建野友保さんの映画レビュー・感想・評価 - 4ページ目

建野友保

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プロミシング・ヤング・ウーマン(2020年製作の映画)

4.2

感想が巧く書けない。男女で受け止め方も大きく違いそう。
性的暴力(ハッキリ言えば強姦)や、そこまではいかないにしてもセクシャルハラスメントや痴漢など、これまで「なかったこと」のように扱われてきたことが
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83歳のやさしいスパイ(2020年製作の映画)

4.1

探偵事務所に臨時で雇われ特養ホームに潜入した83歳の主人公が秀逸。バイタルチェックや身体介助はできないけれど、入所者の心に寄り添う姿勢は本職のケアカウンセリングそのもの。元はといえば、一人の入所者の観>>続きを読む

17歳の瞳に映る世界(2020年製作の映画)

4.2

望まない妊娠をした17歳の少女が、唯一の友人(従姉妹)と地元を離れてニューヨークに旅立ち、中絶手術を決行するまでの数日間のロードムービー。「燃ゆる女の肖像」「Swallow/スワロウ」など中絶の話題が>>続きを読む

Billie ビリー(2019年製作の映画)

4.2

ビリー・ホリデイと、ビリー・ホリデイの真実を取材し続けていた作家、リンダの足跡を辿った複層構造のドキュメンタリー。ビリーの真実とリンダの末路は藪の中ですが、その藪の深さこそがテーマと言えるのかもしれま>>続きを読む

ビリー・アイリッシュ 世界は少しぼやけている(2021年製作の映画)

4.5

途中からずっと泣いていました。

13歳から始まる巨大なサクセスストーリーに?
わずか17歳で音楽界の頂点を極めた才能の豊かさに?
家族のサポートのあまりの力強さに?
世界中を揺らした名曲の数々ができ
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痛くない死に方(2019年製作の映画)

4.3

下高井戸シネマにて。在宅医ならではの葛藤や達成感を医者の立場から垣間見ることができ、とても貴重な映画体験となりました。宇崎竜童さんと大谷直子さんが演じた夫婦がとても素敵で、とくに宇崎さんの芝居は最高で>>続きを読む

猿楽町で会いましょう(2019年製作の映画)

4.3

確かなものなんて、何一つなかった、あの時代。自分が何者になれるのか、その糸口すら掴めなかった、あの時代。そんな若者たちを待ち受けるように罠を仕掛ける、かつての若者たち。
騙したり、出し抜いたり、嘘をつ
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キャラクター(2021年製作の映画)

4.1

プロット段階で成功が約束された、ストーリー展開の妙味。理屈なしに楽しめるエンタメ系の邦画を久しぶりに堪能できた感じがします。詳細な感想はネタバレになりそうなので割愛しますが、Fukaseさんの中に潜ん>>続きを読む

名も無い日(2020年製作の映画)

4.1

肉親の死を受け入れ、死者を弔う。自分にはもっと何かサポートできたのではないか、こうなったのは自分のせいのではないかと自分に厳しく問いかける。その重みが十分に伝わる労作だと感じました。
役者さんが実力派
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ペトルーニャに祝福を(2019年製作の映画)

4.1

ジェンダー問題を扱う社会性を帯びた映画と見せかけて(いや、そういう部分もあるんですけどね)、実はもっとシンプルで根源的なテーマだった、というトリッキーな構造がとても面白かったです。TVレポーターの役ど>>続きを読む

逃げた女(2019年製作の映画)

4.0

素直に受け止めれば、「幸福な結婚生活から少し距離を置いてみた女性」の数日間の物語なんでしょうが、起承転結の「承」だけで綴った映画でもあり、「起」から「結」まで自由に物語の前後を継ぎ足しできるので、いや>>続きを読む

狂猿(2021年製作の映画)

4.0

デスマッチのカリスマ、葛西純選手の生き様を描いたドキュメンタリー映画。後楽園ホール2階からのダイブ、有刺鉄線への叩き付け、蛍光灯デスマッチ、火炎デスマッチ、さては刃物を使った切りつけと、過激さを増すデ>>続きを読む

