石口さんの映画レビュー・感想・評価 - 2ページ目

石口

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PERFECT DAYS(2023年製作の映画)

4.0

本とかカセットとか好きなものに囲まれてささやかな喜びを噛みしめ、自分からは出しゃばらないが求められれば応じるという具合にささやかな善行を重ねる。トイレ清掃業の若い同僚にはちょっとナメられており、一方で>>続きを読む

(1955年製作の映画)

4.0

ネオレアリズモ的作風の中にも後のフェリーニスタイルの萌芽が随所に見られる。とりわけ大人数が室内でガヤガヤ騒ぐパーティーのシークエンスが傑出。その後人通りの少ない寂しげな通路のショットになるのもいい。マ>>続きを読む

影武者(1980年製作の映画)

3.0

面白くなりそうな設定ではあるのに、各キャラを立たせることを放棄したかのような覇気に欠ける演出が黒澤らしくもなく、弛緩した空気が全編を支配。中途半端にモノクロ時代の残滓を感じる部分もあるのが、かえって衰>>続きを読む

枯れ葉(2023年製作の映画)

4.0

紙片紛失から始まるすれ違いの切なさもアル中男の自省を経た再出発も、そこを広げて面白くしようという欲張り方を一切しないのだが、この腹八分目な感じも含めてカウリスマキらしさを堪能。カラオケ映画としても「3>>続きを読む

やくざ絶唱(1970年製作の映画)

4.0

暴力兄の束縛から逃れようとする前半はまだ追えた大谷直子の心の動きがどんどん理解不能になっていく。それでも圧倒的な演出のテンションで見せきってしまう。この時期の増村は完全にトチ狂ってた感あるが、これはこ>>続きを読む

天はすべて許し給う/天が許し給うすべて(1955年製作の映画)

4.0

ジェーン・ワイマンがロック・ハドソン宅に再訪した時に、窓が屋外を見渡せるようなとても大きいガラス窓に変わっており、ちょうど外では雪が降っている、という美しい描写がある。ここは本作の中でも強烈な印象を与>>続きを読む

アリスの恋(1974年製作の映画)

4.0

友達みたいな関係性の母子とイカれた周辺人物たち。ハッピーエンド風だが実際はそうとも思えないような帰結。敵対してた相手と仲良くなる展開も、それぞれのマトモじゃなさが際立つような描き方で妙に可笑しい。女性>>続きを読む

フェノミナ(1985年製作の映画)

4.0

ド派手な音楽と突拍子もない殺人描写は相変わらず。本作は何と言っても大量の虫が空からやってくるという発想が強烈で、ヒッチコック「鳥」をグロくしたようなヴィジュアルは相当な驚きを与えてくれた。しつこいぐら>>続きを読む

(2023年製作の映画)

4.0

ヒョロい風貌でイキりまくる加瀬亮の怪演が面白すぎるのだが、与えられた役割を十全にこなす木村祐一や中村獅童も適材適所なキャスティング。命の軽さ、それをギャグとして描く不謹慎さ。呆気なくもキレのあるラスト>>続きを読む

イメージの本(2018年製作の映画)

4.0

結局この編集スタイルが好きかどうかが評価の分かれ目なんだろうが、私には刺激的に感じられる。ゴダールは最後の最後までゴダールだった。引用されてる映画を全部見てみたいと思ってしまう。

アラビアのロレンス/完全版(1988年製作の映画)

4.0

やや変わり者って程度の飄々とした好青年ロレンスが別人のような形相に変貌していく過程をたっぷりと時間かけて描く。その狂気と屈折を表現しきったピーター・オトゥールの名演。清濁の両側にスポットを当てた、単純>>続きを読む

エッセンシャル・キリング(2010年製作の映画)

3.0

話を転がすマクガフィン的な何かがあってもよさそうなもんなのに、そういうものを一切排したミニマルな作りだが、相当に薄味とも言える。逃亡の描写はそれなりにハラハラさせられるし母乳の件などインパクトはあるも>>続きを読む

キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン(2023年製作の映画)

