roppuさんの映画レビュー・感想・評価

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サントメール ある被告(2022年製作の映画)

4.3

国家や司法、構造的権力に対峙した、否しなければならなった人。彼女は女性であり、母親であり、セネガル人移民であった。
映画は訴える、そして司法は辿る、なぜ、彼女が裁判にかけられることになったか。そして、
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マン・ハント(1941年製作の映画)

2.0

ドイツ(バーバリア?)山奥の針葉樹林に在る沼、霧が出る森林、在るんだろう、おそらく。

冒頭からサスペンスの色が濃く、向けられた銃口のその先、それが彼を殺そうと追走し、そして挙げ句の果てには世界大戦へ
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予備選挙/プライマリー(1960年製作の映画)

4.5

1960年のアメリカ大統領予備選挙を追ったドキュメンタリー映画。

皮肉にも、人々がまるで映画の中の登場人物のように振る舞う。それは欲にまみれた政治家のマスクだけではなく、自動機械的に反応する一般人の
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愛の集会(1964年製作の映画)

4.0

シネマ・ヴェリテ形式のインタビュー。 
パッゾリーニがカメラとマイクを武器に、イタリアの都市を回り、性愛、セクシュアリティに関する話を聞く話。

近代のメディアに関する話をするなら、映画キャメラが屋外
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長ぐつをはいたネコと9つの命(2022年製作の映画)

4.2

『長ぐつをはいたねこ』シリーズどころか、『シュレック』シリーズを観たことがない中、『シュレック』ヲタクの友人がこれを観ろというので映画館へ足を運ぶ。

なるほどこれは面白い。アニメーションのテクニカル
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別れる決心(2022年製作の映画)

3.5

純文学だこれ、ジャケットのポケットに入る文庫本なら、その表現方法に笑いながら、ショットとショットの繋ぎに浸っていられる。そのエクリチュールをもう一度読み返して何度も反復したい。何度も反復しているうちに>>続きを読む

ソウルに帰る(2022年製作の映画)

3.6

アイデンティティポリティクスが議論される現代の、現代的な作品。

朝鮮戦争がきっかけで孤児になった女性はフランス人として人生を送っていたが、とあるきっかけで生まれた韓国の都市ソウルに到着する。
人を辿
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CLOSE/クロース(2022年製作の映画)

4.3

このレビューはネタバレを含みます

少年たちは概念を育んでしまう前から親近だったが、学校教育システムへ進んだことがきっかけで、他者からの視線、他者からの言動に敏感になっていく。一方はいつもの「僕たち」を好きなのだが、もう一方はより個人化>>続きを読む

マーニー(1964年製作の映画)

3.5

赤い色味のPTSD描写やピンヒールがポケットから落ちんとする画、涙顔で逃走するマーニーと馬のヒズメが石壁に引っかかる一連の流れなどは恐ろしい。何が起こるかわからないサスペンスホラーではなく、何が起こる>>続きを読む

クローズ・アップ(1990年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

今更だけど、アッバス・キアロスタミが凄いわ。

リアリズ厶とはこのことを言う。そういえば『トスカーナの贋作』は、出会ったばかりのジュリエット・ビノシュとウィリアム・シメルが、恋人のフリをし始め、合理的
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ホームワーク(1989年製作の映画)

3.5

健全に機能しない国家と家庭、教育システムの狭間に置かれた子どもたちを目撃して泣く。イランイラク戦争の後の映画ということを考えると、ここに出てくる大人だけではなく、国家と政治の責任は大きい。

他のキア
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トラベラー(1974年製作の映画)

4.0

子どもがスキップするような軽さがあり、結果や原因に執着心がない、運動のあちこちに生が満ちている。

先月観た『友達のうちはどこ』のアハマドとは真反対の性格を持っている気がするが、好奇心、抵抗心、怖いも
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ポリスストーリー2/九龍の眼 クーロンズ・アイ(1988年製作の映画)

2.5

オリジナルの方がおもしろいし、差別的な表現が露骨だけど、ジャッキー・チェンの運動性って人間超えちゃってない?

aftersun/アフターサン(2022年製作の映画)

4.3

ソフィア・コッポラの『サムウェア』へのオマージュをやりつつ、絶妙に現代感覚のセクシュアリティ観を震え立たせ、家父長制へ挑戦するようなやり取り。

父親と娘のストーリーで展開しながら、中身は普遍的なこと
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ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー(2022年製作の映画)

1.5

NikeのCMか何かかと思うくらい衣装が近未来的で面白い。イッセイミヤケは印象的で、アンドロジナスでやっぱり良いよ。

ワカンダ国は、なんでもかんでもテクノロジーに頼り切っていない?今の世界と完全に一
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ボーンズ アンド オール(2022年製作の映画)

2.0

指を美味しそうに食べる映画、前置きに『RAW』がある。
過剰に浪漫タサイズされたカニバリズムについて描いているが、前者の方が面白い。

結局人を食べる特権についても金持ちの消費の一部なのだろう。こんな
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友だちのうちはどこ?(1987年製作の映画)

