シズヲさんの映画レビュー・感想・評価 - 2ページ目

ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)

3.6

このレビューはネタバレを含みます

本作のゴジラは近年では珍しく、あんまり神格化された存在ではない。震災や原発のメタファーだったシンゴジや半ば神話的に解釈されたレジェゴジに比べると、今回のゴジラは少なくとも作中ではあくまで“バカでかい野>>続きを読む

ピクニック(1936年製作の映画)

3.0

そういえばジャン・ルノワール、あんまり見てなかったことに気付く。公開前に第二次大戦によってフィルム消失の危機に瀕しながらも何とか乗り越え、戦後になって米国に亡命していた監督の許可を得て再編集したうえで>>続きを読む

マッチ工場の少女(1990年製作の映画)

4.0

“彼らは遠くの奥の森で餓え凍えて死んだのだ”
“そのように思えます”

両親を養いながらマッチ工場で働く冴えない女性の悲喜劇的顛末。『パラダイスの夕暮れ』『真夜中の虹』に続いてアキ・カウリスマキ監督に
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ビフォア・サンライズ 恋人までの距離(1995年製作の映画)

4.1

パリへと向かう長距離列車の中、ささやかな巡り合いから言葉を交わし合った男女。束の間の時間に二人は想いを通わせ、やがて一日限りのウィーン旅行へと向かうことになる。ベルリン国際映画祭で銀熊賞を受賞し、その>>続きを読む

コントラクト・キラー(1990年製作の映画)

4.2

人員整理で真っ先にリストラの憂き目に遭った。自殺を図ったがいまいち死に切れない。自分を殺してもらうべく殺し屋を雇った。そんな矢先に薔薇売りの女性に一目惚れをしてしまった。生きる気力を取り戻した。殺しの>>続きを読む

スパイキッズ(2001年製作の映画)

3.6

『SPY×FAMILY』見ててふと思い出したのでウン十年ぶりに鑑賞。凄腕スパイの両親を持つ小さな姉弟の活躍を描き、その後シリーズ化して4作目まで作られた映画。監督がロバート・ロドリゲスということもあり>>続きを読む

ブラザー・フロム・アナザー・プラネット(1984年製作の映画)

4.6

黒人そっくりの宇宙人がニューヨークのハーレムへと不時着。口は利けないが不思議な超能力を持つ彼は街へと溶け込み、いつしか周囲から“ブラザー”と呼ばれるようになっていく。80年代アメリカのインディペンデン>>続きを読む

スカーフェイス(1983年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

《世界はあなたのもの》

ギャング映画の古典『暗黒街の顔役』のリメイク作。禁酒法時代のシカゴを舞台にしたあちらに対し、本作は80年代のマイアミに送還されたキューバ移民が主人公という形でそれぞれ時勢が反
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E.T.(1982年製作の映画)

4.0

スピルバーグはもう本作の数年前に『未知との遭遇』を果たしているので、こちらでは冒頭から未知の存在が地球に降り立っている。本作の宇宙人は巨大母船に乗ってくるような上位存在でも何でもなく、未知の惑星へと孤>>続きを読む

ストールンプリンセス キーウの王女とルスラン(2018年製作の映画)

3.5

ロシアによる侵攻の前年に上映されたウクライナ製のファンタジーアニメ。現地の童話をモチーフとしているらしく、役者の青年が悪の魔法使いから姫を救うべく冒険に出る物語である。ロシアのウクライナ侵攻をきっかけ>>続きを読む

ダーティハリー(1971年製作の映画)

4.4

※再レビュー

復刻上映で久々に鑑賞したので再レビュー。アウトロー刑事アクションの金字塔であり、クリント・イーストウッドの道を切り開いた問答無用の傑作。イーストウッドはセルジオ・レオーネから「立ってい
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レモネード・ジョー 或いは、ホースオペラ(1964年製作の映画)

4.0

チェコスロバキアが生んだ社会主義圏の西部劇、通称レッド・ウエスタン!酒を一切飲まずにレモネードのみを嗜むガンマン“レモネード・ジョー”の活躍を描くコメディ西部劇!“酒を嫌って炭酸飲料を推し進める”とい>>続きを読む

