えすさんの映画レビュー・感想・評価

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ファースト・カウ(2019年製作の映画)

3.6

酒場での殴り合いによってフレーム外に人物を押しやり、留まったジョン・マガロとオリオン・リーが再会する。夜の搾乳では、監視役が”視線を外す“ことで屋敷の内部を提示する事なくサスペンスを生んでいる。何とも>>続きを読む

バッド・ルーテナント/刑事とドラッグとキリスト(1992年製作の映画)

3.6

意外にも車映画。雨の中、職質に乗じて執拗に擬似フェラを強要したりと惨めなハーヴェイ・カイテルを贅沢に時間を使って見せてくれる。慟哭からのキリストの堂々たる幻視ショットに驚く。それでいてラストの”贖罪の>>続きを読む

ダーティハリー4(1983年製作の映画)

3.9

遊園地映画として『ファンハウス』の隣に置きたい傑作。車体の輪郭が曖昧になる程深いサーティースが撮る闇に、ソンドラ・ロックまでも幽霊と化す。シーゲルがスクールバスならば、イーストウッドは老人ホームの送迎>>続きを読む

ダークスカイズ(2013年製作の映画)

3.3

窓ガラスに衝突する鳥の物量が、同年公開の『悪魔の起源 ジン』に匹敵する。端正でシャマランみがあって良い。

殺しが静かにやって来る(1968年製作の映画)

3.5

野盗の叫びさえも、銃声によって掻き消されてしまう陰惨なラストに震える。アンチヒロイズム。

スプリー(2020年製作の映画)

2.9

現代的なスプリットスクリーンも、ここまで演出意図を持って濫用すればそこそこ楽しめる。中盤のミスリードへの誘導は巧いと思う。目覚めてから射撃までの躊躇いの無さ。

ラスト・ラン/殺しの一匹狼(1971年製作の映画)

4.2

ド渋い傑作。整備からエンジン停止に至るまで、端的に視覚化されるジョージ・C・スコットと車の関係性。部品が故障すれば、当然彼自身も休息を要し、タイミングライトがもたらす光=再起のイメージが途絶えるあの瞬>>続きを読む

ノー・ワン・リヴズ(2012年製作の映画)

3.3

結構好き。穴の向こうから覗いてる目のショット→首に刃物を押し当てるゴア描写で一気にギアが上がる。何といってもルーク・エヴァンスがアジトへ潜入する方法の荒唐無稽さが最高。ただ奇妙なメロドラマ的要素の挿入>>続きを読む

スパイクス・ギャング(1974年製作の映画)

4.1

超絶傑作。狭い空間故に生まれる性急さと被弾アクションが素晴らしい。無慈悲に出発していく列車と反対方向へ馬を走らせる3人のディゾルブ。冒頭と対になった乗客達の視線に人生の厳しさを思い知る。もうあの頃には>>続きを読む

SF/ボディ・スナッチャー(1978年製作の映画)

3.6

雨の不穏さ、ブランコを漕ぐ主観ショット、割れたフロントガラス、泥風呂のビニールカーテン。シーゲル版の要素を抽出しつつ、カウフマンの抑制が効いた演出で新たな恐怖映画に成り得ている。人物を無機質に撮るのが>>続きを読む

オーメン:ザ・ファースト(2024年製作の映画)

3.0

起源に迫る話だけに真面目過ぎるけど、撮影は好み。闇が濃くて光源が際立っている。ラルフ・アイネソン宅を訪れる際の路地の光が美しい。「出生」の物語として皮膚への粘液的な描写や、カーテン、布などの覆うイメー>>続きを読む

白い肌の異常な夜(1971年製作の映画)

3.7

超面白い。増村的な情念の発露から男性性の崩壊へ。夜のローキーな画面、階段がサスペンスを掻き立てる。このタイミングでイーストウッドに亀を差し出したらヤバいだろと思ったら案の定で笑った。あの劇伴と少女の悲>>続きを読む

ボディ・スナッチャーズ(1993年製作の映画)

3.1

今から始まりますよ〜と言わんばかりのシーゲル版を想起させる正面クローズアップにアガる。ボジャン・バゼリの技巧的な撮影が目立ってた。感傷なんて度外視して容赦なくヘリから突き落とすの最高。

オッペンハイマー(2023年製作の映画)

1.8

トリニティ実験における光の暴力性がカメラのフラッシュとなって、ロバート・ダウニー・Jr.に向けられるまでの180分。興味深い史実ではあるが、いくら時制を錯綜させ視点を切り替えようとも、それは無益な煩雑>>続きを読む

