えすさんの映画レビュー・感想・評価 - 2ページ目

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バッド・ルーテナント(2009年製作の映画)

3.5

南部映画の快作。ラリったニコラス・ケイジの佇まいと、それに同調させるように付き纏う手持ちカメラの撮影、爬虫類の接写が面白い。それでいて肝心なところはバシッとキメる。留置場が洪水になる冒頭と地続きになる>>続きを読む

変な家(2024年製作の映画)

2.3

間取りと空間についての映画なら、音に対して鋭敏であるべきだと思う。後半に何とも不器用な転調があり、クレイヴン『壁の中に誰かがいる』のような活劇性を一瞬期待するが、動作の度に一々顔のアップを挿し込むテン>>続きを読む

ノスタルジア 4K修復版(1983年製作の映画)

3.8

疲弊していたので寝落ち覚悟で劇場入りしたが、ミニマルなカメラワークによる洗練された画面の持続に圧倒されっぱなし。焼身自殺のシーンにおいて、警官がフレーム内に入り込むのが、抒情性を帯びた空間から逸脱して>>続きを読む

サイレンシング(2020年製作の映画)

3.6

大変面白かった。タイトル通り「黙認」を繰り返し、簡潔なショットで90分無駄なく語る。車体、喉元などの傷痕が重要なモチーフとなり、登場人物もまた心に傷を負っている。その「傷」の物語と呼応するように、アバ>>続きを読む

ラブバトル(2013年製作の映画)

2.5

身体性を信じて、対話を文字通り”バトル“に仕立て上げるドワイヨンの胆力には感動するが、流石にキツかった。

ロバート・アルトマンのイメージズ(1972年製作の映画)

4.3

死ぬほど面白い。アルトマン特有のズームで、分裂された世界へとシームレスに繋がっていく高揚感。ファーストショットから窓枠を使ったフレーム内フレームによって”囚われた女性“として提示されるスザンナ・ヨーク>>続きを読む

愛の勝利を ムッソリーニを愛した女(2009年製作の映画)

3.8

凄まじい陰影で外連味溢れた画面の連続。雪夜の美しさなんて常軌を逸してる。とあるシークエンス以降、ムッソリーニは映写機を介してフレーム内に現れることで、メロドラマを破滅へと向かわせるように次第に虚構性を>>続きを読む

肉体の悪魔(1986年製作の映画)

4.0

デートメルスの狂気的な視線の変容に瞠目。冒頭の予感に満ちた一方的な視線が反転し、彼女の顔のアップで映画が終わる。バルコニーと教室、この男女の空間を繋ぐ屋根が視線劇として見事に機能していて素晴らしい。性>>続きを読む

赤線地帯(1956年製作の映画)

3.8

劇伴こっわ。息子に捨てられる工場裏、若尾文子が襲われる廊下と、奥行きのある構図で決定的な断絶を生む宮川一夫のカメラ。年齢的にこれが遺作になってしまう事に自覚的である感触は無いのだが、搾取される女性を描>>続きを読む

ルビイ(1952年製作の映画)

3.9

傑作。反復される”浸水“のイメージがメロドラマを暴力的なものにしていく。ジェニファー・ジョーンズを取り巻く情念に文字通り”溺れる“男達。階級意識を孕んだ外部の冷酷さがフレーム外から音として表出し、クラ>>続きを読む

THE CLASH ザ・クラッシュ(2007年製作の映画)

3.6

介護士のミーナ・スヴァーリが老人の糞の後始末をする冒頭からもう面白い。痛覚描写やガレージに人物(犬も!)を引き寄せ、この特異なシチュエーションでラストまで突っ走る。出世欲に駆られ、誤った選択をし続ける>>続きを読む

劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦(2024年製作の映画)

3.5

ボール、視線、過去/現在、手、想いなど、徹頭徹尾「繋ぐ」映画。鋭い観察眼を持った研磨の俯瞰的な視点がそのイメージをより強くする。これまで楽しさを知らずにいた研磨のバレーに対する情動が、息遣いと共に主観>>続きを読む

ウルヴァリン: SAMURAI(2013年製作の映画)

3.2

『ナイト&デイ』が気絶によって夢を現実化していくのと対照的に、眠りの中で過去に囚われたヒュー・ジャックマンはその夢を断ち切ろうとする。絶妙に日本の理解が足りてないところが面白い。新幹線での荒唐無稽な活>>続きを読む

フォーエヴァー・モーツアルト(1996年製作の映画)

3.7

テクストと距離を置いて、目の前の爆発を楽しむ。戦争と映画制作が孕む暴力性について。

町でいちばんの美女/ありきたりな狂気の物語(1981年製作の映画)

