ンドさんの映画レビュー・感想・評価

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ドライブ・マイ・カー(2021年製作の映画)

4.6

傍観と嘘の後悔、動き続ける車と過去に留まる心。全ては喪失に寄り添える赤いサーブの中で。
自己問答し、初めて他者を理解する。濱口的な対話と行動の可能性と古典の完璧な化学反応。心情の底意のトンネルの先を不
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偶然と想像(2021年製作の映画)

4.2

初濱口竜介。度肝を抜かれる完成度。"偶然"が齎す因縁の緊迫感、"想像"が齎し得る相互理解への可能性。対人の妙を映し出す3篇。
悪気無い悪意、秘める底意、共感への欲求。微細な心理に生々しく隔たる不穏さの
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アナザーラウンド(2020年製作の映画)

4.4

酒にまつわる4人の教師の実験。依存へ向かう七転八倒を、冷笑的で無く、不安に直面する中年心理の機微として映す絶妙な視点が先ず素晴らしい。
成功体験の高揚感と破滅に迫る背徳感。人生の起伏とアルコールの功罪
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ファーザー(2020年製作の映画)

3.7

斬新な表現で突き付けられる"ある状況"。
客観と主観、未視感と既視感。混在する情報と事実関係の歪みが、当事者にしか解らない混乱と疎外感に観客を引き摺り込む。
フィクションでこそ可視化される衰えへの諦観
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BLUE/ブルー(2021年製作の映画)

3.5

才能の差、肉体の限界という無情な障壁。くすぶり、踠きながらも訪れるそれぞれの選択。三者三様のリングに懸けた思いに、勝敗を超えた情熱が見える。
𠮷田監督十八番の厄介な人間描写と驚くほど純粋な感情表現が見
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Night of the Kings(英題)(2020年製作の映画)

3.2

囚人たちの権力闘争を制止する"語り手"を任された新入りの囚人。刑務所内独特の搾取下にある語り手の実像と、物語る行為のポジティブな支配力が狭い空間で皮肉に響き合う。

コートジボワール史、作品内外に跨る
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プロミシング・ヤング・ウーマン(2020年製作の映画)

3.9

性犯罪で自殺した親友の仇討ち。犯人への憤りか、救えなかったことへの自責か。実行犯以外の人物にも波及する復讐は誰しもが持ち得る加害性と二面性を鋭く抉り出す。
個人的復讐だけでなく、泥酔した女性を襲う男へ
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LETO -レト-(2018年製作の映画)

4.1

前時代的価値観が齎す文化への抑圧と前時代を悟った者の新時代への継承の対比。文化統制への抵抗としての反骨精神の引き継ぎ。低体温な白黒画面にレイヤーが重なり色付き出す、現実への反抗と皮肉が伝わる真摯な遊び>>続きを読む

NIMIC/ニミック(2019年製作の映画)

3.5

単純化された日常に忍び寄る変革。曖昧になる自己と他者。名状し難い侵食の連鎖。飛躍した人間関係が導き奏でられる終盤のチェロの不協和音に不気味ながらも笑ってしまう。

「危ういバランスで成り立つ、形式化さ
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無聲 The Silent Forest(2020年製作の映画)

3.9

筆舌に尽くし難い衝撃。

聾学校に伝わるある"ゲーム"。1人の愚行が波及し起こる、疎外され閉鎖された空間での加害と被害の連鎖。声無くもがく子ども達、聞こえる"声"を聞かぬ大人達。徹して独創性を排した演
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日子(2020年製作の映画)

3.8

初ツァイ・ミンリャン。

疼痛に悩む初老の男と他国(恐らくタイ)から移住して来た男娼の青年。現代に横たわる疲れが導く孤独な2人の邂逅。

睡眠、食、性、物言わず流れる何気ない営みの上にに成り立つ1日が
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Mank/マンク(2020年製作の映画)

4.4

凄過ぎます。歴史的傑作『市民ケーン』の裏側。ケーンから他者へ、スタジオから製作者へ、監督から脚本家へ、モデルから作品へ。事実と映画が混在し何層にも重なる権力構図。

映画史に残る権威の没落の物語を、作
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悪の絵(2020年製作の映画)

2.9

表現の自由か、第三者のエゴか。殺人犯の絵とそれを世に送りたい芸術家。賞翫行為と被害者感情の対立を軸に、アートの根本や作品と作者の切り離しの倫理を問う。

主題は良いが、展開や登場人物の描き方が極端なた
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エマ、愛の罠(2019年製作の映画)

4.5

最高of最高。養子と夫の性機能を失ったダンサー。既成概念との軋轢や喪失への執念を、「性に奔放な女性像」という一種の固定観念や偏見を打ち破る、画一的な世間に対する反抗と抵抗へと飛躍し波及させる。

鮮烈
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1917 命をかけた伝令(2019年製作の映画)

3.9

「若き兵士が遠い前線に伝令を届けに行く」という極めてシンプルな物語だが、ディーキンスの卓越した長回しによる臨場感で、観客は無謀な任務を課された"3人目の兵士"の如く緊迫する戦場へ放り込まれる。