The Girl and Her Trust(1912年製作の映画)

3.5

籠城からのチェイス。鍵穴から弾丸を撃ちつける動作の意外性。機関車の手前に配置されたオブジェクトによって、トラッキングショットに凄まじい疾走感が生まれている。前進のイメージが積み重なり、ラストは後退しな>>続きを読む

第3逃亡者(1937年製作の映画)

3.3

マクガフィンを巡る男女の逃亡劇から車が放棄され、定位置での演奏を強いられることで生じるサスペンスへと移行する見事さ。その状況を利用した圧迫感のあるズームが白眉。ご都合主義故の軽さは魅力的だが、『三十九>>続きを読む

サンクスギビング(2023年製作の映画)

3.0

ワッフルメーカーごときでゾンビ映画の様な暴動を誘発させる冒頭や、顔認証やインスタなどの現代性を取り込んだ描写が大変愉快。ただそれ以降は終盤まで活劇的興奮に乏しく、生真面目なサスペンスが顔を出してしまう>>続きを読む

不変の海(1910年製作の映画)

3.8

夫を見送る女性が、緩やかに手を下ろす動作に表出する寂寥感。時が経とうとも無情に波は押し寄せ、彼女の視線(祈り)もまた不変である。同一構図から立ち上がる叙情性に涙する他ない。

デモンズ’95(1994年製作の映画)

3.3

『アクエリアス』の方が好みだけど、こちらも中々。冒頭の枯葉の飛ばせ方から良い。それを必死に阻止しようとする哀れなフランソワ・ハジー・ラザロ。彼の吐瀉物を浴びた少女がそのままバイクに跨り疾走していく運動>>続きを読む

血ぬられた墓標(1960年製作の映画)

3.5

神々しい美術に陰影バキバキで最高。腐乱遺体の空虚な目を見つめるかの如く暗闇にズームするカメラがしっかり怖い。首元の十字架に気付いてから、火刑に処すまでが尋常では無い速度。窓枠を十字架に見立てたショット>>続きを読む

知りすぎた少女(1963年製作の映画)

3.4

マリファナ煙草を契機に巻き起こる事件の連続性が圧巻。それらに説得力を齎すレティシア・ロマンの眼力。彼女が見聞きする光の揺動、テープレコーダーなどを用いた確実/不確実なイメージの混在が不合理なサスペンス>>続きを読む

ブラック・サバス/恐怖!三つの顔(1963年製作の映画)

3.1

3話目『水滴の音』がベスト。表象的な水滴の音と、空間の様相を変化させる過剰な照明が見事。強烈な顔の映画として完璧な帰結。

血みどろの入江(1970年製作の映画)

2.8

人物が多いせいで煩雑化してるけど、その分景気良く死ぬので良し。サスペンスを中断した後、不意に訪れる暴力に嬉しくなる。頻用される被写体へのズームには辟易。

バッド・ルーテナント(2009年製作の映画)

3.5

南部映画の快作。ラリったニコラス・ケイジの佇まいと、それに同調させるように付き纏う手持ちカメラの撮影、爬虫類の接写が面白い。それでいて肝心なところはバシッとキメる。留置場が洪水になる冒頭と地続きになる>>続きを読む

変な家(2024年製作の映画)

2.3

間取りと空間についての映画なら、音に対して鋭敏であるべきだと思う。後半に何とも不器用な転調があり、クレイヴン『壁の中に誰かがいる』のような活劇性を一瞬期待するが、動作の度に一々顔のアップを挿し込むテン>>続きを読む

ノスタルジア 4K修復版(1983年製作の映画)

3.8

疲弊していたので寝落ち覚悟で劇場入りしたが、ミニマルなカメラワークによる洗練された画面の持続に圧倒されっぱなし。焼身自殺のシーンにおいて、警官がフレーム内に入り込むのが、抒情性を帯びた空間から逸脱して>>続きを読む

サイレンシング(2020年製作の映画)

3.6

大変面白かった。タイトル通り「黙認」を繰り返し、簡潔なショットで90分無駄なく語る。車体、喉元などの傷痕が重要なモチーフとなり、登場人物もまた心に傷を負っている。その「傷」の物語と呼応するように、アバ>>続きを読む

ラブバトル(2013年製作の映画)

2.5

身体性を信じて、対話を文字通り”バトル“に仕立て上げるドワイヨンの胆力には感動するが、流石にキツかった。

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