クロスケさんの映画レビュー・感想・評価 - 4ページ目

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス(2022年製作の映画)

3.4

タイトルが暗示する、多元的な世界を多様なスタイルで、一つの物語にコラージュ的に内包させる語り口は、湯浅政明の『マインド・ゲーム』、細田守の『サマーウォーズ』、新海誠の『君の名は』など、21世紀になって>>続きを読む

CURE キュア(1997年製作の映画)

5.0

【再鑑賞】
殺人鬼が怖いわけでも、怨霊が怖いわけでもなく、そこに充満する風土そのものが恐怖の対象となり得るということを気付かせてくれた作品です。

ピンク・フラミンゴ(1972年製作の映画)

2.1

ただひたすら下品で馬鹿馬鹿しく、安っぽくて技術的な質も低い映画ですが、肝心なところでゴダールの『勝手にしやがれ』と同じことを言っている気がします。つまり、こういうことです。

「とにかくカメラを持って
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ラストナイト・イン・ソーホー(2021年製作の映画)

3.6

田舎から都会のロンドンに出てきたファッションデザイナー志望の女の子が、孤独に苛まれた挙げ句、自分が贔屓にしている60年代の亡霊に取り憑かれるという、何とも踏んだり蹴ったりな物語。

紛れもない21世紀
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ワンダフルライフ(1999年製作の映画)

5.0

【再鑑賞】
映画それ自体はフィクション=作り物だが、そこに映っているものは人々の記憶の中に存在する現実である。

本作は作品自体がそんな考察を我々に提示しています。

映画の中で登場人物たち自身が自ら
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恋する惑星(1994年製作の映画)

5.0

このレビューはネタバレを含みます

【再鑑賞】
クリストファー・ドイルの自在なカメラワークが、中国に返還される前の香港の雑多な街を舞台に、刹那的な恋愛ゲームに興じる4人の登場人物たちを見事に切り取っています。

金城武、ブリジット・リン
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草の響き(2021年製作の映画)

3.3

冒頭、スケボーを滑らせる少年を捉えた長い移動ショットや黙々と走る東出昌大を捉えたショットに漲る潔さには好感を持ちました。

東出昌大の無表情にはそれなりの魅力が備わっていると思います。

アステロイド・シティ(2023年製作の映画)

3.6

最初に断っておくと、ウェス・アンダーソンの映画には初期の頃から好意を持っていますし、『ライフ・アクアティック』などは2000年代のベスト10に選びたいほど大好きな作品です。

ただ、本作に関しては、こ
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天使の影(1976年製作の映画)

3.8

重厚な内装が美しいロングショット。背中の大きく開いた黒いドレスを着たイングリット・カーフェンが、こちらに背を向けて立っている。カメラがゆっくりと彼女に近づいていく。

名手レナート・ベルタによる、この
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BULLET BALLET バレット・バレエ(1999年製作の映画)

4.2

【再鑑賞】
図らずも、先日鑑賞した『クライムズ・オブ・ザ・フューチャー』のクローネンバーグと塚本晋也との浅からぬ親和性を感じることになりました。
どちらも肉体の破壊や無機物と有機物の融合などに、特殊な
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ハズバンズ(1970年製作の映画)

4.4

カサヴェテスの映画をスクリーンで観る悦び。

中年男3人が年甲斐もなくはしゃぎ、酒を飲んでは同席者に絡んで、ベロベロになってトイレで吐く。思いつきでロンドンに行くと、見境なく女性をナンパし、乱痴気騒ぎ
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ミツバチのささやき(1973年製作の映画)

5.0

【再鑑賞】
ひたすらに美しい、ビクトル・エリセの大傑作。

「生」と「死」が同義語のようにフィルムに脈打ち、あらゆる表情が、あらゆる光が、あらゆる物音が撮られることの悦びに満ちています。

アナとイザ
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陸軍中野学校(1966年製作の映画)

3.6

スパイものの序章として秀逸だと思いました。
公開当時にリアルタイムで観ていたら、続編を制作してほしいと思ったことでしょう。

サイボーグのように冷徹なスパイに変貌した、このニヒルな雷蔵が、今後どんなミ
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クライムズ・オブ・ザ・フューチャー(2022年製作の映画)

3.4

破壊される肉体。

クローネンバーグの「らしさ」全開で安心すらするのですが、「安心」という言葉がこの変態映画作家にとって、必ずしもポジティブな意味を持つものではないのは言うまでもありません。

嵐の中で(2018年製作の映画)

3.6

嵐で公共施設の時計が壊れるという件は、やはりあのタイムスリップ映画の傑作へのオマージュでしょうか。

山椒大夫(1954年製作の映画)

5.0

【再鑑賞】
さすがの溝口健二です。
見慣れた物語を抑制の効いた落ち着いた画面を構築することで、新鮮な感動をもたらしてくれる美しいフィルムに仕立て上げています。

中でも、厨子王が脱走した後、安寿が池に
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リアリズムの宿(2003年製作の映画)

4.2

このレビューはネタバレを含みます

【再鑑賞】
はっきり言って、大好きな映画です。画面のトーンも流れる時間も登場人物たちの言動も共感しかなく、鑑賞中、終始自分自身を見ているような気分になりました。

どこか山下監督と共同脚本を担当した向
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THE FIRST SLAM DUNK(2022年製作の映画)

3.4

残念ながら、私としては原作との再現度を確認する作業に終始するばかりで、未知の衝撃に遭遇するという意味での感動的な映画体験は遂に得られず終いでした。

漫画史に残る名シーンである山王戦のクライマックスは
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ちょっと思い出しただけ(2022年製作の映画)

3.9

ジャームッシュの『ナイト・オン・ザ・プラネット』にオマージュが捧げられているという時点で、少しばかりの欠点など大目に見てあげたくなるというものです。

夜の東京の街を緩やかに疾走する一台のタクシー。ハ
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