建野友保さんの映画レビュー・感想・評価 - 2ページ目

建野友保

建野友保

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飢餓海峡(1965年製作の映画)

4.4

WOWOWでテレビ鑑賞。戦後の貧しい、ひもじい時代の記憶を濃厚に焼き付けた名作。三國連太郎、左幸子が抜群に良い。内田吐夢監督作品は初見だったが、とくに布団ごと絡み合うシーンは凄い演出だなあと唸った。昭>>続きを読む

生きる LIVING(2022年製作の映画)

4.0

第4回ベルリン国際映画祭でベルリン市政府特別賞を受賞した、黒沢明監督「生きる」(1952年作)のリメイク作。オリジナル作はテレビ放映でしか観ていませんが、当時ならではの大仰な芝居、聞き取りづらくなった>>続きを読む

ベネデッタ(2021年製作の映画)

4.4

かつて現人神が崩御したときに魂が降りてきた(お告げが与えられた)と言い、新興宗教の教祖になった人が何人かいる。それは一種の神話として確固たるエピソードとなり、たとえ科学的な証明はできなくとも、実際に起>>続きを読む

ブロンド(2022年製作の映画)

4.0

なかなか重たい長編だった。セックスシンボルと称されるスターが内側に抱える、葛藤の象徴と見ればいいのか。天国にいるノーマ・ジーンは「それほど捨てた人生でもなかったのよ」と言いそうではあるけれど。
役者さ
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ちひろさん(2023年製作の映画)

4.1

Netflixで鑑賞。全てを包み込む母性のような映画ですね。不登校学生にとってのフリースクールのような映画、実家から逃げ出して田舎のお爺ちゃん・お婆ちゃん家に遊びに行くような映画という印象も。
「今以
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エンパイア・オブ・ライト(2022年製作の映画)

4.5

予告編を見た限りではテーマがよく分かりませんでしたが、意外なドラマ展開に唸りました。サッチャー政権下の1981年という時代、人種差別、性差と父権、ハラスメント、心の病とケア。複数のテーマを扱いながらも>>続きを読む

エゴイスト(2023年製作の映画)

4.2

LGBTQを否定するつもりは全くないし、同性婚も認められて然るべきと考える立場だけど、男性同士の性愛シーンとなると、正直言ってあまり見たくないという心境があった。いわゆるBLものの映画やドラマも苦手だ>>続きを読む

バビロン(2021年製作の映画)

4.1

映像も音楽も破格の強さでした。ハリウッド映画初期の栄光を彩ったスター俳優、映画の世界に憧れを抱く青年、銀幕のスターをめざすイケイケの若い女性、そしてトーキー時代を迎えて活躍の場を広げる黒人青年トランペ>>続きを読む

茶飲友達(2022年製作の映画)

4.3

「高齢者の性」というタブーに挑む、という側面は確かにありますが、繋がりやすく離れやすい疑似家族と、離れたくても叶わない家族、その対比が巧妙な意欲作と感じました。
「自分の孤独を他人の孤独で埋め合わせて
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FALL/フォール(2022年製作の映画)

4.0

ホラー以上に怖くて心臓がバクバク。でも面白かった。カップルで手に汗を握りながら(実際に手を握りながら)観るのに良さそう。感想はこのくらいで。

よだかの片想い(2022年製作の映画)

4.0

主演の松井玲奈さん自身が原作(島本理生・作)に惚れ込んで、5年前から映画化を嘱望していたという作品。城定秀夫さんの脚本と安川有果さんの演出で味わい深い作品になっていますね。教授の台詞が印象的で、深夜の>>続きを読む

すべてうまくいきますように(2021年製作の映画)

4.4

尊厳死がもちろん主題ではあったでしょうが、それにも増して、半世紀を経てきた家族の歴史が絶妙なバランスで描かれている点が秀逸だと思いました。父と母の関係、父と母親方の家族との関係、父と長女、父と次女、長>>続きを読む

ピンク・クラウド(2021年製作の映画)

