アントニオーニ監督の初カラー作品とのことで、色使いなど鮮烈かつ実験的な試みが見られる。
冒頭から早速、ざらついたぼやけた映像が目に飛び込んでくる。
工場の排出しているガスの音や機械音に怯えるような表>>続きを読む
言わずもがなタランティーノ監督の代表作の一つである。
ノリの良い音楽とともに、ギャングたちのクールなさまがスピーディーに展開されていく。
5つのエピソードで構成されているが、それは時系列順というわけ>>続きを読む
記録映画的な、現実そのもののショッキングな羅列から始まるこの作品。
タイトルの日本の悲劇というのが、まさにこの物語を端的に名付けたものとしてしっくりくる。
戦後の混乱によって起こる社会的事件や人々の>>続きを読む
男一人に女三人。
その男は、自身の優柔不断さと欲望にさいなまれるのだ。
とはいえドロドロな恋愛映画というわけではなく、さすがロメール、相変わらず爽やかな色調で軽やかに皮肉った恋愛喜劇である。
ロメ>>続きを読む
相変わらず一人の女性に翻弄される複数の男性という構図である。
孤独と嘘には耐えられないヘウォン。
そんな彼女は迷ったり悩んだりして、自分の人生を探しているのだ。
彼女は文字通り行ったり来たり、歩き続>>続きを読む
タイミングとお互いの謙虚さまでもが、恋愛成就に影響するということ。
それは今までの『男はつらいよ』のシリーズでも描かれてきたことだが、特に今回はそれが痛烈に示されてしまった回なのかもしれない。
タ>>続きを読む
突拍子もない設定からスタートするおとぎ話のようでもあるが、むしろ残酷な現実を突きつけてくる作品であることはたしかだろう。
不穏な雰囲気の中で行われるふざけたようなノリが奇妙かつ怖い。
このやり方のお>>続きを読む
女の子の体を持って生まれてきたけれど、心が男の子である主人公。
まだ10歳の彼の、心の葛藤と奮闘、そして妹とのきょうだい愛、淡い初恋などがみずみずしくも残酷に綴られる。
彼は家族と引っ越した新しい土>>続きを読む
このレビューはネタバレを含みます
幻想が現実の脅威となることは、実際にそんな珍しいことではないのではないだろうか。
「幻想が実体化するなんてありえない」果たしてそれは、本当にありえないことなんだろうか…?
アイドルから女優へと転身し>>続きを読む
たしかにギャングが主役で、ストーリーもそういった裏社会が舞台なのではあるが、ベッケル監督らしい人物や日常の描写が光るのはさすがである。
ジャン・ギャバンの渋い演技と貫禄はもちろん、緻密な演出の組み込>>続きを読む
「舞台を取り囲む人々が作り上げるショーがパラード!」
とタチが幕開けの際に発し、サーカスのようなミュージカルのような楽しいショーが始まる。
この言葉通り、舞台の人々の働きかけだけでなく、客席に座る人々>>続きを読む
濱口竜介監督が、これまでの作品でも追求してきたであろうテーマの一つ、「重心」は、この作品においても意識して作られているように感じた。
それは、作品の至るところで繰り広げられる、さまざまな形の「対話」を>>続きを読む
この作品は教科書的な映画の一つだと思うが、街に溢れかえるほどの人間のひとりひとりの熱量に圧倒されるほどであり、人間くささや実際に起こった反乱の凄まじさをひしひしと感じる作品でもあった。
モンタージ>>続きを読む
手品師とジャーナリズム専攻の学生のコンビが、ある事件の解明に挑む…のだが、グダグダだし恋しちゃうしでシッチャカメッチャカなのは、ウディ・アレンならではだろう。
思いっきりファンタジーな世界観に振り切>>続きを読む
車に乗って湖の中へと突っ込んでいくロベルト。それを笑って見るブルーノ。
この二人は出会い方からぶっ飛んでいたけれど、その旅自体は気取らないがクールで自由で真剣なものだった。
ぐるぐる回す映写機から、>>続きを読む
いわゆる不倫の話ではあるが、純愛ゆえのロマンチックさにやっぱりときめく。
この作品は、過去を回想する主人公の女性視点から語られる。
過去へと遡る時間軸の動きにより、冒頭に描かれる「現在」がラストにまた>>続きを読む
カオスにカオスが重なったような状況。
とは言え、たっぷりとお膳立てをしたあとに文明社会への皮肉を突きつける、その姿勢はさすがの容赦のなさである。
鉱山近くの街を舞台に群像劇が前半には繰り広げられるが>>続きを読む
今回は、寅さんはより「傍観者」として旅で出会った人たちの人生を見守る立場にあるように感じた。
テキ屋仲間とその妻、そして焼津の漁港の家から来たという明るくて元気な少女とその兄との交流が、今作の中心であ>>続きを読む
