このレビューはネタバレを含みます
トルストイの『復活』を下敷きに描かれた作品。
主人公のふみが、一人の男に翻弄されながらも逞しく生きていく姿が描かれた物語。
溝口といえばの長回しのショットで捉えられた人物と視線の動き、人間関係の描写が>>続きを読む
夢に出てきそうな風貌と予測のつかぬ動きで観客をも惑わす怪人。
お屋敷に突然現れた神出鬼没な怪人の起こすその奇行の目的がわからない。
そんな困った怪人問題を解決するために、お屋敷の主は警察ではなくなぜか>>続きを読む
サイレント映画時代のコメディ俳優というとチャップリンやキートンが真っ先に挙がるだろうが、チャーリー・バワーズという存在を我々は忘れてはならない。
バワーズの奇天烈でファンタジーな世界観には、童心にかえ>>続きを読む
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フランスはヴァカンス映画大国だと個人的には思っている。
『ぼくの伯父さんの休暇』や『アデュー・フィリピーヌ』、イヴ・ロベール監督の『プロヴァンス物語』シリーズなど…。
フランス人は昔から夏のヴァカンス>>続きを読む
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大きな帽子を被った女性の後ろ姿のクロースショットが、作品冒頭で目に飛び込んでくる。
そう、この女性こそ「幻の女」である。
この映画の主人公スコットは妻殺しの容疑をかけられたが、犯行が行われた時間にはこ>>続きを読む
日常が淡々と描かれているようだが、そのなかで人物の細やかな動作によるリズムがしっかり刻まれている。
さらに人を呼び寄せる不思議なリコーダーや、すべてが説明し尽くされていないことによって、この作品の良い>>続きを読む
苦しい。
映画館を出て眩しい光のもとで外気をまとっても、尚まだモヤモヤして苦しい。
この苦しさは、主人公の気持ちが痛いほどわかるとか、そういった共感からもたらされているだけではない。
夢と現実の描写の>>続きを読む
想像することとは、辛い現実を生きやすくするための避難所である。
主人公のマチルドは、情緒不安定な母に振り回されて苦しさや生きにくさを感じている。そんな彼女の居場所は空想の世界なのである。自分の理想や思>>続きを読む
わたしの大好きなマレーネ・ディートリッヒと、「アメリカの良心」の象徴的俳優のジェームズ・スチュワート。
この二人の競演によって、王道な筋書きの西部劇もさらに華やかかつ印象深い作品へと強化されていたに違>>続きを読む
近年クイーンが取り上げられた『ボヘミアン・ラプソディ』は、その伝説的アーティストたちの知られざる顔や魅力を伝える意図はもちろん、それと同時にショービジネスの闇を暴くこともテーマとしてあった。
この『エ>>続きを読む
爆撃シーンから始まるこの作品。
そういった戦争映画のワンシーンの次には、映画館の前でたむろする若者たちの様子が軽快なジャズのなかで映し出される。
戦後のトラウマから逃れられない大人たちと、そんなどん底>>続きを読む
『万引き家族』のように、犯罪を通じて皮肉にも家族のような絆が生まれてくる。
それも無垢な存在である赤ちゃんを介して、それぞれが自分の人生を見つめ直していくのだ。
雨が演出としてかなり効いている。>>続きを読む
アメリカ開拓時代を舞台に、家族愛と少年の成長、そして生命の尊さと自然界の厳しさが描かれる。
美しい朝焼け、静かに流れる大河、生い茂る緑。こういった豊かな自然が尊いものであることが、よく伝わってくる映>>続きを読む
エセル・マーマンの魅力をど真ん中に置いた作品。
彼女の明るさと華やかさ、そして何よりもパワフルな歌声に惹きつけられる。
それにうまく調和する作品の時代背景や装飾、ジョージ・サンダースやドナルド・オコナ>>続きを読む
13歳。背伸びをして大人の世界に憧れ始めるお年頃。
こういう大人になりたい、そんな理想や夢は誰しもが抱くものだろう。
だけど理想を追い求めるあまりに、自分自身や本当に大切な人やものを見失ってしまうこと>>続きを読む
中世のチェコの動乱とその荒波にもまれた少女の運命が中心に描かれた、ダイナミックで生命力に満ち溢れた作品だった。
野生味溢れる男たちの魂の雄叫び、血しぶきや飛び交う矢におののく一方で、自然の豊かさが美>>続きを読む
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「不可能を可能に」
その実現の難しさは言うまでもないが、こんなことがあってくれたらいいのに、と願いたくなる作品である。
とはいえ、結末において決して後味がいいとは言えるものではなかった。しかしそれは世>>続きを読む
「だまされるのは女の罪なんだ」
日本国旗が、血が白い布の真ん中にじんわりと広がっていく。
主人公ナミの復讐心と執着心ゆえの言動も、この血のように波及していく。
クールビューティーの代名詞とも言えよう>>続きを読む
今回はタイという異国を舞台に、彼らはまたやらかしてしまう…。
