建野友保さんの映画レビュー・感想・評価 - 5ページ目

建野友保

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花束みたいな恋をした(2021年製作の映画)

4.1

とっくに皮膚と化していたはずの「かさぶた」が剥がされるような痛みを感じました。個人的には「生きてるだけで、愛。」の前日譚と受け止めています。残りの感想は心にしまっておきます。良い映画でした。

シカゴ7裁判(2020年製作の映画)

4.1

1968年に米国で起きた史実にもとづく法廷映画ですが、どうしても50年後の日本と照らし合わせてしまいますね。とくに権力を有した者たちの傍若無人な立ち振る舞いとか、「左」と呼ばれる人々が実は互いに相容れ>>続きを読む

わたしの叔父さん(2019年製作の映画)

4.2

淡々とした物語であることは事前知識としてありましたが、淡々とした日常の中にもルーチンの小さな変化があり、その延長線で物語は展開していきます。日常動作に少し不便が生じてきた叔父さんと、年頃を迎えた若い娘>>続きを読む

聖なる犯罪者(2019年製作の映画)

4.0

村の問題を見て見ぬふりする聖職者が体調を崩した合間を縫って、まんまと代理司祭の座に収まる主人公(実は少年院から仮釈放中の身)。村は悲痛な交通事故による悲しみや憎しみを抱えていた。主人公は自分の言葉の力>>続きを読む

マイルス・デイビス: クールの誕生(2019年製作の映画)

4.2

1940年代のビバップ時代からクールの誕生、そして怒濤の一挙4作を録音したプレスティッジ・レコード末期時代、1960年代の黄金クインテット時代、エレキを導入してファンクと融合&空白の5年間を含む197>>続きを読む

ルクス・エテルナ 永遠の光(2019年製作の映画)

4.0

「LOVE 【3D】」でぶっ飛んだギャスパー・ノエ監督の最新作。かなりの覚悟で観に行きましたが、後半の光の洪水を何とか目を細めながら凌げば、あとは意外とエンタメ作品として成立している印象でした。映画制>>続きを読む

Swallow/スワロウ(2019年製作の映画)

4.4

家父長制度が色濃く漂う家族というコミュニティの中で自分の存在価値が認められず痛みを抱える女性が、別の痛みをもって痛みの相殺を図ろうとする物語。大きく括れば自傷行為を描いた映画なのですが、観客は異物を呑>>続きを読む

ソング・トゥ・ソング(2017年製作の映画)

4.1

正気の沙汰ではない幻惑的な世界で、狂いながら生き残る。狂ったゆえにドロップアウトする。正気を保って生き残る。正気を保って退場する。そのどれもが正解なのかもしれない。本人が正解だと思うのならば…。そして>>続きを読む

ハッピー・オールド・イヤー(2019年製作の映画)

4.0

「トキメキを感じないモノから優先的に捨てよう」。そう説いたベストセラーの断捨離メソッドに触発された女の子が、「自分を前に進めるために」家中のモノをバッサリ捨てていくタイ映画。断捨離に端を発したコメディ>>続きを読む

アンダードッグ 前編(2020年製作の映画)

4.0

前編・後編を一気に鑑賞。人生に落とし前をつけられなかった人たちによる、半生の総括物語。良いセリフがあちこちにあったほか、全ての主要登場人物に、見せ場をキチンと盛り込んだ「脚本の落とし前」が見事でした。>>続きを読む

燃ゆる女の肖像(2019年製作の映画)

4.2

たった5日間の燃えるような恋。画家マリアンヌにとっては一つの思い出でも、間もなく見知らぬ男のもとに嫁いでいく貴族の娘エロイーズにとっては一生でただ一つの恋。その対比がとても切なく感じました。前半のヒリ>>続きを読む

ばるぼら(2019年製作の映画)

4.0

自分のお父さんはお父さんであり、男ではない。でも自分が成人し、中高年にもなり、父親が亡くなった後に遺品を整理してみると、剥き出しの男を発見することがある。
ベレー帽をかぶってにこやかに笑い、全国の子供
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ジョーン・ジェット/バッド・レピュテーション(2018年製作の映画)

