chickenheartさんの映画レビュー・感想・評価 - 3ページ目

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食人族(1981年製作の映画)

3.7

N・W・レフン-セレクト/1‪◼︎「途中退場者続出!」の類が効かなかった身としてもキツかった。スプラッター初心者という己の身の程を知った。しかもあそこまでスプラッターを通してもなお一定のメッセージ性を>>続きを読む

メトロポリス(1927年製作の映画)

4.0

‪◼︎初期映画の形態にして、映画/物語論的な自己言及に迫っている。「脳と手の媒介者は心でなくてはならない」、つまり脳/資本家と手/労働者を結ぶ、心/物語というわけだ。骨董品なので正確な評価は測りづらい>>続きを読む

アンストッパブル(2010年製作の映画)

3.6

‪◼︎とても潔いシンプルな作りである。全米が見守る中、家庭不和を抱えた落ち目の男二人が無人暴走列車を止めようとして、文字通りただただ止めに行って「男」を見せる。しかし暴力性の象徴(無人列車)がやけに淡>>続きを読む

マグノリア(1999年製作の映画)

4.3

‪◼︎物語/情報を圧縮、そしてそれを鮮やかな映画的演出によって映えないはずの小さな、湿っぽい物語群を映えさせる。そして有り得ないファンタジーを突如召喚する事で「文脈」が発生しその小さな物語たちはやがて>>続きを読む

マイティ・ソー バトルロイヤル(2017年製作の映画)

4.2

‪◼︎『銀魂』さえ連想させるような軽快なノリが気持ちいい。前作のプロットに張り付いているようなマンネリ感を見事克服しており、ソー/ロキの兄弟モデルの奥行きが増している。神話的世界観の中にキャラクターた>>続きを読む

炎のランナー(1981年製作の映画)

3.3

‪◼︎人種に配慮した『永遠のゼロ』(13)といったところ。神か王か、といったローカルな社会事情が絡んでいるが、そこから普遍的なテーマをシリアスに引き出しているか、となると弱い。史実の通りエピソードをち>>続きを読む

マイティ・ソー ダーク・ワールド(2013年製作の映画)

3.4

‪◼︎前作から引き継がれた荘厳なイメージと人間臭い仕草との対立という良心的な部分の断片は見受けられたものの、やはりプロットが先行している所が気になる。兄弟の確執を描くにも、コードを外すことも必要だと思>>続きを読む

空の青さを知る人よ(2019年製作の映画)

4.1

◼︎『あの花』は九〇年代/ゼロ年代という区分法により「若いが、挫折した」青年像を映した。今回の『青い空』ではゼロ年代/一〇年代という区分により、「年老いて、挫折した」大人像が現れた。しかし『さよならの>>続きを読む

ブギーナイツ(1997年製作の映画)

4.1

◼︎『インヒバレント・ヴァイス』に近い時代の区分法によって構成されている。こちらは七〇年代/八十年代という区分で、個室用ビデオの到来によって古きよき映画/ヒーローたちが淘汰されていく様子を描く。しかし>>続きを読む

西部戦線異状なし(1930年製作の映画)

4.2

◼︎あの初期トーキー映画特有の粗さと演者の大仰な身振りが奇跡的に〈暴力〉の肉薄へと結びついている。「反戦」というカテゴリーは厳密には見合わない。それを通り越した真正の、一流の自然主義が内在している。

殺人の追憶(2003年製作の映画)

4.0

◼︎正義を断念するに至る構造が周到に用意されている。アメリカ映画と近く、やる/やられるという単層的な関係が目立つ韓国映画だが、ポン・ジュノは複雑化した曝け出しの現実をそのまま表現する。

海よりもまだ深く(2016年製作の映画)

4.0

◼︎戦後的な、内省的な父性像の機能が失った現状を踏まえた上で、その後の展望を描く。内省が効かなくなった様子を小気味良くシニカルに、しかし否定しきれないという微妙なラインを狙っており、極めて絶妙な塩梅。>>続きを読む