もちろんSF作品の金字塔であることは間違いないだろうが、個人的には少々ホラー要素も含まれた作品であるように感じた。
とは言っても、あの有名なメロディや未来への展望を感じさせるストーリー展開など、楽しく>>続きを読む
黒澤明が脚本を手掛け、木下恵介が監督をつとめた作品。
心優しい家族の愛に触れて、自分の生き方やあり方を見つめ直す若い女性ミドリの葛藤を通し、戦後の荒んだ街や人々の心にも一石を投じようという意図を感じる>>続きを読む
美味しそうな料理と、主人公の人間関係での良い変化に癒やされる。
料理の腕はたしかだがカタブツな主人公のマーサ。
姪との生活や価値観の異なる料理人との出会いが、マーサの頑なな心を徐々に溶かしていく。>>続きを読む
オゾン監督が『君の名前で僕を呼んで』を観て、この作品を作ったと聞いていたが、オゾンらしさが不気味さと表裏一体となってしまう愛の暴走に表れていた。
たしかにひと夏の恋というテーマでは同じであるが、『風と>>続きを読む
この作品はハワード・ホークスらしい「男くさい」作品だと思うが、それでも父権制の良い側面と悪い側面がどちらもちゃんと描写されているのはさすがだと感じた。
「親子」の絆の感動ストーリーが中心にあるが、牛>>続きを読む
ゴダールがプロスペル・メリメの『カルメン』を翻案した作品である。
とは言っても、原作に忠実というわけではなく、現代のフランスを舞台に、それも映画製作が作品の主軸にある。
これから記録映画を作るという>>続きを読む
ウェス・アンダーソンの最初の商業的作品。
彼の大学の友人であったというオーウェン・ウィルソンのデビュー作でもある。
そのためか、友人との内輪ノリのようなチープさは否めないが、すでにウェス・アンダーソン>>続きを読む
このレビューはネタバレを含みます
どんなに足掻いても抜け出せない現実の厳しさを目の当たりにする。
どうしても乗り越えられない原因である運命というものが存在するのかもしれない。
マンマ・ローマと呼ばれる主人公の女性が、惨めな人生から抜>>続きを読む
あまりに有名な作品であるため、観たことがなくても結末はなんとなく知っていたが、それでもラストシーンに近づくと目頭が熱くなった。
悲しき過去を背負う主人公の島勇作(高倉健)と能天気な若い男女の珍道中に>>続きを読む
身分違いの恋の苦しさや葛藤がテーマであるが、それらを構図や人物の動線など、キャラクターの演技以外の演出の観点からも表現されている。
それはさすが溝口健二らしい手法と言えるだろう。
作品の主題である恋>>続きを読む
正直、途中までこの作品の「気持ち悪さ」に耐えられないのではないかと不安になったが、いつの間にか画面に釘付けとなっていた。
さらに観終わって時間を置けば置くほど、この映画の虜になってしまっているようであ>>続きを読む
若者の抱く違う世界への憧れと、そこで出会う厳しい現実が温かな視線から描かれた作品である。
主人公の青年ホーマーの純粋な目は、現実を残酷なまでもそのままに切り取り、美しいものをさらに美しさを増幅させて映>>続きを読む
有名歌手と嫉妬深い夫、そしてホステスの女性が繰り広げる奇妙なラブコメディ作品。
さすがのビリー・ワイルダーらしい、説得力のある演出が細部まで施されているが、一方で彼の往年の作品の持つ上品さはあまり感じ>>続きを読む
一人の女性ソニに翻弄される三人の男性たち。ソニはいつも一枚上手で、男性陣が滑稽に捉えられているのは相変わらずである。
一人の女性がそれぞれ三人の男性とお茶や食事をしながら会話をすることや、三人の男性>>続きを読む
邦題の通り、主人公は月の上で長い間一人きりで、ある意味囚われの身にある。
その謎こそがこの作品のテーマであり、闇の部分に値する。
ストーリーの意外性は個人的にはあまり感じなかったが、作品に醸し出される>>続きを読む
この作品は、心も体も成長過程にある思春期の危うさと暴走を、接近する台風と比例して表した作品であるという。
彼らの暴走ぶりはなまなましく過激であるが、その赤裸々さを激しい台風と重ね合わせて見つめた演出が>>続きを読む
初めて観たジャック・ベッケルの作品はこの作品である。
今回はその初鑑賞から約3年半ぶりに再鑑賞した。
この『穴』は私の敬愛するジャック・ベッケルの遺作であるが、彼のそれまでの作品の多彩さを体現する以上>>続きを読む
実在したロレンス中尉の自伝をもとに作られた作品だそうだが、ロレンスの生き様やアラビアの慣習などはもちろん、ただそれ以上に砂漠の美しさやスケールの大きさに合わせた壮大な演出に魅力を感じる作品だった。>>続きを読む