クロスケさんの映画レビュー・感想・評価 - 5ページ目

遺灰は語る(2022年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

とある作家の遺灰を故郷シチリアまで運ぶ道中で見舞われる幾つかの些細なトラブルが、美しいモノクロームの画面と控えめなユーモアを交えながら描かれます。
やっとの思いでシチリアに辿り着いた作家の遺灰が、海に
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ミッドナイトクロス(1981年製作の映画)

3.9

このレビューはネタバレを含みます

息絶えたサリーを抱きかかえたジャックの背後に夥しい数の花火を配置してみせるクライマックスの件は、そのセンチメンタルなBGMと共に、少々大仰でクサい演出に見えがちですが、この堂々とした嘘への居直りこそが>>続きを読む

さかなのこ(2022年製作の映画)

3.9

悪人が一切登場しない映画。ミー坊をクビにする水族館の先輩飼育員や成金趣味な歯医者ですら、何処かしら人情味のある人物として描かれます。

平和で優しい画面に身も心もすっかり委ねながら、のんのひたむきな眼
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汚れた血(1986年製作の映画)

5.0

このレビューはネタバレを含みます

【再鑑賞】
何よりも先ず、二人の美しい女優、ジュリエット・ビノシュとジュリー・デルピーに瞳を奪われます。映画の中の登場人物に恋をするという体験をした、最初の作品の一つかもしれません。

森の中で裸の体
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河内山宗俊(1936年製作の映画)

4.7

【再鑑賞】
叙情とユーモア、そして活劇と、映画の魅力を全て詰め込んだかのような時代劇の傑作です。

とりわけ、本作が本格映画デビューとなる若干15歳の原節子の無垢な美貌が際立ちます。

弟・広太郎の不
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インディ・ジョーンズと運命のダイヤル(2023年製作の映画)

3.0

このレビューはネタバレを含みます

白状すると、シリーズの熱心なファンではありませんし、今までの作品もテレビの放送でしか観たことがありません。

それでも、我が青春の80年代から今日までのハリウッドを彩った人気シリーズの最終作ということ
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パーム・スプリングス(2020年製作の映画)

2.6

何だか妙に古典的な作りの映画だなぁと思いながら観ていると、思いのほかあっさりと終わり、ちょっと拍子抜けしたというのが正直な感想です。

比較的こじんまりとまとまって、大きな破綻もありませんが、監督デビ
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マリリンとアインシュタイン(1985年製作の映画)

3.7

ドイツから逃れたユダヤ人物理学者と赤狩りを扇動した政治家。ハリウッドのスター女優とその夫であるメジャーリーガー。20世紀のアメリカを賑わせた4人。そんな曰く付きの彼らを無造作にホテルの一室に放り込んだ>>続きを読む

海を感じる時(2014年製作の映画)

2.8

ヒロシから頑なに拒絶されていたエミコが、次のシーンでは仲睦まじくベッドで肌を重ね合わせているといった唐突さに些か戸惑いましたが、執拗に「帰れ」という台詞をエミコに投げかけるヒロシとそれに抗うエミコとの>>続きを読む

奇跡(1954年製作の映画)

4.8

このレビューはネタバレを含みます

調度品や家具が整然と並ぶ室内シーンのその静謐な美しさに溜息すらこぼれます。

俳優たちの声や動きは実に慎ましやかで、空間を豊かに満たしていきます。それらを律儀に切り取っていくワンシーンワンショットのカ
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アジアの天使(2021年製作の映画)

2.5

2時間もある作品にしては、少々内容が薄いように思います。
日本人の兄弟+その息子と韓国人の3兄妹が旅を共にするという状況に、最後まで乗ることが出来ませんでした。
ソウルを舞台にツヨシとソルのラブストー
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カモン カモン(2021年製作の映画)

3.8

本作のホアキン・フェニックスは『パリ、テキサス』のハリー・D・スタントン、『ユリイカ』の役所広司、『SOMEWHERE』のスティーヴン・ドーフなどのように、多感な子どもの傍らに寄り添う、不器用な中年男>>続きを読む

少年探偵団(1931年製作の映画)

3.6

ベルリンの街を少年たちが元気に駆け回る様は、何処かヌーヴェルヴァーグの作品群を思わせる躍動感があります。
少年たちが大軍勢となって、泥棒を追い詰めるクライマックスのシーンは痛快。思わず声を出して笑って
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GONIN(1995年製作の映画)

