ぶてぃさんの映画レビュー・感想・評価 - 2ページ目

裁かるゝジャンヌ(1928年製作の映画)

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顔そのものの強い力。
その反動でクロースアップが続くとそれ以外の闖入に目が奪われる。蝿、壁の落書きのような絵、乳飲み子の憮然とした表情。

アネット(2021年製作の映画)

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オープニングとエンディングが素晴らしい。仲間と共に映画をつくることの喜びがカラックスの原動力なのかも。

わたしは最悪。(2021年製作の映画)

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主人公を演じたレナーテ・ラインスヴェが魅力的なのだが、チャプターやシーンが変わると、表情だけでなくまるで別人のように顔が違って見える。それゆえラストに映し出される彼女の顔にハッとさせられた。

ラスト
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ノロワ(1976年製作の映画)

5.0

演劇、舞踏、超能力まで飛び出す。扉が作り出す迷宮。饒舌なカメラの移動。ここでも待ち構える演奏者たち。中毒性高い。映るもの全てから目が離せない。他のなにとも比較できない、形容しようがない。

デュエル(1976年製作の映画)

5.0

リヴェット映画の魔力をたっぷり浴びて幸福な2時間だった。対決シーンがどれも良い。人物たちとカメラの連動、鏡、照明、連続する犬の鳴き声にインターホン。手法が生み出すマジカル。『ノロワ』と連続で観たが姉妹>>続きを読む

北の橋(1981年製作の映画)

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とんでもないものを観てしまった。観終わったあとはもう笑うしかなかった。癖になるような何かがあるのだけどその正体はまったく掴めずに迷宮に迷い込んだまま。

ジャック・リヴェット映画祭コンプリートしたい。

MEMORIA メモリア(2021年製作の映画)

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冒頭部分のジェシカと妹のやりとりを見て、これはよく寝たって良いし、なにも覚えてなくても良いのだというアピチャッポンからのメッセージと勝手に解釈して、体調が万全でなかったのもあり、考えたり何かを理解する>>続きを読む

スティルウォーター(2021年製作の映画)

5.0

さまざまなレイヤーが折り重なりどう展開するのか最後まで予測できず目が離せない。
マット・デイモン演じる男を映すカメラの前にはたびたび遮るものが映り込む。
まったく違う作品だが『パラサイト』を思い浮かべ
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tick, tick...BOOM!:チック、チック…ブーン!(2021年製作の映画)

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tick,tick...と鳴るのは、残酷に刻まれる時であり鼓動の高鳴りであり音楽の躍動を刻むリズム。インスピレーションの源はそこかしこに。

波のした、土のうえ(2014年製作の映画)

5.0

パリ・シネマテークフランセーズの配信プラットフォーム「HENRI」にて。2月15日まで無料配信されている。
とても緻密に構成された作品。3つのパートの最初の2つは陸前高田の住民を記録した映像とともにそ
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愛讃讃(2018年製作の映画)

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パリ・シネマテークフランセーズの配信プラットフォーム「HENRI」にて。記憶の断片が紡ぐイメージは時間感覚を麻痺させる。

ブラックボックス:音声分析捜査(2021年製作の映画)

5.0

想像を超えていくおもしろさ。冒頭、コックピット(原因)を出て客席の通路をドリーアウトしながらブラックボックス(手がかり)までを映すワンカットから引き込まれる。
この映画を観て改めて考えたのは、音(音声
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フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊(2021年製作の映画)

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分厚い雑誌をドサっと目の前に置かれてページをめくり続けられているような感覚。細部までこだわりが徹底されぎちぎちに詰め込まれた世界では登場人物たちが息苦しそうだ。その中でもレア・セドゥと藤田嗣治的料理人>>続きを読む

地球外少年少女 後編「はじまりの物語」(2022年製作の映画)

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フレームを拡げゆりかごから飛び出すこと。変えられるのは未来だけ。私のフレームに『地球外少年少女』が入ってきて未来は少し変容したかもしれない。SFを空想の世界ではなく身近なものとして手繰り寄せてくれる素>>続きを読む

地球外少年少女 前編「地球外からの使者」(2022年製作の映画)

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前情報入れずに映画館で観たがおもしろい...!情報量が多く設定や用語の難解さはあるが、そこでおもしろさが半減することはなく引き込まれた。続きが楽しみ。

サウンド・オブ・メタル ~聞こえるということ~(2019年製作の映画)

5.0

滑り台の振動で繋がる主人公と少年のシーンが好きだ。
無限の広がりを感じるようなラスト。静寂に身を委ね解き放たれたような彼の表情に、内なる声を聞く。

自分も一歳の時から耳に問題を抱えていて、左耳の手術
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ザ・フォッグ(1980年製作の映画)

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何かがはじまる予感、寝静まる街に現れる予兆の表現がたまらない。街全体が舞台となり、登場人物や場面が次々と切り替わっていくが、それを灯台のラジオが繋いでいくのが良い。男と女はいきなりいい感じになっている>>続きを読む

17歳の瞳に映る世界(2020年製作の映画)

