あしからずさんの映画レビュー・感想・評価 - 8ページ目

あしからず

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スージーの真心(1919年製作の映画)

4.0

王道は王道だからこそいいな。
幼馴染カップルに割り込む恋敵の顛末がやや強引だけどスージーの聖女のような真心のジョブがいちいち効いてる。スージー→あしながおじさん兼天使、ウィリアム→鈍感おばかさん、ベッ
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サンライズ(1927年製作の映画)

4.1

映画史上最高の1本と名高い傑作サイレント。若干ハードルを上げすぎた気はすれど、都会の女に唆される湖パートの恐怖感と都会パートの幸福感の絶妙なスパイスの配分は一流シェフ。なによりサスペンス的予兆の演出が>>続きを読む

都会の女(1930年製作の映画)

3.9

”都会の女“という概念的代名詞から”ケイト“という1人の女性に辿り着くまでの長い道のりに人間をカテゴライズする愚かさが現れ、同様に“田舎の男“のイメージも早々に打ち砕かれる。農家たちの圧倒的な男性社会>>続きを読む

資金源強奪(1975年製作の映画)

4.0

超いい。三億円事件にかけた追いつ追われつ悪党たちの大金奪い合いレース。
ムショと新聞見出しのコラージュ的OPクレジットから信頼できる。ズームインアウトの多用と激しいカット割がアツくてテンポ良。とにかく
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赤い靴(1948年製作の映画)

4.1

愛か芸術か。
アンデルセンの「赤い靴」モチーフの究極2択映画。蝋燭が象徴的。本作をきっかけに名声を高めたモイラ・シアラーのバレエが見事。芸術の悪魔に取り憑かれたプロデューサーが魅入られるあの可憐さ。ド
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青い青い海(1935年製作の映画)

4.3

画作りが特異。バストショット多めのミニマムな映像が寓話性を高めてるしタイトルの由来が民話というのにも合う。人物と背後の海面に伸びる陽のショットが騙し絵みたいでおもしろかった。何よりモノクロの海の輝き満>>続きを読む

シン・エヴァンゲリオン劇場版(2020年製作の映画)

-

マクロからミクロへの視点はアニメ版からずっとあってその過大なエゴの気持ち悪さはあれど結局赦しでしか救われない現代版罪と罰。内外の尋常じゃない量の愛が嫌悪感を超えて滂沱。
ありがとうエヴァンゲリオン

帽子箱を持った少女(1927年製作の映画)

4.0

ずっと観たかったバルネットやっと。
宝くじ映画にハズレなし(くじだけに)。
この年代のソ連でこんなにキュートな純愛作品初めてかも。偽装結婚の手続き簡単すぎで驚く。
コメディモチーフとして多用されるブー
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サン・ラーのスペース・イズ・ザ・プレイス(1974年製作の映画)

5.0

手作りのユートピアは全ての希望の星でサン・ラーこそ漆黒の宇宙そのもの。アフロフューチャリズムは最強の哲学であり不可侵の領域。逃避なんかとは言わせない。アフリカという故郷をなくした彼らの救済のため土星人>>続きを読む

桃太郎 海の神兵(1945年製作の映画)

4.1

すごい。桃太郎のプロパガンダ映画というだけでクレイジーなのにアニメーションの技術と完成度がハイレベルで頭が大混乱。エイゼンシュテインの名前があがるのも成程なカメラアングルとカット数。
海軍省支援の国策
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落穂拾い(2000年製作の映画)

4.3

捨てる神あれば拾う神あり。
食べるため、売るため、つくるため様々な理由でものを拾って生きる人たち。
ミレーの落穂拾いの絵画からフードロス、ジプシー、失業者、廃品アート、石油流出問題と連想ゲームのように
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ゆがんだ月(1959年製作の映画)

4.0

思った以上にノワールノワールしてて良い。赤とんぼの口笛は「M」だし不穏な影の演出は「第三の男」的。不憫が似合うヤクザ・長門祐之のダサい抜け感が素敵でナチュラル失恋からの流れが刺さる。
南田洋子のヒール
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神曲(1991年製作の映画)

