Ricolaさんの映画レビュー・感想・評価 - 6ページ目

Ricola

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曳き船(1941年製作の映画)

3.9

このレビューはネタバレを含みます

ホラー映画というほどの恐怖を煽られるわけではないが、背筋が凍るようなラストであった。
前半は荒波にのまれる船を舞台にしているためアクション映画的とも捉えられると思うが、後半からはラブロマンスとスリラー
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ブロードウェイのバークレー夫妻(1949年製作の映画)

3.6

10年ぶりのアステアとロジャースの共演作品とのことで、二人のステップを踏む足元から始まる冒頭のショットですでに心をわしづかみにされる。

この黄金コンビなくしてミュージカル映画は語れないと改めて思わせ
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偶然と想像(2021年製作の映画)

4.2

偶然が人と人を結びつけ、それが運命の出会いになることもある。
現実の嫌なことを乗り越えるには想像の力を借りることは有効である。
偶然と想像によってもたらされる奇跡が、日常と人生を豊かにしてくれるのはた
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火の馬(1964年製作の映画)

3.8

少年の成長と恋や出会いと別れが、季節の移り変わりとともに鮮やかに描かれる。
また、伝統儀式などの風俗の側面も作品の大きな見どころだろう。
しかしそれ以上に、映像の多彩な見せ方が素晴らしい作品である。
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ファイト・クラブ(1999年製作の映画)

3.7

このレビューはネタバレを含みます

この作品も世紀末への不安と恐怖を表したものではないだろうか。
人々の抱える不安感と社会への不信感を「ファイト」することで喪失させようと、主人公の裏の顔つまりは彼の本音が導く。


刺激のない日々への鬱
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乳房よ永遠なれ(1955年製作の映画)

3.9

田中絹代が監督を務めた作品の一つであり、女性特有の病に冒されていく主人公の視点から語られる。
しかし、主人公と病の対峙だけがただ描かれているのではなく、ある一人の女性の人生そのものが赤裸々かつ繊細に綴
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マトリックス(1999年製作の映画)

3.5

ここで示されている技術の発達における懸念材料が、現在ではより現実味を帯びたものになっているのではないか。とは言え、そういった点を踏まえて描かれる未来への展望も描かれているため、単に警鐘を鳴らすだけでな>>続きを読む

輪舞(1950年製作の映画)

4.5

「人は物事の一面しか知らない。なぜなら一部しか見ないからだ」
自分はそうではないと言う狂言回しを名乗る男が、人々の恋愛模様を数珠つなぎで見せていく作品である。

作品冒頭で現れてすぐに語り始める狂言ま
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ふたりの人魚(2000年製作の映画)

3.7

ファンタジーのような現実が、暗い現実に光を当てる。
河は人々の生活に即したものであるけれど、現実と非現実が交差した場としてもこの作品では提示される。
奇跡のような巡り合わせの物語が、雑多とした都会には
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にがい米(1948年製作の映画)

4.2

田舎の女性と都会の女性。
この二人の女性の性格や運命の対比的な描写と、二人の男性を巻き込んだ騒動が作品の中心である。
ネオレアリズモの系譜を踏襲しつつ、そこにメロドラマの要素を絡めた傑作である。 
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東京ゴッドファーザーズ(2003年製作の映画)

3.8

イエス様は孤独な人間に居場所を与えるために地上にやって来たというだけあって、やはりクリスマスに何か奇跡が起こることを人々は望んでいるようだ。
クリスマスの夜にホームレス3人組が拾った赤ちゃんは…居場所
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レディ・イヴ(1941年製作の映画)

4.1

アニメーションによるかわいいオープニングからワクワクする。
それと同時に蛇とリンゴという、意味深なモチーフに惹き込まれる。
この映画は、旧約聖書における蛇とイヴのように、蛇(好き)の彼とイヴの彼女の物
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ほらふき倶楽部(1926年製作の映画)

3.7

チャーリー・バワーズ特有の、アニメーションと実写映像の融合によるファンタジーな世界観に魅了される。

ホラ吹きチャンピオンを決める大会にて、大会の参加者のほらが全く取るに足らないつまらないものなので、
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ヒーズ・オール・ザット(2021年製作の映画)

3.7

『シーズ・オール・ザット』のリメイク作品であり、オリジナル版への敬意を感じるとともに、現代性を的確にとらえた作品だった。
オリジナル版とほとんど同じ筋書きであり、小ネタや場面ごとの演出や台詞まで細かく
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モンパルナスの灯(1958年製作の映画)

3.7

およそ3年ぶりに再鑑賞。
この作品は元々ジャック・ベッケルが監督を担当する予定ではなく、かなり仕上がった段階で彼の手元に渡ったという。
とはいえそれでも、ベッケルらしい要素は随所で見られる。

   
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道化師の夜(1953年製作の映画)

3.6

このレビューはネタバレを含みます

サーカスでは、面白おかしいことや、ときには危険をおかすほどの超人的なことをして人々を楽しませる。
彼らは笑われてときには蔑まれるが、それでもこれでしか生きていく術を知らない。そんな人生の哀歌的な作品で
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七月のクリスマス(1940年製作の映画)

4.0

寓話的に構成され、皮肉の込められたコメディ作品である。
若い恋人同士の男女が、嘘に翻弄されて夢のようなひとときを経験する。
その嘘には彼ら以外をも巻き込み、大騒動へと発展しまう。


高層ビルが立ち並
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結婚相談(1965年製作の映画)

