コハクさんの映画レビュー・感想・評価

コハク

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西鶴一代女(1952年製作の映画)

4.7

シナリオやメッセージ性といった観点でこれより勝る溝口作品は色々あると思うが(近松物語、山椒大夫…)映像作品としてのカメラワークの卓越さではひょっとするとこの西鶴一代女が至高なのではないかと思う。
・島
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明日に向って撃て!(1969年製作の映画)

4.3

独特のメランコリーがまさにアメリカン・ニューシネマである。特にボリビアの警察から逃げるシーンの撮り方と音楽が最高(あとでサウンドトラックを探してしまったほど)。やや細かいがニューヨーク滞在を静止画風に>>続きを読む

アメリ(2001年製作の映画)

3.6

“La vie n’est que l’interminable répétition d’une représentation qui n’aura jamais lieu. ”「人生は果てしなく書>>続きを読む

裁かるゝジャンヌ(1928年製作の映画)

4.3

1928年公開の無声映画だが、息を飲むような映像表現である。異常なほどまでの顔のクローズアップ、ローアングルの多用による三次元感(いくつかの場面ではローアングルの仰角が天頂を超えて逆立ちするような映像>>続きを読む

東京物語(1953年製作の映画)

5.0

何度も繰り返し観た映画、それも既に洋の東西を問わずありとあらゆる賛辞が捧げられてきた映画をレビューするのは難しい。その上であえて言うならば、この映画はゲマインシャフト(地縁血縁などの共同体的関係)とゲ>>続きを読む

永遠に僕のもの(2018年製作の映画)

3.4

野放図な大胆さと淡い繊細さが、奇妙に結びついた青春映画だった。

「理解する」というのは難しい言葉だと思う。犯罪者を理解すると言うとどこか同情とか共感のニュアンスが混ざってしまう。たとえそれが限りなく
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タレンタイム〜優しい歌(2009年製作の映画)

4.8

映画でこんなに泣いたのいつぶりだろう…ってくらい泣いてしまった。そして何故自分は泣いたのかと考え込んでしまった。

体育館に少しずつ明かりが灯っていく冒頭のカット。ここでタレンタイムが行われるとは思え
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荒野にて(2017年製作の映画)

3.4

ベタといえばベタなんだけど、どこか心に残るロードムービー。家族や馬との信頼・愛情に満ちた世界から「荒野」へと追いやられ、競争と暴力にあふれた実社会を苦しみなら学ぶ少年。そして自らも人を傷つけ得る存在た>>続きを読む

存在のない子供たち(2018年製作の映画)

3.8

身分証を持たずに生まれた「存在のない子供たち」の惨状をドキュメンタリータッチで描いた作品。正確な歳も誕生日も分からないこども・ゼインの目、表情、言葉の力がとにかく圧巻だった。
レバノン映画を観るのは『
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生きる(1952年製作の映画)

4.4

良い映画だと思う。映画館で観られて良かった(客席でさめざめと泣いてしまった)。

無意味な忙しさの中で「ただ時間を潰しているだけで死んだも同然」だった市役所職員・渡辺は、ある日突然余命いくばくもないこ
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万引き家族(2018年製作の映画)

4.5

今更ながら、前観たときレビューしていなかったので。早稲田松竹で再鑑賞。

映像としての卓越性。家のシーンがノスタルジックに映るのは、やはりローポジションのカメラワークが「ちゃぶだい」の視線の高さだから
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ビール・ストリートの恋人たち(2018年製作の映画)

3.0

とにかく衣装が素敵だった。スタイルが良いのもあるけどみんな服の着こなしが素晴らしい。特に主人公の衣装の色彩に惚れ惚れ。
更に音楽が良いのと、それもあってベッドシーンの情感が異常に良い。
他に映像として
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軽蔑(1963年製作の映画)

4.4

心の底から驚いた。初めて見たときはそもそもブリジット・バルドーが何故ここまでネチネチ怒るのかが分からず、夫婦喧嘩のシーンがつまらなすぎて寝てしまったのだが、今回2回目を見たら心臓を掴まれたかのようにあ>>続きを読む

いとこ同志(1959年製作の映画)

3.7

ヌーヴェルヴァーグ草創期の記念碑的作品の一つに挙げられることもあり、確かに面白い映像表現が散見される。
例えば冒頭、二人で車に乗り込んでパリを見物するシーン。映像のつなぎ方が面白くて、初めての大都会に
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エディット・ピアフ愛の讃歌(2007年製作の映画)

4.0

シャンソンの女王エディット・ピアフの人生を描く。伝記ものの映画で、しかも時間軸を行ったり来たりするタイプの映画で、ここまでの秀作が生み出せたのはすごい。
それはやっぱり、ピアフの有名な歌を作中で網羅的
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善き人のためのソナタ(2006年製作の映画)

4.5

このレビューはネタバレを含みます

人はなぜ「善き人」たらんとするのか。

Soll ich es als Geschenk verpacken?
(プレゼント用ですか?)
Nein, es ist für mich.
(いえ、これは私
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イメージの本(2018年製作の映画)

-

上映初日に観てきた。ゴダールらしい極めて実験的な映画で理解は難しい。しかし私なりに整理するならば、《制度化された言説、硬直化した叙述、そうした言語(ラング)を越えたところに芸術という一つの言語行為(ラ>>続きを読む

