河さんの映画レビュー・感想・評価 - 3ページ目

愛と怒り(1969年製作の映画)

4.6

実際どうなのかわからないけど、おそらく五月革命の終わりについてのオムニバスなんだろうと思う。マルコ・ベロッキオが直接的に五月革命渦中について、ゴダールの短編が五月革命もしくは愛の終わる瞬間について、ベ>>続きを読む

カンタベリー物語(1972年製作の映画)

4.0

ジェフリー・チョーサー『カンタベリー物語』をベースとした映画で、『デカメロン』に続く生の三部作二作目。

イギリス、カンタベリー大聖堂へ向かう巡礼旅行、旅行を楽しむために参加者達が語った話を、そこに居
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デカメロン(1970年製作の映画)

4.0

ボッカチオ『デカメロン』を下敷きにした生の三部作一作目。

時代は原作と変わらず14世紀のまま、舞台はナポリに変更されている。ナポリは『愛の集会』で描かれたように、貧困層が多くを占めイタリア・カトリッ
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ロゴパグ(1963年製作の映画)

4.4

世界の終わりについてのオムニバス映画。物、機械として非人間化されていく人々という主題で共通し、扱われるテーマは精神分析、労働、核兵器、消費。ゴダールとグレゴッティの作品がシンプルで一つの問題意識に絞ら>>続きを読む

イタリア式奇想曲(1968年製作の映画)

3.6

原題は「わがままなイタリア資質」みたいな意味になるんだろうか。工業化が進み、イギリスを経由してアメリカ文化が若者を中心に受容された当時のイタリア社会についてのオムニバス。パゾリーニの短編がかなり真っ直>>続きを読む

華やかな魔女たち(1967年製作の映画)

4.4

中編の間に短編を挟み込んだ5話オムニバス映画。全ての作品でシルヴァーナ・マンガーノが魔女として現れるが、魔女をどう解釈するかは作品によって違っている。5話全部面白く、特に短編二つの速度と密度が凄い。基>>続きを読む

物語る私たち(2012年製作の映画)

4.2

物語の渦中にある人々は物語ることができない、後になって振り返ることで物語は生まれる、というナレーションによって始まる。これは、故人であるサラ・ポーリーの母親の周囲の人々が、死後に自分との関係性の元物語>>続きを読む

愛の集会(1964年製作の映画)

4.6

この映画が公開された1965年時点、イタリアでは離婚が法的に認められておらず(制約の元認められるのが1970年)、1958年のメルリン法によって売春婦に対する搾取が犯罪になり、娼館が廃止されている。>>続きを読む

大いなる運動(2021年製作の映画)

3.8

仕事を見つけるため、鉱山労働者の失業デモと共に7日間歩き続けラパスに到着したエルダー達。しかし、エルダーは鉱山で働いていた時に粉塵を大量に吸い込んでいたのが原因か、高度の高いラパスの気候、気圧により肺>>続きを読む

書かれた顔(1995年製作の映画)

4.4

坂東玉三郎が歌舞伎の舞台裏へと入っていく、その舞台で演じている人物もまた玉三郎である。ここから舞台を終えた玉三郎の白塗りが落とされるまで、この映画の冒頭は溝口健二の残菊物語を模したものとなっている。そ>>続きを読む

7月の物語(2017年製作の映画)

4.6

特に2部、はっちゃめちゃに良かった 2017年の時点で見ておきかった気持ちはある

https://filmarks.com/movies/89393/reviews/141009364

続き

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みんなのヴァカンス(2020年製作の映画)

3.6

微妙だった... 無垢で寛容な童貞、女を奪う男、仲良さそうに見えて男絡みで反目する女性2人組、この監督の映画に出てくる登場人物、大体パターン同じで捉え方も一面的な印象。で、童貞はその寛容さによって報わ>>続きを読む

NOPE/ノープ(2022年製作の映画)

4.4

引くほど面白かった なんも考えずにIMAXで見たけどDUNEとかトップガン並みのIMAX映画だった

凋落した過去のハリウッド(西部劇)にはスペクタクルにさせられ、挙句に映画史から名前を消された人々だ
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グルーモフの日記(1923年製作の映画)

-

エイゼンシュタインは演劇からキャリアをスタートしていて、自身が参加していた『Enough Stupidity in Every Wise Man』という演劇の一部として放映されていたものらしい。この短>>続きを読む

太陽の夢(2016年製作の映画)

5.0

短編が組み合わされたような『天使』と違い、全体として連続的に展開する映画で、『天使』のラストの音楽と一体化した発光する画面のあの陶酔的な感覚が60分近くずっと持続する。

カール・TH・ドライヤーの『
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掟によって(1926年製作の映画)

4.8

ゴールドラッシュによって大陸の果てのような海に囲まれた場所に辿り着き、定住した5人。そのうちの1人はアイルランド人であり召使い、労働者として、他の4人の住む古屋とは離れたテントで犬と共に暮らしている。>>続きを読む

死の光線(1925年製作の映画)

4.2

最初と最後、合計50分のフィルムが失われている。おそらく失われたほとんどが最初のものなんだろうと思う。映画の後半でおそらく最初に描かれていたストーリーの続きが入り込んできていて、その辺は何の話か全くわ>>続きを読む

ボリシェヴィキの国におけるウェスト氏の異常な冒険(1924年製作の映画)