4.0

アダムとイブから始まり罪と罰やカラマーゾフの兄弟、クリスチャンVSニーチェ信者の論争から最後の晩餐やラザロの復活まで精神病院で繰り広げられる狂想曲と言ったらいいのか何なのか。役者が精神病患者を演じ更に>>続きを読む

雪夫人絵図(1950年製作の映画)

4.0

夫婦の肉体的/精神的な共依存SM劇が生み出すペシミズムに対し情緒麗しい日本家屋と自然美のコントラストが強烈。
「女の身体には魔物が潜んでいる」と言う木暮実千代の伏目と口元のホクロの妖艶さ。一部AVかな
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緑の光線(1986年製作の映画)

3.8

“心という心の燃えるときよ、来い”
ロメールの指示は知らんけど即興でこの情緒不安定な会話ができる才能よ。身に覚えのある居心地悪さVS映画の美しい求心力。格言劇の主人公は皆どこか精神的に幼いけどデルフィ
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ダゲール街の人々(1976年製作の映画)

4.0

ダゲール街の人々のダゲレオタイプまたは肖像画または人生。
目まぐるしい消費社会の手前に佇む店たちの丁寧な描写にヴァルダの街への愛しさが伝わって、一切知らない土地なのにどこか懐かしい。故郷とは違う自分で
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ラ・ポワント・クールト(1955年製作の映画)

4.2

“愛はともに同じ方向を見つめること”とサン=テグジュペリの名言があるけどまさに。
ペルソナ的重なりのx軸y軸な視線からベッドで水面の反射を見つめる視線への変化は、情熱や初期衝動の恋愛から愛の成熟期へ移
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眠る虫(2019年製作の映画)

4.1

想像以上によかった。
古来からある日本のアニミズム的思想な生と死を金子監督独自の感性が彩って、ファンタジックのレンズ越しにスッと入ってくる心地よさ。
喫茶店の眠る前の音や思い出の石などモノと場所に宿る
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忠臣蔵(1958年製作の映画)

3.7

ド有名なのにふんわりしか知らなかったので初心者向けという大映版を。確かに細かなドラマも挿入され分かりやすい。
豪華オールスターで浅野内匠頭な雷蔵さまはすぐ退場ながらちゃんと感情移入できる仕組み(メイク
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来るべき世界(1936年製作の映画)

3.6

SFの父H・G・ウェルズの未来予想図。
戦争→伝染病→独裁者の支配→革命→文明発展という大まかな流れはたしかに現実に即しややコロナ禍の現在とも重なる。都市空爆はナチスによるロンドン空爆を予言したとも言
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痛くない死に方(2019年製作の映画)

3.3

病院で死ぬか家で死ぬかの選択肢まで辿り着けて実際に自分で選べる人ってどれくらい居るんだろうと思いつつ、在宅医療について考えるきっかけの映画としてはいいのかな。
長尾さんのドキュメンタリーを先に観たので
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ウエストワールド(1973年製作の映画)

3.7

さまざまな時代をリアル体験できる大人のテーマパークで起こるロボットの反乱は後の「ジュラシックパーク」に繋がる。
ガンマンロボなユル・ブリンナーの標的絶対殺すマンっぷりはなるほどターミーネーター(「荒野
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淑女は何を忘れたか(1937年製作の映画)

3.9

モダンな姪・節子の新風が巻き起こす夫婦喜劇。佐藤忠雄と蓮實重彦によるとルビッチの影響大らしい。これが『人情紙風船』と同年公開なのおもしろい。
煙草吸って芸者遊びみて「ご苦労さん」とお酒あおる節子の貫禄
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コルチャック先生(1990年製作の映画)

4.0

第二次世界大戦下、子どもたちを守ることに生命をかけた実在のユダヤ人医師コルチャック先生の半生。当然のように地獄だが覚えておくべき現実で、”子どもの権利条約の父”でもある彼の行いは最後まで徹底していた。>>続きを読む