4.0

事実は映画より奇なり。2019年に製作されたSF作品とはいえ、すでに同等のロックダウンに近しい状況を経験してしまった立場からすると、詰めの甘い部分が散見されたり、もう一ひねり欲しかったという印象は否め>>続きを読む

イニシェリン島の精霊(2022年製作の映画)

4.1

「諍い」を微かな希望で終わらせた「スリー・ビルボード」と対をなす作品と感じました。良い意味で、期待通り、観客の期待を裏切る内容でしたね。まだ公開間もないので、このくらいの感想にとどめておきます。

ヒトラーのための虐殺会議(2022年製作の映画)

4.0

これは観ておくことに価値がある映画。ユダヤ人を絶滅させるための“効率的で人道的”な方法や手順が、軍部を中心に決められていく。おぞましい会話のやりとりはホラーのレベル。こういう歴史をキチンと残そうとする>>続きを読む

フラッグ・デイ 父を想う日(2021年製作の映画)

4.0

Flag Dayに生まれ、国中が自分の誕生日を祝ってくれているかのように思えた父は、それに値する功績を上げることに拘るが、何をやっても空回りで、やがて自分を偉大に見せかける嘘の常習者になっていく。そん>>続きを読む

ドリーム・ホース(2020年製作の映画)

4.0

意外性はないけど、肩の力を抜いて無条件に楽しめる映画。実話をもとにした作品とあってクレジットロールで実話の二人が登場するのは予想されたけど、まさか一緒に大団円の合唱とは。トム・ジョーンズもマニック・ス>>続きを読む

エコー・イン・ザ・キャニオン(2018年製作の映画)

4.1

ボブ・ディランの息子、ジェイコブ・ディランが案内役となって、60年代半ばのUS西海岸カリフォルニアの郊外、ローレル・キャニオンの地に生まれた音楽コミュニティを探っていくドキュメンタリー。
UK発のビー
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SHE SAID/シー・セッド その名を暴け(2022年製作の映画)

4.4

Metooというハッシュタグワードの軽やかさの背景にあった、あまりにも深い暗闇。二人の女性記者をヒーローに仕立てあげることに終始するのではなく、勇気を振り絞って証言をした人々、二人をサポートし続けた新>>続きを読む

柳川(2021年製作の映画)

4.1

とても美しくて、もの悲しくて、愛おしくて、センチメンタルな映画。この世界感はツボでした。会話のやりとりが軽妙で、そこに俳優さんの味付けが相性良く乗っかっている気がします。なかでも中野良子さんの成熟した>>続きを読む

MEN 同じ顔の男たち(2022年製作の映画)

4.2

暴力的で支配的なパートナー男性から逃れ、辿り着いた癒やしの場にも同様の男どもが群がってくるというホラー。救いの手を差し伸べようと近づいてくる男どもが揃いも揃って性悪で、一見、味方のように見える男が一番>>続きを読む

ケイコ 目を澄ませて(2022年製作の映画)

4.5

映画を鑑賞しながら、ずっと、音のない世界を想像していた。「ろうの世界」について、こんなに想像を掻き立てる映画は初めて。
自分の家族を含めて、なかなか通じ合えない健聴者との「対話」ばかりを重ねてきたケイ
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アザー・ミュージック(2019年製作の映画)

4.4

「作るよりも壊す方が簡単なんだな」。ジョシュだったか、クリスだったかの台詞は、閉店後の片付けで簡単に壊されていく棚のことを言った表現だったが、この伝説のレコード店を象徴するような言葉だったと思う。大手>>続きを読む

の方へ、流れる(2021年製作の映画)

4.0

「ふたつのシルエット」と併せて、シモキタ エキマエ シネマ K2で鑑賞(トーク付き)。親しい仲では曖昧な会話でも、見知らぬどうしなら明け透けな会話ができる、しかも狐と狸の化かし合いのような、虚実ない交>>続きを読む

あのこと(2021年製作の映画)

