まえださんの映画レビュー・感想・評価 - 8ページ目

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37セカンズ(2019年製作の映画)

3.8

障害者の性を描くって分野だと柴田剛監督の『おそいひと』を思い出した。
結局男でも女でも、障害者は「苦労している」ということだけを労われて、健常者同様の苦悩と葛藤と欲求を抱えていることは見捨てられがちな
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グリーンブック(2018年製作の映画)

3.8

シャーリー役のマハーシャラ・アリはムーンライトでしか見たことないけど、対照的な感じのこんな複雑な立ち位置のキャラクターも演じるんだね。黒人にも白人にも属せない孤独さが沁みる。

もちろんトニー(ヴィゴ
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複製された男(2013年製作の映画)

4.0

画面がめちゃめちゃ黄色い映画。
邦題がなんか的外れ。

台詞は最小限、説明皆無。暗闇が映える独特の映像とリズム(ドゥニはなんか逆さまの映像撮るの好きだね)。

男の内なる二面性の話だよね。
理性と本能
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ザ・レポート(2019年製作の映画)

4.0

9.11テロを発端としてCIAがテロ容疑者に行ってきた「強化尋問技法(EIT)」を巡って、その残忍な行為の実態を探るポリティカルサスペンス。上院情報委員会の調査官ダン・ジョーンズがその報告書をまとめ、>>続きを読む

プリズナーズ(2013年製作の映画)

3.5

うーん、散々解説し尽くされてるキリスト教的な数々の象徴は「まぁそうですね」って感じ。たしかにみんな「プリズナーズ」ですね。

終盤に向かって一線を越えかけるケラーと迷路にひたすら悩むロキ(ヤケクソにな
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顔たち、ところどころ(2017年製作の映画)

3.9

映画監督のアニエス・ヴァルダとアーティストのJRが手を組み、フランスの様々な場所で人々と触れ合う姿を描くロードムービー風ドキュメンタリー。

村で暮らす人々、打ち捨てられた廃墟、浜辺に落ちたトーチカに
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ゴーストランドの惨劇(2018年製作の映画)

4.3

移動店舗型「悪魔のいけにえ」。

いやもうクセが強くて最高でしょ。
冒頭でパトランプが付いたキャンディショップカーに煽られるシーンからもう傑作だと確信。女装趣味のオッサンと人形遊びに興じる大男に嬲られ
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フランクおじさん(2020年製作の映画)

5.0

主題はゲイがテーマだけど、もっと普遍的なアイデンティティの話でもあって、忘れがちな自分の身近な存在に気付かされる話でもある。

序盤、ベス(ソフィア・リリス)によって語られる形でフランクおじさん(ポー
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テッド・バンディ(2019年製作の映画)

4.0

原題は「Extremely Wicked、Shockingly Evil and Vile」。とにかく人を悪く言う形容詞を並べ立てたタイトルが、良いよね。

実に見事な構成。残虐描写は最後あたりで描か
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トゥモロー・ウォー(2021年製作の映画)

2.8

「エイリアンの出処について部外者の主人公の妻が簡単に思い付く発想を誰も思い付かなかったのか」とか、「教え子が火山に詳しすぎる」とか、ご都合的要素はあるのだが、父と子をテーマにしたストーリーは丁寧に作ら>>続きを読む

MAMA(2013年製作の映画)

3.0

悪霊に育てられた姉妹の親離れの物語!我が子を愛する母と、母を想う子のマッチング!しかし5年間サクランボだけ食ってたって思うとすごいね。

双子のルーカスとジェフリーをニコライ・コスター=ワルドーが一人
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ボーダー 二つの世界(2018年製作の映画)

3.8

ちょっと異質な世界観とビジュアルだがストーリーは意外と王道な、トロル信仰を踏まえたファンタジー。抵抗ある人もいるでしょう、虫食べるしラブシーンは獣みたいな生々しさだし。

異常すぎる嗅覚を持つティーナ
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サウンド・オブ・メタル ~聞こえるということ~(2019年製作の映画)

4.5

序盤のロードムービーっぽい感じも良いし、聴覚を失ってからのルーベンの心の機微が、難聴状態を再現した音響で丁寧に表現されてた。

どちらかというと障害によっていかに支障が生まれるかどうとかは全く関係なく
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Arc アーク(2021年製作の映画)

1.9

原作未読なので映画を見ただけの感想しか言えないが、小林薫や風吹ジュン、倍賞千恵子ら大御所陣の演技は素晴らしい。主人公が不老不死を得ている時の映像を「停滞した状態」としてのモノクロで表現するというアイデ>>続きを読む

雨の日は会えない、晴れた日は君を想う(2015年製作の映画)

3.5

抽象的で示唆的な描写が多く、いまいち邦題と噛み合っていない感じに思えたが、原題が「demolition(解体)」だと思えばこの映画の本質がわかってくる気がする。

主人公は都市的な感受性の希薄さを象徴
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いとみち(2020年製作の映画)

4.0

どこか疎外感を抱えた少女が自らを取り戻す物語であり、現代青森の人々をストレートに描いた群像劇でもある。物心つかぬうちに母を亡くして以来涙を我慢することを覚え、感情を表に出さなくなってしまった主人公・相>>続きを読む

