浦切三語さんの映画レビュー・感想・評価 - 2ページ目

ミカエル(1924年製作の映画)

3.6

なんか妙に面白かったな。エミール・ゾラとクロード・モネを足して2で割ったような名前の巨匠画家と、ウジェーヌ・ドラクロワと天使長ミカエルから拝借したような名前の画家の弟子。この二人の愛憎劇をシーザーとブ>>続きを読む

吸血鬼(1932年製作の映画)

3.8

面白い、面白くないとか、そうした表面上の感覚では測りたくとも測れないというか、そうした安易な感想ひとつでカテゴライズされることをこの映画自体が拒んでいるような。ストーリーを理解しようとしても劇中に登場>>続きを読む

あるじ(1925年製作の映画)

3.9

いまから100年近くも昔の映画だけど、語りの淀みなさといい、夫婦のパワーバランスの描き方といい、そしてなによりマッツ婆さんをはじめとしたキャラクターたちの立体感のエグさよ。めちゃくちゃキャラが立ってる>>続きを読む

ほかげ(2023年製作の映画)

4.3

太平洋戦争は終わった。でも終わったのは戦争という「状況」だけで、戦争が産み出してしまった空気たちは、まるで亡霊のように戦後の人々の体の奥深くで不気味に息づいている。就寝中に体を強ばらせて悪夢に苦しむ子>>続きを読む

(2023年製作の映画)

4.0

感想はこちら。
https://ncode.syosetu.com/n2918ez/104/

動画版
https://youtu.be/g_ODNBi9sOw?si=goykuXxocWPIXYG7

正欲(2023年製作の映画)

3.5

去年、デリヘル嬢からこんな話を聞いた。

ある日の蒸し暑い夏の夜、そのデリヘル嬢がホテルの部屋に入ると、そこで客として待っていたのは二十代前半ぐらいの男性だった。見た目はごくごく普通の好青年だったらし
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マイマザーズアイズ(2023年製作の映画)

2.4

色々考えたよ。色々考えましたよ。先日のゴジラマイナスワン酷評の動画が叩かれに叩かれて俺は映画を観るのが下手なんだろうかとかさんざん悩んだ。悩んだから酷評するのはもう止めようかと思った。だから本作「マイ>>続きを読む

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)

4.1

好き。

パヤオ映画にはストーリーらしいストーリーなんてものは初めからなかったというのが俺の考え。彼の作品はどれもこれもよくよく考えると粗だらけでおかしい部分が大量にある。それでも作品を鑑賞している間
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BE-BOP HIGHSCHOOL ビー・バップ・ハイスクール(1994年製作の映画)

3.8

不良映画の最高傑作。もう喧嘩はイヤだ?どの口がほざいとるんじゃボケナスが。

クライムハンタ- 怒りの銃弾(1989年製作の映画)

3.5

ベタな演出のオンパレードだけど決して手は抜いてない。普通にやったら80分はいくだろう展開をうまく省略してる。好き。

震える家族(2022年製作の映画)

3.5

ジメッとした韓国ホラー。おそらく元ネタのひとつはエクソシスト。

ゲティ家の身代金(2017年製作の映画)

4.0

お金というのは「人と人」あるいは「人と物」との間に、手っ取り早い関係性を構築するための、獰猛な文明利器である。そーいうことについて描いた映画。うん、やはり良い。

モナ・リザ アンド ザ ブラッドムーン(2022年製作の映画)

3.8

次世代のタランティーノじゃなくて、次世代のギレルモ・デル・トロですなこりゃ。どっちも処女長編で吸血鬼を題材にしてるしね。しかしながら「ザ・ヴァンパイア」の時も感じましたが構図キメキメですよ今回も。さら>>続きを読む

青春残酷物語(1960年製作の映画)

3.3

物質化された若者たちの悲哀。決まったショットもあればちょっとしつこい絵もあったり。青リンゴのシーンは大島監督の若さが炸裂してる感。

OUT(2023年製作の映画)

3.3

歴代品川ヒロシ作品の中では間違いなく最高傑作です。「クローズZERO」や「300」に影響を受けた、早回し&スローモーションのアクションは完全に鳴りを潜めており、イマドキ流行りのジョン・ウィック的な、短>>続きを読む

今日から俺は!!(1993年製作の映画)

2.4

学生たちが全員棒読みで全く感情が伝わってこないので映画としてもギャグとしても全く原作の面白さを活かしきれてないんだけど、香川照之、塩見三省、モト冬樹の三人がいるからどうにか辛うじて成立してるって感じ。>>続きを読む

ザ・キラー(2023年製作の映画)

