レントさんの映画レビュー・感想・評価

レント

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パスト ライブス/再会(2023年製作の映画)

5.0

淡い初恋と郷愁

祖国から移住して24年がたつ妻ノラの寝言は常にハングルだ。それに言いようのない不安を覚えるという夫のアーサー。彼女の心の中には自分がいけない場所があるのでは。それは彼女の中の心の祖国
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アイアンクロー(2023年製作の映画)

4.1

このレビューはネタバレを含みます

男だって泣いていいんだ。

子供の頃は猪木や馬場の全盛期で、週末金曜のゴールデン枠でプロレス番組やってたな。敵役として有名だったのが、アンドレ・ザ・ジャイアントや、タイガー・ジェットシン、そしてこの鉄
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パピチャ 未来へのランウェイ(2019年製作の映画)

4.4

女性の意思を縛る拘束衣

古代から人間社会は男性優位社会。人類最古の差別は女性差別であり、それは今も根強く残っている。
古代ギリシャの哲学者アリストテレスでさえ、女性を男性より劣るものと考えていた。そ
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オッペンハイマー(2023年製作の映画)

4.2

原爆の父と呼ばれて

戦時下、レッドパージ、激動の時代のアメリカを生きた一人の天才物理学者の半生。

裕福なユダヤ人家庭で生まれ育ったロバート・オッペンハイマー。母親譲りで芸術文学に造詣が深く、また成
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流転の地球 -太陽系脱出計画-(2023年製作の映画)

3.6

このレビューはネタバレを含みます

宇宙船地球号

子供の頃夢中になって見ていた東宝の空想科学映画を彷彿とさせるロマンあふれる作品。特に本作は「妖星ゴラス」をリスペクトしていて見ていて楽しかった。どうせなら怪獣マグマも出してくれたらよか
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ビニールハウス(2022年製作の映画)

3.6

このレビューはネタバレを含みます

綻び

ある一つの出来事をきっかけに、誤った選択をしたがためどんどん破滅へと進んでいってしまう。
人生において何をやっても裏目に出てしまうことがある。そんな負の連鎖を静かなトーンで描いた異色作。
予告
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デューン 砂の惑星PART2(2024年製作の映画)

5.0

至福の時

まさに鑑賞中至福の時を過ごした。ただただその映像美に酔いしれ、そして迫力に圧倒された。どのカットを見てもアート作品のようだった。こんな美しいSF映画なんて見たことない。強いてあげれば200
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市子(2023年製作の映画)

4.2

名もなき人

貧困で劣悪な環境で育った彼女には戸籍がなかった。法の不備やネグレクトなどが原因で今の日本では累計一万人もの無戸籍者がいると推定されている。

重度の障害を抱える妹の介護は実質母子家庭にお
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梟ーフクロウー(2022年製作の映画)

3.9

このレビューはネタバレを含みます

朝鮮王朝の闇夜に舞う一羽の梟

17世紀、中国では明清交替の時期、朝鮮王朝は清の軍による侵攻を受けて(丙子の乱)敗北し降伏した後、人質となっていた世子が帰国するところから物語は始まる。

いまだその地
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スターフィッシュ(2018年製作の映画)

3.5

喪失と再生の物語。

恋人を裏切り、病床の親友を放っておいた罪悪感を抱えた主人公オーブリー。親友グレイスの葬儀の後に彼女の家に潜り込み一夜を過ごすと外の世界は一変していた。

町から人々の姿は消え、恐
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TAR/ター(2022年製作の映画)

4.2

作家の人格と作品の価値。

ターが教鞭をとる大学での講義の長回しのシーンが圧巻だった。そしてこのシーンが本作ではネックになるのだろう。

女性を差別するという理由でバッハを嫌いその曲まで否定する生徒に
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愚行録(2017年製作の映画)

4.5

愚行ドミノ

ハーレイ・ジョエル・オスメント主演の「ペイフォワード」は他人に対して善行を行えば、それが徐々に波及して世界中の人間を幸せにできるという理想を描いた作品だった。
本作はその真逆といえる作品
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激怒(2022年製作の映画)

