あしからずさんの映画レビュー・感想・評価 - 5ページ目

あしからず

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ミークス・カットオフ(2010年製作の映画)

3.9

広大な土地をスタンダードの画角で切り取る視覚的な閉塞感がそのまま物語の息苦しさと呼応して西部劇で往々にして排除されていた女性の存在を提示する(本作では代わりにミークが近道に失敗してカットされる)。神話>>続きを読む

リバー・オブ・グラス(1994年製作の映画)

3.9

理想と現実の相違に不満を募らせる30代主婦という設定が的確すぎて。舞台がライカートの故郷であるマイアミというのもミソ。父親の銃は男根の象徴と親離れできない娘を強調し、宙に浮いた弾丸は何者にもなれない2>>続きを読む

オールド・ジョイ(2006年製作の映画)

4.0

ロードムービーというジャンルのある種の快感をほぼ一瞬たりとも感じさせない良さ。かつて青春を共有した友との気まずさはヨラテンゴの浮遊感と森林のマイナスイオンでも覆せない。社会的な立場の相違が生む温度差に>>続きを読む

ハッピーアワー(2015年製作の映画)

4.5

分かりたい、分かり合えない、分かって欲しい。自分の腑を全て晒し、それでも受け入れてくれる人を皆どこかで探してる。底のない感情の闇鍋なのに映画を観る幸福で満ちた約5時間、まさにハッピーアワー。問いかけと>>続きを読む

セールスマン(1969年製作の映画)

4.1

免罪符の発行から教会の不信からここまで何の違和感もないけど「聖書販売は金になる」はさすがにド直球すぎるダイレクトシネマ。聖書のセールスマンを通して見える消費社会と貧困が鮮烈。”幸せ“の売り文句と反対に>>続きを読む

エターナルズ(2021年製作の映画)

3.6

このレビューはネタバレを含みます

1人1人は好きだが全体で見ると希薄。原始的な自然美を描こうとする姿勢は美しい。ただ名前から運命は決まっていたとしてもイカリスの自死行為と周囲の諦めはショックだったし安直に感じた。セナとギルガメッシュが>>続きを読む

ブラック・ウィドウ(2021年製作の映画)

3.5

フローレンス・ピューの骨太な演技たまらない。三つ編みで示す連帯はよかったけど対立構図が単純。それが良いのかな

リオの男(1964年製作の映画)

3.5

ほぼインディ・ジョーンズ(こちらが先)。よく飛びよく走るベルモンド。ドルレアックかわい

カトマンズの男(1965年製作の映画)

3.4

アクション映画で水を得た魚のようなベルモンド。お着替え多し

まだらキンセンカにあらわれるガンマ線の影響(1972年製作の映画)

4.2

特に未成年は家族/保護者の膝元から離れることは容易ではなくその影響下に否応なしに晒される。ガンマ線を浴びたキンセンカのように無力なウサギのように、破滅的な母親の余波を受けながらそれでもあらゆる原子に希>>続きを読む

おかしな求婚(1971年製作の映画)

3.8

サイコー。破産した元富豪が財産目当てでドジっ子植物学者と結婚するも…という王道ロマコメながら、全てが自覚的にワザとらしく面白い。「裸の銃〜」のような大ぶりのギャグとぶつ切りカットの躍動感。昭和の少女漫>>続きを読む

クローズ・アップ(1990年製作の映画)

4.4

すごい。マフマルバフ監督になりすました男の逮捕から釈放までを本人や被害者に演じさせるキアロスタミ。フィクションとノンフィクションの境界を曖昧にさせ単なる再現ドラマに留まらず“演じる“事を問い直し、自己>>続きを読む

オリーブの林をぬけて(1994年製作の映画)

4.0

監督を撮る監督を撮る監督というドロステ効果。入れ子構造の三部作という作意と映像の実直さのギャップにやられっぱなし。前作に続き車視点のカメラや追いかけてくる子どもたちなど「有りがたうさん」なんだけどサイ>>続きを読む

やさしい女(1969年製作の映画)

4.0

ドストエフスキーの灰汁を極限まで排除したミニマルさがブレッソンらしい。一種の哀れみを感じさせる原作に対しこの金貸しには冷めた目しか送れなかったが、手や音の描写が感情の強度を補完し、カーレースや競馬を映>>続きを読む

チーズとうじ虫(2005年製作の映画)

5.0

ハッとなにか真理の輪郭に触れたような気持ちになった(大袈裟でないつもり)。癌の母親を記録するが誇張もされず美談にもされず、ただありのまま生の中の死と死の中の生を捉える娘のカメラ。佐藤真が推したのよく分>>続きを読む

リトル・ガール(2020年製作の映画)

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至る所で多様性という言葉がアピールされながら未だにこんな小さな女の子が他者からの拒絶に涙しなければならない世界。本来グラデーションな性別を無理矢理記号化して社会的役割に押し込めて、そこからはみ出たもの>>続きを読む

