Rickさんの映画レビュー・感想・評価 - 3ページ目

親愛なる同志たちへ(2020年製作の映画)

4.5

 「祖国のため」とは一体何なのだろう。ストライキなど社会主義国家では起こるはずがないと言うことなのか。体制を脅かす「暴徒」を徹底的に鎮圧することなのか。死体を無かったことにして、恐怖で人の口に戸を立て>>続きを読む

シン・ウルトラマン(2022年製作の映画)

3.6

 昔から、光の巨人よりも怪獣の方が好きだった。多種多様なデザイン、禍々しさと荒々しさ、時につぶらな瞳をしながらも街や山、コンビナートに鉄塔に、あらゆるものを破壊し、蹂躙し尽くす。知力が高い宇宙人は、日>>続きを読む

エクストリーム・ジョブ(2018年製作の映画)

4.2

 失敗続きで解体寸前の、冴えないにも程がある麻薬捜査班。一発逆転を狙って、フライドチキン屋に扮して張り込み捜査を行うも、なんとお店が繁盛してしまい...。
 スマートさとは無縁ながらも、目まぐるしく変
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ドロステのはてで僕ら(2019年製作の映画)

4.3

 幾重にも折り重なる時間の中で、僕らは生きている。たった2分先のことすら知らないで、今この時を過ごす。未来の事が少しでも分かれば良いのにと思いながらも、知ってしまったら知ってしまったで、その不確定な未>>続きを読む

エセルとアーネスト ふたりの物語(2016年製作の映画)

3.8

 戦間期の1928年から、1971年までのちょうど半世紀。その間イギリスでは、大恐慌、チェンバレンの宥和政策、第二次世界大戦の勃発、チャーチルの首相就任、ベヴァリッジ報告、ロンドン大空襲、アトリー労働>>続きを読む

タレンタイム〜優しい歌(2009年製作の映画)

4.0

 誰しもが喪失や痛み、悲しみや苦しみを抱えて生きている。貧富の差や民族、宗教の違いは確かに厳然と目の前に広がっている。でも偏見によるラベリングだけで相手を見ようとせず、友情や愛情を育む機会さえも奪って>>続きを読む

SING/シング:ネクストステージ(2021年製作の映画)

3.9

 地方の小劇場を出て、狭き門をある種事故の様に抜けて迷い込んだ大舞台。「分不相応」なほどの広く厳しい世界にただ打ちのめされるのか、それともビッグドリームへ向けて更に上昇するのか。前作でも1番の大見せ場>>続きを読む

かそけきサンカヨウ(2021年製作の映画)

4.8

 かそけきサンカヨウ。幼い頃の微かな記憶の断片を覗いてみても、周りの大人たちがその時抱えていた思いまでは見えてこない。自分のことを大事に思っていてくれていたのか、愛していてくれていたのだろうか。尽きぬ>>続きを読む

SING/シング(2016年製作の映画)

4.3

 どこにでもいる人たちが、ある日突然才能を見出され、あれよあれよという間に「成功」をおさめて富や名声を手に入れる。そんなアメリカンドリームはとうの昔に崩れ去り、廃れてしまった。いつかビッグになりたいと>>続きを読む

健太郎さん(2019年製作の映画)

3.3

 一見普通の家庭の中に、何者だかよくわからない人が居る。「健太郎さん」と呼ばれるその人は、ただ居るだけで一言も喋らない。皆から認識はされているにも拘らず、完全なる「他者」として存在している。なんとも不>>続きを読む

THE BATMAN-ザ・バットマンー(2022年製作の映画)

4.4

 大きなビルの中に住む大金持ちにして、幼い頃に両親を亡くした孤児のブルース・ウェイン。裏の顔は地下の洞窟にアジトを構え、夜な夜な暗闇に紛れてはゴッサムの街の安寧を脅かす者どもに制裁を加える“復讐者”。>>続きを読む

幸福路のチー(2017年製作の映画)

4.2

 幸福ってなんだろう。これは人類に普遍の問いであり、永久に決まった答えの出ないものだ。幼い頃に少ない知識と狭い視野で夢見ていたキラキラと輝く世界は、どこにも存在しなかった。あの時憧れていたような大人像>>続きを読む

英雄は嘘がお好き(2018年製作の映画)

3.5

 嘘が嘘を呼び込み、取り返しがつかないほど雪だるま式にどんどん話が大きくなっていくコメディ。思っていたよりもハイテンションで、かなり明け透けな言葉が飛び交う。嘘で塗り固められたストーリーの中に、突如現>>続きを読む

ブンミおじさんの森(2010年製作の映画)

3.6

 幽霊も精霊も生も死も、ただそこにあるものでしかない。それはただの人を取り巻く自然のサイクルの中の出来事で、何も恐れることではないのだろう。恨みつらみや嫉み、伝えたいことなんかなくても、居てもいいし、>>続きを読む

春の日は過ぎゆく(2001年製作の映画)

3.9

 春の日は過ぎゆく。一度決定的に変わってしまった関係性を戻すことは、ほとんど不可能なのだろう。けれども、いくら変わってしまって修復不可能であったとしても、あの日、あの時の気持ちや幸せは今も心の奥に残っ>>続きを読む

とうもろこしの島(2014年製作の映画)

3.8

 アブハジア紛争。冷戦末期に、ジョージアとそこからの独立を目指すアブハジアの間で起こり、2008年の南オセチア戦争にも大きく関わっていくことになる紛争。冷戦後の混乱の忌むべき遺物である。
 人々が、た
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グッバイ、ドン・グリーズ!(2022年製作の映画)

4.6

 幼年期の終わりは、唐突に、思っていたよりもミニマムな形で訪れる。半径20メートルが世界の全てだと思い込んで、その外に広がるものを見ようとしない、もしくは見れなかった経験はきっと誰にだってあるだろう。>>続きを読む