恐怖の報酬(1953年製作の映画)

3.8

◼︎中々気持ちのいい自暴自棄さ。あのスロースタート感が逆に効用になっているか。

パンチドランク・ラブ(2002年製作の映画)

3.7

◼︎PTAが素直に青年であり得た現時点では最後の作品。全編を通して、残尿感を伴うもどかしさが演出され、恋愛の達成がそこへの柔和剤として機能している。神経症的なモチーフが効果的に扱われ、最終的に神経症的>>続きを読む

MEMORIES(1995年製作の映画)

3.7

◼︎『彼女の想い出』はベタなトラウマの還元物だが、後者2つがミリタリーへのこじれたコンプレックスが表出していて面白い。『最臭兵器』は少年の悪ふざけ的なモチーフと兵器/ミリタリーをぶつけ、『大砲の町』は>>続きを読む

シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ(2016年製作の映画)

3.9

◼︎ルッソ兄弟らしく、間延びが目立つ一方キメる所は完璧にキメる。本来共に手を取り合うハズの英雄二人が決定的にすれ違う過程を丁寧に見せる。「本来あり得たはず」のものを突き崩し、その上で「英雄像」を探求す>>続きを読む

ルック・オブ・サイレンス(2014年製作の映画)

4.4

◼︎正直にいって天地がひっくり返る衝撃を受けた。虐殺者が放任されているというコンテクストのドギツさ。そしてあの背後にリベラル民主主義「という名目で」アメリカが噛んでいるという所に注目するべきだろう。つ>>続きを読む

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド(2019年製作の映画)

4.3

◼︎『アベンジャーズ エンドゲーム』(19)に近く、劇映画を取り巻くフィクション性の総括を行なった点でタランティーノ映画以前の意義深さがある。実在の事件を背景に、変えられない歴史を変えられたかもしれな>>続きを読む

トーク・トゥ・ハー(2002年製作の映画)

4.1

◼︎究極のセカイ系と言うべきか。不幸な要因による深刻な性的コンプレックスから、倫理的規範を踏み越える冴えないベノグノ。しかし同じような不幸な境遇のマルコがその男とコンタクトすることによって、ベノグノの>>続きを読む

ポンヌフの恋人(1991年製作の映画)

3.9

◼︎1989年から1991年という大きな時代の変わり目/冷戦構造の終結を背景にしている点でエポックな作りになっている。持たざる者二人が「新しい時代」が来る前に出会い、放蕩の日々を過ごす。しかし片方の女>>続きを読む

ある愛の風景(2004年製作の映画)

4.1

◼︎「加害者」にならざるを得なかった男の〈責任〉が問われていく。最終的には〈母〉への懺悔で落ち着く所などは良くも悪くも古典的であることには違いない。しかし男は元々「強い父」だったというフックによって、>>続きを読む

マンダレイ(2005年製作の映画)

3.4

◼︎『ドックウィル』(03)が先に来ているとなると、微妙なポジショニングを強いられている。ただトリアーの本心はわかりやすいカラクリで見せてくれている。こちらのラストで決めるYoung American>>続きを読む

ゼア・ウィル・ビー・ブラッド(2007年製作の映画)

4.5

◼︎「露悪」と「偽善」。石油/近代システムを背負った父とそれに乗っかる教祖という構図を用いて、古典的な、しかし端正な悲劇が完成されている。00年代当時(イラク戦争/9.11)、20世紀後半の広義の自由>>続きを読む

ザ・マスター(2012年製作の映画)

4.0

◼︎PTSDを負う錯乱症の男とカルト教団の父たる教祖。一見関連性がなさそうだが、「この現実」の世界を否定しようとしている点では共通している。バイクでひたすら荒野を走る、しかし目的らしい目的がないあのク>>続きを読む

グリード(1924年製作の映画)

