na坊さんの映画レビュー・感想・評価 - 2ページ目

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Helpless(1996年製作の映画)

3.9

昔観たとき無条件にこの映画はいいと思った。  

北九州の殺伐とした空気感と翳りのある深い森の緑。

ことが起こる予兆とそれを超える突発的で過剰な暴力の上塗り。そしてことの後の気まずいような腑抜けた時
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薄桜記(1959年製作の映画)

3.6

ひとりの女を巡り紅に染まってしまった雷さま。ぼろぼろになりながらも品格を保ち、尚も復讐に燃える姿は市川雷蔵にしか出せない境地と言っていい。

忠臣蔵の外伝的な要素もあるが、やはり忠義も愛には敵わなかっ
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ディナー・イン・アメリカ(2020年製作の映画)

4.1

90年代アメリカ映画の匂い(臭い)アリ。よくわかんねぇ映画だけど最高じゃん!

保守的なアメリカ家庭の食卓に唾吐くジャンクフード&ドラッグ&パンクロック with バイオレンスムービー。

冴えない眼
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トップガン(1986年製作の映画)

3.5

確かにラストの空中戦は手に汗握った。  

マーベリックの天才ぶりもわかるんだけど、恋愛を中心に持ってこられると冷める。

デキる男はモテるんだぜ、というマチズモは軍隊だから当然のように全編通して貫か
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チャンシルさんには福が多いね(2019年製作の映画)

2.4

もう画面も題材も基本的にホン・サンス。だけどカメラワークなどで主人公に思い入れてるところと『意味』を持たせているのが大きな違い。泥臭さもなく漂白されている。

どちらかというと今泉監督の映画に近い。そ
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コーダ あいのうた(2021年製作の映画)

3.5

こういうのでいいんですよ。気を衒わず、ショットを狙わない日常の物語。

やはりステージのシーンが秀逸。聾者の家族の立場から無音になり周囲の様子から娘の成功を確認したり、入学試験で手話を交えて全身でう
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ショック・ドゥ・フューチャー(2019年製作の映画)

3.4

冒頭 エレクトロミュージックをバックにかっこいい女性が踊り出す。続けてアナログシンセを舐めるようにエロティックに映し出す。

これはフェティシズムの映画であると同時にジェンダーの映画でもあるのだ。
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赤い天使(1966年製作の映画)

4.0

生と性と戦争と死。まさにこの世の地獄。

白黒の画面に美しく輝く若尾文子の白い肌。戦場で兵士たちに慰み者にされる若尾ちゃんに心が傷む。

今まで観た映画で何よりリアルで何よりの反戦映画ではあるが、彼女
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浜の朝日の嘘つきどもと(2021年製作の映画)

2.8

震災後の福島を舞台に、擬似「家族」が血を凌駕する物語。

ただ映画が「嘘」ってわかってるならもっと上手につきましょうよ。稚拙で巧くないし俳優のキャラに頼り過ぎ。

あの味のある映画館そのものを舞台に、
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NOPE/ノープ(2022年製作の映画)

4.6

とてつもない没入感。観終わって構成に一切の無駄がないのに気づく。

『映画』そのものの映画でもあって、いまハリウッドではUFO/SFをこういうふうに捉えて扱ってしまうのか(⁉︎)という斬新さ。 

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ペパーミント・キャンディー(1999年製作の映画)

3.8

『国家』という暴力装置がいかに人の人生を狂わせ、人を傷つけるのか。

ただ人間の本質は純粋であり続けるはずだとする性善説に基づく。

時系列を巻き戻すことで、それがより浮き彫りになる演出が効果的。
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鬼灯さん家のアネキ(2014年製作の映画)

3.2

前半のラブコメ調が特に好きだけど、2転3転しながらよくまとまってます。

今泉力哉監督のデビュー作『終わってる』でもその童貞役のハマり具合が最高だった前野朋哉がやはりここでもGJ。

『好きって何?』
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サマーフィルムにのって(2020年製作の映画)

