だびーさんの映画レビュー・感想・評価

だびー

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パリ、テキサス 2K レストア版(1984年製作の映画)

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一人で荒野に現れ、家族と再会し、何もかも思い出して、最後はまた一人でハイウェイの彼方に去っていく。この後トラヴィスは何処に向かうのだろうか、また全てを忘れるのだろうか。こんな風に何もかも捨てて、知らな>>続きを読む

ライト・スリーパー(1991年製作の映画)

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日記と独白。『タクシードライバー』から『カード・カウンター』まで、ポール・シュレイダーの語り方の一貫性。ほぼ同じなのだけど、この独白の語り口や言い回しは何度見ても魅了される。やさぐれたデフォーの色気、>>続きを読む

愛しのタチアナ(1994年製作の映画)

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オーケストラの壮大な演奏をバックにしてコーヒーミルが送られるの笑うしかない。ロードムービーで珍道中で、ちょっとした逃避行で冒険譚。写真を撮る時のマッティ・ペロンパーとカティ・オウティネンの真正面の切り>>続きを読む

スリ(掏摸)(1959年製作の映画)

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カウリスマキによる『罪と罰』の映画化のエンディングはどこか落ち込ませるものを感じてしまったのだけど、それは先行作品として今作があったからだろうか。牢を挟んだミシェルとジャンヌほど、ドラマティックには撮>>続きを読む

PASSION(2008年製作の映画)

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出てくる人間全員に共感出来る個所が何処にもなく、「こういう人もいるのかもしれない」くらいにしかならず、終盤の膨大な会話とゲームのロジックはただ演劇的になってしまってもおかしくないけれど、そういう感想が>>続きを読む

不気味なものの肌に触れる(2013年製作の映画)

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千尋と直也のダンスの艶めかしさと不穏さ。触れそうで触れていない、でも相互に影響し合って動き、動かされる。この2人の撮り方に異様に惹きつけられる。そしてストーリーの構図、『悪は存在しない』との相関を感じ>>続きを読む

水深ゼロメートルから(2024年製作の映画)

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登場人物の少なさや画面の変化のなさは、流石に高校演劇の映画化の制約と限界を感じる。ただ、校則やメイクを巡る生徒と教師の口論、あの双方のジレンマを高校生が書いたというのは凄い。高校生のリアルを語るにはあ>>続きを読む

悪は存在しない(2023年製作の映画)

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説明会のシーンを見て、都会vs田舎のような、安易な相対主義的な物語になってしまうのではと思ったが、完全に杞憂だった。映画で描かれる行為は「悪ではない」だけで、善行とも正義とも価値判断されてない。ただ悪>>続きを読む

アイアンクロー(2023年製作の映画)

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もっと苛烈で強権的な父親としてのホルト・マッキャラニーを見たかったし、そう作れたと思う。あくまでドラマとして考えた場合、息子の誰かがフリッツを殺すべき。だが、現実ではそうなってない。それが家族であり呪>>続きを読む

パスト ライブス/再会(2023年製作の映画)

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WKW『2046』のような映画をイメージしていたけれど、より現実的で、それ故に生々しい。ある程度歳を取ったら、誰しも似たような経験はあるし、忘れられない人はいるのでは。再会と再度の別れ、その対照的な2>>続きを読む

オッペンハイマー(2023年製作の映画)

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結果的に、日本での公開に時間が掛かったのは良かったと思う。事前の地ならし無しに公開したら、とんでもない反発が起こった気がする。それこそオッペンハイマーが戦後に予期せぬ方向から刺されたように。

チェー
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ゴールド・ボーイ(2023年製作の映画)

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評判から岡田将生劇場なのかと思ったらそうでもなく、どちらかと言えば羽村仁成劇場だった。ほぼ全ての展開が想像の域を越えるものでなく、エンディングに流れる倖田來未(何で?)とタイトルの謎の毛筆が気になって>>続きを読む

白鍵と黒鍵の間に(2023年製作の映画)

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Slowlyでのセッション等はまるでアルトマンの群像劇のよう、と思っていたら、池松壮亮のインタビュー読んでやはりと納得。過去と現在の混線の結果生まれるスラップスティックな不条理劇から舞台はあの「狭間」>>続きを読む

BLUE GIANT(2023年製作の映画)

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3DCGの場面とそれ以外でアニメーションの動きに差がありすぎるのが難点。全く違う映画的文法が同じ映画の中で衝突してる感じ。ただ家で配信で見た時ほどの違和感はなく、石若駿のドラムは劇場で聞くと最高だ。

瞳をとじて(2023年製作の映画)

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彼は人生が映画になったのか、それとも映画を人生にしたのか。失った時間、いなくなった人、思い起こされない記憶、寂れた砂浜、見向きもされない記憶媒体としてのフィルム。映画の向こうの、更にその向こうから迫っ>>続きを読む

子連れ狼 三途の川の乳母車(1972年製作の映画)

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冒頭の街道でのスローモーションとか終盤の砂丘とか、マカロニを意識してるのだろうか。三途の川の乳母車ってどういう意味かと思ったら…なるほど結構直球だ。

子連れ狼 子を貸し腕貸しつかまつる(1972年製作の映画)

