河さんの映画レビュー・感想・評価 - 5ページ目

モンソーのパン屋の女の子(1963年製作の映画)

4.0

いつもすれ違う女性への執着、急にいなくなったその女性を探すために新しくできるルーティン、それによって見つかったパン屋の女の子への執着。そして同じ日にその二人への執着が叶えられることによって、主人公はど>>続きを読む

ベレニス(1954年製作の映画)

3.8

変化のない屋敷に壮年期まで住み続けたことで、夢想することによってその屋敷から幻想へと逃避する主人公。その逃避は、屋敷の何かについて偏執的に分析(瞑想)することによって行われる。

その変化のない屋敷に
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親密さ(2012年製作の映画)

4.2

このレビューはネタバレを含みます

一部では『親密さ』という演劇に向けた準備の過程が描かれ、二部ではそれが実際に上演される。

言葉は想像力、思いを運ぶ電車であるとして、降りるべき言葉で想像力が降りて乗るべき言葉に乗ること、渡されるべき
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欲望(1966年製作の映画)

4.6

暗い雰囲気の中管理された労働者のような風貌の主人公が車を盗み走り出す。橋の下を潜るとその雰囲気は消えて主人公が売れっ子の写真家へと変貌している。そして、そのスタジオに入ると鏡に映ったモデルが現れ、カメ>>続きを読む

太陽はひとりぼっち(1962年製作の映画)

5.0

これも凄まじい映画だった。

『情事』での二人の女性と同様、結婚したいかどうか、愛しているかどうかなど、なにもわからなくなってしまう、主人公が自身の複雑性に気づくことで関係性を終わらせるところから始ま
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気狂いピエロ 2Kレストア版(1965年製作の映画)

4.2

アメリカ的なもの、広告に溢れた消費社会で男は統合的に物事を捉えることができなくなっている(目は見えていて耳は聴こえているのに全てがバラバラ)。求めるのは人生であり物語である。そこに同じように写真や事実>>続きを読む

(1961年製作の映画)

4.8

これもめっちゃくちゃに良い。『情事』がかなり直接的で激しい波のある映画だとすれば、この作品は同じ構造、同じテーマでありつつも静かで常に緊張感のある映画だと感じた。一気に洗練された印象。

危うく走る車
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真昼の不思議な物体(2000年製作の映画)

4.0

相手を失った男についてのラジオドラマが流れる中、カメラは別世界に入り込むように都会から自然へと移動する車からの景色を映す。そしてカメラが辿り着いた先で女性が父にバス代のために売られた経験が話される。そ>>続きを読む

情事(1960年製作の映画)

5.0

狂ったくらい良い映画だった。

父の家の周囲は開発されていき、父は仕事を辞めていてその辞めた自分に適合しようとしている。父が気に入っていると思っていた水平帽をアンナはもう被らなくなっている。冒頭に示さ
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ルイジアナ物語(1948年製作の映画)

3.8

狩りをすることが責任として課される者を大人として『モアナ』『カラナグ』では自然と共生する生活が失われていくことを少年期から大人への成長と重ね合わせて描き、『極北のナヌーク』『アラン』では大人達が狩人と>>続きを読む

カラナグ(1937年製作の映画)

3.6

イギリス植民地時代のインドで撮られた映画で、映画会社もイギリス。そのインドでハンターになりたい少年がいて、代々受け継がれてきた象と生活を共にしている。イギリス人に率いられた象狩りに大人ばかりの中一人子>>続きを読む

アネット(2021年製作の映画)

3.8

演じることと笑わせることが対になる。演じることで観客の代わりに死ぬ妻と、観客を笑わせることで殺す夫。そしてその妻には自分の代わりに死んでもらうこと、夫には自分を殺すことを望む観客。しかしその夫が自分達>>続きを読む

ハッピーアワー(2015年製作の映画)

5.0

トンネルを抜けた先に広がる霧で見えない神戸の景色、それを展望台から眺める4人の姿から始まる。
ワークショップ、朗読会と4人の女性達に対して監督によってセッティングされたようなイベントが2つあり、ワーク
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MEMORIA メモリア(2021年製作の映画)

4.4

人類の起源を含めた数千年以上前からの記憶を吸収し保存してきた自然があり、それがトンネルによって掘り出される。その記憶を音として受信できるものとして主人公がいる。その発見、受信された記憶を復元するものと>>続きを読む

たぶん悪魔が(1977年製作の映画)

5.0

近代化による自然や人間への殺戮、その絶望のようなものを内在化したような登場人物達がいて、それによってより生存本能が高まり課題解決に向けて行動する男に対して、逆に無気力に向かう、何にもコミットメントでき>>続きを読む

ラルジャン(1983年製作の映画)

4.8

責任の所在のない不正の押し付けの連鎖。その責任を認めない、姿勢を変えないことでその不正の結果が大きくなる。そしてその結果は下である人が追うことになる。その上下は上流から下流へのお金の流れ、主従関係、階>>続きを読む

湖のランスロ(1974年製作の映画)

5.0

鎧の金属音、馬の足音や杭を打つ音、チェスの駒を打ち付けるように動かす音などの鈍い打音が反復される中に鳴り響く稲妻の槍であるランスロの槍の音、そして雷の音っていう二つの破裂音。明らかに声質でキャスティン>>続きを読む

王女メディア(1969年製作の映画)

3.6

ケンタウロスに育てられた王の血統の男がいて、その男が地球の裏側にある原始的で魔術的、神の宿ったような社会でその王女メディアと出会う。そして、メディアの住む社会とは真逆の、魔術の存在しない人間中心的なあ>>続きを読む

