chickenheartさんの映画レビュー・感想・評価 - 4ページ目

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ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス(2017年製作の映画)

4.2

◼︎「所詮一介のヒーロー物」だという腰の低さを見事に逆手に取った。前作で発見された80年代的なファンタジーを上品にはならない程度に装飾していく姿勢が強化された。ガンは自らの強みをわかっているようだ。そ>>続きを読む

オーロラの彼方へ(2000年製作の映画)

3.8

◼︎『インターステラー』(14)に影響を与えた諸作品の中では最もそれがわかる構成である。「今、ここ」への感度を重層的な構造と『君の名は。』(16)的なかなり振り切った時空エンタメ性で投げ切る。豪速球を>>続きを読む

ストーカー(1979年製作の映画)

3.8

◼︎ゾーン/世界の外部存在の守護者たるストーカーとインテリ二人との対立。後者が「脆弱」で「愚か」であると異様な静けさでもって示す。『惑星ソラリス』(72)よりは露骨な(当時の)インテリ/マルクス主義の>>続きを読む

ライトスタッフ(1983年製作の映画)

3.6

◼︎基本的に自己実現/外部への志向に執着する男性性のロマンティズムを素直になじっていく構成であり、好きになれない部分は多々ある。しかしアメリカ/公共の為にではなく、明確に己の為に「飛ぶ」イェーガーには>>続きを読む

花よりもなほ(2006年製作の映画)

3.4

◼︎文弱な侍/戦士のヘタレさをやんわり肯定するプロセス。文弱武士のキャラ造形は上手いが、この手の抑揚を制止した是枝映画は、似ているようでまだ「花」のある『海街diary』(15)との比較だったり、この>>続きを読む

東風(1969年製作の映画)

2.9

◼︎共同制作なので個人を責めても仕方ないが、残念ながら「(とても)ダメな方のゴダール」。物語構造をバラすのはいいが、現代史における(あるタイプの)人権派/反体制陣営特有の悪癖「何となく気に入らないもの>>続きを読む

ザ・スクエア 思いやりの聖域(2017年製作の映画)

4.2

◼︎「新たなミヒャエル・ハネケ」とでもいうべき鋭敏な創作態度と見た。その気味の悪さに反して高い評価を与えざるを得ない。あの「モンキーマン」という名の表現行為-がもたらす蛮行を筆頭とする得体の知れないキ>>続きを読む

ブリーダー(1999年製作の映画)

3.8

◼︎荒い初期作品ながらレフン節を思わせ、ジャンクな雰囲気作りがうまい。突然恋人から妊娠の事実を告げられ、父であること/責任能力を問われた一人の映画オタクが錯乱するところから起点が生ずる。
◼︎共感の余
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ディア・ドクター(2009年製作の映画)

3.7

◼︎一人の奇妙なエゴを震源として、さまざまな余波を生んでいく光景を静かに映す。世界にはウソ/ファンタジーが必要な部分があるというテーゼが淡々と、しかし着実に流れる。ただ『蛇イチゴ』(03)のスケールで>>続きを読む

ゆれる(2006年製作の映画)

4.4

◼︎地方の家長崩れといういかにもな「現代の象徴」の扱いが神がかり的にうまい。香川の嗤いをも惹き起こさせる演技が「滑稽さ」のインフレーションを起こす。都会的な弟と農村の呪怨に憑かれた兄とが、怨讐の果てに>>続きを読む

ラヂオの時間(1997年製作の映画)

3.9

◼︎80/90年代に肥大し続けたマス・メディア内部のギョーカイ性自意識を戯画化しつつも、メディアを通じて物語ることのポジティブな意味を探す。最近で言う所の『カメラを止めるな!』(18)だが、やはりこち>>続きを読む

天気の子(2019年製作の映画)

4.1

◼︎明らかに『君の名は。』(16) へのケジメというべきだろう。『君の名は。』は「震災の記憶」というものに対して変わるセカイ/変わらない人々図式をベタに作動させた結果、「変わるセカイ」側がなかったこと>>続きを読む

