na坊さんの映画レビュー・感想・評価 - 4ページ目

na坊

na坊

映画(145)
ドラマ(0)
アニメ(0)
  • List view
  • Grid view

佐々木、イン、マイマイン(2020年製作の映画)

3.7

終始漂う空騒ぎ後の倦怠感。

反復される青みがかった朝の風景、特に屋外の撮影が美しく胸に刺さる。

青春に置き去りにした心にポッカリ空いた穴は人が消えた空洞のような甲府の街(ロケ地)そのもの。

『化
>>続きを読む

Swallow/スワロウ(2019年製作の映画)

2.8

このレビューはネタバレを含みます

幸せから逃避するためのスリル、あるいは日常からの飛躍の物語かと思いきや、ありきたりな出自トラウマものに。

しかしグロテスクなだけで品がない。特にあのカウンセラーの行動はありえないだろ。

映像が美し
>>続きを読む

mid90s ミッドナインティーズ(2018年製作の映画)

3.5

90年代、西海岸カルチャーに触れてきたワケではないのになんだこの郷愁は?
ザラついたフィルムに焼き付けられた棄民たちの空虚な狂騒。いわばシン・アメリカングラフィティ。同じ目をした者同志だからこそ生じる
>>続きを読む

PASSION(2008年製作の映画)

3.2

うわぁ……ナンダコレ……良い意味で気持ち悪さが普通じゃない。カメラが寄り過ぎているせいで生じる距離感。会話のリズム。生身を感じさせない登場人物たちの関係性。すべて気持ち悪さだけに奉仕する。
加えてすべ
>>続きを読む

不気味なものの肌に触れる(2013年製作の映画)

3.7

一貫して人と人の距離感に拘る濱口竜介監督の2013年作。
今回は精神と肉体の物理的な距離と相互関係について。
道、川、ボーリングのレーン。いずれも縦一本の先に予感させる不穏。そしてその美。
曇天、水、
>>続きを読む

親密さ(2012年製作の映画)

3.9

人と人の出会いと別れ、その刹那の親密さ。4時間以上に渡り、ひとときの迂回も許さず、ひたすら目に見えない人間関係の距離感を炙り出す。優しさと同時に冷めた眼差し。面倒臭くて愛おしい隣人へのラブレター。>>続きを読む

お嬢ちゃん(2018年製作の映画)

4.2

二ノ宮隆太郎監督の視点の置き方が独特過ぎるが、とにかくべらぼうにおもしろい。

3人集まるとテンプレのコントが始まる。シチュエーションがズレているのに作為を感じさせない会話の妙。

マチズモやDQN、
>>続きを読む

BLUE/ブルー(2021年製作の映画)

4.3

いい意味で東映らしい快作でありボクシング映画の傑作!

上滑りする会話の実存感のなさは気になるが、その分リング上のアクションだけで語る手法が潔い。


𠮷田恵輔監督が新境地を切り開かんとする野心が見事
>>続きを読む

街の上で(2019年製作の映画)

4.3

久しぶりに今泉監督のやりたいようにやりきった映画じゃなかろか⁉︎

『終わってる』や『こっぴどい猫』『サッドティー』あたりの美味しいとこ取りをしたような自由度の高い演出と、ニヤリとさせ時に爆笑を誘う会
>>続きを読む

イエローキッド(2009年製作の映画)

4.4

すげぇ傑作。真利子哲也監督は当初から暴力映画の申し子だったのだと身に染みて理解した。

ボクサーと漫画家という対置の妙。リアルと寓話の境界が意図的に曖昧にされているが、流れる"血"は間違いない、本物だ
>>続きを読む

螺旋銀河(2014年製作の映画)

3.7

人と人との関わりをシンプルな構造とコインランドリーという装置を使って宇宙に見立てた傑作!

