視できるカメラとは凄まじい発明だ>>続きを読む

愛情の系譜(1961年製作の映画)

4.2

野田の鷺山で8mmカメラ回してる山村聰、冒頭からノワール。クズだけど仕事はできる三橋達也とフィラデルフィアで関係して、中絶という重荷を背負っている茉莉子にはいつも翳りがある。鉄筋コンクリートのマンショ>>続きを読む

からたち日記(1959年製作の映画)

4.2

辛い人生だけど、なんやかんや置屋時代の親友に救われるひづるさんの人望に涙。芸妓さんたちのうなじに白粉塗るシーンから引き込まれる。バカでかい木に登って夜の諏訪湖を見下ろすシーンに感動。出征の汽車が2人を>>続きを読む

俺に賭けた奴ら(1962年製作の映画)

4.0

脇役たちが光る。裏主人公である川地民夫の捨て身の銃撃戦や南田洋子の哀しい片想い。良二と民夫が深夜の遊園地で待ち合わせる場面や清水まゆみの弟が飼っている黒猫がこちらを向いている構図など清純タッチ。メンタ>>続きを読む

落下の解剖学(2023年製作の映画)

4.0

墜落死がなければ表沙汰にならないような罪の所在がマクガフィンとなり、極私的な夫婦関係を法廷という公的な場で赤裸々に暴いていく構図こそがまさに解剖学たる所以なのでしょう。夫婦の倦怠を描く作品が頻出(『あ>>続きを読む

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