SQURさんの映画レビュー・感想・評価

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システム・クラッシャー/システム・クラッシャー 家に帰りたい(2019年製作の映画)

4.0

一人一人の表情から心情が伝わってくる。
彼女がシステムをクラッシュするのではなく、システムが彼女をクラッシュさせていることも描けているとは思うが、ただ、「君は悪くないよ」という台詞を、映画のなかではっ
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悪は存在しない(2023年製作の映画)

4.0

そんなに分かりあおうとしなくていいよ、と言われた気がした。

リオ・ブラボー(1959年製作の映画)

4.0

まったくもって異世界で、この町の仕組みどうなってんだ?と思う。
ホテルと詰所と飲み屋しか存在しないみたいなミニマルな町。
繰り広げられる会話のセンスも、どこかズレているような感じ。
生き死にの感覚もな
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続・夕陽のガンマン/地獄の決斗(1966年製作の映画)

4.0

ゆったりとした尺の使いかたで、シナリオもときどき本筋から大きく逸れるんだけど、そういう「無駄」の部分もなんだか嬉しくなってしまうようで、退屈することはまったくなかった。
ジリジリと向き合って早撃ちする
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パスト ライブス/再会(2023年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

最初の30秒くらいがとても良い。
あの人たちどういう関係なんだろう、でそっと視線を誘導する。そのあと、真ん中の女性が「こっち」を見返す。それでもうやられちゃったな。

残りはその30秒の注釈みたいなか
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オッペンハイマー(2023年製作の映画)

4.0

2時間、3時間の映画で、映画の奇跡は1回だけ起こればいい。ほんの一瞬でもいい。それだけでいい。映画にはそういうところがあると思う。

漫然と見ていると着いていけなくなる映画だ。観客は常に頭の中で状況を
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ピアノ・レッスン 4Kデジタルリマスター(1993年製作の映画)

4.0

男性中心主義的な性愛の経済をエイダは強い意志として恐れそれ自体はまったく筋の通っていない説明のように思われるんだけど、森や海に落ちる蒼い陰は美しく映画としてはそれで良かった。
孤独を描いた映画だったよ
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デューン 砂の惑星PART2(2024年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

救世主の到来により宗教的な熱狂が高まり、帝国の植民地主義に対抗する火は大きな炎へと変遷していく。激アツ。宇宙版レ・ミゼラブル。
ハルコネンにはハルコネンの、皇帝には皇帝の思惑があり、ポールにはポールの
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ハッピーアワー(2015年製作の映画)

5.0

それぞれの登場人物の退場シーン、観終わってから「あのシーンがラストだったんだな」って全員についてそうなる。

落下の解剖学(2023年製作の映画)

4.0

法廷ものとして、とても面白い。
同時に、法廷ものとして面白いということが逆説的に"法廷的なこと"の問題点を強調している。

弁護人は映画の序盤で「何があったかが重要ではなく、どう思われるかが重要だ」と
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月曜日のユカ(1964年製作の映画)

5.0

どのくらいの知名度かなども知らず前情報ゼロの状態で観たら、あんまりにも傑作映画なので驚いた。

道徳的に際どいラインをフラフラする物語としてのバランス感覚も奇抜なんだけど、そういった目眩の感覚を掻き立
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ひなぎく(1966年製作の映画)

2.0

反抑圧を意識しすぎて逆に共犯関係になっているというか、教条主義的で息苦しい映画だった
魅力的な音の使い方や静止画の連続などの演出は全体的に教条主義的になってしまった映画に対する内側からの抵抗の萌芽なの
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エル・スール(1982年製作の映画)

5.0

諸感情は人間にも宿るけれど、光と影の中にも宿るのだということに、気づかされる。
その日の空や街並みや山々の明るさ。
室内の照明の色合いや明度や顔にあたる角度。
窓から差し込む光の質感。
理屈の上では、
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ボーはおそれている(2023年製作の映画)

4.0

こういう感じ。
まさにこういう感じ。
ほとんど意味がわかんないまま、なんか世界とか周りの人たちは勝手に進行していく。
どうも私だけ知らされていない世界の法則があるらしいけど、どんなに理解しようと努めて
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夜明けのすべて(2024年製作の映画)

4.0

映画が始まり終わるまでの2時間、特別なドラマはなにもなく、ただ知り合って、親しくなるだけ。
日常的(そして奇跡的)関係があるだけ。

たった2時間の映画で、人間のすべてが描けることはなく、苦しみや幸せ
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瞳をとじて(2023年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

実験的(前衛的という意味ではなく)な映画で、実験の目論見は成功しているけれども、実験的な部分が前面に出ているためにちょっとヘンテコな映画だった(少なくとも『ミツバチのささやき』を期待して観にくると面食>>続きを読む

グリーンマイル(1999年製作の映画)