ジプシーのとき(1989年製作の映画)

4.8

いや、これはすごい映画だった。
カメラはまずジプシー(ロマ)の人々の日常や祭礼の様子を追ってゆく。それが最初はまるで文化人類学のフィールドワークか何かのように——つまり観察者たる我々にとって圧倒的な「
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ビューティフル・ボーイ(2018年製作の映画)

3.0

時間軸が行ったり来たりする前半のパッチワークはあまり成功している気がしないが、ティモシー・シャラメの起伏ある演技でどうにか成り立っている。
『君の名前で』のラストの長回しでも思ったが、やはり彼は感情の
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ベルリン・天使の詩(1987年製作の映画)

5.0

鋭いリアリズムを見せつつも確かな優しさに満ちた、人間存在の全てに向けられた至高の賛歌である。

カメラは苦悶する人の姿を次々に捉えてゆく。子と分かり合えない親、親に歯向かう子、すれ違う恋人、自死を選ぶ
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マックイーン:モードの反逆児(2018年製作の映画)

3.7

「ファッションは夢想じゃない、現実だ」

ファッション界の天才を、下積みから最期(自殺)まで追いかけたドキュメンタリー的作品。伝記映画は一般に過度の物語性でデフォルメされやすい。しかしこれほどの異端児
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暗黒への転落(1949年製作の映画)

3.9

ニコラス・レイ作品もこれで4本目の鑑賞。法廷論争という形式をとっているものの、純然たる法廷モノとして観ると面白くない。検察もボギー演じる弁護士も時に饒舌だが、決して論理の組み立て方であっと言わせるタイ>>続きを読む

昼顔(1967年製作の映画)

4.5

カトリーヌ・ドヌーヴ演じるセヴリーヌは、ハンサムな医師(ジャン・ソレル)を夫に持ち、裕福で幸せな夫婦関係を築いていた。しかし何一つ欠けていない幸福な生活の中、セヴリーヌは夜な夜な淫靡でマゾヒスティック>>続きを読む

エヴァの匂い(1962年製作の映画)

3.5

19/03/29
映画館(名画座)

悪女との関係を通して、主人公の男の虚栄と暗部がどんどん剥がれ落ちていくのが面白い。悪女というフィルターを通じて、男の化けの皮が剥がれていく過程にアイロニカルな面白
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ダンケルク(1964年製作の映画)

3.8

まったく偶発的な行動の選択が結果的に生死を分けたり、なぜこんなときに(生を全うして然るべきときに)死を迎えてしまったりする戦争の不条理。
地理的にも絶体絶命の包囲網の中、条理の無い世界で何を信じてどう
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裏窓(1954年製作の映画)

4.5

前半がやや単調にも思えるし、セットが少し粗雑に見えるのも確かだが、それでもやはり今見ても色褪せない。後半の緊張感が特にすごい。裏窓から隣人らを鳥瞰できるある意味「神の視点」をもつ主人公、犯人との距離の>>続きを読む

突然炎のごとく(1961年製作の映画)

4.3

このレビューはネタバレを含みます

19/03/27
映画館(名画座)

愛を、「相手を愛し愛されている」という感覚が絶頂を迎える地点でしか感じられない女。ジュール(そしてパリにいるジムの恋人も)は無私の献身・寛容という形で愛を示すが、
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恋のエチュード(1971年製作の映画)

3.3

話の筋自体は面白くなるポテンシャルがあるのに、暗転があまりにあまりに多いこと、ナレーションが煩わしいことで映画のリズムが弛緩している印象があった。
フランス人が持ち込んできた恋の香りに触れ、対照的な反
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ラ・ラ・ランド(2016年製作の映画)

3.5

まずは映像美およびミュージカルというジャンルを”復活”させた点に脱帽。話の筋は月並みといえば月並み、叙情的なメロドラマに過ぎないと言えばそうなのだが、運命の歯車が合わずに別れてしまった人、あるいは自身>>続きを読む

山猫(1963年製作の映画)

5.0

19/03/19
恵比寿・東京都写真美術館

19世紀後半、統一国家建設期のイタリア。財産と教養の名望家支配からクライエンタリズムへと政治的組織原理が変わるにあたり、家主が自身の役目が終わったことを的
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オーソン・ウェルズの オセロ(1952年製作の映画)

4.8

鑑賞日:19/02/25
場所:映画館(名画座)
これはすごい。シェイクスピアの戯曲からそんなに変わっていないのに演出がとにかくすごい。冒頭の葬列のシーンと、終盤の光と陰影の使い方の妙は、カラー映画の
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フォレスト・ガンプ/一期一会(1994年製作の映画)

4.3

資本主義のもとでの正統な競争からあぶれたフォレストの生き様を描くことで、戦後の繁栄の中でアメリカ社会が忘れてしまったものを描く作品。
単純なエスタブリッシュメント批判ではなく、カウンターカルチャー(ベ
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顔たち、ところどころ(2017年製作の映画)

4.0

19/02/13
映画館(名画座)

芸術によって人の生き様が認知・活写され、当人はある種の承認を得て幸福な面持ちを見せる。作品の中で工場従業員が言っていた「芸術の持つ力」の可能性を、この映画はフルス
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