スーパーマリオ/魔界帝国の女神(1993年製作の映画)

3.3

これが『劇場版スーパーマリオブラザーズ』だァァ〜〜!!アニメ映画が大ヒットを記録したことでどういう訳か再注目された実写版マリオ。アニメ版よりも兄弟で冒険していないか?“マリオブラザーズは配管工であり、>>続きを読む

レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ(1989年製作の映画)

3.8

トンガリ頭とトンガリブーツ、サングラスに黒いスーツ。見るからに得体の知れぬ風体をしたシベリアのバンド、人呼んでレニングラード・カウボーイズ。成功を求めてアメリカに遠征することになった彼らの奇妙な道中が>>続きを読む

キリング・オブ・ケネス・チェンバレン(2020年製作の映画)

4.5

「誰がボスなのか教えてやる」

米国社会が孕んだ歪みの連鎖。結託する“人種差別”と“公権力”。その犠牲となる社会弱者が抱く“警察への不信感”。そうして向けられる不信感を口実に、警察は更なる暴力と差別へ
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アル中女の肖像(1979年製作の映画)

3.8

「マダァム……」

アル中女、ベルリンで飲み歩く。『荒野の千鳥足』ならぬ『ベルリンの千鳥足』。ニュー・ジャーマン・シネマ期にも活躍して高い評価を得ていながら、日本では上映の機会に恵まれなかったというウ
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渡るべき多くの河(1955年製作の映画)

3.3

流れ者の罠猟師と彼に惚れた跳ねっ返り娘のわちゃわちゃ劇。しつこい彼女から逃げ回る男とそれでも彼を追い回す女、やっていることはほぼラブコメである。オープニングから繰り返される景気のいい主題歌も本作のユー>>続きを読む

ザ・ドライバー(1978年製作の映画)

4.1

80年代手前のハリウッドをぬらりと駆け抜けたノワール×カーアクション。とにかく余計なことは語らない。台詞や描写などの贅肉を徹底的に削ぎ落とし、淡々と事を運ぶように映画は進む。そしてクールな運び屋と横暴>>続きを読む

ローマの休日 4K レストア版(1953年製作の映画)

4.6

ラストの記者会見での二人の眼差し、何度本作を見ても切なさと愛おしさが込み上げてくる。こちらまで後ろ髪を引かれるような想いに駆られてしまう。オードリー・ヘプバーンはやっぱりべらぼうに可愛いし、本作が面白>>続きを読む

ベスト・キッド(1984年製作の映画)

3.8

カラテ道場に通う不良達と対決することになった少年が、カラテの達人である日系人のもとで鍛錬に臨む。本作がヒットしたことでその後も4作目までシリーズが続き、後年にはジャッキー・チェンによるリメイクや主要人>>続きを読む

竜二(1983年製作の映画)

4.1

このレビューはネタバレを含みます

実録ヤクザ映画の衰退を経た80年代に登場した“等身大のヤクザ映画”。ジャンルの時代を切り開いた自主制作映画。そして俳優・金子正次の出世作にして遺作。現状の生活が頭打ちとなり、それをきっかけに家族との関>>続きを読む

ファンタスティック・プラネット(1973年製作の映画)

3.7

必死に逃げ惑う人間の母子、迫り来る巨大な青い手。散々弄ばれた末に母親が息絶える様子を、手の主である巨大宇宙人の子供達が無邪気に観察する……。異様なビジュアルも含めて、冒頭からして只管に度肝を抜かれる。>>続きを読む

不安は魂を食いつくす/不安と魂(1974年製作の映画)

4.2

このレビューはネタバレを含みます

未亡人の老婆と出稼ぎ労働者であるアラブ系移民の恋愛。元ネタとなっているダグラス・サークの作品は未見。アキ・カウリスマキが本作の作風から多大な影響を受けているらしいのは何だか納得がある。

人種、年齢差
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チキンラン(2000年製作の映画)

3.8

『大脱走』等の映画に着想を受けているらしいが、そのモチーフに違わぬ養鶏場のビジュアルが良すぎる。鉄条網に囲まれた敷地、規則正しく並ぶ番号付きの小屋、整列させられる雌鳥達、番犬を連れ歩く看守(もといこき>>続きを読む

