椿本力三郎さんの映画レビュー・感想・評価

椿本力三郎

椿本力三郎

夜明けのすべて(2024年製作の映画)

3.9

当事者が公言していないだけでPMSやパニック障害、更年期障害(最近は女性だけでなく男性にもあるとされている)などの症状に苦しんでいる人は職場にもかなりの割合でいる。
これは当事者だけでなく、家族や職場
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52ヘルツのクジラたち(2024年製作の映画)

3.8

杉咲花の演技力と存在感が圧倒的。
ダメなシンママ役の西野七瀬も良かった。
ヤングケアラー、ネグレクト、
LGBTQの人が他者を支え、支えられることによる葛藤であったり、
正義感の暴走が社会に予想以上の
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プラダを着た悪魔(2006年製作の映画)

4.5

司馬遼太郎の小説に「義経」があるが
テーマは義経を通して見た「頼朝」の話であった。
あえて義経の目線を入れることで
すなわち真正面から「頼朝」を描いていないからこそ、
立体的に頼朝を受け取ることができ
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オッペンハイマー(2023年製作の映画)

4.3

「原爆の父」オッペンハイマーの「心理的な葛藤」を
照明、音楽といった映画的手法をフル活用して見事に表現している。
そしてクリストファー・ノーランらしくわざと時間軸を混乱させるような場面展開が「心理的な
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パスト ライブス/再会(2023年製作の映画)

3.7

SNS時代にどのように「思い出」と向き合うべきか。

韓国人の男女が
12歳、24歳、36歳でそれぞれ経験する出会いと別れについて。
それぞれの人生のフェーズにおいて
仕事や結婚などを経験し、人間とし
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アイアンクロー(2023年製作の映画)

4.1

プロレスそのものではなく、プロレス興行を通して「マチスモ全開の世界観がアメリカンドリームによって正当化されることで生じた歪み」が、さらに「家族という呪縛」によって強化され、逃げ場がなくなった人たちが描>>続きを読む

ビニールハウス(2022年製作の映画)

4.1

まったくキラキラしておらず、
地味で不器用でやることなすことすべてが裏目裏目に出る女性が主人公。
最初から最後まで不幸と絶望しかない作品。
ポン・ジュノの「パラサイト」を意識した「半地下はまだマシ」と
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アンダーカレント(2023年製作の映画)

4.1

中盤以降に説明的なシーンと会話が続き、
このテンションでどうやって終わらせるつもりなのだろうと
心配になってきたが、
なるほど、この終わらせ方なら「あり」だなと感心。
それもこれも井浦新の感情を徹底的
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BLUE GIANT(2023年製作の映画)

4.7

友達でも家族でもなく、自己成長における「仲間」の重要性について気づかされた。仲間がいるから壁を乗り越えられるのではなく、そもそも仲間がいないと「壁を乗り越えよう」と思いもしないし、強い気持ちを持ち続け>>続きを読む

9人の翻訳家 囚われたベストセラー(2019年製作の映画)

3.9

期待以上の本格派ミステリー。
目まぐるしい展開で
最後の最後まで気が抜けない。
道尾秀介が「ミステリーは人間を描くのに最適の表現手法」と言ったように
この作品も「人間の業」に迫っている。
文学への愛、
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哀れなるものたち(2023年製作の映画)

4.5

傑作、マーベラス!
序盤ではB級カルト映画かと思わせたが、
その露悪的なテイストは残しつつも、
徐々に「良識ある社会≒マチスモ過剰な資本主義社会」批判が見えて、スクリーンに釘付けになった。
ほとんどの
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花腐し(2023年製作の映画)

4.4

こだわりが強すぎて具体的には一切前へ進もうとしないクズ男2人がずっと言い訳を続ける話、ダラダラ、ダラダラと。場末のスナックがピッタリな空気感。

アブノーマルな行為も含め直接的な性描写が多いものの、
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枯れ葉(2023年製作の映画)

4.5

カラオケ酒場で出会った、すぐに仕事を辞めるアル中のダメ男と仕事運のないマジメな女性による、まったくキラキラしていない大人の恋愛ストーリー。極めて平凡で、地味な日常。

作中、ラジオからウクライナ情勢が
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PERFECT DAYS(2023年製作の映画)

2.2

主人公の平山役を役所広司が演じることに最後の最後まで違和感があり、感情移入できなかった。そもそもあの世界観とストーリーを表現するのに役所広司をキャスティングする必要があるのか、と。平山の相方である柄本>>続きを読む

ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ(2018年製作の映画)

3.7

ハードルボイルドなオジサン2人も良いが
イザベラ・モナーが印象的。
目力の強弱の使い分けが上手い。
一歩一歩迫ってくるような音楽も。

幸福路のチー(2017年製作の映画)

4.0

1980年代以降の台湾が凝縮されたような作品。
主人公のシャオチーは1975年4月生まれ。
小学校で「台湾語禁止、国語強制」。
知り合いの台湾人に
意地でも国語は話さないという方がおられるが
言語はア
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燃ゆる女の肖像(2019年製作の映画)

4.3

グザヴィエ・ドランが絶賛したのもよくわかる。
メインとなるエピソードはわずか数日での出来事であるが、
そこでの濃密な感情の揺れと動き。
徹底的に無駄が排除されており、音楽・音響効果もほとんど使われない
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キリエのうた(2023年製作の映画)

2.0

これまでの岩井俊二の作品を
どのように受け取ってきたかが問われる作品だと思う。

まず、本作単体で見たときは総合的に優れた作品である。
特に音楽が素晴らしい。

しかし、ずっと岩井俊二の作品をフォロー
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ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)