4.0

ディカプリオの額のシワもさることながら、デ・ニーロのニヤケ笑いは物語が進むにつれ心底恐ろしく見えてくる圧倒的凄みがある。要所要所で突発的に起こる暴力・殺人描写の妙な重さにもドキドキさせられた。長尺をダ>>続きを読む

ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地、ジャンヌ・ディエルマン/ブリュッセル1080、コルメス3番街のジャンヌ・ディエルマン(1975年製作の映画)

2.0

日々の単調な作業の繰り返しを単調なままに撮る。映画をエンタメ的に成り立たせるための技巧を徹底的に排するという試み。この手法がストイックなまでに全編にわたって貫かれる。

これが作られた意義はなんとなく
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トラック野郎 望郷一番星(1976年製作の映画)

4.0

梅宮辰夫が野生のクマみたいで迫力ありすぎ。殴り合いの最中にカチコチの冷凍状態になってしまう文太と辰ちゃん。登場人物も全員アホなら演出もアホだ。ガキを引き連れてのトルコ風呂は今の倫理観だと完全アウトな表>>続きを読む

ウルフ・オブ・ウォールストリート(2013年製作の映画)

4.0

スコセッシ作品って昔から一本調子な感じはあるし、本作はそれに加えて3時間の長尺。前半はちょっとキツいなと思いながら見ていたが、拝金主義カルトの教祖様とでも言うべきディカプリオのノリノリな怪演が凄まじく>>続きを読む

ハッピーアワー(2015年製作の映画)

4.0

絶対的な正しさが存在しない世界をフラットな視線で見つめ、人と人との間にある溝を少しずつ浮き彫りにしていく5時間。ある者の発言が他の者によって否定され、その発言もまた誰かによって打ち消される。朗読会後の>>続きを読む

勝手にしやがれ(1960年製作の映画)

4.0

自由度の高い編集がベルモンドの奔放な生き様とリンクし映画は瑞々しい輝きを獲得。ロケ撮影の開放感ある画が素晴らしい。本筋と関係ないメルヴィルのインタビュー場面も異常にかっこよく、受け答えがユニーク。こう>>続きを読む

三人の名付親(1948年製作の映画)

4.0

砂漠での過酷なサバイバルを描く一方で、男3人が慣れない育児に奮闘する場面ではホノボノ感が漂う。尊大な役が多いジョン・ウェインのチャーミングな一面を垣間見ることができる良さがある。聖書の扱いも面白く、話>>続きを読む

長い灰色の線(1954年製作の映画)

3.0

豪快に皿を割るパワー、一言も喋らないオハラという極端なキャラ描写が楽しい序盤が結果的には一番良かった。それなりに感傷を誘う場面はあるものの、物語に思い入れを抱ける要素は絶無。彼らが生きた時代の価値観と>>続きを読む

ピンクカット 太く愛して深く愛して(1983年製作の映画)

3.0

特異なシチュエーションを活かしたエロや笑いがもっとあってもよさそうなもんなのに、そのへん工夫した形跡はあまり見られずダラダラと展開。森田芳光はロマンポルノで何をやりたかったのだろうと思う。

とはいえ
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サブウェイ(1984年製作の映画)

2.0

つかみどころのないストーリー展開がシュールや荒唐無稽に突き抜けることもなく、ただ散漫なだけの印象。主要人物のキャラクター描写も薄味で面白味がまったくない。地下鉄構内という舞台の魅力とイザベル・アジャー>>続きを読む

バービー(2023年製作の映画)

3.0

このレビューはネタバレを含みます

ピンクが強調された作り物感溢れるポップな背景。その非現実世界の中で生身の人間が人形を演じる異様さ含め妙な味わいはある。歌やダンスのシーンが豊富なのも嬉しく、充分楽しめる出来だが不満も多い。

ライアン
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エル(1952年製作の映画)

4.0

異性への過剰な崇拝が憎悪として表出してしまう、恋愛における普遍的な人の業。妻の貞節は後の「昼顔」などにも受け継がれていくテーマ。これに対するブニュエルの屈折した拘りが興味深い。シュール控えめの正攻法な>>続きを読む

続・夕陽のガンマン/地獄の決斗(1966年製作の映画)