4.4

このレビューはネタバレを含みます

【再鑑賞】
才能ある若手や経験を積んできた中堅、円熟期を迎えたベテランが意欲的な作品を次々と発表し、かつての30年代や50年代の黄金期ほどではないにせよ、90年代の日本映画には活気があったように思いま
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大脱獄(1970年製作の映画)

3.9

『俺たちに明日はない』の脚本家コンビらしいアメリカン・ニューシネマ的な風味を持った西部劇。新しい時代の若者たちによる脚本を、マンキーウィッツ、カーク・ダグラス、ヘンリー・フォンダら百戦錬磨のベテランが>>続きを読む

独裁者たちのとき(2022年製作の映画)

4.0

実在した歴史上の人物が虚構の世界で生々しく蠢く不気味なファンタジー。

色褪せた廃墟のような空間を彷徨う20世紀が生んだ権力者たち。

画面はいつものソクーロフの映画がそうであるように、深い霧が立ち込
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さがす(2022年製作の映画)

3.7

奇妙な魅力を持った、なかなか興味深い映画でした。

暴力描写は堂に入ってるし、非凡なユーモアの素質も覗かせます。かと思えば、重々しいシリアスな場面の演出力も高い。

ALSを患い満足に身体を動かすこと
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死闘の伝説(1963年製作の映画)

2.4

ロングショットの緊張感のなさにガッカリしました。

ロングショットはその場の状況を端的に説明する用途としては、とても便利な画面サイズです。
それ故にカメラ位置と画角を丁寧に決め、的確なタイミングで挿入
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ジョージア、白い橋のカフェで逢いましょう/見上げた空に何が見える?(2021年製作の映画)

1.8

予告編を観た限り、その雰囲気からエリック・ロメールやホン・サンス、ギヨーム・ブラックなどの系譜に連なるスタイルの持ち主かと期待しましたが、水で何倍にも薄めたチューハイをピッチャーで飲まされてるような映>>続きを読む

オールド(2021年製作の映画)

2.7

荒唐無稽でSF的な設定を充分に処理しきれず、ある程度紋切り型な展開に妥協した不完全な出来栄えといった印象を受けました。

シャマランにしては粗さが目立ちます。何処か事を急いてるというか、結論を求めすぎ
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鮫肌男と桃尻女(1998年製作の映画)

4.2

【再鑑賞】
寺島進、津田寛治、森下能幸、関根大学ら出演者とクライマックスのホテルロビーで繰り広げられる銃撃戦の描写に、石井克人のソナチネ愛が見受けられる微笑ましい映画です。

ブリーフ一枚で山道を駆け
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愛のコリーダ(1976年製作の映画)

3.7

【再鑑賞】
この映画の断片を初めて目にしたのは、高校の修学旅行先だったフランス・パリでのことでした。
旅先でテンションの上がった高校生が、ご多分に漏れずにそうであるように、夜更かしをして部屋のテレビを
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ゴッドファーザー(1972年製作の映画)

5.0

【再鑑賞】
もう何度観たことでしょう。
何度観ても色褪せない、それどころか、観るたびに味わいが深みを増していきます。

冒頭の長い結婚パーティーのシーンでは、主要な登場人物たちがほぼ勢揃いして、其々の
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A.I.(2001年製作の映画)

3.6

スピルバーグの半自伝的な最近作『フェイブルマンズ』を観たあとだと、本作が精神的な部分で極めて個人的なテーマを基に撮られた映画であることがよくわかると思います。

私はスピルバーグが単にキューブリックが
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しとやかな獣(1962年製作の映画)

4.9

このレビューはネタバレを含みます

【再鑑賞】
ワンシチュエーションとは思えない、縦横無尽で変幻自在なカメラワークが、一癖も二癖もある登場人物たちの、醜くも滑稽なやりとりをスタイリッシュに切り取ります。

編集の切れ味も鋭く、クローズア
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気ままな情事(1964年製作の映画)

3.9

その豊満な肉体は勿論、ややハスキーな声がキュートでセクシーなクラウディア・カルディナーレの魅力全開です。

出演作は、本作のような楽天的なお色気コメディからフェリーニやヴィスコンティのような大作家の正
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ラプラスの魔女(2018年製作の映画)

2.3

よく喋る映画でした。

単純にセリフの量が多いというだけのことではなく、喋る必要の無い余計なことまで言語化しているという意味で喋り過ぎです。

登場人物たちの置かれた状況や感情までベラベラと喋っている
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狩人(1977年製作の映画)

3.8

【再鑑賞】
観るたびに魅力が増していきます。

全てのショットをただ息を潜めて、ジッと凝視することを観る者に要求する映画です。

また観ると思います。