1.1

もしこの映画を劇場鑑賞してたなら、私が激怒。

映画ライターの高橋ヨシキ氏の監督デビュー作品。正直期待してなかったけど、ここまでひどいとは思わなかった。

やりたいことはわかる。今の日本にまかり通る自
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PERFECT DAYS(2023年製作の映画)

4.3

我々は一本の木。

主人公平山は日に億単位の金を動かすトレーダーでもなければ、従業員数千人を抱える大企業の経営者でもない。ただの公衆トイレ清掃員である。
けして人からは尊敬されず、むしろ蔑みの目で見ら
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ビヨンド・ユートピア 脱北(2023年製作の映画)

4.6

所詮は他人事

私はこの映画を空調が効いたふかふかのソファーに座ってコーヒーを飲みながら鑑賞する。周りにはポップコーン片手に鑑賞してる者もちらほら。

私は子供の頃は他人の立場になって考えろと躾けられ
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野火(2014年製作の映画)

3.5

第三の敵

敗戦が濃厚となった時期にフィリピンミンドロ島に30を過ぎた老兵として配属された作家大岡昇平の実体験をもとにしたフィクションが原作。ご本人が人肉食をしたわけでなく現地で聞いた事実をもとに想像
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ゆきゆきて、神軍(1987年製作の映画)

4.6

神軍と皇軍


トヨタマークⅡの屋根には車体ほどもある看板が乗せられ、その看板や車体には田中角栄を殺す、宇宙人の聖書等々の物騒な文字がびっしり書き込まれている。見るからに物々しい雰囲気を醸し出す男、奥
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はりぼて(2020年製作の映画)

4.5

はりぼての正体

今現在日本の政界を揺るがしている自民党派閥による裏金事件。本作はまさにその事件の壮大なる前振りとも言える富山市議会で起きた政務活動費問題を描いたドキュメンタリー。

富山県は雄大な立
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きっと、それは愛じゃない(2022年製作の映画)

4.6

このレビューはネタバレを含みます

恋愛が先か結婚が先か。情熱と現実の間。

恋愛結婚より見合い結婚の方が長続きするとよく言われる。恋愛結婚は減点方式、見合い結婚は加点方式。見ず知らずの人間同士なら暮らしてるうちにお互いに良いところを発
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コンクリート・ユートピア(2021年製作の映画)

4.0

瓦礫の王

未曾有の大災害により瓦礫の山となった世界にたった一つ奇跡的に無傷だったファングンアパート。
そこには多くの避難民が助けを求めてやってくる。最初は受け入れたアパートの住人たちだったが、次第に
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⻤太郎誕生 ゲゲゲの謎(2023年製作の映画)

4.6

このレビューはネタバレを含みます

「重い因果を背負わせてしまったものじゃ。」

妖怪漫画で知られる水木しげる氏、だがそれとは別に反戦漫画も多く残したことで知られる。
20代前半実際に戦地に赴き、壮絶な体験をした氏が戦争体験者として残し
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ポッド・ジェネレーション(2023年製作の映画)

3.2

このレビューはネタバレを含みます

程よい共存関係。

完全な男女平等が実現したであろう近未来。働く女性にとって唯一のハンディだった妊娠出産を子宮センターが管理する卵型ポッドが担えるようになった。

キャリアウーマン(死語)のレイチェル
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ロスト・フライト(2022年製作の映画)

3.4

相変わらずのバトラー作品

バトラー演ずる機長の飛行機が急遽犯人護送に使われることに。この犯人が本作のキーマンになるかと思いきや、ただビデオを撮るなとか怒ってたくらいで普通にいい人だった。

殺人犯と
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バッド・デイ・ドライブ(2023年製作の映画)