若き
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アンカット・ダイヤモンド(2019年製作の映画)

4.1

墓穴を掘りつつ一攫千金へ爆走した男の数日間。圧倒的な疾走感で描かれる主人公の悲喜混じる夢の行方。破滅が来ようとも逃せぬ好機。

裏切り、卑語、罵倒、暴走。徹頭徹尾混沌に進むマネーゲームの極地に、普遍的
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ミッドサマー(2019年製作の映画)

3.8

広大な青空と野原。ホラーの常識と真逆の舞台立てで、ここまで暗澹たる感情を引き起こす恐怖を創れる衝撃。

異文化の地で露わになる人間の俗により、祝祭は自分を肯定し、他者との関係を問うセラピーへ飛躍する。
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デッド・ドント・ダイ(2019年製作の映画)

2.8

異常気象により蘇る死人たちの夜。鋭い社会風刺を含むゾンビ映画の歴史及び本質を、考え得る限り最もユルくふざけた形で現代に再提示する。

過剰なメタ構造、日本刀、天丼ギャグ。多要素のごった煮は楽しさを感じ
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ノマドランド(2020年製作の映画)

2.9

一期一会の連なりと再会、車上で営まれる簡素な生活様式、それらは理想郷として描かず、雄大な風景と車群や人々の対比で、経済に疎外されるノマドの現実を示唆する。

実際のワーキャンパーを登場させている為か、
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シカゴ7裁判(2020年製作の映画)

3.8

仕組まれたように見える判決までの道。法廷にまで及ぶ権力の横暴。被告内に漂う無自覚の格差意識。立場や人種が交わる混沌の裁判を現代の米国に擬えつつ、デモが訴えた戦争とそれが齎す犠牲への怒りを以って、不正義>>続きを読む

TENET テネット(2020年製作の映画)

3.6

破壊と再生、赤と青、現行時間と逆行時間が交わり出し、加速する見せ場の派手さと構造が齎す物語の減速感まで交わり出す。目紛しさと難解さが混在する超現実的な感覚、ホイテマの撮影、ゴランソンの作曲、レイムの編>>続きを読む

鵞鳥湖の夜(2019年製作の映画)

4.1

警察と窃盗団、裏切りと道理、ネオンと影、善と悪、血と水、その境界を時にバイクで時に足で駆け抜ける逃走劇。

暴走する男たち、巻き込まれる女たち。中国のみならず現代社会に存在する暗部を極彩の光と共に、神
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ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ(2018年製作の映画)

4.5

極彩色と闇に染まる1人の女への追懐。真であるはずの現実が物語的に語られ、嘘であるはずの夢が一場面になり立体化し現実感を帯び出す。虚と実、記憶が交錯する幻影の夜旅を映画という完全な虚構で描く離れ業。戻ら>>続きを読む

燃ゆる女の肖像(2019年製作の映画)

4.6

望まぬ結婚を控えるエロイーズと彼女の肖像画を描くマリアンヌ。被写体と画家。女性と女性。2人の視線、息遣い、筆感が雄弁に感情を写し出す。男性優位社会の理不尽に飲まれも想い返す最良の刻、その失われた過去の>>続きを読む

マティアス&マキシム(2019年製作の映画)

3.7

予期せぬ偶然のキス、忘れたかった想いの必然の発露。友情や恋情、そしてまた友情。変わりゆく感情の蓄積を繊細に描き出す。哀感漂う物語の中で溢れ出すポジティブな情感が輝く、ロマンティックで愛おしい一作。>>続きを読む

マーティン・エデン(2019年製作の映画)

3.8

学知と野心に"浮き"立ち、名声と達成に"沈み"行く。未熟者の幸福な成長と、結果の空虚な成功との対比を通して「夢を叶える」ことにあり得る残酷性を描き出す。サクセスストーリーの暗部に飲み込まれた男の哀愁や>>続きを読む

娘は戦場で生まれた(2019年製作の映画)

5.0

爆撃の中で冗談を交わす人々。血溜まりに映るシャンデリア。娘の死体に心肺蘇生をする父親の男。演出と思いたい程の状況が存在してた現実に唖然としながら、そこで芽生える新たな生命に希望を見い出す。

この作品
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ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー(2019年製作の映画)

3.9

このレビューはネタバレを含みます

卒業直前、自分よりダメだと思っていた奴らの優秀さを知り、自信損失からの焦り。焦りからの暴走。学校を卒業し、人生の次のステップに進む際の不安ややらかしといったあるあるを、古典的ともいえる卒業パーティーを>>続きを読む

ハニーボーイ(2019年製作の映画)

3.3

シャイア・ラブーフの波乱の人生のトラウマとそこからの前進を、彼自身が脚本にし演じる事で、不安定な父親に振り回された過去の本質の輪郭を探り理解する自己セラピー作品。

父の親としての不甲斐なさと、息子の
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キャッツ(2019年製作の映画)

3.0

前評判の悪さに期待し過ぎた。

物語は興味無いし、CGは割と酷いし、退屈っちゃ退屈だけど、ミュージカルシーンは見事だし、なんか普通の映画でしたな。

もっととんでもないものが観れるのかと思いましたよ。
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