chickenheartさんの映画レビュー・感想・評価 - 5ページ目

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ファントム・スレッド(2017年製作の映画)

4.1

◼︎時代性から取り残された男と時代性を追いかける女。互いのエゴイズムが沸点に達した時に治療法としての「劇薬」が投入され、再結合するというおぞましい共犯関係。誰が思いつくであろう悪夢の公式が見事に完成さ>>続きを読む

インヒアレント・ヴァイス(2014年製作の映画)

3.5

エンタメ的にはかなり辛かったことは告白しておく。注意逸らし的なナレーション、気怠げで意図がはっきりしない台詞のオンパレード。ただ言葉にし難い淋しさだけが懐メロと共に漂う。それはサブカルチャー/ヒッピー>>続きを読む

女と男のいる舗道(1962年製作の映画)

3.5

このタイプのゴダール映画でよく思うことだが、考えれば考えるほどおかしな構成。DVDパッケージの裏面にあるあらすじとは全く切れた装飾が映画のかなりの部分を占めており、ふとした拍子に物語が進行する。最後の>>続きを読む

ピアニスト(2001年製作の映画)

4.0

◼︎トリアー映画にも通じる、タテマエ/上品なものへの嫌悪感が徐々に露悪的に暴発していく。深刻な性的欠損を抱えた女性教師が激しく幼児退行していく様は皮肉にもピアニストたちが嫌っているロックミュージックの>>続きを読む

シンドラーのリスト(1993年製作の映画)

4.5

◼︎劇映画のみならずあらゆる現代の芸術文化を発展へと導いた起動力となった〈トラウマ〉をめぐる物語の典型。社会主義幻想亡き後の、徳のある資本主義というモデルが表れてる。スピルバーグの良くも悪くも勧善懲悪>>続きを読む

タクシー運転⼿ 〜約束は海を越えて〜(2017年製作の映画)

3.8

ジャーナリズムの根源を現代韓国映画的なスペクタクルでもってストレートに示しつけた。ハキハキとした喜怒哀楽に一映画としてのクオリティを感じた一方、アクション映画を思わせる演出が随所にあり、そこはジャーナ>>続きを読む

シュリ(1999年製作の映画)

3.8

凄まじくベタだが、綺麗にやり抜く様を見せてくれる。劇画マンガチックなスペクタクルがむしろリアリティへ接近する。現代韓国映画の達成に至る萌芽。

鉄男 TETSUO(1989年製作の映画)

3.7

基本的に絶叫で済ませるバイオレンスの怪作。流石に荒々しすぎるものの、シンプルにいけば一種の激烈なバブル批判として通るか。ただ資本/機械に犯される人間の戯画を通り越して、「言語」を介さない暴力がせりがっ>>続きを読む

ひかりのまち(1999年製作の映画)

3.8

いわゆる群像劇だが、そのジャンルでできることを自覚的に行なっている。全く異なる人びとの境目で、ふと似たような点と点が浮かんだり消えたりする。「結局お互い様かもしれない」というこの感覚は劇中で強調される>>続きを読む

ダンサー・イン・ザ・ダーク(2000年製作の映画)

3.6

◼︎前々から意識していた名の通った鬱映画。その徹底してる感は必要以上に伝わったし、巷での評判の意味もよくわかった。ただ胸糞悪いというのには間違ってないのだが、卒なく胸糞悪いのでそこに強度/批判力を見る>>続きを読む

12人の優しい日本人(1991年製作の映画)

4.0

◼︎厨坊のころにめちゃくちゃ感心した一作。久しぶりに見返したらあの怠さこそこの映画の顔なので仕方がないのだが、キャラの動かし方や進行重視の構成に少し引っかかりを感じてしまい、通過した年月に少し悲しくな>>続きを読む

ドクター・ストレンジ(2016年製作の映画)

3.7

清々しいアイディア一本勝負。基本的に「無敵」という状態の快楽感あるいはそれ故の問題が連鎖していく『ワンパンマン』(15、19)的なものを感じさせる。視聴覚のレベルでは極めて高度なわけだが、バトル系の底>>続きを読む