4.7

歪だしバランスも悪いし荒削り。だが熱量!紛うことなき大傑作。

伊藤万理華の薮睨み、猫背の居合、ダッシュする背中……その一挙手一投足に振り回されっ放し。

トンデモも普遍に変えてしまうイリュージョン。
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オールド(2021年製作の映画)

3.6

荒唐無稽なアイデアを理詰めかつ強引に広げていく展開がおもしろい。

誰もが間違いなく老い、死に至るのに普段それは意識されず忌避されている。

そこへ示される違和感なのだろうか?確実に画面の中では狂った
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ラストナイト・イン・ソーホー(2021年製作の映画)

4.5

つかみの60'sロンドンのファッションと音楽がいい。

夢心地な『ミッドナイト・イン・パリ』が繰り広げられるのかと思ったら、まさかのロンドンに巣食う亡霊を辿る展開に固唾を呑む。

強烈な『オトナ帝国の
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LOVE LIFE(2022年製作の映画)

2.4

このレビューはネタバレを含みます

かなりの珍品。いろんな出来事が行き当たりばったり、数珠繋ぎで怒涛のように起こり続けるが、そこに必然性はない。それらが「息子の死」という大きな主題のノイズにしかなっていないのだ。

唯一 映画を繋ぐのは
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卍 まんじ(1964年製作の映画)

2.5

谷崎潤一郎がしたためた匂い立つような妖艶さや心理の機微などには目もくれない。

のっけからひたすら岸田今日子のハイテンションなモノローグと若尾文子の大仰な芝居、即物的なエロスが強烈。

だけど若尾ちゃ
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WANDA/ワンダ(1970年製作の映画)

3.6

一瞬ニューシネマを思わせるが、実のところもっとパーソナルな部分こそが問題なのだ。

一言で言えば切実な承認欲求。  

大事な場面で登場する採石場は自我が削られることのメタファーではないか。

車と男
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妻は告白する(1961年製作の映画)

3.8

増村保造の画づくりはギュウギュウでわかりやすくていい。話もシンプル。

とにかくそのときにしか出せない若尾文子の妖しい美しさだけをフィーチャーしているのだ。

重くて怖い女だけど、絶対に味方しちゃうよ
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地獄の花園(2021年製作の映画)

4.0

OLの日常とヤンキー漫画の合体という緊張と緩和のワンアイデアなんだけど、そのくだらなさにのめり込ませるだけの力がある。

ひとえに広瀬アリスの啖呵とパンチ、川栄李奈のフットワーク、永野芽郁の雄叫びと普
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気まぐれな唇(2002年製作の映画)

2.8

2002年のホン・サンス作品。
まだスタイルが洗練されていないもののテーブルを挟んで酒を酌み交わしたり男女のあれこれだったりのいつものあれだ。

意外だったのはねちっこい性描写が反復すること。

話は
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雪之丞変化(1963年製作の映画)

4.2

日本的な様式美の世界に市川崑のモダニズムがハマる。黒を基調とした色彩とシャープな画づくり、そしてジャズ。  

役者の復讐劇ということで手が込んでいるのもおもしろい。脇では主役に負けじと変化するお初も
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GONIN(1995年製作の映画)

3.7

理由なんて何でもいい。男たちの血みどろの殺し合いにとにかく興奮するのだ!