すべてをかけて:民主主義を守る戦い(2020年製作の映画)

4.0

2020年のジョージア州知事選での共和党候補ケンプと民主党候補エイブラムスとの戦いを基軸として、アメリカの選挙制度における投票抑圧の実態について歴史を紐解きながら伝える良質なドキュメンタリー。

ジム
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静かなる叫び(2009年製作の映画)

5.0

この作品を12年間観ていなかったことを後悔した。そして「77分だからサクッと観れるじゃん」と思ったことを後悔した。

フェミニズムへの敵意が動機である1989年のモントリオール理工科大学虐殺事件を題材
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ムーンライト(2016年製作の映画)

4.2

一言で言うと美しい映画。

余計なセリフも説明も一切無いので物語に感情移入する上でノイズが全く無い。特に3パート目で朝起きて夢精に気付くシーンなんて、ただパンツを確認するだけなのに、感情をあまり表に出
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ウィッチ(2015年製作の映画)

3.0

ゲーム「ウィッチャー3」のサイドクエストをめちゃめちゃ掘り下げて実写映画化したらこんな感じになるんだろうなっていう映画。

予算低めのミニマルな映画というのもあるが、なんだか台詞のリアリティを追い求め
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ナイチンゲール(2019年製作の映画)

3.9

夫と子供を殺したイギリス軍の三馬鹿を怒りのままに復讐しにいく感じで物語が始まるが、単なる復讐劇じゃないところがこの映画の醍醐味である。だからそういう意味でよくあるフェミニズム映画ともまた一味違うような>>続きを読む

私はあなたのニグロではない(2016年製作の映画)

4.7

ジェームス・ボールドウィンの未完の著作『Remember This House』をベースに作り上げられた傑作。

黒人差別の問題と重ね合わせながら、彼が見てきたメドガー・エヴァーズ、マルコムX、マーテ
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シカゴ7裁判(2020年製作の映画)

4.8

1968年8月の民主党全国大会におけるベトナム戦争に反対する無許可のデモでの逮捕を端緒として、合衆国政府によって共謀の容疑で起訴された7+1人(通称Chicago7)の裁判を追った群像劇。

1968
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ラーヤと龍の王国(2020年製作の映画)

3.6

「信じること」をテーマとして、分断してしまった5つの国の団結を描いた作品。

幼少期の経験から人を信じることに懐疑的になってしまったラーヤは当初は石に変えられた父を取り戻すという私欲のために動いていた
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アメリカン・ユートピア(2020年製作の映画)

5.0

ポリティカルでシニカルでありながらもライブサイズなデイヴィッド・バーンの人生哲学の結晶。観るものを引き込むカメラワークと照明の妙、そして演奏・歌唱・ダンスそれぞれが光る究極のパフォーマンスに魂が揺さぶ>>続きを読む

奇跡のリンゴ(2013年製作の映画)

3.9

さほど期待もせずに観たら、思った以上に良質の映画であった。

リンゴの無農薬栽培に尽力した木村秋則氏の半生を追った同名ノンフィクション本を原作として、いわゆる伝記映画的語り口で撮られている。(ちなみに
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津軽百年食堂(2011年製作の映画)

1.5

いろいろ不満や文句がたくさんあるのだが、まず一番最初に言っておきたいのが、大杉漣演じる浅尾(パワハラクソカメラマン)とその弟子の七海(福田沙紀)との不倫関係がキモすぎるということ。これに関しては特に作>>続きを読む

トランスジェンダーとハリウッド: 過去、現在、そして(2020年製作の映画)

4.5

色んな方がオススメしてたもののずっと観ておらず、アフター6ジャンクションの放送冒頭において自民党議員のLGBT差別発言に対してブチ切れながら宇多丸氏が改めて紹介していたので良い機会だと思い視聴。

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獣の棲む家(2020年製作の映画)

3.9

南スーダン難民として英国に渡った夫婦。収容所から保釈され提供された住居には異質な何かが住んでいたーーという書き出しに、よくあるホラーハウスものを想像したが、どちらかというともっとキャラクターの内面に切>>続きを読む

ノマドランド(2020年製作の映画)

5.0

ジェシカ・ブルーダーのノンフィクション『ノマド: 漂流する高齢労働者たち』を、クロエ・ジャオ監督によって映画化した作品。2008年リーマンショックの影響を受けて仕事や家を失った者たちの姿を追った実話に>>続きを読む

ミナリ(2020年製作の映画)

3.9

監督リー・アイザック・チョンの半自伝的な作品で、80年代の韓国移民に焦点を当てたファミリードラマだが、淡々とリアリティを描き切る紛れも無いアメリカ映画である。韓国移民を描いているが登場人物に内在する苦>>続きを読む

シン・エヴァンゲリオン劇場版(2020年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

エヴァは容れ物。人間の意思を具現化するもの。他者を拒絶するための道具。
碇シンジにとって受け入れる対象でしかなかったエヴァは、繰り返しの物語の中で意味を変容していく。「乗ると嫌な目に合うもの」「乗ると
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