ラジオドラマの収録場面がいい。互いに好意を抱きつつも向いているベクトルは平行線、それでもどこかでバタフライエ
>>続きを読む

十九歳の地図(1979年製作の映画)

3.3

学生時代、中上健次の原作を読んで妙な親近感と嫌悪感に苛まれた。だから映画は回避してたけどやっと観る気持ちに。

地図上の×印は鬱屈した青春の生きる証。吉岡まさるが配達する狭い地域は彼にとって世界の縮
>>続きを読む

豚と軍艦(1961年製作の映画)

3.6

オープンセットの歓楽街から溢れんばかりに躍動するカメラワーク。

戦後の悲壮感など笑い飛ばすかのような度を越したユーモア。
時にジメッとしてもあくまで軽やかなのだ。それでいて真正面からその悲惨を引き受
>>続きを読む

異端の鳥(2019年製作の映画)

3.4

激烈に野蛮で強い画のオンパレード。今この時代に人間の理性を真正面から問い直す差別と排除、暴力の歴史。そしてその本質に迫る力作……と言いたいがあまりにクドい。人間に対する嫌悪(というより憎悪)が過ぎる。>>続きを読む

(2020年製作の映画)

3.5

美瑛と沖縄とシンガポール。美しいだけでなく生活に根ざした場として映されている。異国の地で泣きながらカツ丼を喰らう小松菜奈のバックに『糸』、そして榮倉奈々と成田凌の『ファイト!』。そして『時代』だ。もう>>続きを読む

映像研には手を出すな!(2020年製作の映画)

3.4

鈴木則文から井口昇へと引き継がれた作風の直系。漫画をそのまま実写でやりきる覚悟がユルさバカバカしさを捻じ伏せる。リアルvsロマンを熱情と勢いで超越してみせる原作のスピリッツを丸ごとトレース。ちゃんと映>>続きを読む

82年生まれ、キム・ジヨン(2019年製作の映画)

3.6

家父長制と女性の生き辛さ。男性もそれを何とかしたいんだけど、大きな何かがそれを阻んでいる。時制がガチャガチャしているのは、それぞれの今と「こんなはずじゃなかった」。登場人物たちのため息が印象的だが、そ>>続きを読む

まともじゃないのは君も一緒(2020年製作の映画)

4.1

「普通」って?「好き」って何?そこを真正面から定量的に考察しつつ、ふいに訪れる定性的な「恋」をきちんと描いて見せる力量と真摯さ。

ハイカラな日本映画の香りが漂い、清原果耶には増村保造作品の若尾文子を
>>続きを読む

あのこは貴族(2021年製作の映画)

4.0

「ある階層」と地方、そして男女の分断。これらはこの国に綿々と続く閉塞の表出である。

どちらに肩入れするでもなく、 糾弾するわけでもない。岨手由貴子監督の注ぐ眼差しがすべての登場人物に等しく優しいが故
>>続きを読む

あの頃。(2021年製作の映画)

3.6

うまくいってない松坂桃李があややに落ちる描写で5億点。わかるわかるぜ……その余韻で最後まで持ち堪えてまったり楽しめた。

しかし中心に仲野太賀が来ちゃダメでしょう。オタクの中心はあくまでアイドルなんで
>>続きを読む

無頼(2020年製作の映画)

4.2

実録映画でもない、Vシネでもない。これまでになかった感触のヤクザ映画だ。すべてを曝け出し、カッコ悪くも足掻く。裏社会から覗いた戦後史、そして家族史。だけど、最後に残るのは"春夏秋冬"=人生を生き抜くこ>>続きを読む

燃ゆる女の肖像(2019年製作の映画)

4.1

赤の私服と緑のドレス。おそらく炎と水がモチーフ。パチパチ燃える暖炉の薪、床を歩く靴、海辺の波、キャンバスに走らせるペン……これらの色、音の対比と畝(うね)るような相乗効果。6日+5日、2人+1人。やが>>続きを読む

花束みたいな恋をした(2021年製作の映画)

2.2

このレビューはネタバレを含みます

全般的に"映画"を観ているという実感に乏しい作品なんですが、良かったところから。

ひとつは最後のセックスをして朝焼けの中、二人でベランダに出るショット。もうひとつは観覧車をふたりで見上げるショット。
>>続きを読む

聖なる犯罪者(2019年製作の映画)

3.2

このレビューはネタバレを含みます

すべての登場人物の目に漂う"絶望"。初見の俳優ばかりなのにその確かな演技力に驚かされる。信仰への概念がないので、すべてを理解したとは言い難い(なぜR18なのか含めて)が、特に前半のスリリングさは特出。>>続きを読む