3.3

このレビューはネタバレを含みます

リーアムさん、通常運転です。

出来のいい韓国版リメイクを先に観ていたので期待せずに鑑賞。意外によくできていて楽しめた。

大まかなストーリーはわかっていてもテンポよく次から次へとスリリングな展開が続
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ナポレオン(2023年製作の映画)

4.0

ナポレオンからの手紙

終始心を奪われた妻に翻弄されるナポレオン。彼女の浮気を知って軍を放り出し遠征先から帰国。妻を責めるも結局はマウントを取られてしまう。マザコン的な性格も垣間見える。あの口元でまま
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正欲(2023年製作の映画)

4.3

このレビューはネタバレを含みます

地球最後の男

検事の寺井は典型的な保守的人間。息子が学校へは行かずYouTube動画を始めたいといっても、頭ごなしにそれを否定する。
普通から道を外れた人間は負け癖がついて自分が楽な方へ楽な方へと行
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理想郷(2022年製作の映画)

4.2

「故郷」

スペインガリシア州の小さな村に移住してきたアントワーヌとオルガの夫婦。この地にほれ込んだ彼らは有機農業で生計を立てる傍ら、村の古民家を修繕して過疎化に悩む村を盛り立てようとしていた。

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ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)

4.8

戦争の呪縛からの解放。もう一つのありえたかもしれない戦後。

本多猪四郎監督、円谷英二特技監督が生み出した54年度版「ゴジラ」は日本映画で初めてブロードウェイで上映され大ヒットとなった。

この作品が
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ザ・キラー(2023年製作の映画)

4.5

暗殺者とシンクロする。

原作はグラフィックノベルということで、本作の質をここまで高めたのは「セブン」の脚本家のなせる業か。
現実に存在するかもしれないプロの暗殺者の心理を作家的感性で想像を膨らませて
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SISU/シス 不死身の男(2022年製作の映画)

1.9

シスなのに死なない。

完全な期待外れ。なぜか前評判高そうだったから、見てみたら予告編以上のものがなかった。

配信でこの監督の前作「ビッグゲーム」見たらかなりの大味。ただ、景色の映像は綺麗だった。本
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極限境界線 救出までの18日間(2020年製作の映画)

4.1

国民は国家のためにあらず、国家は国民のためにある。

アフガニスタン、タリバンに拉致された韓国人キリスト教宣教活動家たちを解放するために戦った人間たちの熱き物語。

たとえ無謀にも渡航禁止のアフガンに
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(2023年製作の映画)

3.6

ディスコミュニケーションの果てに

さとくんは自分の絵の特技を生かして入所者たちとコミュニケーションを図ろうと努力していた。入所者への処遇のひどさに理事長へ抗議したこともあった。彼はまじめな性格で彼な
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ザ・クリエイター/創造者(2023年製作の映画)

3.6

ベトナム戦争のメタファー

作品的には「ローグワン」の焼き直しの印象かな。ノマドはどう見てもデススターだし。ただ、本作はアメリカをとことん悪役として描いてるのがいい。

本作はベトナム戦争やイラク戦争
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籠の中の乙女(2009年製作の映画)

3.3

籠の鳥

プール付きの庭がある豪邸に隔離されて育てられている子供たち。父親からは噓を教えられてそれを信じているさまがシュールであり、滑稽でもある。

父親は大切な子供たちを危険な外の世界から守りたいと
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聖地には蜘蛛が巣を張る(2022年製作の映画)

3.8

このレビューはネタバレを含みます

名誉殺人

一族の女性が婚前交渉や不倫をしたり、あるいはレイプされるとそれを一族の名誉を汚したとして残虐な方法で殺してしまうという風習が今でもイスラム教圏の国を中心に行われているという。

確かに男は
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沈黙の艦隊(2023年製作の映画)

3.2

このレビューはネタバレを含みます

移動性独立国家。

日本政府が米国と共同で極秘に開発した最新鋭原子力潜水艦シーバット。その艦長海江田と乗組員は訓練航行中に第七艦隊から離脱し、独立国大和を名乗る。はたして海江田の真の目的とは。

非核
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