いのちの停車場(2021年製作の映画)

4.0

「危機に瀕した命を救う」世界から、「命を全うする場面に寄り添う」世界へと転身した医師の物語。とても丁寧に辛抱強く作られた映画で、ああ、こういう作り方、かつては当たり前だったのになあ、と思わずにはいられ>>続きを読む

アメリカン・ユートピア(2020年製作の映画)

4.3

ブロードウェイの1000人足らずの小屋で2019年10月から2020年2月にかけて上演されたデヴィッド・バーン作のミュージカル「アメリカン・ユートピア」をスパイク・リー監督が活写した記録映画。
元トー
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アメイジング・グレイス アレサ・フランクリン(2018年製作の映画)

4.5

1972年1月、ロスの教会で2日間にわたって行われたアレサ・フランクリンのゴスペルステージを記録した映画。父親の導きにより教会でゴスペルを歌い、経歴を重ねてきた彼女にとっては、思うところあっての原点回>>続きを読む

茜色に焼かれる(2021年製作の映画)

4.0

力をもらえる作品。尾野真千子さん、片山友希さんが抜群に良い。時々は涙にむせぶことがありつつも、逆境をものともしない強い生き方。劇中に登場した情けない男どもの存在が、スパイスとして効いています。自由を生>>続きを読む

ファーザー(2020年製作の映画)

4.5

モノ取られ妄想、断片的な記憶の誤ったパズル合わせ…。痴呆性老人の「あるある」が登場してくるところは予想通りでしたが、物語の意外な顛末に衝撃を受けました。
甲斐甲斐しく世話を焼く娘に、自分の老親介護時代
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海辺の彼女たち(2020年製作の映画)

4.0

中国に代わって技能実習生の最大の供給国となっているらしい、ベトナムから来日した3人の技能実習生の物語。技能実習生の全てが悲惨な目に遭っているとは必ずしも思いませんが、この映画で描かれたような事例は少な>>続きを読む

水を抱く女(2020年製作の映画)

4.0

ウンディーネ(オンディーヌ)の神話をベースに、どこか得体の知れない魔性性を纏った女性と男たちのラブストーリー。大人のビターなおとぎ話ですね。地味だけどスタイリッシュな描き方に好感を抱きました。何度も流>>続きを読む

クリシャ(2015年製作の映画)

4.0

アル中ばあさんのホラー映画。30年前なら、そんな感想しか浮かばなかったかもしれないけど、良くも悪くも齢を重ねてくると、そんな一言では片付けられない思いが湧いてきます。
クリシャは何度も執拗にカメラを凝
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フィールズ・グッド・マン(2020年製作の映画)

4.0

脱力系のキャラが、作者の意図しない意味づけを伴って広まっていく、その誕生から逸脱・暴走、そして生まれ変わりから収束へと至る過程をつぶさに追ったドキュメンタリー。
ネットとのつきあい方とか、勝ち組・負け
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ビバリウム(2019年製作の映画)

4.1

衣食住が足りながらも、不安やリスクと無縁ではいられない、現代人のナイトメア。誰しも一度は頭をよぎったことがある不安感、人生や家族、パートナーに対する皮肉な思い、社会に対する怒りや諦観などの破片が、地雷>>続きを読む

街の上で(2019年製作の映画)

4.2

新しいのに懐かしい。寂しいのに暖かい。誰もがどこかしら情けなくて、誰もがどこかしら愛おしい。収拾がつかなくなるくらい、いろんな感情が炙り出される魔法のランプような作品でした。今泉監督作品は3本しか観て>>続きを読む

アンモナイトの目覚め(2020年製作の映画)

4.0

太古の昔から眠りについていた化石の発掘に打ち込む女。一人の女性との出会いを通じて、自らの中に眠らせていた愛欲に火をともす。。
うまくレビューが書けませんが、心情変化が繊細に描かれた成人向け作品です。往
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BLUE/ブルー(2021年製作の映画)

