鹿山さんの映画レビュー・感想・評価 - 4ページ目

デッドマン(1995年製作の映画)

3.9

へにゃへにゃな脱力グルーヴの裏に煮え滾るネイティヴ・アメリカンへの想いと、銃弾に横たわる骸。かつての西部劇の反転を、真正面からではなく、弛緩によるアイロニーで物語る。これは紛れもなく、単なる音楽ジャン>>続きを読む

コーヒー&シガレッツ(2003年製作の映画)

4.4

まずそうな珈琲と煙草を嗜む老若男女、11編に切り分けられた街の一角。他愛もない光景が何故だか唸るほどにおもしろい。

「結局、映画で「リアル」を目指すことは、撮影というお祭りのようなごく一時の幻影にす
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ストレンジャー・ザン・パラダイス(1984年製作の映画)

4.0

近年の作品『パターソン』の鑑賞時には気づかなかったけど、初期作は驚くほどに小津安二郎からの影響が顕著だ。あと、日本のグライム系ラッパーRalphの楽曲『Back Seat』のトラックサンプリング元って>>続きを読む

ポンヌフの恋人(1991年製作の映画)

4.7

「まどろめ パリよ!」――――
フランス映画屈指の超大作としても、ファッション・アイコンとしても、シネフィル文化のカリスマとしても、一時代を築き上げたメルクマールということで、背筋の凍る思いで再生ボタ
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ほしのこえ(2002年製作の映画)

3.9

新海誠監督の描きたいフェティッシュは処女作の時点でとっくに固まっていたのか。25分間という短編映画ならではのタイトさとハンドメイド感全開の作画の愛おしさのおかげで、『雲のむこう、約束の場所』『秒速5セ>>続きを読む

ファニーゲーム(1997年製作の映画)

3.7

暴力を娯楽消費してしまうすべての観客に捧ぐ最低最悪のアイロニー。終始不快感を逆撫でてくれる所作の徹底ぶりには甚く感銘を受けた。しかし作品自身の落ち度ではないのだが、こうした作品群が「胸糞系」という専用>>続きを読む

スナッチ(2000年製作の映画)

3.7

小粋なユーモア煌めくマッチョ群像劇。ベニチオ・デル・トロ、ブラッド・ピット、ジェイソン・ステイサム等のスター俳優が一同に会する光景は眼福!!!! 100分というタイトなランタイムも相まってサクッと観れ>>続きを読む

君の名は。(2016年製作の映画)

4.4

RADWIMPSへの憎悪を抱いていたワケでもない。アニメ表現が嫌いなワケでもない。大衆を軽蔑していたワケでもない。友人からの評判を聞いてなかったワケでもない。なのに「機会を逃したから」「でもいつでも観>>続きを読む

ゴーン・ガール(2014年製作の映画)

4.2

映画には、描写や俳優の容姿など諸々を含めた後天的な趣味趣向もあるだろうが、それ以前の無意識的レベルで、色彩感覚や編集のリズム/グルーヴ等の非言語的・肉体的質感の相性が各々にあるはずだ。依って、ひとつの>>続きを読む

実録・連合赤軍 あさま山荘への道程(みち)(2007年製作の映画)

3.8

若松孝二監督作品を初鑑賞。まず、日がなJim O'Rourke関連のレコード――特に『Gastr Del Sol - Upgrade & Afterlife』や近年のソロ作品――を愛聴していた御身分に>>続きを読む

「A」(1998年製作の映画)

3.8

暴走族ドキュメンタリー『ゴッド・スピード・ユー! BLACK EMPEROR』を観た時と同様の余韻だ・・・。オウム真理教のご丁寧な解説や凄惨な大事件なんて此処にはない。組織末端の若者達に向けられる、生>>続きを読む

男性・女性(1966年製作の映画)

3.8

アンナ・カリーナ萌えその2。「マルクスとコカ・コーラの子供たちへ」・・・って、何もかもが青臭くて気恥ずかしい!!最高じゃん!!!20代前半の僕ですらこうなのだから、あと5年遅ければ悪い意味で陳腐に映っ>>続きを読む

女と男のいる舗道(1962年製作の映画)

3.7

アンナ・カリーナ萌えその1。終盤のジェントルマンとのプラトン談話を近いうちに再見したい。

サッド ヴァケイション(2007年製作の映画)

4.2

まず、R.I.P.青山真治監督。蓮實重彦や黒沢清監督に近しいポジションにおり­­、日本のシネフィル文化への理解を深める上では避けて通れない存在であると、名前こそ頭の片隅に入れていたが、まさか作品を鑑賞>>続きを読む

小さな兵隊(1960年製作の映画)

3.8

如何にもバンドでいうセカンド・アルバムっぽい出来の佳作。処女作『勝手にしやがれ』の自動車遣いと夜間撮影は早くも円熟を見せ始め、対照的にアンナ・カリーナと政治的トピック(アルジェリア戦争)、露骨な自己言>>続きを読む

PicNic(1996年製作の映画)

3.7

僕は岩井俊二監督の良き観客ではない。映画という表現媒体のみならず、現実世界に蔓延る社会的イシューを過剰なまでにセンセーショナルなタッチで描き、露悪的もしくは感傷的な虚構にへと仕立て上げてしまう表現者は>>続きを読む

ツィゴイネルワイゼン(1980年製作の映画)

4.2

食の官能に溺れる145分間。リミッターの振り切れたシュルレアリスムと日本的情緒の洪水に、完全には乗り切れなかったところではあるが、それでも映像・音の快楽性を堪能できて大満足。アヴァンギャルドながらフィ>>続きを読む

羊たちの沈黙(1990年製作の映画)