4.5

学校から間違えて持って帰ってしまった友達のノートブックを、隣の街まで歩いて届ける少年の話。

少年の存在を少年だとしてしか見ない大人世界の理不尽さ、幼い子ども目線だからより大きく見える道端の世界、家や
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ザ・メニュー(2022年製作の映画)

1.8

このレビューはネタバレを含みます

カイジ系の人が『注文の多いレストラン』を作った感じかしら。制作はネットフリックスのグルメ番組がやりましたみたいな、あんまり惹かれない。

階級社会そのものが作ったエゴの塊が、ブルジョワと、ブルジョワ風
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アムステルダム(2022年製作の映画)

2.5

「ニード」と「選択」ということの違いについて、愛の真髄がよく語られて面白いなと思ったんだけど、ど直球の感想は、スターをアップで出させていくカタログ映画。クリスチャン・ベイルは凄い。

エンディングにや
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犬王(2021年製作の映画)

1.0

『マインド・ゲーム』のほうが何倍も面白い。

こんなふうに3dアニメーションをしてしまうと、アニメーションの一番いいところが台無しになってしまうのではないか、というのは個人的な意見だとして。
先日行っ
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ポリス・ストーリー 香港国際警察(1985年製作の映画)

2.5

スクワッターのトタン屋根の家々を車がなぎ倒していくわ、保守せねばいけないはずの市民をプールに押し落とすわ、ショッピングモールで弾けるわ、やり過ぎやろこれは。見所が多いといえば多いが、もはや理解追跡不能>>続きを読む

デヴィッド・ボウイ ムーンエイジ・デイドリーム(2022年製作の映画)

3.0

この映画は、社会を体現したポップスターデヴィッド・ボウイの映画というより、デヴィッド・ボウイを体現化した大衆社会という逆説的なそれなのかもしれない、とか思ったり。

MEN 同じ顔の男たち(2022年製作の映画)

2.5

『嗤う分身(ドストエフスキーの『分身』)』のような題材。

田舎町に住む*同じ価値観を持った村人々からアウトサイダーが受ける対応。外からやってくるエイリアンを排他的に追いやる、おそらく我々一人ひとりが
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ドント・ウォーリー・ダーリン(2022年製作の映画)

4.0

ディズニーランドを象徴するような映画でありながら、テクノ封建主義、またはフェミニズムを意識した映画でもある。

キレイなクラシックカー(車のことはよくわからない)、オールディーズヒットソング、ノスタル
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逆転のトライアングル(2022年製作の映画)

4.9

このレビューはネタバレを含みます

よくやった。
まだ鑑賞していない方はこの批評を観ないで、是非鑑賞してほしい。


世界から見ればほんの一部の特権のくせして、今や西側、ヨーロッパの都会に行けばどこにでもいるいたって普通の、資本主義に複
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偶然と想像(2021年製作の映画)

4.0

この人の映画、根っこから優しい(泣)

『ドライブ・マイ・カー』が初めての濱口竜介作品、今作が2作品目なのだけれどテーマが似ている、と言って良い。世界を俯瞰した、不器用な人間のコミュニケーション。
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エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス(2022年製作の映画)

4.0

脳で起きることがテーマ、よってサイケデリック。
感情が振り回される。

マーベルの連続ものとか、ディズニーのリメイクなんかよりよっぽど良いエンターテイメントアクション。観たことないもんこんな映画。
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NOPE/ノープ(2022年製作の映画)

3.5

同監督の『ゲット・アウト』、『US』も隠喩した表現が豊富な作品だったが、本作品はちょっと詰めすぎたんじゃないってくらいなので、2度見ました。

反逆するチンパンジー、馬、降水する鍵または血、オートバイ
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わたしは最悪。(2021年製作の映画)

4.0

元彼と行って、色々湧き上がってきて爆泣きしちゃって、肩をトントン叩かれる始末。

僕の経験上、大阪やベルリンとは比較できない「暮らし」の中で生まれうる世界観ではあるのだけれど、この消費世代の焦りに似た
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ワン・セカンド 永遠の24フレーム(2020年製作の映画)

-

驚くほど楽しめなかった。

ミスタームービーが一生懸命になって映画をコムレイズに見せたい一心はわかるし、フィルムを一生懸命洗うのも、ホワイトスクリーンの後ろの照明消せよ!とかロマンチックでいいんだけど
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母なる証明(2009年製作の映画)

3.8

ベルリンで東アジア映画特集がやってて、韓国からの作品が今作。
なるほど、確かに極東アジア的クオリティ。
大切なことは一切話したりしないのに、子ども(特に息子)に対して過度なお節介、過保護な育て方をする
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コンパートメントNo.6(2021年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

二年前の冬ベルリンでよく雪が降った。大阪出身の身としては、雪のある地域の人間の暮らしとか、身体感覚、それがどう個々人の生活に影響するか、などと考えていたのだけど、いやーロシアの雪、凄い。
なるほど、ウ
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あのこと(2021年製作の映画)

4.3

このレビューはネタバレを含みます

1960年代のフランス。文学を学ぶ女生徒があるブルジョワ風のカス男とセックスしたのをきっかけに生理が来ない。中絶をすること、またはそれを協力する医者も投獄されるという環境下、家族にも友人にも相談できず>>続きを読む

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