2.0

登場人物たちが大切な話を「言わされている」シーンがいずれも空虚だが(ジョンについては結局なにも描かれない!)、全体的にゆったりとした尺のとりかたで映画ならではの贅沢な時間は感じた

哀れなるものたち(2023年製作の映画)

4.0

言葉にしようとすると取りこぼしてしまいそうでうまくまとめられないな。
非現実的な設定、物語、人物だけど、そういうふうに生きているということにそれ以上の評価とかできない。
あえて言うなら、とどまること、
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ミツバチと私(2023年製作の映画)

3.0

私的な場面というものがなく、全体的に被写体と距離を感じる。
養蜂の巣箱を木の棒でコンコンと叩くシーンにこの映画のすべてが凝縮されていると感じた。

ドッグヴィル(2003年製作の映画)

4.0

実際にはありえないことだけど、迷いながら、すべて撮って、最後にラストどうするか決めたんじゃないかという気がする。
終盤はあまりに言葉が多く、すべての発言の意図や正当性を吟味することが難しいけれど、映画
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彼方のうた(2023年製作の映画)

4.0

映画が始まって、「この人はどういう人なんだろう」と想像する。
なんで話しかけたのかな?とか知り合いなのかな?とか。
そうやって想像するのはすごく自然なことだし、それが自然だというのはいつだって「この人
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ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)

4.0

本作におけるゴジラは、黒くてゴツゴツしたボディに、青白く光る背、熱線と非常にかっこよく実在感としても申し分ないが、同時に中身の詰まっていないハリボテのようだとも感じさせる。

ゴジラすげー! もっとや
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ファースト・カウ(2019年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

あまりにも美しいラストシーン。
『キッズ・リターン』のラストを思い起こさせる。

冒頭のシーン。
寄り添う2体の白骨が発見される。
この冒頭によって、最終的な2人の死が確定する。映画のなか2人は、「死
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TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー(2022年製作の映画)

4.0

怖いという形容はしっくりこない。
怖いと苦しいから合成された、今までにはなかったような感覚。

ベースはいつもの悪魔憑依ものだが、信仰の要素を消し去り、代わりに抑うつ症状としての罪業妄想や希死念慮、そ
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PERFECT DAYS(2023年製作の映画)

4.0

どの映画でもあることだが、観ている最中に、ふっと頭が別のことを考え始める。マインドワンダリングする。

例えば、曙光の下町がうっすらと青味を帯びて見えて、漫画『ブルー・ピリオド』の主人公が「渋谷の朝は
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窓ぎわのトットちゃん(2023年製作の映画)

4.0

子供たちには、生きたいように生きていて欲しい。悲しいことはできるだけ少なく、ワクワクするようなことができるだけ多くあって欲しい。そういった願いと、ただそれだけのことを願うことがあまりにも難しいほどに世>>続きを読む

ウォンカとチョコレート工場のはじまり(2023年製作の映画)

2.0

誰かの滑稽な姿を馬鹿にするタイプの笑いが隠し味的に散りばめたられている(原作からしてそういう部分はあった気はするので仕方ないのかもしれないけれど)。

「夢を見ること」の魅力が表現しきれていないと感じ
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枯れ葉(2023年製作の映画)

4.0

戦争や虐殺が続いていることを気にしないようにしながらただ座って映画を観るのは、半分で感動しながら半分で心が死んでいるような。
心が綺麗に二分されているから単純なような、耐え難さを噛み潰すようにしていて
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VORTEX ヴォルテックス(2021年製作の映画)

4.0

分割された画面が示す計算的で明確なテーマ性。夫が「君を愛している、君がいないと駄目なんだ」的なことを愛人に向かって話したところでそれが分かった。
つまり、1人で死ぬことが怖いのだ。
どんなに愛してると
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ナポレオン(2023年製作の映画)

2.0

外連味と覇道を排除した空白に、美しさが宿らないままだった。
最後の30秒くらいだけ少し良かった。

アレックス(2002年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

正規の時間の流れであれば、女性のモノ化といったテーマが浮かび上がる。「結局は女性が決める」と話したアレックスが、男性によって性的な対象物に貶められ、男性によって復讐が遂げられるからだ。
しかし、そうい
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⻤太郎誕生 ゲゲゲの謎(2023年製作の映画)

3.0

このレビューはネタバレを含みます

「沙代は”どうして”救われることができなかったのか?」ということが、どうにも気になった。しきたりによって生活を支配されていた少女が、その抑圧に対する反抗として、支配者たちを虐殺していく。暴力的抗議の報>>続きを読む

ゴーストワールド(2001年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

イーニッドとレベッカは友達。高校の卒業式で、クラスメイトのことを2人で密かに馬鹿にする。2人が馬鹿にする対象は、ラリって事故にあったことをきっかけに感動的な卒業スピーチをしたクラスメイトや、高校を卒業>>続きを読む

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