4.2

主人公の痛みがキリキリと伝わってくる作品。「妊娠したら終わり」と冷ややかな周囲と世間の眼に晒されるなかで、孤独な闘いが続き、徐々に悲壮感が漂ってくる。終盤の自宅トイレのシーンや「主婦になる病」という台>>続きを読む

ザリガニの鳴くところ(2022年製作の映画)

4.5

DV父親への激しい憎悪と怒り、家を捨て去った母や兄弟姉妹への思慕、世捨て人の変人扱いをしてきた村人への恨み、弁護士による陪審員の村人への熱弁、そしてペンダント。これらが最後の最後に絵合わせされる見事な>>続きを読む

スープとイデオロギー(2021年製作の映画)

4.1

「済州4・3事件」(Wikiでは「済州島四・三事件」)のことは恥ずかしながら初めて知りました。北朝鮮への忠誠と共に生きてきた日本生まれの母と、そんな母に反抗心を抱きつつも年老いていく母親への思慕は拭え>>続きを読む

42-50 火光(2022年製作の映画)

4.0

意外なめっけもの。脚本良し、役者良し。こういう作品と出会えると、とても嬉しくなります。
中年で結婚した主人公2人の夫婦は、同じく中年で初婚の小生たちと似た部分が一杯あって、思い入れを余儀なくされました
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ビー・ジーズ 栄光の軌跡(2020年製作の映画)

4.3

「サタデー・ナイト・フィーバー」から数年経った80年代初頭に、彼らの名前を急速に聞かなくなった理由がよく分かりました。ディスコミュージックを嫌悪する時代が台頭したことはよく覚えていますが、粗悪なディス>>続きを読む

ザ・メニュー(2022年製作の映画)

4.0

胡散臭い成金の美食家や批評家たちに「料理を作る喜び」を翻弄されてきたシェフによる、奇想天外な復讐ホラー劇。残酷さに身震いはするが、最後に提供される庶民料理で、全ての謎や背景が解き明かされる。すごい発想>>続きを読む

宮松と山下(2022年製作の映画)

4.0

過去を捨て、「誰でもない誰かになることでしか生きられない」「殺されることでしか生きられない」男の物語。静かな展開ですが、TVドラマなどとは違う、香川照之さんの抑えた演技が楽しめました。脇役陣も良いです>>続きを読む

ファイブ・デビルズ(2021年製作の映画)

4.0

正直、よく分からない箇所はいくつかありました。とくにラストカットで登場してきたのは誰?(その後、別の方の考察でなるほど、とは思った)というモヤモヤはあれど、鑑賞者に余白を埋めさせるところは個人的な好み>>続きを読む

リアム・ギャラガー ネブワース22(2022年製作の映画)

4.3

文句なしに楽しかった。観客を煽るのが巧いリードシンガー、フロントマンは一杯いるけど、ロックを歌わせてピカイチなのがリアム。いろいろ誤解もされてきたタイプですが、ずいぶん大人になったなあ、という感じがし>>続きを読む

ある男(2022年製作の映画)

4.2

赤ん坊は親を選べない。それは事実ですが、生き方は選ぶことができる。人間の「やり直す」力、「生まれ変わる」 力を信じて、これをていねいに描いた作品と感じました。途中で挿入される、生まれた境遇に関する散文>>続きを読む

あちらにいる鬼(2022年製作の映画)

4.5

現代的な倫理観からこの作品をこき下ろすのは簡単だが、死をもってしか終止符が打てないほどに、人を愛することができるなんて、なんと羨ましいことだろう。寂しい人はいても、不幸になる者はどこにもいなかった三角>>続きを読む

スペンサー ダイアナの決意(2021年製作の映画)

4.6

イギリス王室への関心はさほどなく、一連の興味本位な伝聞も遠い目で見ていましたが、彼女に寄り添う視点で描かれた3日間の寓話は、私に、あなたに、身近なテーマでもあると気づかされます。
自分の今日も明日も、
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