DOCUMENTARY of AKB48 NO FLOWER WITHOUT RAIN 少女たちは涙の後に何を見る?(2013年製作の映画)

4.0

明らかに前作の『show must go on』と空気が違う(あるいは悪い)。前田敦子という中心を失ったAKBで起こる不穏な空気感を拾い上げている点ではあまりによくできている。と同時にそれはAKBシス>>続きを読む

コンセント(2002年製作の映画)

3.0

流石に色々と時代を感じた。確かに原作力というべきか『lain』(98)辺りを連想させられる序盤で、ウェブ時代的な陰湿さをリアリスティックでもアニメ的でもないような薄気味悪さでなじっていく筋書きにはイン>>続きを読む

グランド・ブダペスト・ホテル(2014年製作の映画)

4.0

素直に感心するタイプの上質なガラス細工のよう。物語モデルとしての二〇世紀/大戦周辺の記憶をあたかもディズニーのようなミニチュア感でコーティングする。さらにそれに合わせて登場人物たちを豪快にキャラに還元>>続きを読む

夏至(2000年製作の映画)

3.8

◼︎前半から中盤にかけての中々見ることのないベトナムの東洋神秘的な「キレイ」さが投影されるが、絶妙なあんばいで「キレイはキタナイ」へシフトしていく静かな展開が秀逸。男のエゴに翻弄される女、という伝統的>>続きを読む

いつのまにか、ここにいる Documentary of 乃木坂46(2019年製作の映画)

3.7

◼︎一〇年代前半の激変の時代を生きた乃木坂を映した前作と比較してしまえば、一〇年代後半の平穏な時代の今作に関してやはり気になる所はあった(制作者も本編中にこのことを告白している)。齋藤飛鳥→飛んでる鳥>>続きを読む

マイノリティ・リポート(2002年製作の映画)

3.6

00年代/9.11後という情報化の途上において、スピルバーグが「固有名詞によらない革新的なSFイメージ」を捉えた現時点では最後の作品か。スピルバーグ特有のゲテモノ/スピーディー描写の秀逸さが光る。ただ>>続きを読む

ハドソン川の奇跡(2016年製作の映画)

3.9

絵に描いたような地味な佳作。史実をしたたかになぞりながらも、9.11以降の挫折感を拾いあげ、「テクノロジーの死角」を突く。特にこの突き方が絶妙。「テクノロジーの暴力」ではなく「テクノロジーのズレ」をす>>続きを読む

DOCUMENTARY of AKB48 to be continued 10年後、少女たちは今の自分に何を思うのだろう?(2010年製作の映画)

3.5

泥臭く闘うアイドルの誕生を映す。誕生に至る歴史の検証というよりは「自己紹介」とでもいうべき構成で、次作の荘厳さと比べるとかなりあっさり感。乃木坂の初ドキュメンタリーが重々しい「告白」のシーンから始まる>>続きを読む

光の雨(2001年製作の映画)

3.9

「あさま山荘」を基にしたフィクションを演じる役者たちという、入り組んだ謎構成だが中々面白い試みとみた。史実をやや弄った妙なノスタルジーが見え隠れする立松原作が「それを演じる役者」によって絶妙に相対化さ>>続きを読む

ノー・マンズ・ランド(2001年製作の映画)

4.1

ネットリとした「絶望」の感触。「暴力」の成立とその根源をたった三人の兵士から成る悲劇で光を当てるという、中々見ない類の職人技。「反戦」というモチーフから乾いた、最悪の「笑い」がこぼれ落ちることをつぶさ>>続きを読む

アメリカン・ビューティー(1999年製作の映画)

4.5

◼︎あまりにも良くできた滑稽さ。「しょうもない後味の悪い下世話噺」を優れた演出術によって、あたかも「神話」に見立てた時の「ぶつかりそうもない二つのものがぶつかってしまった」感がこの映画の怖さを増幅させ>>続きを読む

ヒックとドラゴン2(2014年製作の映画)