アントマン(2015年製作の映画)

3.6

◼︎『ドクター・ストレンジ』(16)と同じ匂いがするアイデア勝負系。ところがやはり同作同様それを本気で作り込んでいる。大きなものとしてのヒーローを綿密な計算で相対化、背景に潜り込む小さなものとしてのヒ>>続きを読む

キャプテン・アメリカ ウィンター・ソルジャー(2014年製作の映画)

3.8

◼︎CAシリーズということもあって、ダイレクトに現代世界の危機感/自由主義陣営の内部分裂を端的に表している。大戦時の記憶を反映しすぎている嫌いはあるが、時空を超えた元戦友との対峙などかなりシチュエーシ>>続きを読む

スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム(2019年製作の映画)

3.9

◼︎『エンド・ゲーム』(19)ショック直後の仕事としては流石の一言。明確にフェイクニュース/ポストトゥルースの中の若者たちを捉える姿勢をみせた。重い話題の取り扱い方の緩急がこれまたうまく、特にあの「F>>続きを読む

ほしのこえ(2002年製作の映画)

3.7

◼︎いきなり「世界」というワードを提示し、そのまま淡々とモノローグが続いていく。そして「今、ここ」への感度が最高潮になった途端物語の幕が閉じる。あまりに初々しい一編だ。新海作品にしては珍しくと闘ってい>>続きを読む

隠された記憶(2005年製作の映画)

3.8

◼︎ハネケ映画にしてはそこまでパッとしない印象があるものの、よくよく観ると厭らしい鋭利さ。『ファニーゲーム』(97)、『ピアニスト』(01)よりかは分かりやすい構造になっており、過去/歴史(ここではフ>>続きを読む

空軍大戦略(1969年製作の映画)

3.6

◼︎イデオロギー抜きの丹念な「情況」を写していく。躊躇いもなく流されていくファンファーレは、同系統の英戦もの『ダンケルク』(17)と比べると中々異様にして目を見張る。しかしあの独特の質感はしばらく見て>>続きを読む

マイティ・ソー(2011年製作の映画)

3.8

◼︎キャラクター的観点で見ていけば、MCUシリーズ中の一二を争うほどの「おいしさ」をソーを中心に感じる。全知全能の域に近い神々の戯れと「日常系」的な演出のコントラストが軽やかにキく。全体的に正しきヒー>>続きを読む

ブラックパンサー(2018年製作の映画)

3.7

◼︎明らかにトランプ時代への突入を告げたことがわかるMCUシリーズ。安易にマジョリティ/マイノリティ構図に持ち込まず、黒人クラスタ内での内ゲバをしたたかに写す。マイノリティのアイデンティティを繊細にデ>>続きを読む

惑星ソラリス(1972年製作の映画)

4.2

◼︎厳密に見ていけば、類似的な『2001年宇宙の旅』(68)より強度を備えた未来学的な思索だったと思う。60年代と70年代との断絶。超越的な存在である生命体/海が『2001年-』のモノリスに匹敵するも>>続きを読む

スローターハウス5(1972年製作の映画)

3.6

◼︎久し振りに鑑賞中ひどく困ることになった。発表が時期的にも60年代後半-70年代前半ということで、近代/歴史の進歩の終焉を予感したかのような無秩序感に満ちている。ただ確実に戦中期の爆撃体験が背骨とな>>続きを読む

ドッグヴィル(2003年製作の映画)

4.2

◼︎人にとても勧められないが、〈本質〉を綺麗についたお手本のような見事さ。本音(被差別民へのしわ寄せ強要)と建前(善良な市民像)が使い分けられるセカイと本音(殺戮と略奪を辞さない)しかないセカイが、終>>続きを読む

奇跡の海(1996年製作の映画)

4.2

◼︎構造的には『ダンサー・イン・ザ・ダーク』(00)と通づるが、あちらが端的な「事実」を伝達するのに特化しているのに比べ、こちらは束の間の喜び、理解しがたい狂気的な愛情表現の多岐さと表現のバリエーショ>>続きを読む