青いガーディニア/ブルー・ガーディニア(1953年製作の映画)

3.9

お酒に罪なし死人にクチナシ。
「暗黒街の弾痕」とは逆方向に進む水のイメージ。青いガーディニア、黒のタフタ、白いハンカチ、赤のドレス(たぶん)と白黒なのに色鮮やか。新聞社の社名の点滅する影やシオドマクば
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大列車強盗(1903年製作の映画)

3.5

アメリカ映画初の物語性のある作品が、映画において非常に重要なモチーフの1つである列車が舞台なの興味深い。ロケとセットを組み合わせて表現豊か。着色ありで観。観客に銃を向けた有名なバストショットは興行主が>>続きを読む

小麦の買占め(1909年製作の映画)

3.7

15分で分かる資本主義構造。
小麦粉死はドライヤーの「吸血鬼」で引用されてたなあ。
こんな初期からもう対比のカットバックやったり冒頭とラストの小麦を撒くフィックスの反復でショットに二重の意味を含ませた
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冷たい水(1994年製作の映画)

4.0

燃えるような本能と冷たい理性を兼ね備えたルドワイヤンにやられた。単調な物語が含む多弁性が彼女の白紙に託されてる。寄りすぎのカメラで冷静さを奪って若さの衝動でガラスを割って。子どもと大人の狭間で揺れる激>>続きを読む

月は上りぬ(1955年製作の映画)

3.7

万葉の時代から月の引力は想い合う2人の間にも作用する事は証明済。
小津の影は濃いけどアメリカのメロドラマのような軽快さもあり。北原三枝が1人で全部引っ張って若さの暴力性を発揮してるけどちゃんと魅力的な
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乳房よ永遠なれ(1955年製作の映画)

4.5

衝撃。この時代に女性の監督&脚本家が乳癌の女性を撮る意味合いの稀有は勿論、ある人間の生々しさを情感と悲哀を込めてここまで密に描く才に脱帽。死の表現などコクトーのような美しさと怖気。霊安室の外廊下や実家>>続きを読む

ひらいて(2021年製作の映画)

3.6

アイドル映画のOPかなと思わせて真逆をいく。思春期の狂気の撮り方が玄人。利己的で傲慢で暴力的な“愛”の魅力を見事引き出してる。山田杏奈の暗い瞳、ヘアアイロンをかける余裕さえなくなってからが本番。歪にみ>>続きを読む

東京の女(1933年製作の映画)

3.5

小津映画の特徴であるローアングルが初めて積極的に用いられたと言われる作品。今回映画祭で当時のトーキー初期のフレーム(ほぼ正方形の画面比率)で観れた。画面手前の生活用具や麗しい奥行き構図がバチッときまっ>>続きを読む

最後の決闘裁判(2021年製作の映画)

3.7

もはや社会全体の通念として女性が完全に男性の所有物だった時代、これでも魔女狩り全盛期前という事に目眩(ここから更に地獄があるのか…)
夫・夫の旧友・妻という三人の目線から捉えた真実を三人の脚本家が担当
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DUNE/デューン 砂の惑星(2020年製作の映画)

3.8

「メッセージ」で言語について描いたヴィルヌーヴがここでも言葉を描写するのが運命的。声がキーながら幾度も目の会話(特にゼンデイヤとの)を織り込むの良い。60年代の原作が低温グレイッシュな映像で現代的に抽>>続きを読む

ホドロフスキーのDUNE(2013年製作の映画)

3.8

キャスティングや絵コンテまで済みながら制作中止になった作品が、後世の数多くのSF映画に影響を与えているという嘘みたいな本当の話。ホドロフスキーのDUNEなくしてSWやエイリアン、ターミネーターやフラッ>>続きを読む

理大囲城(2020年製作の映画)

5.0

YIDFFにて。本作の匿名の映像制作者たちが名前も顔も知らないデモ隊と一体となり、国家という巨大な魔物に抵抗しようとする姿に息を呑んだ。よくこんな映像が撮れたもの。
飛ぶ火炎瓶と水色の放水、雨傘、無数
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最初の54年間 ― 軍事占領の簡易マニュアル(2021年製作の映画)

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元イスラエル兵の証言を元にアヴィ・モグラビ監督自ら紐解くパレスチナ占領マニュアル。主観を交えず供すれば平坦に語られる過程と結果が残酷さを強調するシニカルなロジックとなり声なき声を補強する。YIDFFの>>続きを読む

文化生活一週間/キートンのマイホーム(1920年製作の映画)

3.9

積木のおうちを作って壊すみたいなノリをこの規模でやっちゃうのが豪気&狂気。
強風で回る家(うそみたい)と回るカメラ。カーペットの再活用が天才。「キートンの蒸気船」にもあった倒壊する家すり抜けギャグがこ
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