3.9

言わずと知れたサイコスリラー・ブームのすべての元凶。後の『セブン』、『プリズナーズ』、そして今月公開したばかりの『THE BATMAN -ザ・バットマン-』(僕は未見だが…)など、その後の作品によりジ>>続きを読む

(1954年製作の映画)

4.3

『8 1/2』の記憶と「シュルレアリスムへの傾倒」という監督のエピソードから一体どんだけエクストリームな映像が出てくるか身構えていたら、DV夫に尽くす貧乏娘に焦点を置いたロードムービーでビックリ。あら>>続きを読む

黒い罠(1958年製作の映画)

4.5

噂には聞いていたが、冒頭からカマされる超絶ロング・ショットと、さっそく現れるオーソン・ウェルズの圧倒的な存在感に一撃ノックアウト!執拗に強調される斜め方向のアングル・運動(車とか人間の煽りとか)がズバ>>続きを読む

On Your Mark(1995年製作の映画)

4.4

過去鑑賞。ジブリ作品では暫定1位かも!
ショートフィルムは数えるほどしか鑑賞した試しがないけれども、僕の記憶で本作が途轍もなく高いハードルとして立ち塞がってる。コレを超える作品を発見できるだろうか……
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ラ・ジュテ(1962年製作の映画)

4.3

私事が多忙になり、長編映画を観る時間やTVシリーズを追う気力を確保できなくなってきたのだけれども、「短編〜中編映画ならイケるじゃん!」とひらめいた僕は冴えてる。しばらくの鑑賞方針はそんな感じでいこう。>>続きを読む

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウェスト(1968年製作の映画)

4.6

ウエスタン(原題:Once Upon a Time in the West)という大仰な題名を自ら掲げるのにも納得の貫禄。寡黙ながら雄弁な「眼力」のドラマにして、一人の勇敢な女性を軸にアメリカ西部開拓>>続きを読む

用心棒(1961年製作の映画)

4.3

「用心棒」という題名、ポスターに映った浪人姿の三船敏郎、そして冒頭にでかでかと掲げられる「監督:黒澤明」の名。これら3点からふんわり想像した内容と、全く同様の代物が出てきて思わず笑った。もちろんそれこ>>続きを読む

ボヤージュ・オブ・タイム(2016年製作の映画)

3.4

初テレンス・マリック。前評判から危惧していたけれども、すまない……not for me………。
序盤こそ色々いちゃもんは浮かんできたけれども、次第に段々どうでもよくなってきて、後半(陸上生物の時代)か
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お早よう(1959年製作の映画)

4.3

作品の傑作性はひしひしと感じるのだが、鑑賞するとドッと疲弊するので食指が伸びない作家が幾つかいる。デヴィッド・フィンチャー、スタンリー・キューブリック、そしてこの小津安二郎だ。フィンチャーは編集・スト>>続きを読む

リュミエール!(2016年製作の映画)

4.6

「映画」って、おもしろ〜〜〜〜い!!!!!!!!!「映画」って技術そのものがおもしろすぎ!!!!!!!!!

シネマトグラフ(映画装置)開発者によるリュミエール兄弟の作品、怒濤の108連発。ただでさえ
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白痴(1951年製作の映画)

4.0

『羅生門』『七人の侍』と来れば、3本目は『用心棒』『生きる』『椿三十郎』辺りをチョイスすべきなのだろうが、ドストエフスキー繋がりで本作を真っ先に再生してしまったという。黒澤明=大自然と活劇のスペクタク>>続きを読む

テルマ&ルイーズ(1991年製作の映画)

3.7

リドリー・スコット=何撮っても「神話」になっちゃう……という謎の偏見を持っていたが、仰々しい演出の無い、等身大の体温が籠もったロードムービーも撮れるのだな。
フェミニズムと犯罪の連鎖性への視線が込めら
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鉄男 TETSUO(1989年製作の映画)

4.1

INDUSTRIAL MOVIE───
この歳だからこそ「うおお!かっけー!」という一晩の興奮で済んだが、10代で観ていたら確実に人生狂っちまうほどの衝撃だったろう。
コマ送りや喧しいモンタージュ、激
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残菊物語(1939年製作の映画)

4.4

溝口健二監督の映画は毎度「観る」というよりも、素人目ですら別次元と認識できるほどに卓抜したカメラワーク&空間構築能力に「平伏す」体験になる。もちろん、今回も同様。私のような青二才が如何なる罵声を浴びせ>>続きを読む

続・夕陽のガンマン/地獄の決斗(1966年製作の映画)

4.2

メシ、水、砂、煙草、銃口、そして顔面。見合った者達の緊張感を顔面ズームアップで演出する手法はシンプルながら超強烈な威力で、鑑賞中は終始笑い続けることに。いや、徹頭徹尾最高にカッコいいんだよ!でも、カッ>>続きを読む

スパイの妻(2020年製作の映画)

4.4

お見事ですっっ!!!
開始10分こそ、「黒沢清がこの年代を扱うこと自体興味深い」「やはりTV映画らしいクッキリした画造り」と試す態度で眺めていたが、あっという間に黒沢清ワールドに変貌したものだから、完
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アメイジング・スパイダーマン2(2014年製作の映画)

3.7

前作がnot for meだっただけに半ば義務感で再生したけれども、これがどうしてなかなか面白い!画面・作劇の双方がイマイチパッとしないリアル路線から、ナード感満載の青春群像劇に一気に方向転換。前作が>>続きを読む

ベイブ(1995年製作の映画)

4.2

一匹の子豚が檻から偶然脱出した後、多民族国家ならぬ多種族一家に拾われ、「牧羊豚」として奮闘するサクセスストーリー。『パディントン』同様に原作はイギリス児童文学であり、「移民」が主題におかれている点も共>>続きを読む