追龍(2017年製作の映画)

3.3

「見せる生の暴力」ですよこれは!香港アクション ミーツ『仁義なき戦い』×『アウトレイジ』。加えて"濃厚な男たち"の描かれ方が近年の韓国映画のテイストで美味しいとこ取り。九龍城を始めとした当時の香港のセ>>続きを読む

リトル・ジョー(2019年製作の映画)

4.0

映画全体を支配する美しい色彩。淡さとヴィヴィッド、無機質と毒々しさ、整然とした画に対する雅楽や不協和音のコントラスト。目に見えないもの=《感染の脅威と人間心理の微妙な変化、そして罪の意識》をつぶさに捉>>続きを読む

一度も撃ってません(2020年製作の映画)

3.5

妙なバランスのハードボイルド?コメディ?いや、雑に括ればバーで桃井かおりが全共闘語りする映画シリーズだ。『我に撃つ用意あり』『バウンス ko GALS』あたりがパッと浮かぶ。石橋蓮司、岸辺一徳とのトラ>>続きを読む

カセットテープ・ダイアリーズ(2019年製作の映画)

3.7

新自由主義が台頭し、失業、更にレイシズムが蔓延る中で一点突破として存在するカセットテープミュージック。時代遅れのブルース・スプリングスティーン。彼に思い入れはないが、心情と音楽のシンクロにすっかり魅力>>続きを読む

透明人間(2019年製作の映画)

4.2

『透明人間』 これは凄い。シンプルな構成と脚本でありながら演出だけで魅せていく手法。

『死』というより『生きている』ことの根源的な恐怖を炙り出す。『生』と『死』、その隣り合わせ。見えない存在を通じて
>>続きを読む

ザ・ピーナッツバター・ファルコン(2019年製作の映画)

3.4

「ピーナッツバター」だけあってやや甘口ながら後味は意外にサッパリ。

河口だったりトウモロコシ畑だったり、表通りじゃない。辿り着くのが最果てのリングだというアメリカン裏ロードムービーの趣。

ダコタ・
>>続きを読む

プレーム兄貴、王になる/プレーム兄貴、お城へ行く(2015年製作の映画)

3.6

歌とダンス、美男美女、豪華絢爛で煌びやか。もちろん長尺。久方ぶりの王道ボリウッド映画だ。この高揚、この多幸感!何より夢がある。そして愛。ほかは何もいらないんだよな。年に1本はこんなのに浸りたいから、ど>>続きを読む

その手に触れるまで(2019年製作の映画)

3.5

イスラム教条主義に魅入られた少年の末路。極端な女性嫌悪は結局、自分自身が生きていることへの罪の意識の表れなのではないか。
だけど人には各々の生き方があり、認め合わねばならない。人間の中心には神ではな
>>続きを読む

コロンバス(2017年製作の映画)

3.5

コロンバスという街のモダニズム建築を題材に、計算され尽したフォルムが心地良く、すべてのカットに惚れ惚れしてしまう。対称と非対称、構図と色彩。とりわけ赤と緑(補色)が鮮やか。噂に聞く小津オマージュはあ>>続きを読む

新感染半島 ファイナル・ステージ(2020年製作の映画)

2.5

血生臭さと埃っぽさが抜け落ち、2.5次元のように整然とした荒廃。それはまるで温度感のない『マッドマックス 怒りのデス・ロード』だ。ゾンビはただの集団として処理され、人を食うモンスターとしての実存的な恐>>続きを読む

燃えよデブゴン/TOKYO MISSION(2020年製作の映画)

4.0

紛い物の香りがプンプン漂いながら、今まで見たことがない空間の捉え方。そうそうこんな"TOKYO"が見たかったんだ!凄いのは日本人監督にも関わらず舞台装置の東京が外からの目線になっているところですね。>>続きを読む

河内山宗俊(1936年製作の映画)

3.3

暦の上ではジャニュアリーってんで正月らしい調子のいいのを一本。まずこの河内山宗俊という男、なかなかの人たらし。で、腕と機転に覚えあり。

デビュー直後の原節子がいじらしくってそりゃああなっちゃいます
>>続きを読む