4.0

◼︎『美女と野獣』のキレイな要素をほぼほぼ反転させたような「俗」に徹した構成だ。たしかに初期映画の形態なので、気になるところが多々あるにしても、驚くべき強度がある。勃興中だった「欲望 greed」を回>>続きを読む

インサイダーズ 内部者たち(2015年製作の映画)

3.5

◼︎市民運動とは馴染みが薄い日本では中々新鮮な殺伐とした、緊張感のある社会観だ。しかしながらメインの凹凸コンビを綺麗に「映え」させるキャラ萌え要素が混在しており、その理想的な関係性が先行したせいか、個>>続きを読む

オズの魔法使(1939年製作の映画)

3.9

◼︎ファンタジー/魔法を信じる態度と信じない態度とが相反し、最終的に後者をとる、つまりファンタジーを克服する人間の姿を映す。ブリキを筆頭にファンタジーが決してかっこよくないことを認めている点も注意すべ>>続きを読む

記憶にございません!(2019年製作の映画)

3.9

◼︎評価が難しいところ。中高年たちがはしゃいでいるあの様子にはどこかイタさがある。しかしそのイタさが「永田町を茶化す」という重い命題と重なることに妙な調和(あながち現実と大差がない)があった。ユーモア>>続きを読む

聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア(2017年製作の映画)

3.8

◼︎謎の青年の薄気味悪さ「によって」、というよりは「がきっかけで」卑しく暴力的な父母像/徹底して被害者たるその子たちの像が浮き彫りになる構造になっている。最終的には青年の呪詛によって父は哀しいくらいシ>>続きを読む

ヘイトフル・エイト(2015年製作の映画)

3.7

◼︎タランティーノの技術力/構想力がわかる分、密室の小競り合いに終始しているためなかなか難しいところ。序盤の吹雪の中の「キリスト/救済者の死」を非常に印象的に扱った描写の荘厳さに背筋を正す。しかしその>>続きを読む

マトリックス(1999年製作の映画)

4.2

◼︎4DX版。 没人格的な暴力に対して、それを俯瞰する人間が抵抗する。「目覚めた視線」に立つという点で高次な態度であると同時に、陰謀史観的な精神構造に近い危うさもある。対人格ではなく、対システムの物語>>続きを読む

ウェルカム・トゥ・サラエボ(1997年製作の映画)

3.9

(200本目)◼︎メディアを通して物語ることの可能性と、倫理的な際どさに肉薄した。救うことができたかもしれない群衆が度々映像に入り込む。どう頑張っても、彼らを完全に救済し得ることは不可能だ。正義を迫ら>>続きを読む

四月物語(1998年製作の映画)

3.5

◼︎岩井俊二の技巧は伝わるものの、ちょっとミニマムに志向しすぎているか。『Love letter』(95)からファンタジー性を抜き取り日常描写にべったりと張り付く、ある種の実験といえる。明らかに「終盤>>続きを読む

U・ボート(1981年製作の映画)

4.1

■下手に冒険せず、体臭/汚い個室/狂気/爆音などの小道具で身体を痛めつけ続ける慎重な表現姿勢である。わざわざ話を陸に持っていくところも見事。人が動かなくなる(死ぬ)ということに、感情やドラマはいらない>>続きを読む

幻の光(1995年製作の映画)

3.5

◼︎「喪に服する」ということの形式美。ただやはり個人的にはあのカット割りやら自然主義描写しかり形式に張り付きすぎているという感はあった。95年に是枝は出発しているが、オウムテロ/阪神淡路震災によって戦>>続きを読む

人間失格 太宰治と3人の女たち(2019年製作の映画)

3.5

◼︎蜷川実花が批判される理由が良く分かるとともに、確かに印象には残るフックは感じた。「キャラ演芸」とでもいうべき大仰さをどう捉えるか、というところ。いわゆる「文学」をポップかつスキャンダラスに解体する>>続きを読む