クロスケさんの映画レビュー・感想・評価

クロスケ

クロスケ

ある男(2022年製作の映画)

4.1

良質な映画です。

物語を構成する要素は多いと思いますが、それらを無理なく映画のフォーマットに落とし込み、程良いサスペンスで観客の興味を引き付けながら、映画外の時間を想像させる余白を持たせています。
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ストーミー・ウェザー(1943年製作の映画)

3.2

些か退屈な序盤から中盤の展開が嘘のように、終盤は畳み掛けるように怒涛のパフォーマンスが繰り広げられます。
正直、この圧巻のクライマックスは偏に演者の力量によるところが殆どのような気もしますが、やはり単
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ドーベルマン刑事(1977年製作の映画)

3.8

映画が始まると、いきなりどす黒い焼死体が映し出され、思わずギョッとしてしまいました。

深作欣二のカメラによる運動性と千葉真一の肉体による運動性が画面上を目まぐるしく交錯します。
念入りなリハーサルを
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近松物語(1954年製作の映画)

4.5

【再鑑賞】
湖に浮かぶ一艘の小舟の上で身を寄せ合う男女。鬱蒼とした林で繰り広げられる大立ち回り。日本的な舞台装置と衣装から生まれるしなやかな所作。

そのどれもが、もうこれしかないという的確なショット
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ザリガニの鳴くところ(2022年製作の映画)

3.5

主題の示し方も、物語の筋立ても、登場人物たちの行動原理も、しごく健全な映画だと思いました。
メインビジュアルやおよそ映画の題材には馴染みのなさそうなタイトルから、勝手にダークで猟奇的な内容を想像してい
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正欲(2023年製作の映画)

2.6

中盤以後、自分とは違う人間のことを認めろだの、あなたと私はわかり合えるだの、同じことを何度も繰り返す展開には少し辟易しました。

スローモーションで描写される水の飛沫も気に入ってるのか何なのか知りませ
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季節のはざまで デジタルリマスター版(1992年製作の映画)

4.5

ランプシェード越しの仄かな光に浮かび上がる艷やかな美術、光と影のあわいを滑らかに移ろう耽美なカメラワーク。
視覚の栄養とでも呼べばいいでしょうか。スクリーンを見つめる我々の瞳を、瑞々しい何かが潤してい
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伯爵(2023年製作の映画)

3.2

このレビューはネタバレを含みます

軍服に身を包んだアウグストが、マントを翻しながら空を飛ぶ姿は、いかにもワイヤーで吊ったような素朴な格好でありながら、画面から重力が排除されたかのような独特な浮遊感を纏っています。

何だか、空を飛ぶ描
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リンダ リンダ リンダ(2005年製作の映画)

4.3

【再鑑賞】
いかにもありそうな、若者たちの日常生活を比較的淡々と描いています。ある人にとっては、特に気にもならないごく平凡な作品かもしれません。しかし、個人的には強く擁護したい好意的な作品です。私はど
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エスター(2009年製作の映画)

3.8

このレビューはネタバレを含みます

概ね、おもしろかったと思うのですが、巧妙に、そして陰湿に家族を心理的に追い詰め、崩壊に導こうとしていたエスターが、唐突に色仕掛でジョンに迫った挙げ句、呆気なくフラレた途端、大味な殺人鬼に変貌してしまう>>続きを読む

夜明けのすべて(2024年製作の映画)

5.0

何という優しい映画でしょう。
勿論、優しいというのは何も物語の顛末や登場人物たちの性格だけを指して言っているわけではありません。
スクリーン上で戯れる映像と音響とが、柔らかな大気のように目と耳を心地良
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愛なのに(2021年製作の映画)

4.2

このレビューはネタバレを含みます

快楽に目覚めたイッカが、再びコウジと交わるべく彼の自宅を訪れるシーンの直前、彼女が鼻歌を歌いながらバスに揺られるシーンが素晴らしい。

神父とのから回ったやり取りが滑稽な教会のシーンと生々しい二人の絡
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サンライズ(1927年製作の映画)

5.0

【再鑑賞】
ロマンス、サスペンス、アクション、ユーモア、スペクタクル、そして歌と踊りに、極めつけは豚!

映画で享受し得るあらゆる醍醐味が、1時間半という尺の中にふんだんに詰め込まれています。

何度
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温泉しかばね芸者(2017年製作の映画)

2.1

監督が在籍していた大阪芸大で教鞭を取っていた中島貞夫の作品からタイトルの一部を拝借していたり、本編の随所にパロディやオマージュが見られることからも、監督自身、映画が好きで、その感情を素直に表現すると、>>続きを読む

ウエディング(1978年製作の映画)

3.5

眠ったような死に顔や波打ったブロンドの長い髪が『散り行く花』の頃と何ら変わらない、リリアン・ギッシュの姿に感動します。

2001年宇宙の旅(1968年製作の映画)

5.0

【再鑑賞】
『美しく青きドナウ』がまるでこの映画のために作曲されたかのように、真っ暗な空間を漂う宇宙船やその内装を飾る未来的なインテリアとごく自然に調和しています。

ひたすら緩慢で、油断すると居眠り
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愛のまなざしを(2020年製作の映画)

4.1

万田邦敏と珠実のコンビがまたしても、男女のあわいに蠢く魅力的なサスペンスを撮ってくれました。

とにかく、一組の男女を同一のショットに収めるのが抜群に上手い。そのショットの繋ぎも、凝りに凝っている上に
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パンとバスと2度目のハツコイ(2017年製作の映画)

3.9

【再鑑賞】
特に奇を衒ったことをするわけでもない、扱われる題材もテレビドラマとさして大差はない。
ここ数年の今泉力哉の売れっぷりは、おそらくそうした一見、清廉潔白・人畜無害な作風が関係者を安心させるか
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