3.4

「〈動物〉そのものへの対峙」から「悪用される〈動物〉との対峙」へとシフトしたが、いかんせん超えるべき〈父〉とは最初からよろしくやっている為主題が前作と比べボヤけたか。ああいう『クラロワ』的な世界観と物>>続きを読む

スパイダーマン:ホームカミング(2017年製作の映画)

3.8

学校的日常とその外側の非日常を両立させようとするも、非日常が日常を浸食していく。学校/とその外側という構図は日本ならこれがシリーズの中心に来そうな感じがするところは面白い。両立が万事うまくいかない所に>>続きを読む

ミッドナイト・エクスプレス(1978年製作の映画)

3.7

凄まじい絶望感と汚さに圧倒するが、それに匹敵するイスラーム的なものへの強烈な他者感を割り切れるかで人を選ぶ。それ故にそこまで高く評価しかねる困った代物。ただそこが一周回る迫力ではある。オリヴァー・スト>>続きを読む

イン・ディス・ワールド(2002年製作の映画)

3.7

人が限りなく「貨物」になる瞬間を捕まえている。ハンディカム/ドキュメンタリータッチとは今となっては目新しいものではないが、独特の荒っぽさと素朴なパキスタン少年の採用によって「海の向こうの戦争」がせり上>>続きを読む

海獣の子供(2018年製作の映画)

3.8

〈人間〉と〈動物〉を横断するアクロバティックな曲芸。『未来のミライ』などで未遂に終わったローティーンの〈世界体験〉に接近し映像化した点では近年まれに見る異彩。安易な家族回帰になりそうな傾向もなきにしも>>続きを読む

リズと青い鳥(2018年製作の映画)

3.9

過去視聴:ものすごく遠回しで繊細な決断映画。『聲の形』で剥き出しになった実存性を職人技によってアジャストした唸らせる仕事。欲を言えば「説得」より「音色」で説得を完遂させて欲しかったか。

機動戦士ガンダム 逆襲のシャア(1988年製作の映画)

5.0

オールタイム・ベスト。ここまで「いちいち面白い」ものはないと思う。保守派(アムロ)と進歩派(シャア)、あるいは理性主義と実存主義、シニシズムとニヒリズム…二つの理念が摩擦しぶつかり合う。多分こういう相>>続きを読む

アベンジャーズ/エンドゲーム(2019年製作の映画)

4.3

無印アイアンマンとアベンジャーズシリーズしか見てこなかったが、あの大行列をここまでまとめ上げることには、場外ホームランを見るような快感がある。キャプテンマーベルの出番下手や相変わらずの大所帯によるハイ>>続きを読む

アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー(2018年製作の映画)

4.2

ヒーローたちを巡る起こってはいけないことが起こるまでの顛末。サノスの圧倒的な無双感と少しの後ろめたさとのドライヴ感がキく。〈代償〉の重さが前作アベンジャーズと比べ重く、深い。MCU並びに現代アメリカア>>続きを読む

アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン(2015年製作の映画)

3.7

マーベルシリーズにはうといが、1作目よりかは物語構造の深みが増している。中心であり、アントレプレナーでもあるアイアンマンの〈欲望〉への疑い。ただやはり他シリーズの摂取が足りないか。

ヒックとドラゴン(2010年製作の映画)

3.7

可能性としての「オタク」。マッチョな父を超える/調停するストーリーとしてはややコンパクトだが一流な持ち運びだ。年月を経てこのオタク・イメージの再考が求められている。

ドリーマーズ(2003年製作の映画)

4.2

六〇年代ノスタルジーものとしては高度なレベルの批評性をみる。流石にこれは…という点も含めて、この汚さ/動物回帰こそ六〇年代革命の本質だといっていい。若い闘志の内片方は転向、後の消費社会を支える中産階級>>続きを読む

アラジン(2019年製作の映画)

3.8

「ロックストック」、「スナッチ」に熱狂した身として、ガイ・リッチーとディズニーとのタッグに驚きと寂しさ。慎ましくアラジン/ディズニー・ロマンスをリブートしてみせている極めてスマートな出来。強大な魔法を>>続きを読む