4.0

冗長とは思うが切るのが勿体ない良いシーンばかりなのも確か。欲にまみれた信用ならない男たちの手を組んだり裏切ったりが生み出すドラマの中で、一切崩れないイーストウッドのカリスマ的存在感。濃い顔面アップとモ>>続きを読む

パンダコパンダ 雨ふりサーカス(1973年製作の映画)

4.0

サーカスとか雨とか暴走する列車とか、映画的に楽しい要素満載で全編見せ場しかない。1作目より更に素晴らしい出来。水没した街の描写、少女にして母でもあるという主人公の設定など、宮崎駿のブレない趣味を感じる>>続きを読む

もののけ姫(1997年製作の映画)

3.0

登場人物の行動原理が不明瞭・・・なのは以降の作品もだが、本作は堅苦しい作りで退屈。黒澤時代劇にも通じる世界観は悪くないものの、ギラギラ感や泥臭さが皆無な宮崎には物足りなさを感じる。この人が扱う自然との>>続きを読む

草原の輝き(1961年製作の映画)

4.0

親からの抑圧による鬱屈を恋する2人が各々に背負ってしまったことによる不幸なすれ違い。貞操観念を過度に植え付けられてきたナタリー・ウッドが壊れていくプロセスには説得力を感じる。彼女の錯乱演技と美しい撮影>>続きを読む

Never Goin' Back ネバー・ゴーイン・バック(2018年製作の映画)

4.0

女子2人の友情を描いた青春映画としては「ブックスマート」より遥かに不良度が高く、且つここまでやるかってぐらい下品。鈴木則文かと思った。作品の出来は並かなと思って見てたが、後半のハンバーガー屋シークエン>>続きを読む

レッド・ロケット(2021年製作の映画)

4.0

現状からの脱却願望と少女への欲望に突き動かされたクズ男を、悲惨さの中にもどこか可笑しさを見出すような語り口で描くところが町田康の小説にも通じる素晴らしさ。底抜けにダメな奴というのはどこか憎めない愛嬌が>>続きを読む

ペトラ・フォン・カントの苦い涙(1972年製作の映画)

4.0

憎悪と表裏一体の激しすぎる愛情。女主人公ペトラが一人の女に執着するあまり精神崩壊していく様子が、電話を待つシーンを筆頭にとことん痛々しく描かれインパクトが凄い。喋らない使用人の存在も謎めいており、彼女>>続きを読む

戦場のメリークリスマス(1983年製作の映画)

5.0

このレビューはネタバレを含みます

言うまでもなくデヴィッド・ボウイ、坂本龍一、ビートたけしの映画として多くの人に記憶される作品だろうが、改めて見るとトム・コンティの存在の大きさに気付かされる。

ロレンス(コンティ)は俘虜の中で最もハ
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怪物(2023年製作の映画)

5.0

懸命に向き合っても大人は子供を理解できない時があるし、子供も大人に苦悩を打ち明けられない時がある。複数人の視点から事件を描きながら、最終的にはどこまでも子供に寄り添う是枝。芽生えてしまった新しい感情へ>>続きを読む

パーマネント・バケーション(1980年製作の映画)

3.0

路上演奏するサックス奏者との会話の後主人公がその場を去っていく一連のショットの美しさ。良い画が撮れる監督であることは了解するが、なんかもうちょっと面白い映画が見たいってシンプルに思う。スカした登場人物>>続きを読む

喜びも悲しみも幾歳月(1957年製作の映画)

3.0

戦前から戦後の変遷していく社会を背景として描きつつ佐田&高峰夫妻にフォーカスして展開する物語には結構引き込まれるものの、これだけの長尺のわりには駆け足に感じるところも多い。息子のエピソードなど明らかに>>続きを読む

イチかバチか(1963年製作の映画)

4.0

ハナ肇が最初から胡散臭く、いかにも何かありそうと思わせるものの展開にサプライズは希薄。なんとなくいい話に収束するのは微温的とも言える。ただ終盤の演説バトルが突出した迫力ある画面で、群衆描写が異様。物語>>続きを読む