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乳母車、結構な便利ツールで笑った。若山富三郎の殺陣がお見事過ぎる。

アメリカン・フィクション(2023年製作の映画)

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これぞ"不適切にもほどがある!"と表現すべきなのだろうか。著作の荒唐無稽な出版劇の裏で、主人公達が送る「人生」が生々しく見えるが、彼らへの視線もバイアスが入ってないと言い切れないのが、この映画の語り口>>続きを読む

落下の解剖学(2023年製作の映画)

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経験や事実とされるものの不確かさを、家族の1人でありながらも視覚を奪われたダニエルを通して追体験させているのだろうか。子供は大人や親の事をよく見ていると、実体験から知っている。だからこそ苦痛に満ちた時>>続きを読む

ノック 終末の訪問者(2023年製作の映画)

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何せシャマランなので、どこかでひっくり返るか、とんでもない角度から刺されると思っていたら、そのまま終わった(原作があると知り納得)。居なくなってしまった人を忘れまいとするラストシーンはしみじみ良かった>>続きを読む

Shall we ダンス?(1996年製作の映画)

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役所広司は感情を爆発させるより、内に秘めた(しかし完全に隠せてはいない)役柄が抜群に似合う。エリートである舞がダンスフロアを(物理的にも)見下すところから、自分の意思でパートナーを選び踊るまで、って書>>続きを読む

ハムレット・ゴーズ・ビジネス(1987年製作の映画)

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シェイクスピアの翻案であるけど重くはならず、しかし軽くもなく。今まで観てきたカウリスマキ作品の中では最も幻想的で、参照元があれば知りたい。カティ・オウティネンのバスタブでの自殺シーン、絶品。

バービー(2023年製作の映画)

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冒頭で弁護士バービーが「言論の自由」を述べるシーン、パレスチナで行われている虐殺を黙殺するハリウッドを見てしまうと極めてグロテスク。もういっそのことバービーランドに『ファイト・クラブ』のプロジェクト・>>続きを読む

劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦(2024年製作の映画)

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プレーが頻繁に止まるバレーという競技、止まれないフォーマットである映画には不向きでは、という感想。だからこそ烏野vs音駒というよりは、孤爪研磨というキャラにスポットを当てた映画になったのかな。ただスク>>続きを読む

夜明けのすべて(2024年製作の映画)

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山添が1歩踏み出す瞬間、陽に照らされながら街を駆けるシーンは、16ミリフィルムならではの美しさ。もうそこで映画としては終わっても良いくらいだと思ったが、その後の藤沢と山添が共作した移動式プラネタリウム>>続きを読む

ストップ・メイキング・センス 4Kレストア(1984年製作の映画)

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初めて劇場で観たのが2005~2006年辺り、昔すぎて記憶が定かでない…。しかしこの映画が4Kレストア、IMAXで観れるとは。初めて観た時の記憶や感情、感傷を想い出しつつ、レストアされた映像のクリアさ>>続きを読む

ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)

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ドラマ部分の小っ恥ずかしさは日本語が分かれば殆どの人が感じるとは思うんだけど、字幕だと少しマイルドになるのだろうか(『ドライブ・マイ・カー』は字幕が素晴らしかったと聞く)。コテコテの人情ドラマさえ切り>>続きを読む

白い花びら(1998年製作の映画)

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童話のような物語から、最終的にはアンジェイ・ワイダの『灰とダイヤモンド』を思わせるような破滅的なエンディングへ。

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)

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渋谷のトイレじゃなかったらお金が出なかったのかな、という複雑な気持ち。それでもヴェンダースがスタンダードで撮ってみせた東京は、実態がどうであれ、とても美しく見える。Nina SimoneのFeelin>>続きを読む

カラオケ行こ!(2024年製作の映画)

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登場人物の関係性やセクシャリティをおそらく敢えてはっきり描いてないのが心地いい。あのくらい別に普通だよ、と言われているよう。誰も居なくなった南銀座を彷徨い、紅の和訳(※自分でも何を書いてるのか不明)を>>続きを読む

レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ(1989年製作の映画)

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Boxセット購入にて再見。大体の場所で「二度と来るな」と言われるレニングラード・カウボーイズ。ニューオリンズでの葬列→逮捕→勾留→釈放の流れが素晴らし過ぎる。カントリーミュージックの歌詞に「集団農場」>>続きを読む

枯れ葉(2023年製作の映画)

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地べたを這いつくばるような生活でも人間としての尊厳を忘れないような、少し遠くの地で起こっている殺戮に少なからぬ怒りを感じられるような、高潔な人間に私もなりたい。別にリッチな生活でなくても、映画と音楽と>>続きを読む

コントラクト・キラー(1990年製作の映画)

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カウリスマキの厭世的な視点は大好きなんだけど、この作品はイマイチ乗り切れず、それが何故なのかが自分でもよく分からない。一種のサスペンス映画として、ヒッチコックへの目配せがあちこちに(舞台がイギリスだか>>続きを読む

ほかげ(2023年製作の映画)

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戦争を生き延びた大人が「人ではあるがどこか人ではない」という中、あの子供だけが真っ直ぐ直向きに、誰かのために生き、働いている。ここには間違いなく未来に向けられた希望がある。しかし塚本晋也ですら、ここま>>続きを読む