5.0

とても近い距離感で寄り添うように、でもしっかりとしたまなざしが向けられている。16mmフィルムの手触りが印象に残る。
「Never/Rarely/Sometimes/Always」原題の意味が分かる瞬
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プロミシング・ヤング・ウーマン(2020年製作の映画)

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宗教画や十字架を模したようなショットなど映画のなかに象徴的に登場するさまざまな要素の積み重ねが突きつけるものが苦しい。"あの時"に留まることを選ばざるを得なかったキャシーの人生を強調する美術や衣装。「>>続きを読む

世界の涯てに(1936年製作の映画)

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思った以上にミュージカル要素が強い。これでもかと男女のすれ違いが描かれ息つく間もなくドラマが展開していく。グロリアの人生は壮絶すぎるほどに壮絶だが、コミカルさやテンポ感の良さもあり沈み込みすぎない。結>>続きを読む

ちょっとフランス風(1949年製作の映画)

5.0

メロドラマのイメージが強いサークだがロマンティックコメディも完璧だった。
ミュージカル撮影シーンの華麗さにうっとりするのも束の間、「カット!カット!」の掛け声からはじまるジョンと女優の掛け合いが最高で
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不気味なものの肌に触れる(2013年製作の映画)

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タイトルから触れる(または触れない)という言葉の引力が常に働く。「触れられない」と「触れさせない」の差異。向かい合う人物同士の緊張感に対して、地べたにべたっと寝そべる千尋が印象的。
インタビュー場面は
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ONODA 一万夜を越えて(2021年製作の映画)

5.0

2021年に鑑賞したなかでもとても印象に残っている作品。現在の地点からこの作品を観ることについて考えさせられる。観るという行為、映画が持つ魔力みたいなものを強く感じた。

津田寛治演じる小野田が、亡く
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ラストナイト・イン・ソーホー(2021年製作の映画)

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編集の気持ちよさと怖さ。映画の世界に引きこまれるものの、途中からは鑑賞が苦痛になる。ご都合主義な登場人物(特にクラスメイトの男の子の描き方はなかなか危ういと思う)など脚本の粗が気になった。
主人公の共
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ドント・ルック・アップ(2021年製作の映画)

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鑑賞してから数日たってなんだかこの作品のことをよく考えている。この秀逸なタイトルが頭のなかで何度も繰り返される。
風刺が効きすぎて途中からまったく笑えなかった。最悪の状況に最悪の状況が重なっていく。責
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DUNE/デューン 砂の惑星(2020年製作の映画)

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IMAXで鑑賞。観終わったあとに「この感覚はなんだろう」と考えていたが、伊勢神宮や出雲大社などパワースポットに行く時の感覚に近いのかも。観る者はただただ映画の啓示を浴びて受け取るのみ。
 

オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ(2013年製作の映画)

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独特の時間の流れが心地よい。退廃的でありながらも崇高さや気高さを感じさせるトムヒとティルダ・スウィントン。二人の存在感が数百年生きてきた途方もない時間も納得させてしまう。
浮世離れした二人の会話はこの
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ナイト・オン・ザ・プラネット(1991年製作の映画)

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タクシーの車内で交わされるやりとりはそれぞれに味わいがあり、とりわけ後部座席に座る客がどのパートも魅力的だった。タバコに火をつけ身を乗り出すジーナ・ローランズのあまりの格好良さに痺れてしまったし、的確>>続きを読む

サウダーヂ デジタルリマスター版(2011年製作の映画)

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この作品が公開されてから14年後、転勤で2年間甲府で働いていた。変わらないシャッター商店街や甲州弁の会話が懐かしく思い出される。イオンができる前のだだっ広い建設予定地と主人公たちの会話が妙に印象に残る>>続きを読む

THE DEPTHS(2010年製作の映画)

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これまで観た濱口作品とは違う何かと、とても濱口らしい部分が同居していて面白い。闇に沈むリュウたちと現像され闇から浮かび上がるリュウ。日本人の男たちの不穏さのなかで、韓国人カメラマンのぺファンの包容力に>>続きを読む

クレールの膝(1970年製作の映画)

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別荘の壁画に描かれた目隠しされ馬に乗ったドン・キホーテは、「ふいご(風)と松明(太陽)で自分が空を飛んでいると感じている」と語られる。また、作家であるオーロラは「先が見えすぎる主人公では物語が進まない>>続きを読む

モード家の一夜(1968年製作の映画)

5.0

この先、他の会話劇を鑑賞したら必ずこの作品と比較してしまうだろうと思うくらいに完成されすぎている。特に、タイトルにもなっているモード家での室内会話劇は、登場人物たちの心理を絶妙に捉えた人物配置や動き、>>続きを読む

ダウン・バイ・ロー(1986年製作の映画)

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もはやどこなのか寒いのか暑いのかさえ判然としない沼地でのモノクロ撮影の美しさが印象的。脱獄の話だけれど常に停滞感がある。カメラはいつも"ここ"にあって、フレーム外の音が効果的に使われている。そういえば>>続きを読む