蜘蛛巣城(1957年製作の映画)

3.9

マクベスが見事に戯曲から能舞台に和製変換されている。幽玄な映像美と荒々しい欲望の混沌がクール。
妖婆のアイテムが糸車というのが蜘蛛巣城とマッチしててよかった(あれ浪花千栄子だったのか…)。
山田五十鈴
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けったいな町医者(2021年製作の映画)

-

死ぬことについてもっと考えなければならないと思う。どう死ぬかはどう生きたかに直結し、在宅医療に力を入れる町医者・長尾和宏さんを通して、老い/病/死の現実が改めて自分事になる。自宅で奥さんのパンツを履い>>続きを読む

あのこは貴族(2021年製作の映画)

3.3

このレビューはネタバレを含みます

色々な違和感をまだ上手く言葉にできないが、まずシスターフッドという事で門脇麦と水原希子の連帯かと思いきや門脇・石橋と水原・山下の方かという驚きで、思った以上に門脇(貴族)・水原(貴族外)の交わりが薄い>>続きを読む

簪(かんざし)(1941年製作の映画)

3.9

”情緒が足の裏に突き刺さる“なんてことあるでしょうか。画鋲かガラス片くらいしかない。
シンデレラの如く落とした簪をきっかけに出会う田中絹代と笠智衆(若い)の恋物語と見せかけた清水宏の情緒的イリュージョ
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花束みたいな恋をした(2021年製作の映画)

3.6

イヤフォン(感情)を共有しなくなった時から崩壊は始まってるしもはやこの映画の主旨は若者に向けての花束で彩られた資本主義社会における労働搾取への警鐘じゃないかと思うし資本主義の輪から逃れる手段の1つクリ>>続きを読む

フィツカラルド(1982年製作の映画)

4.0

「地上に残ってる映像なんて殆どない。適切な映像の欠如という惨めな状況を打開しようと本気で行動しなければならない(要約)」とヘルツォークが『東京画』の中で言った言葉を完全に裏付けていた。
船が山を登る画
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夢を見ましょう(1936年製作の映画)

4.0

妻の一夜の浮気というシンプルな題材を台詞だけでここまでデコレーションできるのかという驚き。
ギトリだから出来るが出来ちゃうのがそもそも異常。聞いてるだけで酸欠。
単純に構成だけ見たらなんてことない話な
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最高の花婿/ヴェルヌイユ家の結婚狂騒曲(2014年製作の映画)

3.6

じゃんぽ〜る西さんがインタビューしてたので気になって。アラブ人、ユダヤ人、中国人、さらにアフリカ系と多国籍の花婿を迎えたフランス人一家の異文化交流コメディ。
衣食住文化宗教すべて異なる婿たちと差別むき
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ムッシュとマドモアゼル(1978年製作の映画)

3.6

ベルモンド&ウェルチのスタントマン喧嘩ップルの愉快なバックステージもの。ベルモンドはフェミニンな人気スターとゴリラの3役。
「蒲田行進曲」的エンドレス階段落ちや近所の子供あつめて生活保護金詐欺などベタ
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砂の女(1964年製作の映画)

4.5

ぐうの音もでない。生き物か液体のように流動する砂が常識・価値観・理論を侵食していく魔性的な映像の説得力がすごい。
社会というふるいにかけられこぼれ落ちた人々が”砂“に生死を託したアンチ文明蟻地獄。原作
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何が彼女をそうさせたか(1930年製作の映画)

3.9

幻の名作。長らく紛失していたフィルムがロシアで発見され里帰り、修復・復元されたという壮大な前エピソードだけで満腹感。
30年度のキネ旬第1位も納得の、社会と大人に翻弄されるすみ子怒涛の地獄めぐり。溝口
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東京画(1985年製作の映画)

4.1

小津大好きヴェンダースの80s東京記。当然のようにあの神話的東京は存在せず、画面越しに明らかな失望が伝わる。
パチンコ、ゴルフ、TV、竹の子族を観察するカメラ。銀の玉を見つめる大人たち。歩くのを拒否す
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