石口さんの映画レビュー・感想・評価 - 4ページ目

石口

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日本春歌考(1967年製作の映画)

5.0

様々な対立図式が示されているのだが、それを「日本の夜と霧」のような難解な政治用語じゃなく歌によるバトルで描く手法が面白く、アンゲロプロスにも影響を与えたはず。後半になるにつれ理解不能な次元に突入してい>>続きを読む

愛の亡霊(1978年製作の映画)

4.0

いたって当たり前な因果応報の物語で、大島渚にしてはあまりにも普通。演技経験のない素人をほぼ起用していないこともあり、挑戦的な姿勢が後退してしまったように感じるのは寂しい。ただそのへんの物足りなさを補う>>続きを読む

愛のコリーダ(1976年製作の映画)

4.0

性愛に耽溺し世間と隔絶していく主人公2人のみにフォーカスし、そのいくとこまでいくという描写の力で引っ張る。女に身を捧げひたすら消耗していくかのような藤竜也が醸し出す男の色気。演じるのが彼でなければこれ>>続きを読む

白薔薇学園 そして全員犯された(1982年製作の映画)

4.0

過激な設定のわりには陰惨というほどじゃなく、どこかごっこ遊びのような脳天気さが漂う。だがそこも含めて嫌いじゃない。とにかく先生役の三崎奈美は美しくてグッとくる。ポルノとして一つの方向性を示し、やるべき>>続きを読む

桃尻娘 ピンク・ヒップ・ガール(1978年製作の映画)

4.0

セックスに対する考え方の相違から何かと対立する女子2人を軸にしながら、やたら純情な同性愛者男子のエピソードを絡ませる作劇が味わい深い。明るく開放的に性を描く作品コンセプトと見事にマッチした竹田かほりが>>続きを読む

イングロリアス・バスターズ(2009年製作の映画)

5.0

嘘や秘密を見破られまいとする際の動揺を見事に表現するメラニー・ロランら役者陣の力量。ねちっこい会話の応酬が生み出すヒリヒリした緊迫感が圧巻だ。映画館という舞台設定及び映画内映画という手法を最大限効果的>>続きを読む

その後の仁義なき戦い(1979年製作の映画)

4.0

工藤栄一のムーディーな演出と独特な画面作りで題材とのミスマッチ感はあるが、結果として深作版はおろか他のどんなヤクザ映画にも似ていない奇妙な作品になっており魅力を感じる。根津甚八の底無しのクズっぷりは見>>続きを読む

仁義なき戦い 完結篇(1974年製作の映画)

4.0

映画会社に無理矢理作らされた完結編ということらしいが、それでもエネルギッシュに押し切る深作演出に絶頂期の勢いを感じる。ヤクザに対して厳しく取り締まる方向に変容していく時代を背景に、政治力で成り上がる北>>続きを読む

地獄(1999年製作の映画)

2.0

時代を切り取った映画とは言えるが、中途半端にマジメな作りのオウム編が再現ドラマ並の凡庸さで、監督独自の視点みたいなものがあるでもなく、ただただつまらない。ラストだけは笑えるがカルト作家と持ち上げられた>>続きを読む

男性の好きなスポーツ(1964年製作の映画)

4.0

主人公が迷惑女に振り回されながらも恋に発展していく「赤ちゃん教育」の変奏とも言うべきラブコメだが、こちらは鮮やかなカラー映像が魅力的。室内のセットがとても洒落ている。軽妙な会話が楽しく釣りのシーンでの>>続きを読む

すばらしき世界(2021年製作の映画)

4.0

社会や他人と繋がり承認されることを抜きにして人はなかなか自己肯定には至れないという当たり前の事実を痛感させられる。元ヤクザであるという怖さも表現しつつ繊細な演技を見せる役所広司が絶品で、彼を取り巻く人>>続きを読む

カメラを止めるな!(2017年製作の映画)

