エゴイストとはあなた方観客のことに他なりません。この映画には日本社会が同性愛者に抱いていてかつそうであってほしいと思う願望が投影されています。「ひっそりとトラウマを抱えながら日陰を生きて、よもや権利な>>続きを読む
一見するとノマドの人びとは自己責任と自己決定のもとで定住しない生き方を選び取り、それを肯定的に生きようしているように見えるけれど、本作はその責任の配分のされ方や決定のプロセスには常に自己を超えた力(資>>続きを読む
グザヴィエ・ドラン監督の新作『ジョン・F・ドノヴァンの死と生』の一般試写会に行ってきた。
全編を通して陰影と補色のバランスが絶妙で、見惚れるまでに美しい画面。
産毛まで見えるほどに近づいたアップと俯瞰>>続きを読む
カッパドキアの映像美と皮肉の応酬が続く会話劇。出てくる奴らみんなむかついて共感も同一化も全くできないけど、鏡のショットが多いので気づかされる。ほら見ろ、これがお前らの醜さだぞと。確かにあれは私だ。腹た>>続きを読む
貧困層と富裕層の一見分かりやすい対比構造に貫かれた本作。主人が主人であり得るのは奴隷への全的な依存によってであり、奴隷という存在への搾取と依存を通して主人は主人となることができる。奴隷は奴隷の労働を通>>続きを読む
裕福であることに倦んでいる愛を失った家族の中で、祖父と孫娘だけが愛と死を見つめているがゆえに心を通わせる。ラストで祖父の自殺を録画し続ける孫のiPhoneには、愛してもない家族によって自死が阻止され命>>続きを読む
家の中の物量感、くたびれた服、布団の染みに至るまで貧しさを構成する物の配置が絶妙。ごちゃごちゃと散らかして汚くすれば貧乏っぽく見えるんじゃない。家の埃や油まで見えてくるような生活の堆積が感じられる映画>>続きを読む
どう考えてもエリオがタチでオリヴァーがネコという解釈しか成り立たない。女性に告白するか死か悩む小説の王に同一化、パンツに顔突っ込んでピストン、女の子に挿入、桃に射精、オリヴァーが胸に付いた精液を拭う(>>続きを読む
素子のレズビアニティが脱色されて白人の異性愛の物語になっていた。原作及びアニメ版でのインターネッツとの融合という(当時としては)革新的な結末もなかったことに。またアイデンティティやヒューマニティーを本>>続きを読む
『キャロル』と『ムーンライト』の登場はクィア映画史のエポックメイキングだと思う。映画『ストーンウォール』がホワイトウォッシングされて史実の政治性が切り縮められてたのとは対照的に、この二作はごくごく個人>>続きを読む
前評判良かったので期待上がっていたが期待以上だった。映画化を聞いてすぐに『噂の二人』を思い出し、劇場で観ているときは『めぐりあう時間たち』を思い出していた。女性たちの性愛や繋がりを描く映画の系譜に連な>>続きを読む
核家族内の介護の悲哀の物語として見れるかもしれない。病人、老人、障がい者の隔離の歴史の戯画化としても解釈できる。
どこまでも静謐な現在に響いている過去の叫びを聞くこと、映像表象の可能性と限界の両極端をここまで炙り出している作品もないのではないか。
独裁者のまなざしに同一化させられ、彼を人間的に描くことを通して負の連鎖を断ち切る選択を思考させようとするとても分かりやすく迫力のある作品。しかし民主化や民主主義がいいものであったことはかつてあっただろ>>続きを読む
他人のホームビデオに懐かしさを感じてしまう感覚。けれどこの感覚の同一化は私が私であることの可能性がばらばらになっていく瞬間をたたみかけるような映像で映してしまうとき、視線の宛先が宙吊りになってしまう。>>続きを読む
都市をとても猥雑に美しく撮っていた。パリはとても汚なかったことを思い出す。ロウ・イエは恋人たちの愛の物語が常に既に政治性を帯びることに自覚的だ(本人は政治的映画ではないことをいつも強調するけれど)。西>>続きを読む
サイコパスの問題は主体化=従属化を行う規律権力とベンサム的功利主義が融合したシュビラシステムによる統治を主人公が疑いを持ちながらも追認している点。結局はよりよく管理されたい欲望を肯定してしまっているの>>続きを読む
『KOTOKO』のようにまた男が救われる話になっていないか不安だったが、あの原作ではなりようもなく杞憂だった。説明的なセリフや字幕などは一切排除されていたのも良い。徹底したリアリズムが譫妄の域に達した>>続きを読む
20150731@アテネフランセ
メドベェトキンというロシアの稀代の映画作家を通して20世紀の革命の現代史に肉薄している凄まじいドキュメンタリー。クリス・マルケルの政治的立ち位置がしっかりと見えてくる>>続きを読む
グローバル資本主義の趨勢によって国家主権が解体を迫られながら同時に旧来の国民国家を単位とする敵対関係の構図が国境の内部で維持されるとき、「敵」とは外部から侵略してくるものではなく、国の内においてこそ発>>続きを読む
強姦の加害者の元米兵の証言は、セカンドレイプを惹起させる危険もあるとおもいつつ、罪を認め被害者に謝罪し協会に通い許しを請う日々を送っているとの証言は、兵士が脱軍事化していくプロセスを映し出してもいると>>続きを読む
『標的の村』はTVの画作りだった。今作は「映画」になっている。沖縄戦を生き延びた辺野古在住の1人の女性が主人公に据えられ、彼女の個人史から沖縄の戦後が照らし出される。彼女に「全部苦しみ」だったと語られ>>続きを読む