博士と狂人(2018年製作の映画)

4.3

 世界で最も有名な英語辞典『オックスフォード英語大辞典』の編纂に、殺人の罪を犯した者が携わっていた。このことはあまり知られていないことだが、兎にも角にも非常にセンセーショナルで、俄には信じ難いだろう。>>続きを読む

ドライブ・マイ・カー(2021年製作の映画)

4.5

 バベルの塔が崩れてしまってから、私たちの言葉は一つではなくなり、他者の言葉を、心を理解することが難しくなった。まるで逆光でシルエットしか見えていないように、まるで後部座席から運転席や助手席を眺めてい>>続きを読む

ノーゲーム・ノーライフ ゼロ(2017年製作の映画)

4.0

 かれこれ8年も前のことになっているという事実に衝撃を隠し得ないが、テレビシリーズの時には、いしづか監督の名前もきちんと認識しておらず、普通に面白いラノベ原作のアニメとして楽しんでいた。もうライトノベ>>続きを読む

ずっと独身でいるつもり?(2021年製作の映画)

3.9

 人はどうして他者に、自分の思う幸せの形を押し付けてしまうのだろうか。どうして「一般的」で「普通」の「幸せ」以外のものを糾弾したり、蔑んだり、挙げ句の果てに拒否し、排除しようとしてしまうのか。きっと怖>>続きを読む

スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム(2021年製作の映画)

-

 ヒーロー映画には、ヒーローとヴィランがいる。あるべき人の道から外れてしまった者は、その作品の中でヴィランと呼ばれ、ヒーローの前に立ちはだかる。つまりヴィランはヒーローに対するアンチテーゼの役割を担わ>>続きを読む

ARIA The BENEDIZIONE(2021年製作の映画)

3.8

 晃さんも藍華も自分のことを平凡だ、才能がないという。確かにオレンジプラネットの人たちやアリアカンパニーの面々に比べて、一芸に秀でているわけではないのかもしれない。でも2人がプリマとして優秀な地位にい>>続きを読む

ARIA The CREPUSCOLO(2021年製作の映画)

3.8

 昼が終わり夜が始まる時間、夜が終わり朝が始まる時間、夏が終わり秋が始まる時期、子供から大人に変わっていく時期、後輩ができてまだ先輩がいてくれる時期、そんな様々なものの「あわい」に何を思うだろう。これ>>続きを読む

アイの歌声を聴かせて(2021年製作の映画)

4.2

 長編では8年ぶり、短編からでも5年ぶりの吉浦監督の新作は始終多幸感に溢れたファミリー向けの楽しいものでありながら、SF的な根がずっしりと張られている不思議で丁寧なバランスの作品だった。吉浦監督は箱庭>>続きを読む

プリンセス・プリンシパル Crown Handler 第2章(2021年製作の映画)

4.0

 前章が静だとするならば、今回はまさに動。盗まれたケイバーライト爆弾を巡って、スパイたちが外連味あふれる戦いを繰り広げる。その裏で暗躍するアルビオン王国の王室。王道のスパイアクションでありながらも、ス>>続きを読む

プリンセス・プリンシパル Crown Handler 第1章(2020年製作の映画)

4.6

 スパイは、嘘をつく生き物。嘘をつき続けて生きた者は、その生き方の果てに何を思うのか。虚で塗り固めたら、それが実になってしまう。その線引きが曖昧になっていく。哀れか、愚かか、その生き方を選んでしまった>>続きを読む

ジーザス・クライスト=スーパースター アリーナツアー(2012年製作の映画)

4.2

 ユダの裏切りからキリストの磔刑までの聖書の物語を、ユダの視点から描いたアンドリュー・ロイド=ウェーバーの言わずと知れたミュージカルのロンドンアリーナ公演。地味にJCSは初見だったので、どこまでが今回>>続きを読む

ラスト・ディール 美術商と名前を失くした肖像(2018年製作の映画)

4.4

 絵画と言うものには、時に人を狂わせるような何か不思議な力があるのでは無いかと思わされる。著名な画家の作品であれば恐ろしいほどの値段が付き、美術好きの目聞きがこぞって手に入れようと奮起する。一方で贋作>>続きを読む

少女☆歌劇 レヴュー・スタァライト 再生産総集編 ロンド・ロンド・ロンド(2020年製作の映画)

4.6

 大場ななは振り返る。あの大好きで眩しくて素晴らしかった第99回聖翔祭と再演の日々を。そしてロンドが途切れた最後の再演を。2人でスタァを追い求め、必ず別れる運命を書き換えてしまった愛城華恋と神楽ひかり>>続きを読む

ザ・スーサイド・スクワッド "極"悪党、集結(2021年製作の映画)

5.0

 「ヒーロー」は何と闘い、何を守るべき存在なのか。「英雄」的な行為を描く作品全てが、逃れられない究極の命題である。そして「アンチ・ヒーロー」を描くならば、その問題はより先鋭化する。数多のアンチ・ヒーロ>>続きを読む

燃ゆる女の肖像(2019年製作の映画)

3.9

 「肖像を描く」ことは、その人のことを「見る」ことに他ならない。断片的な情報のみや、モデルのことを見ることなしにはその者の肖像を描くことはできない。不自然なほど極端に「ある存在」が捨象された世界におい>>続きを読む

ブラック・ウィドウ(2021年製作の映画)

3.6

 マーベル作品で、これほどまで居心地の悪さのような、喉に突っかかった小骨のよう感情を覚えるとは...。もしかしたらMCUという文脈から外し、単体作品として見た方が楽しめるのかもしれない。
 この物語を
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