4.0

特定のヒーロー物語として描かれがちなボクシングの世界には、数多の打ち砕かれた敗者の山がいて、ほんのちょっぴり脚光を浴びた者もいる。スポットライトとはほとんど無縁の若者たちの等身大の生き様を描いた当作品>>続きを読む

ノマドランド(2020年製作の映画)

4.3

ノマド(遊牧民)として暮らしている人々の点描から、現代アメリカが抱えている格差や貧困、故郷への思い、生き方に対する価値観などが浮き彫りになる、淡々とした作風。地味な印象は拭えませんでしたが、監督の視点>>続きを読む

サンドラの小さな家(2020年製作の映画)

4.0

DV夫から逃れようとする母親の苦悶が胸をうつ作品。住まいの再建はともあれ、助け合いの関係=「メハル(日本でいえば「もやい」のような互助精神か)」が構築されていくところが見どころ。アイルランド人の主演女>>続きを読む

裏アカ(2020年製作の映画)

4.0

公開初日に鑑賞。仕事のストレスから心にスキマを抱えた女性、あらゆる感情が持てずに生きてきた男性、そしてパーティの場に潜んでいた愉快犯。窮屈な現代が生み出した人間が、SNSという現代のツールで交差する物>>続きを読む

私をくいとめて(2020年製作の映画)

4.4

恋が始まるときのモゾモゾ感は男女共通。始まるのか始まらないかの微妙な会話も「あるある」。お一人様の「これでいい」「やっぱり寂しい」感も分かりすぎて、なんかもう堪らない作品ですね。総菜店の前のシーン、ホ>>続きを読む

カポネ(2020年製作の映画)

4.2

脚本・監督とも同一人物なので、まだ30代の監督ながら、相当な思い入れがある作品なのでしょう。僕は、在宅認知症高齢者の介護にまつわる家族の悲嘆、周囲の思惑、そして何よりも本人の苦悩を、「アル・カポネの知>>続きを読む

どこへ出しても恥かしい人(2019年製作の映画)

4.1

競輪の合間に酒を飲み、競輪の合間に曲を作り、競輪の合間に画を描き、競輪の合間にライブをする友川カズキの、素に近い日常を模写したドキュメンタリー映画。
「生きてるって言ってみろ」でセンセーショナルなデビ
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私は確信する(2018年製作の映画)

4.2

事前に人物相関図を閲覧しておいても、なお頭のなかが混乱して消化不良の部分が正直ありました。でもそれって結局、ワイドショーと同じように未解決事件の真犯人探しをムフムフ楽しんでるだけの第三者だったからなん>>続きを読む

あのこは貴族(2021年製作の映画)

4.3

男性に比べて女性の側に格差や断絶が多い、という認識は正直なところ薄いのですが、立場を乗り越えて軽やかに連帯していく女性たちがなんとも羨ましく心強く思えた作品。
大声でビールを注文するシーン、巨大な橋梁
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ベイビーティース(2019年製作の映画)

4.1

いわゆる「難病もの」の、命の期限が残り少ない男女の切ない恋愛物語、という印象の予告編だったけど、いい意味で期待を裏切ってくれました。問題を抱えた主人公の男女だけでなく、その両親や妻の元彼も問題に直面し>>続きを読む

すばらしき世界(2021年製作の映画)

4.7

社会復帰をめざす三上が直面する出来事、周囲の反応を通して、現代社会が抱えている「生きづらさ」の表層や構造があぶり出される秀作ですが、それにも増して西川美和監督の仕事ぶりが強く印象に残りました。
どうす
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ファーストラヴ(2021年製作の映画)

4.2

親からの愛情を感じられないまま育った大人たち。親に嫌悪感を抱きながら育った大人たち。彼ら、彼女らが自ら背負ってしまった傷と向き合う物語。
演出面で突っ込みどころはあったけど、物語の構図や骨格がしっかり
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