3.7

ゴジラ軸で見るか、ドラマ軸で見るか、
で評価が大きく分かれるであろう。

神木隆之介と浜辺美波、
さらに吉岡秀隆と佐々木蔵之介、安藤サクラといった実力者ぞろい。
彼らを中心とした「ドラマ」は、
戦後復
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サタデー・フィクション(2019年製作の映画)

4.1

見終わった瞬間に「時間をおいてもう一度見よう」と思った作品。
真珠湾攻撃前後の各国のスパイの情報戦の攻防。
そこに個人的な感情も大いに絡んでくるので、
裏切りに裏切りが重ねられて人間関係が複雑。
さら
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ナポレオン(2023年製作の映画)

3.8

本来であれば6時間くらいの尺が必要な表現と情報量を
思い切って2時間40分弱に仕立てているせいか、
あまりにもアッサリと描かれてしまっている。
そこに薄いとか浅いという印象はないので、
4時間とされて
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わたしは金正男を殺してない(2020年製作の映画)

4.1

国際政治のパワーバランスが
周辺国の裁判に大きく影響する生々しいプロセス。
国家権力のあり方と司法の関わり方について
考えさせられました。
確かにこの2人は「殺してない」と言えなくもない。

(2023年製作の映画)

2.2

救いようのないヒドい作品。商業的に大コケにコケるだろう。特に羽柴秀吉役の役者が最悪でミスキャスト感ハンパない。老いとはこういうことかと「ソナチネ」ファンの自分は悲しい気持ちになった。宮崎駿の「君たちは>>続きを読む

正欲(2023年製作の映画)

3.3

せっかくの世界観を
ガッキーと稲垣吾郎のキャスティングがすべて台無しにしている。彼ら2人が悪いのではなくキャスティングのミス。
本来は良い意味でミニシアター系の作品として仕上げるべきテーマでありながら
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ひとよ(2019年製作の映画)

3.8

浅田次郎的なベタさが苦手でなければ(僕はむしろ好物)
今もどこかの地方都市に
こういう「人生」を抱えた家族が
懸命に生きているのだろうと思った。
僕は「号泣」でなんとか踏みとどまりましたが
過呼吸にな
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(2023年製作の映画)

4.4

生きるとは、命とは何かをここまでエグッてくるか、と。森の奥深くにある障害者施設が舞台。人間の尊厳について見たくない現実を見せつけられる。
序盤から「命」について重い問いかけの連続で、
あっという間に2
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007は二度死ぬ 4Kレストア(1967年製作の映画)

3.9

ジェームス・ボンドが丹波哲郎と浜美枝と協力して忍者軍団を使って米ソの宇宙戦争を開戦5秒前に阻止する話。このむちゃくちゃにとっ散らかった展開もショーン・コネリーなら何となくそうかもと思わせる圧の強さ。髪>>続きを読む

007/私を愛したスパイ 4Kレストア(1977年製作の映画)

4.1

ロジャー・ムーアに
男でも漢でもなくオスとして大切なことを
教えてもらったような気がします。

キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン(2023年製作の映画)

4.4

さすがスコセッシ。マーベラス!

デ・ニーロとディカプリオの魅力を最大限に活かしている。
ディカプリオのハンサムだが軽薄極まりない男の演技は相変わらずハマっていた。自分の資産と名声だけが大切で、笑いな
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罪の声(2020年製作の映画)

4.0

社会派ミステリーであり、
小栗旬と星野源によるバディムービーでもある。
序盤の星野源が見事で一気に引き込まれるが
その序盤と終盤、ラストシーンで作品全体がキュッと締まっている印象。

「グリコ森永事件
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まなみ100%(2023年製作の映画)

4.0

心の柔らかいところをチクチク刺してくる、THE単館系ムービー、
「佐々木インマイマイン」的な。
斉藤和義の「ずっと好きだった」の歌詞と世界観が好きならハマると思う。
女々しさ、カッコ悪さ、しつこさ、自
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アントニオ猪木をさがして(2023年製作の映画)

2.1

誰の、どういう感情に向けて作った作品なのかまったく伝わってこない。
まんべんなく、当たり障りなく作られており、
アントニオ猪木の持つ「華」「毒」「はなかなさ」、
あるいはそれらの絶妙のバランスのすべて
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バーナデット ママは行方不明(2019年製作の映画)

4.5

家族とキャリアの両立に取り組む女性に響く作品だと思う。
大きなトラブルが無くてもいったん立ち止まるべき時期は必ず訪れる。
もちろんそれは男性にも。

娘の同級生のママ友でもある隣人との間で発生する、
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BAD LANDS バッド・ランズ(2023年製作の映画)

3.7

下流ビジネス、「オレオレ詐欺」の裏側など
現代的な社会問題を舞台にしたハードボイルドな作品。
銃撃シーンは、チョウ・ユンファ全盛期の香港映画のテイスト。

安藤サクラを見に行ったが期待以上の演技と存在
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宮本から君へ(2019年製作の映画)

4.1

原作をまったく知らずに
優ちゃんと池松壮亮というキャスティングでチョイスしたのだが
結構ヘビーな話なのね。
靖子役は優ちゃん以外できへんやろうな。
池松壮亮、また新たな面を見たような気がする。
同年代
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ホテル・ムンバイ(2018年製作の映画)

4.1

平凡な日常をテロが容赦なくズタズタにする。
赤ん坊のキャメロンちゃんが助かりますようにと観客のみんなが上映中に祈っていたはずだが「祈る」とはどういうことなのだろうか。
「アマンダと僕」でも描かれたよう
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