2.0

最後まで見れば誰もが成程と思える、破綻のない巧い構成なのだが、だから何なんだという気もする。全体としては鈍臭いドタバタ劇でコメディ演出も陳腐だ。長回しという技法は好きなのだが、ただ長く回せば興奮や感動>>続きを読む

Seventh Code(2013年製作の映画)

2.0

女優前田敦子はもっと生活臭が滲み出るような役柄のほうが合ってる気がする。彼女の魅力を引き出せてるかどうか、という観点から見れば山下敦弘の「苦役列車」や「もらとりあむタマ子」に完全に負けている。

話が
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666号室(1982年製作の映画)

3.0

否応なしに変化する時代の流れに作家がいかに適応していくかがテーマと考えるとスピルバーグの回答は興味深い。その後も休みなく映画を作り続ける彼のタフさの根源が窺える。出てきて喋るだけでゴダール映画的な空間>>続きを読む

マンマ・ローマ(1962年製作の映画)

4.0

アンナ・マニャーニがひたすら喋りながら夜の街道を歩き続けるシーンが出色。暗闇に灯りがポツポツと光る背景が美しいながらも異様な印象を残す。後の作品のようなショッキングさはないものの、パゾリーニならではの>>続きを読む

市民ケーン(1941年製作の映画)

5.0

鮮烈なショットで描かれる幼少期の情景がラストに繋がる美しい構成に唸る。一方で尊大な男が尊大であるがゆえに逃れられない孤独を描き、栄光と没落の物語として説得力が物凄い。若きウェルズの拘りが隅々まで行き渡>>続きを読む

復活の日(1980年製作の映画)

2.0

ウィルス蔓延の恐怖を描いた前半は不慣れな題材ながらも深作が頑張ってる感が伝わり意外と悪くないが、冗長な後半で台無しになっており勿体ない。南極ロケの映像に魅力がないうえ、大仰で湿っぽい音楽の使い方が作品>>続きを読む

1941(1979年製作の映画)

4.0

戦争を描きながらいかなる思想も主張も表出しない。ただ無秩序に物を壊しまくるカタルシスがこの映画の肝であって、ここまで無内容に徹する姿勢は清々しいと言える。中盤の大規模乱闘、終盤の観覧車や家屋の破壊がと>>続きを読む

サスペリア(1977年製作の映画)

4.0

何の理由もなく何の説明もなく、陰惨な出来事が唐突に起こる。怖いというより足元が不安定になるようなイヤーな感じが充満している。物語らしきものもあるにはあるがいかにもオマケ。冒頭の殺人シーンに、監督のやり>>続きを読む

佐々木、イン、マイマイン(2020年製作の映画)

4.0

佐々木周辺の描写も勿論悪くないのだが、恋愛関係は終わっているのに惰性のような感じで同棲状態が続いてる男女の描写に生々しいリアリティがあり、私はむしろそっちに惹かれた。

桃尻同級生 まちぶせ(1982年製作の映画)

4.0

インポ青年を勃たせるために女たちが奮闘する描写も楽しいが、何と言っても森村陽子のキャラクター、台詞回しが気持ちよく、活き活きとした快作に仕上がっている。明るく屈託なくエロを描けるようになった80年代と>>続きを読む

女生きてます 盛り場渡り鳥(1972年製作の映画)

4.0

山崎努は最初の登場からインパクトが凄まじく、「8 1/2」のサラギーナみたいな風貌の春川ますみも強烈。ラストも物語的にはクライマックスにはなりようがないようなシーンなのに、何故か感動的。この中村メイコ>>続きを読む

トラック野郎 度胸一番星(1977年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

菅原文太と千葉真一の殴り合いが漫画そのもののふざけきった描写で最高。文太の浮ついた感情を表現するのに海の上を歩かせるといったシーンも然り。鈴木則文のこういった演出を更に突き詰めると「ドカベン」や「伊賀>>続きを読む

博徒外人部隊(1971年製作の映画)

4.0

ダーティーな世界を描こうとする深作の方向性に生真面目な鶴田が応えられてるとは言い難く、この二人が組まなくなったのも納得。とはいえグラグラ揺れるカメラワークで活写される沖縄は魅力的。後の作品に繋がるこの>>続きを読む