ビートたけしや根津甚八はもちろん 冴えない竹中直人までもがギラギラで凌ぎを削る。

雨の中、組事務所を襲撃するシーンのビニー
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スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム(2021年製作の映画)

3.7

歴代ヴィランが『フィラデルフィアエクスペリメント』みたいな方法で召喚される序盤から釘付け。

歴代シリーズ集大成でもあり『BTTF』的なギャグや『インセプション』の世界観『君の名は。』みたいな記憶の扱
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雨月物語(1953年製作の映画)

3.6

戦国の乱世それはつまり究極の男社会。立身出世に金儲け。その皺寄せを食うのはいつも女性たちだ。

時代に飲み込まれた女たちの怨念が、うたかたの夢として男たちの前に浮かび上がる……

日本に綿々と受け継が
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喜劇 特出しヒモ天国(1975年製作の映画)

3.1

渾沌の渦中にあるが決してアナーキーではない。セックス 酒 暴力、人間の営みのひとつに過ぎない。すべてがフラット。意志あるノンポリ。下品かつ上品なユートピア。それ故泣きたくなるのが玉に瑕。『黒の舟唄』が>>続きを読む

残菊物語(1939年製作の映画)

4.1

ワンシーンワンカットで見せきる技術。随所に映画の文化的豊饒さに目を見張る。   

映画に「物語」はいらないと常々思ってきたが、いややはり……と思い直さざるを得ない。 

芸事と家柄と女、相反する事柄
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赤線地帯(1956年製作の映画)

4.3

売春防止法が施行される寸前。それぞれの抱える事情が悲惨過ぎ。

「子供のミルクひとつ買えないで何が文化国家よ」病気の旦那と幼子を抱えた女郎の言葉が印象的。

そんな中、父親に自分を買えと凄む京マチ子と
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ヒルコ 妖怪ハンター(1991年製作の映画)

2.3

チープでありながらなかなかどうして厭な感じ。Jホラー前夜の日本の土着的なホラー漫画と塚本監督のネチネチした偏執的なショットがいい感じにマッチ、独特の気味悪さを出している。竹中直人の顔芸は一つの見どころ>>続きを読む

映画:フィッシュマンズ(2021年製作の映画)

4.1

このバンドは通過していないんだけど興味深かったですね。
まずバンドって何なんだろう?という疑問にぶつかります。自分なりに考えると生き物であると同時に若さの賜物でもあるんじゃないかと。まさしく青春そのも
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獅子座(1959年製作の映画)

3.5

エリック・ロメールの長篇第一作目は意外にも会話で見せる映画ではない。惨めなおっさんがパリの街を彷徨うだけ。まじでめちゃくちゃ歩く。まだいわゆるロメール節がないんだけど、ユルめの哀愁とユーモアへの指向は>>続きを読む

喜劇 女は男のふるさとヨ(1971年製作の映画)

3.6

何というかおおらか。今だとコンプラ?ただそこにあるのは生身の『生』なんですヨ。性も暴力も嘔吐物、排泄物だって同じまな板の上。上っ面なギャグじゃないんです。人生、所詮 喜劇であるってな哲学すら感じる笑い>>続きを読む

オアシス(2002年製作の映画)

3.2

このレビューはネタバレを含みます

純粋さとは何かを問う作品なのだろう。その純粋さを命懸けで守ろうとする行為は、時として(だいたいにおいて)反社会的になり得る。その主題に別段目新しさもなければ、ハッとさせられるショットもない。ただその「>>続きを読む

恋は光(2022年製作の映画)

3.8

ナンセンスとも思えるコンセプトを大真面目に考察することで、浮かび上がる人と人の微妙な距離と感情の機微。 

基本 会話劇でありながら 時折挿入されるショットはゲにマジカル。西野七瀬の目線の先、指の動き
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シン・ウルトラマン(2022年製作の映画)

3.4

こんな箇条書きのプロットを画にしてみました みたいな映画ある?紙芝居以下の代物でしょこれは。あくまで理屈優先でおもしろさをわざと剥脱していますよね。ザラブが登場したあたりの怪しさに円谷プロを感じさせ>>続きを読む

(1974年製作の映画)

2.7

時間を行き来するおぼろげな記憶の断片、あるいは夢の中の出来事。それにしては確信に満ちたショットの乱れ打ち。風にゆれる草、ジトジトと冷たい雨、燃え盛る炎……映画にはこれだけあればいいといわんばかりの潔さ>>続きを読む