4.4

ジョーン・ジェットが2015年に「ロックの殿堂入り」すると知った時、正直、「どうして?」と思った。そんなに多大な功績を残した人だったのだろうか?
ザ・ランナウェイズ(1975〜1979年)はリアルタイ
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異端の鳥(2019年製作の映画)

4.0

モノクロにすることで生々しさを抑えつつ、その分しっかり残虐なシーンも描くという監督の狙いは的中。ペンキを塗られた鳥は、腕に捕虜の刻印をされたユダヤ人の象徴なのでしょう。鳥は本来あるべき自由の象徴なんで>>続きを読む

朝が来る(2020年製作の映画)

4.7

栗原清和と佐都子の夫婦、佐都子と朝斗の親子、ベビーバトン代表の浅見静恵とそこに身を寄せる女性たち、そして望まない妊娠をした片倉ひかりと同じ境遇の女性たち…そこにあるのは、欠落していたパズルを埋め合うよ>>続きを読む

82年生まれ、キム・ジヨン(2019年製作の映画)

4.4

今の時代に相応しい「本質的な問いかけ力」を持った力作。良い子的な言葉で恥ずかしいんですが、「(生まれながら与えられた)人生の価値の等しさ」という言葉が自然と浮かびました。キム・ジヨンを演じたチョン・ユ>>続きを読む

ようこそ映画音響の世界へ(2019年製作の映画)

4.1

面白かった!タイトル通り、映画音響の世界、その奥深さに引き込まれる秀作。映画史における「音」の扱われ方を紐解き、細分化専門化した「映画音響」のストラクチャーを論理立てて教えてくれる。映画音響のプロフェ>>続きを読む

リアム・ギャラガー:アズ・イット・ワズ(2019年製作の映画)

4.1

90年〜00年代を代表する巨大バンド、オアシスからノエル(ギャラガー兄弟の兄)を引き算したリアム(同弟)率いるBeady Eye(いわばオアシスの残党)に対して、僕は相当な思い入れをしてきた。ソングラ>>続きを読む

ソワレ(2020年製作の映画)

4.4

何度も後味を反芻しながら味わえる邦画と出会えて、とても幸せ。人生の伴走者、共犯者を描いたという点では「生きてるだけで、愛。」とも通底するテーマをもった作品でした。添い・添われ、の「添われ」でもあるのか>>続きを読む

(2020年製作の映画)

4.0

この類いの感動系メジャー邦画は予告編段階でパスだったんですが、瀬々監督と知って観てきました。一般的な知名度は低いかもしれないけれど優れた腕前を持ったスタッフたちが、寄ってたかって職人技を繰り出したエン>>続きを読む

チア・アップ!(2019年製作の映画)

4.2

物語は凡庸だろうけど、ダイアン・キートンが観たい。ただそれだけの理由で観た映画でしたが、見事に不意打ちを食らった佳作でした。
老いをテーマにした映画は数々あるけど、これだけ多様な側面(周囲の反応含め)
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ランブル 音楽界を揺るがしたインディアンたち(2017年製作の映画)

4.2

50年間以上も洋楽を聴きながら、知らないことだらけで大きな衝撃を受けています。ブルースからヘヴィメタル、ヒップホップに至るまで、ありとあらゆる音楽ジャンルに密かに息づいていたインディアンの鼓動とスピリ>>続きを読む

レイニーデイ・イン・ニューヨーク(2019年製作の映画)

4.1

ウディ・アレンの映画は評判を聞きつけて1977年の「アニー・ホール」以降、リアルタイムで5本くらい観たと思いますが、ダイアン・キートンには魅せられたものの、どれも性に合わない映画でした。いかにもインテ>>続きを読む

二人ノ世界(2017年製作の映画)

4.0

日本シナリオ大賞の入選作(佳作)の映画化とはいえ、物語には既視感があり、できすぎた状況・キャラクター設定、京都市内なら自立支援の組織やボランティア、中途障害の支援団体もあるだろうにとか、途中まではむず>>続きを読む

