あしからずさんの映画レビュー・感想・評価 - 4ページ目

あしからず

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周遊する蒸気船(1935年製作の映画)

4.2

愉快。まさに蒸気のように、水が沸騰する如くゆるりとした立ち上がりからの超加速。旧約聖書と南北戦争を下敷きに、死刑宣告を受けた甥のため怪しげな薬を売る詐欺師の叔父と花嫁が奔走。投げ縄で捕獲され水中に引き>>続きを読む

素晴らしき休日(1938年製作の映画)

3.9

自由か安定の二項対立と象徴的な遊戯室。お決まり反資本主義でお金揉めだけどキャサリンヘプバーン×ケイリーグラントのアクロバットが鮮やかに風穴開けてくれて最高。ブルジョワ思想に早々と疲れたニヒリズムなアル>>続きを読む

ウェンディ&ルーシー(2008年製作の映画)

4.0

家と職を得るために家と職が必要という社会のパラドックスとヒューマニズムの入る余地のないルール(規則は勿論必要)は躓いた人間を拒み、傷が乾く隙も与えない。ロードどころか職なし家なしその上車も犬も失ったウ>>続きを読む

病毒の伝播(1926年製作の映画)

3.4

いかにも文部省制作な衛生管理アニメーション。コロナ禍の今NHKで流しても違和感なさそう。あまりに憎たらしさ満点の病魔の擬人化

生活の設計(1933年製作の映画)

3.9

今まで観た三角関係の中で一番幸福。どこまでも即物的で本能的なとこがいい、ルビッチしか描けない△。「突然炎のごとく」の傷が癒やされた。麦わら帽子や軍縮会議など洒落た比喩多用の所謂エスプリの効いた会話と何>>続きを読む

天使(1937年製作の映画)

3.8

マレーネディートリッヒの美しさが飽和状態。そのまま羽ばたけそうな睫毛と神秘的な一筆書き眉毛。目立った展開はないけど洒脱な会話と全てを見せない演出がきまってる。皿の残し具合でわかる精神状態。
ラストの一
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(1946年製作の映画)

4.7

監督名その他なんの記載もないけど題名と制作年&国が合致してるのでこれと信じて。
政岡憲三自身が1番熱を込めたと述べる作品で、オーケストラ演奏のウェーバー作曲”舞踏への勧誘”と共に魅せる生命讃歌に満ちた
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線畫 つぼ(1925年製作の映画)

3.5

アラビアンナイトの漁師と魔神の物語。描き込みの多い独特の画で異国情緒が漂ってる。植物がめちゃうまい。毎秒ごとに変わる表情が可笑しいやら不気味やら。
吹き出しで喋る演出で完全に動く漫画。

教育線画 姨捨山(1925年製作の映画)

3.7

難題タイプの姥捨山で、水晶の話はオ〜と感心。断面図がおもしろい。画家志望だったらしい山本早苗の孝行息子のポートレートや細筆で描いたような作画、伝統文様など用いたデザイン的な演出が効いてる

イースター・パレード(1948年製作の映画)

4.0

見るだけで夢のような世界にトリップできるテクニカラーは合法ドラッグ。華やかなイースターと相性ぴったり。おもちゃ屋での鮮やかなダンスからの流れるようなお会計で少年からウサギを強奪な冒頭から掴まれる。
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トップ・ハット(1935年製作の映画)

3.7

騒音苦情の出会いから始まる両片思いすれ違いロマコメ。やはり1番の見所はダンス。足自体が意志を持ってるかのようなアステアの華麗かつ優雅なタップは本当にすごい。羽のドレスで踊るロジャースはまるで重力を感じ>>続きを読む

教育お伽漫画 兎と亀(1924年製作の映画)

3.6

鳥獣戯画風で人間味あふれる兎と亀の動作。ぷかぷか浮かぶ居眠りのグーやアホーのダイレクトアタックなど文字遊びが愉快。逆転でおおはしゃぎなカメのドヤ顔ダンスかわいい

塙凹内名刀之巻(なまくら刀)(1917年製作の映画)

3.8

現存する日本最古のアニメーション。おニューの刀で試し斬りしたい侍が按摩さんや飛脚に返り討ちにされるコメディ。ペン画のような太い線、水色と黄色のフィルム染色がいい味。何より人間の仕草の描写が丁寧ですごい>>続きを読む

くもとちゅうりっぷ(1943年製作の映画)

4.0

レベチ。太平洋戦争の最中に制作されたリリカルな短編ミュージカル。政岡憲三代表作のひとつ。アニメーションの細やかさと真珠のようなくもの巣の水粒や背景の花など静止画のリアルな美しさと童話の挿絵のようなかわ>>続きを読む

すて猫トラちゃん(1947年製作の映画)

4.6

幸福が動いてる。もっと早く観たらよかった、日本アニメーションの父/政岡憲三作品。子猫目線で描く世界と擬人化された猫ちゃんの質量を感じさせる色気のある動画に感動。セル画なのにこの立体感。特にお母さん猫の>>続きを読む

25日・最初の日(1968年製作の映画)

3.8

動く絵画または意志を持つコラージュ。キュビズムよりのロシアアヴァンギャルドな画、はためく赤旗、資本家や聖職者のカリカチュアと色々全開。十月革命の勢いと国家を揺さぶる振動が画面から溢れ出て圧倒。

タイム・アバンチュール 絶頂5秒前(1986年製作の映画)

3.9

ウェルズひいてはBTTFかつ2001年時空の旅なロマンポルノ。第二次関東大震災後にタイムスリップと世紀末感あふれながらやってる事はヤってるだけという馬鹿らしさが最高。鎧兜の暴走族は未来世紀ブラジルから>>続きを読む