4.0

プロテスタントであるキリスト教青年会のウェスト氏と、その召使いであるカウボーイというアメリカを象徴するような2人がロシアへと旅をする。2人はウェスト氏という名前の通り西側諸国を代表していて、2人に吹き>>続きを読む

わたしは最悪。(2021年製作の映画)

4.2

主人公は序章で医学から心理学に変え、そこから本屋でアルバイトしながら写真家を志すようになり、終章では職業写真家としてのキャリアを築き始めている。1人目の恋人であるアクセルとの出会いを除けば、序章と終章>>続きを読む

WANDA/ワンダ(1970年製作の映画)

4.0

状況に対して何もできず流されるしかない、それに対して諦めていて何の感情も抱いていない、周囲の人間たちから諦めている主人公が映画的な出来事に巻き込まれるようになる。そこで関係性や自身への肯定を得たことに>>続きを読む

リコリス・ピザ(2021年製作の映画)

4.8

主人公を追いかけつつも誰を映せばいいのかわかってないように左右に揺れる冒頭のカメラが、段々と左右へ直線的に駆け抜けていく2人を捉えるようになる。

広告が主軸としておかれている。『エルヴィス』ではサー
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エルヴィス(2022年製作の映画)

2.8

このレビューはネタバレを含みます

なんか変な映画だった。

映画全体のナレーターがエルヴィスプレスリーのマネージャーとなっていて、そのマネージャーの病床での回想という形で映画が始まる。そのマネージャーはエルヴィスプレスリーを搾取してい
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イントロダクション(2020年製作の映画)

5.0

3パートに分かれた映画で、自分のことを小さい頃から知っていて自分のことが好きだろう看護師に対する演技の抱擁、そしてドイツでの彼女への本当の抱擁、そして別れた彼女への夢の中での抱擁というパートごとに存在>>続きを読む

あなたの顔の前に(2020年製作の映画)

4.4

この監督の映画初めて見た。1時間半の映画の一つの理想系のような語り口。

主人公は17歳のとき、自殺しようとする直前に目の前に広がる世界が全て美しいものに見えるという宗教的な経験をしたことから、自分の
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山猫リュシュカ(1921年製作の映画)

4.2

演出の連鎖的な気持ちよさによってラストまで連れていかれるアトラクションのような感覚はこの監督の同じ時期の他のコメディ映画と共通している。

特に結婚式に向けて祭りのように盛り上がる城に山賊達が侵入する
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寵姫ズムルン(1920年製作の映画)

3.6

ハーレムや召使い、宦官を抱える族長とその息子がおり、ハーレムの中で特にその貴族に気に入られているのがタイトルであるズムルン。ズムルンは旅商人に恋をしている。それに加えて旅芸人達がおり、その主役であるダ>>続きを読む

田舎ロメオとジュリエット(1920年製作の映画)

4.2

演出、出来事の気持ち良い連鎖によって強引にハッピーエンドに連れていかれる映画。この時期のルビッチはこういう映画いくらでも作れたんだろうなと思う。同じ時期のこの監督の映画を見ていれば見る必要はないような>>続きを読む

牡蠣の王女(1919年製作の映画)

4.6

冒頭で「グロテスクコメディ」と言われるように、召使いを除いた登場人物全員が欲望にのみ忠実に動く狂騒的な映画。

主軸となるのは牡蠣によって資本を成したアメリカの富豪の家系であり、その娘含めて生活は全て
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白黒姉妹(1920年製作の映画)

4.6

バーを切り盛りする2人の姉妹がいて、男に人気の妹とは真逆に姉は暴力的で怖くて男たちに避けられている。そこに2人組の男が現れ、妹と片方の男が恋に落ちて結婚しようとする。姉妹の父から姉より妹が結婚するのは>>続きを読む

花嫁人形(1919年製作の映画)

4.6

映画における神、支配者である監督が舞台を組み立ててそこに主人公が現れるという冒頭のメタ構造、平面感を持ったセットなど当時のドイツ表現主義映画と共通する部分が多い。

ただ、そのセットは段ボールのような
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呪の眼(1918年製作の映画)

3.2

エジプトに旅行に出た画家が、生きた目をしたミイラが存在しそれを見た人は気が狂うという話を聞く。実際はミイラのある墓の中に女性が幽閉されていて、生きた目はその女性のもの。画家は女性を助け出し、ヨーロッパ>>続きを読む

ピカデリィ(1929年製作の映画)

4.2

カメラ移動や人物の移動によって作り出される運動によってリズムが作り出され、その運動がバトンパスされるようにショットが繋がれる。そのため、場面が変わってもショット間に断絶が生まれず、ひたすら流れるように>>続きを読む

ヴァリエテ(1925年製作の映画)

3.8

神に見放されたように幸福からずるずると落とされていくエミール・ヤニングスの役柄含めてムルナウの『最後の人』以降のドイツ映画という感覚で、映像的な快楽度が非常に高い。

タイトルの通り曲芸団、その中でも
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笑う男(1928年製作の映画)

4.6

こういう映画割と苦手だったけど、この映画は演出や演技もあってかなり感動した。ホラー映画のように見せたパッケージは最悪で『エレファント・マン』とかと近い映画。

独裁的な王に対して反乱を企てた王族が処刑
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