ミステリー仕立て(と言っていいのだろうか)のコメディ映画として独自の地位を築いているこのシリーズ。
自分たちがしでかしたことを、まるで刑>>続きを読む
ジャン・ルイ=トランティニャン追悼を契機に、以前からずっと観ようと思っていたこちらのアラン・ロブ=グリエの作品を鑑賞。
物語世界と現実世界が重なり合う。現実と非現実が交錯した、混沌たる美しき妖しい迷>>続きを読む
爆竹とスプリンクラー。
これらが象徴するようにアラナとゲイリーの出会いは突発的で、関係が走り出すのもあっという間だった。だけど彼らは蛇行や寄り道を重ねていく。
この二人の、すれ違ったりくっついたりを>>続きを読む
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実在の天才数学者のジョン・ナッシュの自伝的作品。
彼の生きづらさという側面だけではなく、タイトルの通り彼の持つ美しく純粋な心が、光るものや浮かび上がるものの演出を通して描かれる愛の物語である。
ま>>続きを読む
社会問題が主題の作品ではあるが、ファンタジーな演出がロマンティックかつ哀愁を際立てている。
さらに悲劇の主人公を演じたジェラール・フィリップの美しさも相まった作品だった。
窓から外の景色を眺める主>>続きを読む
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昔小説が売れたことがあった「自称」小説家の主人公。妻に愛想をつかれて息子とともに家を出ていかれてしまった彼はまた、自分の人生と家族を見つめ直す。
分離してしまった家族という共同体が、自分自身およびそ>>続きを読む
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父が常に子を思って誠実かつ懸命に生きていたように、子も父を思ってひたすらに努力を重ねていた。
お互いを思い合う親子の年代記は、涙なしでは観ていられないほどのあたたかさと慈愛に満ちたものだった。
も>>続きを読む
インドにある「黄金寺院」と呼ばれるハリマンディル・サーヒブでは、毎日巡礼者や旅行者に無料の食事が提供される。
この食事を皆でする場・空間においては、どんな階級や身分であってもどんな暮らしぶりをしている>>続きを読む
『赤ちゃん教育』のセルフオマージュ作品。
破けたドレスなどの名シーンなんて、明らか
なオマージュだとうかがえる。
ただ、そういった細かい部分に限らず、作品の構造に関しても『赤ちゃん教育』との類似点が多>>続きを読む
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中年女性ジャンヌ・ディエルマンのある3日間の「日常」が淡々と映し出されているだけのはずなのに、観ていて胸が詰まるような苦しさを覚える。
それでも一秒たりともスクリーンから目を離したくないと強く思わされ>>続きを読む
明るくてド派手なパフォーマンスが、目で見て楽しいミュージカル映画。
とは言えただその派手さを披露するだけではなく、そのゴージャスさを惜しみなく見せるためのカメラワークの工夫が終始なされている。
例>>続きを読む
自由自在に動かして操るリヴェットの魔法に振り回されるのが心地よい。
「こうだからこう」という枠組みに当てはめて考えることはこの作品ではほぼ無意味であり、ただただリヴェットの世界に身を委ねるのが良いのだ>>続きを読む
上映後のトークショーにて諏訪敦彦監督が「自己が分裂していく感覚の映画」だと言っていたが、まさにそういった感覚に陥る不思議な作品であった。
私たちが映画を観るときには、主体としての自己と客体としての>>続きを読む
街行く人には見てみぬふりをされ、妻にさえ拒絶される男。
そんな彼の顔は包帯で覆われている。
顔を「なくした」男の復讐劇を通して、我々がいかに人の見た目にとらわれているのか、しかしそれは単なる身の回り>>続きを読む
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人間らしき目元が見える、人間に近い風貌の宇宙人からの鉛の塊でできたロボットが登場して、ビームを浴びせる。
そんなロボットが人類に注意喚起を促す…という設定はSF映画あるあるだが、それに加えて宇宙人と純>>続きを読む
損得勘定で人と接することが一切ない「小原庄助さん」こと杉本左平太は、自分の身を削ってでも常に世のため人のために行動する。
そんなもはや自己犠牲精神の持ち主の彼の生き様と村の人々の朗らかさが、彼の心のあ>>続きを読む
2000年問題への漠然とした大きな不安が、社会全体を包み込むなか、両親不在の少女は過去に遡る冒険をすることで前に進んでいく。
少女の成長と、彼女とさまざまな人との繋がりが、爽やかなタッチであたたかな視>>続きを読む
人は、辛い現実から逃れるためにフィクションを用いるものである。
フィクションの世界で自分の理想を描いてそこに浸ることで、現実の苦しい状況を乗り越えるヒントを得たり、その苦しみを軽減しようとする。
しか>>続きを読む