ドラゴン怒りの鉄拳(1972年製作の映画)

3.6

ブルース・リーによる香港カンフー映画の2作目であり、彼の人気を不動のものにしたという大ヒット作。上海の租界を舞台に、悪辣な畜生日本人道場にリーが立ち向かう!!本作の日本人、ほぼ下衆なので凄い。中華人へ>>続きを読む

ドラゴン危機一発(1971年製作の映画)

3.0

香港へと凱旋したブルース・リーのカンフー映画、記念すべき一作目。アマプラで配信されているのは広東語に差し替えた吹替版らしく、リーお馴染みの怪鳥シャウトも後付けみたい。ノラ・ミャオはまだちょい役であって>>続きを読む

Pearl パール(2022年製作の映画)

3.8

オールドスタイルのクレジット、冒頭もラストもワクワクしてしまう。明朗な色彩も何処となく古典映画のような雰囲気がある。『X』の前日譚みたいだが、単体でも十分見れる作品なので安心だ。監督としては『何がジェ>>続きを読む

aftersun/アフターサン(2022年製作の映画)

4.4

リゾート地で過ごす父子の記憶。穏やかで何処か寂しげなノスタルジーと“子供だった頃”の眼差し。そして時を経てから振り返ることで見出されるもの。それらが滲み出る詩情と共に淡々と映し出されていく。言葉以上に>>続きを読む

風の無法者(1967年製作の映画)

3.1

リー・ヴァン・クリーフ主演のマカロニ・ウエスタン。とはいえ“潜在的に善き心を持っているアウトローが改心してコミュニティに帰属する”というグッド・バッド・マン的な筋書きなので、ある意味で本家西部劇に近い>>続きを読む

荒野の決闘(1946年製作の映画)

4.0

※再レビュー

保安官ワイアット・アープ、かの有名な“OK牧場の決闘”へと至るまでのドラマを描く西部劇。基本的にはロマンスとドラマが軸足になっているので、群像劇とアクションを兼ね備えた『駅馬車』の対局
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一晩中(1982年製作の映画)

3.0

一夜を彷徨っては繋がり合う男女の浮遊。如何なる話であるかも語られず、ただただアベックが次々に現れてはその姿が淡々と映し出される。暗がりの中でこ描写が只管に続き、最早登場人物を判別する余裕もない。まるで>>続きを読む

少年と犬(1975年製作の映画)

4.3

この世が終わり、犬が喋りだす!なんでや。第四次世界大戦を経て荒廃した世界で、女を求める少年と喋る犬が彷徨う。『北斗の拳』の元ネタとなった『マッドマックス』よりも更に先を行くポストアポカリプス映画。監督>>続きを読む

荒野の女たち(1965年製作の映画)

3.8

ジョン・フォードの遺作。エルマー・バーンスタインのBGMと荒野を駆ける馬賊の姿で幕を開けるオープニング、そして荒野の中に築かれる“コミュニティ”。構図自体は西部劇の、それも“騎兵隊モノ”の変奏のような>>続きを読む

月下の銃声(1948年製作の映画)

3.2

雨夜で幕を開ける冒頭や仄暗い酒場での殴り合いなど、要所要所での陰影のコントラストが際立つ西部劇。夜間の撮影や照明などの構図が中々に決まっている。淡々とした緊張感を演出した話運びやロバート・ミッチャムの>>続きを読む

裸の拍車(1953年製作の映画)

3.8

金を巡る思惑が常にちらつき、油断ならぬ緊張感が常に迫り来る。ならず者の賞金首とその連れの女、彼らを護送する“訳アリの主人公×金脈を探す爺さん×騎兵隊くずれ”のアンサンブル。『ウィンチェスター銃'73』>>続きを読む

EO イーオー(2022年製作の映画)

3.9

動物愛護団体によってサーカスから解き放たれてしまったロバのEOが、穢れの転がる俗世を転々と彷徨う。鮮烈なポスターに惹かれて鑑賞、主演はロバとしか言いようがない。ロバが物語の“眼”となって世界を見つめて>>続きを読む