ヨコハマBJブルース(1981年製作の映画)

4.0

優作のかっこよさもさることながら横浜の街やライブバー店内をスタイリッシュに切り取った撮影が出色。話が分かりにくくいろいろ描写が足りてないようにも思えるが、これを見れば工藤栄一が光と影の魔術師と呼ばれる>>続きを読む

スパイの妻(2020年製作の映画)

3.0

戦時下の狂った状況では正常な人間が狂人扱いされてしまう。ごもっともなメッセージではあるが、多くのリベラルな反戦映画が描いてきたことを黒沢が拙くなぞってるだけにも見えてしまい、物足りなさが残る。そんな中>>続きを読む

クリーピー 偽りの隣人(2016年製作の映画)

4.0

何故そうなるのか?の合理的説明に関心がなく、不安を煽る映像演出で押し切る黒沢清のいつもの芸当だが面白いんだからしょうがない。竹内結子が終始虚ろで不安定なキャラクターをうまく表現できており、強引とも思え>>続きを読む

宇宙からのメッセージ MESSAGE from SPACE(1978年製作の映画)

3.0

このレビューはネタバレを含みます

リアべの実を手にするのが何故かろくでもない連中ばかりであり、内輪揉め的描写にやたら力が入るところは深作らしさが感じられ面白いが、そもそも作品のコンセプトとは相容れない部分での面白さなのだとは思う。>>続きを読む

ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー(2019年製作の映画)

4.0

他愛ないといえば他愛ない話だがとにかくささやかではあっても一歩踏み出すことに価値を見い出す、青春映画の王道的な作りが好ましい。お互いをストレートに褒め合える2人の関係性も素直に羨ましく思えた。

犯人は21番に住む(1943年製作の映画)

4.0

犯人の主観ショットによる最初の犯行シーンが雰囲気満点でまず最高。そこからサスペンスが展開するが、特に前半はスピーディーな話の運びが見事。クライマックスの謎解きも見せ方が面白い。

女は女である(1961年製作の映画)

5.0

ゴダールってこんな楽しいラブコメも撮れるんじゃん!と驚かされる本作を見るたび、これはアンナ・カリーナの存在、当時のゴダールとカリーナの関係性があったからこそ成立した一度きりの奇跡だったんじゃないかと思>>続きを読む

満月の夜(1984年製作の映画)

4.0

パスカル・オジェが自由奔放というかちょっと困った女ではあるのだが、そのフォトジェニックな美しさは素晴らしい。夜道をバイクで疾走するショットにグッとくる。

海辺のポーリーヌ(1983年製作の映画)

5.0

ロメールの他の作品にも言えることではあるが、登場人物が自由恋愛を謳歌しながらそれで満たされるわけでもなく悶々としている姿に堪らなく惹かれる。明確な答えが導き出されるわけでもない、堂々巡りの恋愛談義もま>>続きを読む

遊星からの物体X(1982年製作の映画)

4.0

正義対悪という対立構図が成り立たないシチュエーションで一触即発の戦いが繰り広げられるのだが、クールに徹し一切情に流されないカーペンター演出がこの物語に見事にハマった感じ。ラストまで途切れない緊張感。火>>続きを読む

宮本から君へ(2019年製作の映画)

4.0

見ているほうもメンタルをガリガリ削られるような苛烈さ。恋愛映画でありながら幸福感やキラキラ感が絶無で驚く。クライマックスの喧嘩もあまりにエグい内容で爽快感とは程遠いが、全編をこれほどまでの過剰さで貫き>>続きを読む

愛する時と死する時(1958年製作の映画)

4.0

爆撃を受けて瓦礫の山と化した街の描写が鮮烈。防空壕に逃げ込んだ人々をカメラが追うシーンが素晴らしく、多くを語らずとも戦時下を生きた人々の生々しい情感が伝わる。メロドラマとしてもよくできてるが、理不尽さ>>続きを読む