3.4

気を失った金髪ビッチを起こそうとしながらも、ズボンのチャックを下ろすベン・ギャザラのどうしようもなさ。被写体と一定の距離を置いてフィックスで撮られた空間がどれも鮮烈。窓辺に立つオルネラ・ムーティの淫猥>>続きを読む

FALL/フォール(2022年製作の映画)

3.2

風で軋む金属音や、局所的な塔の見せ方にならないよう俯瞰アングルが多用されていて、足が竦む感覚が持続する。高所映画として丁寧に緊張を煽る前半からの、悪夢的転調が楽しい。赤い障害灯があのように活用されると>>続きを読む

夜明けのすべて(2024年製作の映画)

4.1

適切な距離感が優しさを普遍的なものにしていて泣く。役者の柔和な声音が物語に合致し過ぎている。画面上を分断する光と影、その境界線を超えて支えようとする人々。光を恐れる松村北斗に対し、上白石萌音が彼の室内>>続きを読む

ファンタスティック Mr.FOX(2009年製作の映画)

3.9

全編運動感に溢れている傑作。アニメーションだからこそ成せる誇張された横移動に興奮。家族の絆が深まるその瞬間瞬間が、正面からの切り返しでエモーショナルに撮られている。あの涙ぐむ瞳の美しさ。狼との邂逅では>>続きを読む

AIR/エア(2023年製作の映画)

3.4

役者(親友)を信頼した、あの誠実な演説に賭けている事実に胸打たれる。「普通のアメリカ映画」という現代において貴重な感触。

The Son/息子(2022年製作の映画)

3.7

前作の技巧さは影を潜め、情報の取捨選択によって端正にサスペンスが演出されている。ゼン・マグラスのフレーム外での行動を示唆する僅かなカットがこの上なく不穏。無機質に稼働するドラム式洗濯機→フェンスに手を>>続きを読む

ショーイング・アップ(2023年製作の映画)

3.5

ここしか考えられない的確なカメラ位置と、繊細な光量の変遷。精神的に不安定な状態の兄が、庭に穴を掘っている姿を捉えたショットのフレーム内フレームなど、ふとした細部にサスペンス性が付与されていて、劇的なこ>>続きを読む

TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー(2022年製作の映画)

3.3

良くも悪くも飛躍の無い端正な映画。主人公の不快な人物造形と、周囲のそれを煙たがる描写がやけに生々しくて的確。ドラッグ感覚で降霊術の真否を度外視した淀みない物語進行、幕引きのタイミングが潔く好感が持てる>>続きを読む

ヘルレイザー/ゲート・オブ・インフェルノ(2000年製作の映画)

3.2

殺人事件をなぞっていく悪夢的イメージの羅列、そのあまりの救いの無さには目を見張る。死体の凄惨さの割にイマイチな暴力描写のキレ味を終盤で増幅させる銃器の活躍に拍手。

炎のデス・ポリス(2021年製作の映画)

3.0

留置場でのダラダラした駆け引きには全くノレず。警官サイドの人物が殆ど印象に残らないんだけど、その分命が軽いのは美点。防弾ガラスの強度に賭けたサスペンスが素晴らしい。その砕け散る無数のガラス片を物ともし>>続きを読む

地球が静止する日(2008年製作の映画)

2.5

秀作揃いのデリクソンの中ではかなり微妙。宇宙人の肉体変容の過程は淡白で、薬液のすり替えは容易に成功する。細部のサスペンスが弱いので興味が持続しない。

スティルウォーター(2021年製作の映画)

3.8

捜査の停滞が擬似家族を形成させ、緩やかにジャンルを横断していく様が美しい。決してマット・デイモンを変容させるだけの装置として子供を描いてない。それでいて人物に寄り添い過ぎない適切な距離感に感動する。

ブラック・フォン(2022年製作の映画)

3.5

妹の予知夢がデリクソンの過去作における映像検証のような役割を担う。家の位置関係が、正面切り返しからの抱擁の為だったのかと思うほどの素晴らしさ。監禁パートが黒電話でやや定型的に進行するのが難点だけど、男>>続きを読む

カード・カウンター(2021年製作の映画)

3.7

カードゲームによるカタルシスは皆無。モーテルの家具を白い布で覆い、麻紐を巻き付けるなどの偏執的な行動が、凄惨な記憶を仄めかすように反復され、決定的な瞬間はフレーム外で処理される。あまりにも静謐でストイ>>続きを読む

ロスト・シティZ 失われた黄金都市(2016年製作の映画)

3.1

ダリウス・コンジの格調高いルック以上に胸を高鳴らせるものは正直無く、随所の停滞感が少々苦しい。流麗な繋ぎによって、密林という異界と日常が視覚的にも地続きとなり、その生死が混在した物語に相応しい鏡面を活>>続きを読む