WAVES/ウェイブス(2019年製作の映画)

4.0

勝ち負けを争う章、共生を模索する章。2つの大きなチャプターで構成された、家族の物語。カラフルな色づかいと音楽が特徴的な映画だなあと思っていたら、最後にあの曲のイントロが流れてきて、思わずニヤリ。
映画
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MOTHER マザー(2020年製作の映画)

4.2

少年による祖父母殺人という痛ましい事件をベースにした、共依存の母子の物語。ワイドショー的には「バカな親子によるバカげた事件」には違いないのだが、バカな奴らと排除して切り捨て、バカな物語として消費するこ>>続きを読む

ワイルド・ローズ(2018年製作の映画)

4.0

プライマル・スクリームの「カントリー・ガール」、グラスゴーのカントリーミュージック(ん?)、カントリーとカントリー&ウェスタン、イエローブリック、リン・アンダーソンの「ローズ・ガーデン」、ピンボケ扱い>>続きを読む

はちどり(2018年製作の映画)

4.4

このレビューはネタバレを含みます

人生はままならない理不尽なことばかり。ままならない家族、ままならない友、ままならない恋、ままならない世の中、ままならない学校、ままならない塾、そして、ままならない自分。だけど今こうして私は生きている。>>続きを読む

精神0(2020年製作の映画)

4.1

想田監督の作品はこれが初見。ドキュメンタリーの作り方は作家によって人それぞれですが、観察に徹した(監督の声は必要最低限出てくるけど)接し方、被写体との関わり方は興味深く、2時間超えのドキュメンタリーに>>続きを読む

ミッドサマー(2019年製作の映画)

4.5

数年前に話題になったテレビドラマ「カルテット」で、「男は結婚を恋愛の延長線で考える、女は結婚を家族の成立と考える」みたいな台詞のやりとりがあって激しく同意しましたが、これと通底するテーマを持った映画だ>>続きを読む

ハリエット(2019年製作の映画)

4.0

映画作品として拙速で未整理な部分は否めないと思うけど、それはともあれ、黒人奴隷の歴史に気付きや発見を得ることができる貴重な作品だと思います。黒人の反乱を恐れる白人たちの怯えに、現代的なニュースが重なり>>続きを読む

37セカンズ(2019年製作の映画)

4.7

HIKARI監督の瑞々しい感性、独創的な世界の切り取り方に圧倒された作品。現時点で2020年度1位候補です。今後、ますます注目を集める新進監督だと思います。
冒頭の、母娘の入浴シーンから、ただ者ではな
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もみの家(2019年製作の映画)

4.3

物語の展開自体は予告編で想像できる範囲ではありますが、少しずつ周囲の世界を知り始め、人とのつながりを意識し、人の痛みに思いを寄せていくプロセスの演出がきめ細かくなされていて、主演の南さんも期待に応えて>>続きを読む

娘は戦場で生まれた(2019年製作の映画)

4.1

アサド独裁政権に最後まで抵抗したアレッポ村の人々を、内側から克明に捉えた生々しいドキュメンタリー。Twitterにも書きましたが、「私たちの動画は沢山の人に観られているのに、誰も政権を倒してくれない」>>続きを読む

彼らは生きていた/ゼイ・シャル・ノット・グロウ・オールド(2018年製作の映画)

4.0

死者が「数」でしか表現されない戦争の前線に、一人一人の「人間」が生きていたという当たり前のことを、思い知らされる映画。「1917 命をかけた伝令」とセットで鑑賞することをお勧めします。

デッド・ドント・ダイ(2019年製作の映画)

4.2

保安官(ビル・マーレイ)と保安官代理(アダム・ドライバー)、2人の微妙にかみ合わない台詞の妙と、ゾンビたちの呟きが笑える、緩やかなコメディ映画。あちこちに、クスッと笑える部分が織り込まれていて、ジム・>>続きを読む