3.8

また不思議な映画を撮ったフィンチャー。サスペンスなんてないんだけどあるように見せてしまう暗殺者の復讐Vlog風映画ですな。

スマートロックを偽装してウェアラブルで体調管理。殺しに使う仕事道具を調達す
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ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)

2.8

このゴジラ、軽すぎる。

ここまでゴジラを「軽く」描けることに逆に驚く。人間ドラマの背景として容易く矮小化され、アホみたいな作戦にまんまとひっかかるゴジラ。主人公のただのトラウマ撲滅装置と化す古の怪獣
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ドミノ(2023年製作の映画)

3.8

ロバート・ロドリゲスとは虚構の人である。

ロドリゲスは虚構の世界で奇怪なオモチャをひっくり返しまくる遊び人である。彼の映画は、映画という媒体が虚構を内包するに適した入れ物であることを承知の上で、これ
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ザ・クリエイター/創造者(2023年製作の映画)

3.3

SF映画というよりも、寓話ですな。

『モンスターズ/地球外生命体』のときも『ゴジラ(2014)』のときも思ったけど、ギャレス・エドワーズって人間の身勝手さを描くのが好きなんでしょうね。身勝手な人間が
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沈黙の艦隊(2023年製作の映画)

2.6

吉野耕平って、たぶんいま一番過大評価されてる映画監督のひとりだと個人的に思ってるんですが、有名原作漫画をもってきてもどうにもならんなあという感じ。

まず、原潜のカッコよさが全然生かされてない。第七艦
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ハント(2022年製作の映画)

4.2

血と暴力と欺瞞に満ち溢れている映画。韓国近現代を舞台にした近年のスパイ映画で、ここまではっきりとアクションではなく「暴力」を打ち出してきた作品って珍しいんじゃないかしら。なんかどことなく『ヒート』を彷>>続きを読む

アリスとテレスのまぼろし工場(2023年製作の映画)

2.5

このレビューはネタバレを含みます

あの妊婦さんのことも、ちったぁ考えてやれ。

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なにやら意味深なタイトルの映画だけれど、哲学者アリストテレスがどうとかこうとかいう話ではなく、エネルゲイアとデュナミスと
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あしたの少女(2022年製作の映画)

4.3

社会人人生の短い青二才の戯れ言だと思って流してもらって構いませんが、仕事をする上での最大の幸福というのは年二回のボーナスであり春闘で多額のベアを勝ち取った時であり、そしてなにより自身の仕事の「成果」が>>続きを読む

クライムズ・オブ・ザ・フューチャー(2022年製作の映画)

4.5

デビット・クローネンバーグといえば「ボディホラーの大家」として既に巨匠の地位を築き上げ多数のフォロワーを生み出しているが、彼のこれまでのフィルモグラフィを辿ってみると「ホラー」というほど怖くない。むし>>続きを読む

ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE(2023年製作の映画)

3.6

いつものミッション・インポッシブルですね。アクションはド派手。物語はフツー。突っ込もうと思ったらキリがありません。今さらその描き方は古すぎだろ!とSF者が観たら噴飯必至な最強AIの描写だったり、なんな>>続きを読む

イノセンツ(2021年製作の映画)

4.4

「わたしは最悪」の脚本家だから合うかな~と思ってましたが杞憂でしたね。"団地最強"の超能力者にして重度知的障がいの姉を持つ無能力者な主人公が、破壊の衝動に目覚めてしまった"団地最強の座を狙う"黒人少年>>続きを読む

イビルアイ(2022年製作の映画)

3.1

そんなに面白いかね、これ。ホラーとして見るとお婆ちゃんの恐怖演出が手緩いし、主役のリアクション芸はいいんだけど……魔女に遭遇した時とスマホぶっ壊された時の反応が一緒だったのにはさすがに笑っちゃいました>>続きを読む

ボス・オブ・イット・オール(2006年製作の映画)

4.4

コメディ・ジャンルとしての物語の完成度はめちゃくちゃ高い。しかし見慣れた展開であるのは否めない。その見慣れた物語を「オートマビジョン」という、ハンディとフィックスの中間に位置するような「見慣れないタイ>>続きを読む

ラース・フォン・トリアーの5つの挑戦(2003年製作の映画)

3.7

トリアーはデンマーク映画学校の学生時代の頃からすでにスター学生扱いされていたらしいが、そのときの指導教官のひとりが本作に本人役として登場しているヨルゲン・レス。トリアーは在学中に敬愛するレスの気を引こ>>続きを読む

奇跡の海(1996年製作の映画)

4.6

それは、人類が作り出した史上最大の発明品であり、有史において度々権力者や為政者の手によってその役割を都合よくねじ曲げられ、人々の生活規範や心を自由自在に縛り上げるための最良のツールとして利用されてきた>>続きを読む