野火(2014年製作の映画)

4.0

◼︎正直に言ってしまえば、総力戦下における個人の非人道的状況(マス・メディアによるトップダウン式暴力)というものを、ボトムアップ式ソーシャルメディアによる群衆の暴力渦巻く現代で素直に描きなおすのはやや>>続きを読む

シン・ゴジラ(2016年製作の映画)

4.4

◼︎ゴジラが様々な〈意味〉を込めて、日本社会を襲う。放射能を撒き散らす「それ」は3.11であるし、旧き社会システムの表象でもあり、現代の暴力を様々に内包する。
◼︎若い官僚達はゴジラもろとも周辺の空間
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リミッツ・オブ・コントロール(2009年製作の映画)

3.8

◼︎ジャームッシュ映画内でも独特の影の薄さを有し、やっとのことで今回観れたが、なかなかどうして色々と脆い作りだが、先端的な批評性を放っていた。
◼︎意図的に前面に押し出している匿名性(キャラクターに人
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キャプテン・アメリカ ザ・ファースト・アベンジャー(2011年製作の映画)

3.5

◼︎〈弱者〉を知る、新しく正しいアメリカン・ヒーローのイメージの土台作りといったところ。冷戦前夜/絶頂期の記憶とダイレクトに結びつく点で、MCUも核心に最も近いコンセプトと言えるかも知れない。ここ最近>>続きを読む

2001年宇宙の旅(1968年製作の映画)

4.2

◼︎言って見れば、キューブリックの超近代主義が沸点に達し、68年という近代史の終わりと結合されたわかりやすくエポックメイキングな達成点。冷戦という表象から逃れられていないとはいえ、文化史にその名を刻ん>>続きを読む

フォロウィング(1998年製作の映画)

4.1

◼︎「他人のこと」/「ドラマが提供するfiction」に取り憑かれた男が他人に文字通り取り込まれる過程を極めてシャープかつシステマチックになぞった、ノーランのデビュー作に相応しい〈鋭さ〉だ。しかも結果>>続きを読む

ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー(2014年製作の映画)

3.8

◼︎SW的な勧善懲悪スペースオペラと懐メロポップスへのリスペクトを現代アメリカヒーローものにおいてプッシュした着眼点にまず高評価。OPシーンの廃墟と陽気なポップスとのコントラストが見事だ。その嫌味っぽ>>続きを読む

ファニーゲーム(1997年製作の映画)

4.0

◼︎すごいものを見た。そしてメディア論的に読み込むとその筆舌しがたいお下劣さに反して(いや、そのためのお下劣さなのだろうが)極めて批評的な作品だと言わざるを得ない。つまり「虚構圏/劇映画」の外側に人が>>続きを読む

アラバマ物語(1962年製作の映画)

3.9

◼︎社会の構造的な隔離/排除を真っ直ぐ見つめながらも、易々と正義が通らない光景を映す。「今、ここ」のグロテスクな現実への対応というより、「これから」起きていくであろう現実への「覚悟」のような態度が垣間>>続きを読む

ANIMA(2019年製作の映画)

3.6

◼︎PTA×RHという豪華なコラボをNF資本がやったというところがやはりポイントか。やたらにハイスケールなセットを使わず、地下鉄、路地裏辺りの生活世界にファンタジーを注入することに徹している。近年の「>>続きを読む

デッドマン(1995年製作の映画)

4.3

◼︎「deadman/一度死んだ男」と「nobody/誰でもない男」による黙示録。deadmanという語彙を筆頭に、ジャームッシュ映画随一と言っていいほどの言語センスが光る。ありえそうもないこの二つの>>続きを読む

ハードエイト(1996年製作の映画)

3.6

◼︎圧倒的に弱い若造と圧倒的に強い老紳士。実質的デビュー作というのもあって簡素だが、手品のような粋な演出と展開に若いPTAの活力を感じる。少しタランティーノ的か?最後の「袖」は「所詮マヤカシ」かも知れ>>続きを読む