3.8

年齢的に結婚への焦りを感じ、結婚相談所へ駆け込んだ女性がさまざまなタイプの男性に振り回されるという作品である。
大胆かつ風刺的な物語構成や演出に、目が離せなかった。ましてや自分の将来を、少なからず重ね
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未来よ こんにちは(2016年製作の映画)

3.5

自分自身も身の回りも社会も、昔のようにはいかなくなったけれど、そういった過去にはおさばらして新たな日々を歩むことを愛おしいものとして描いた作品である。そう思うと、この作品のタイトルであるl'aveni>>続きを読む

青いガーディニア/ブルー・ガーディニア(1953年製作の映画)

3.9

フリッツ・ラングらしい緊張感の張り詰める場面や、見事なサスペンスの見せ場はあるものの、ラングらしさが前面に押し出された作品ではない。
むしろルビッチのような、洗練された雰囲気の作品という印象が強かった
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忘れられた人々(1950年製作の映画)

4.1

目にしているのが耐えられないほどの負の連鎖。
しかし、このおぞましさから我々は目を背けてはならないはずである。
とはいえ、実際に人々はその現実になかなか目を向けることはない。
だからこそ人々は、この連
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全自動レストラン(1926年製作の映画)

3.8

チャーリー・バウワーという人物はこの前友人から聞いて初めて知った。
元々アニメーターであり、実写映像とアニメーションをうまく融合したコメディ作品を得意とするそうである。

この作品は、ファンタジー全開
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シーズ・オール・ザット(1999年製作の映画)

3.7

イケてる人気者の男子が「変人」で「ダサい」女子を変身させる。
それぞれの短所や人生で行き詰まっているところを、相手に刺激されて自分自身と二人ともが向き合うことになる。

軽く観ることのできるティーン向
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男はつらいよ 私の寅さん(1973年製作の映画)

3.6

珍しく寅さんが、家族のために留守番をするという今作品。
いつも皆に帰りを待たせている側なのに、たった数日間の旅行による家族の不在に寅さんはソワソワイライラする。
「待つ身の気持ちなんてわかりゃしないよ
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ミラノの奇蹟(1951年製作の映画)

4.0

貧しい人々が直面する、救いようのない現実を冷徹な視点をもって描いてきたデ・シーカが、この作品では思いっきりファンタジーに傾倒している。
自らもジャンルとしての確立に携わってきたネオレアリズモ作品に対し
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少年(1969年製作の映画)

3.8

実際にあった当たり屋一家の事件をもとにした作品。
子供に当たり役をやらせ、肉体的にも精神的にも危険に晒していたという事実にまずあ然とする。
その実態をただ彼の両親のせいにすることはできない、社会の闇を
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ソウルフル・ワールド(2020年製作の映画)

3.7

何か夢や目標に取り組むこと、また自分の好きなことや極めたいことを見つけて、それに向かってひたむきになることはたしかに人生において大事なことであるだろう。
しかし、それ以上に長い人生における何てこともな
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火の接吻(1949年製作の映画)

3.8

シェイクスピアの古典作品『ロミオとジュリエット』の翻案作品は数多存在するが、この作品は『ロミオとジュリエット』の筋書きや物語を単に踏襲した作品ではない。

映画『ロミオとジュリエット』が撮影されるそば
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ルビイ(1952年製作の映画)

3.7

閉鎖社会に根強く残るアンチ・フェミニズム的側面を浮き彫りにしたフェミニズム作品であると感じた。マイノリティである女性だけでなく、階級社会への叫びでもあるだろう。

一見、いわゆる男まさりな女性が恋に溺
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ヴェラは海の夢を見る(2021年製作の映画)

3.7

未だ世界の多くの社会は男性優位社会であり、そこに女性が立ち向かうことの難しさは否めない。
それも、そういった社会において「戦わずに生きる術」を学んできた女性にとっては特に難しいことなのではないだろうか
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最初の花の香り(2021年製作の映画)

3.6

女性同士の一途な恋愛模様が、爽やかかつ良い意味でベタに描かれている。
同性愛だからといって特別なものとして描くわけではないという意思に感じられる。

友人の結婚式で偶然再会した、高校時代バレーボール部
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お吟さま(1962年製作の映画)

3.4

田中絹代の監督作品の一つであるこの作品では、キリシタン大名高山右近と千利休の娘であるお吟の恋愛が描かれる。
ただ、お吟さまの恋い慕う人への切なる情熱的な思いと、自らが政治や権力社会で利用されることへの
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ムリナ(2021年製作の映画)

3.5

美しい海に囲まれた島に住む少女ユリア。
ユリアは抑圧的で保守的な考えの父親から逃げ出し、新しい世界へ踏み出すことを望んでいる。
父親の古い友人ハビエルとの出会いが、彼女を動かすことになる…。


タイ
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最後の誘惑(1988年製作の映画)

3.6

「神よ、なぜ私を選ばれたのですか?」
たしかイエス・キリストはそう言っていたと、聖書でも書かれている。
救世主に選ばれることの苦悩、というかプレッシャーを彼が感じていたのかもしれないこと、そして「普通
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草の上の昼食(1959年製作の映画)

4.0

「たぶん幸福とは自然の秩序に従うことだ」
作中のある人物がこの台詞を言い放つが、この作品はまさにそういった「自然な」人間のあり方について賛美した作品である。

ルノワール監督の上流社会への皮肉と自然主
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秋日和(1960年製作の映画)

4.3

小津作品で繰り返されるテーマ、「娘の結婚」。
そこにいつもは父親の視点が据えられているのもセットなのだが、今回は母親のそれが優しく、かつ寂しげに描かれる。

また、娘の結婚とその美しき母をめぐる、亡き
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