テオレマ 4Kスキャン版(1968年製作の映画)

3.8

欲望を抑圧して不文律的な秩序をそれぞれが守ることによって成立しているブルジョワ家庭があり、その家庭を荒地として神のような存在が現れ、その存在によってそれぞれの欲望が発露していく。神と接して欲望を自覚し>>続きを読む

アポロンの地獄(1967年製作の映画)

5.0

オイディプス王の神話を、不信仰であるが故に気付かずにいた巨大な闇に出会い、その闇が大きすぎるがゆえに世界から自分を閉ざす、自分の目を見えなくする話として立ち上げる。オイディプス王の行動が意思によるもの>>続きを読む

奇跡の丘(1964年製作の映画)

3.4

キリストの誕生から復活までをネオレアリズモ、ドキュメンタリー的な方法で撮った映画。セリフは聖マタイのゴスペルからそのまま取ってきているらしく、映像がドキュメンタリー的で淡白なこともあり、何か事象として>>続きを読む

マンマ・ローマ(1962年製作の映画)

4.0

おそらく戦争孤児であり娼婦として生きていくしかなかった母親が、自分の息子を自分とは違う階級へ抜け出させようとする。そのために、娼婦の仲間と協力して息子に上流階級向けのレストランの仕事を得させて、息子を>>続きを読む

アッカトーネ(1961年製作の映画)

4.0

ピンプとして自分の愛人を売春婦にすることで、自分は働かずに収入を得ている主人公がいる。主人公のような人々にとって働くとすれば重労働しかなく、労働する生活を選べばその労働に一生縛られて生きることになる。>>続きを読む

M(1931年製作の映画)

4.8

トーキーになった。よく考えたらサイレント映画はずっと音楽が鳴っているか全く音楽がないかだから、トーキーになってまず音の対比として無音を活用した映画を作るのは理にかなってるんだと思った。同時にカメラも軽>>続きを読む

スピオーネ(1928年製作の映画)

4.6

冒頭のはちゃめちゃなモンタージュで一気に掴まれた。ちょうど見たところだったウェス・アンダーソン『フレンチ・ディスパッチ』のバイクシーンの引用元だろうシーンがあった。
裏で悪を操作してる銀行のボスがいて
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メトロポリス(1927年製作の映画)

3.8

150分のバージョンを見た。
労働者を動力源にしながら動く機械を地下として、メトロポリスの上にはそれを築いた父やその子、博士が楽園として住んでいる。地下から労働者の子供を連れて現れたマリアに惹かれて、
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フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊(2021年製作の映画)

4.6

このレビューはネタバレを含みます

評価微妙だったから後回しにしてたけど、個人的にはそれ後悔するくらい好きな映画だった。
大枠は『グランドブダペストホテル』と同様に多様で理想郷的なコミュニティが失われてしまう話。各話はバックグラウンドや
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春原さんのうた(2021年製作の映画)

3.8

このレビューはネタバレを含みます

おそらく主人公が春原さんを亡くしていてその霊を見ている。それもあるのか、主人公が周囲の人に基本的に気を遣ったあたりさわりのない対応をするのもあるのか、主人公の周囲は主人公を気にしつつもかなり気を遣った>>続きを読む

ニーベルンゲン/ジークフリート(1924年製作の映画)

4.2

ドイツ人に捧ぐって宣言した後、誓いや名誉を重要視する忠誠心の高さをドイツ人の性質として、それによるドイツ人の家系での他民族を巻き込んだ身内同士の殺し合いを描いていく。その殺し合いのきっかけは虚勢であり>>続きを読む

ドクトル・マブゼ(1922年製作の映画)

3.8

4時間半のバージョンを見た。
人を催眠術で洗脳的に操ることができ、変装によって色んな人物になれる世界を操る見えない悪としてマブゼ博士がいる。マブゼ博士の行動原理は権力や金、女などあらゆる物への欲望で、
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死神の谷/死滅の谷(1921年製作の映画)

3.8

英語wikiによるとブニュエルはこの映画見て映画監督になろうと決めたらしく、『アルダルシアの犬』の首以外埋められた姿はここから来てるらしい。
恋人の死を受け入れられない女性がいて、神に遣わされていて、
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ウエスト・サイド・ストーリー(2021年製作の映画)

3.6

ゴダールの映画でよく闇を照らす光としてのモチーフとして映画(映写機)が使われるけど、それをそのままやったような映画で、過去の出来事に基づいた過去に作られた話、今はもうない街を今現在の話として光を当てて>>続きを読む

アワーミュージック(2004年製作の映画)

4.4

https://ja.m.wikipedia.org/wiki/サラエヴォ包囲

見終わった後サラエヴォ包囲のwikiを読んでいたら、サラエヴォ包囲の最初の犠牲者が反戦運動の行進をしていたスアダ・ディ
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ダムネーション 天罰(1988年製作の映画)

4.0

変化の兆しもなく、努力したところでそれが変化に繋がるわけでもない繰り返しの日々を孤独に過ごす主人公がいて、その現実から逃避するように幻想を見るようになる。それが冒頭の単調に動いていく石炭のリフトからの>>続きを読む

アウトサイダー(1981年製作の映画)

3.8

その場で自分に求められている役割としての行動を拒否し、自分含めた目の前の人間を優先する人として主人公がいる。その背景には演奏よりもお辞儀で拍手が起きるような演奏家としての過去、注射を強制してしまったこ>>続きを読む