ジャック・ドゥミの少年期(1991年製作の映画)

4.2

自転車、レコード、研ぎ機、コーヒミル、橋のおもちゃ、あらゆる回転がカメラと映写機の回転へとリンクする演出に映画とジャコへの愛を感じる。ドゥミも最初は9ミリ半だったのか。
風化した壁をモノローグの背景に
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誰も知らない(2004年製作の映画)

4.3

知らないのか知らないふりなのか、知ろうとしないのか知りたくないのか。子どもだけの小さな世界を破壊する大人は悪い意味でも良い意味でも不在で、これが現実かと思いきや現実はもっと最悪だからどうしようもない。>>続きを読む

クー!キン・ザ・ザ(2013年製作の映画)

3.8

チキタチキタチキタチャー。携帯やDJなど現代的な要素も加わり、新しい生き物も増え、冗長な部分もうまく圧縮された新生キンザザ。実写の深層の読み辛さ(表層がおもしろすぎ)に対し必然性の高いアニメーションは>>続きを読む

ストライキ(1925年製作の映画)

4.0

映像のものすごい運動量と途方もない群衆力。労働者たちから削いだ肉を蓄え肥えた資本家たち。絞り終えて廃棄されたレモンや街の地図に溢れた血のようなワイン、牛の虐殺とモンタージュされる市民。数々の編集技法が>>続きを読む

イタリア旅行(1953年製作の映画)

4.0

英国人夫婦の確執と変化をあえて旅行の体で異国イタリアの地を舞台に描く工程の積み重ねが生きている。
シビラの洞窟で愛を占う恋人たちやかつてポンペイを埋没させたヴェスヴィオ山の火口、大量の人骨が埋葬された
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ステラ・ダラス(1937年製作の映画)

4.3

こんなに愛が脳を直撃したのはひさしぶり。母娘の共依存から全てが氷解する最後の表情に電撃が走り、メロドラマにありがちな教訓が流れ落ちる。サークの存在がよぎっていた頭に決定的な差を見せつけられた。本物を手>>続きを読む

星を持つ男(1950年製作の映画)

4.0

おもしろい。南北戦争後の南部を舞台に腸チフスからKKKを描く社会派ながらキリスト教の救済が降る宗教映画。
落とし所は結局the理想のアメリカ像だが、ただの茶番にせず見事に纏めるジャック・ターナーの手腕
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キートンの恋愛三代記/滑稽恋愛三代記(1923年製作の映画)

3.7

キートンによる「イントレランス」パロ。先史、ローマ、現代と3つの時代の三角関係。
どの時代のキートンも占い好きでかわいい。ローマ時代で駐車禁止からの兜を乗り物のストッパーにするとこや犬ぞりのチャリオッ
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妖刀物語 花の吉原百人斬り(1960年製作の映画)

3.9

露骨なルッキズムと見目至上主義な吉原の相性の良さがパーフェクト。顔に大きな痣をもち影で化け物と呼ばれる心優しき商人と欲に塗れた豪華絢爛な魔窟と美しく着飾った女たち。
壁紙や調度品に至るまで美術の気合い
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ファッティとキートンのグッドナイト・ナース/デブ君の入院(1918年製作の映画)

3.7

冒頭の尋常じゃない雨の中のコントが秀逸。外科医キートンが表情豊かで大変新鮮だった。全く違和感のないアーバックルの女装。水と追いかけっこはやっぱりコメディの定番。

偶然と想像(2021年製作の映画)

4.1

ほぼ会話劇でここまで固めるのはさすがとしか言えない。上滑りしていくロメール作品の会話に対し本作の会話は足場がある。日本語だからそう感じるのかな。創作という必然の中で偶然を描く行為と想像の中の想像が気持>>続きを読む

イントレランス(1916年製作の映画)

4.1

16fpsでも個人的に高速で目が回った。終盤の4つの時代を繋いだクロスカッティングの疾走感たまらない。やはり現代編が1番おもしろい。揺籠ゆらすリリアンギッシュと運命の三女神が神話的。3人という数字は赤>>続きを読む

サマーフィルムにのって(2020年製作の映画)

4.0

嘘みたいにいつも長さが揃ってる制服のリボンや赤い唇、ハダシやビート板ってあだ名とか2度提示されるタイトル(しかもタイポが違う)などディテールまで映画の虚構性で固めた事がSF時代劇青春学園警告ものという>>続きを読む

信子(1940年製作の映画)

4.0

坊ちゃんや二十四の瞳にも通じる、権威主義な女学校への新風。あんみつの方程式やガマの薬、泥棒騒動などのユーモアと、悪童・頴子の家庭背景や長い物に巻かれる先生たち、芸者置屋の差別的扱いなどピリッと山椒を加>>続きを読む

(1929年製作の映画)

3.3

簡易保険局が簡易保険の普及宣伝用に松竹に委託した短編

緋色の街/スカーレット・ストリート(1945年製作の映画)

4.2

多くの作品で裁く/裁かれるに重点をおくラングが描いた”裁かれない“の恐怖がすごい。本物に近い絶望感を味わった。欲望と執着のチキンレースと挿入の代わりのアイスピック。
ファムファタールにしては中途半端な
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恐るべき子供たち 4Kレストア版(1950年製作の映画)

4.3

コクトーとメルヴィル/文学と映像の美しき融合。ここまで2人の親和性が高いことに驚き(コクトーがやたら口を挟んだにしても)。石膏像のようなニコール・ステファーヌとエドアール・デルミ、子ども部屋と城の見事>>続きを読む