「地上はどんなところだったか」
内藤礼さんの作品を見ているとやわらかな光につつまれているように感じられる。
生まれること。生きていること。ここに存在していること。それ自体を祝福だと思える日まで、探しつ>>続きを読む
カトリーヌ・スパークなんてかわいいんだ最高の女の子じゃん、、、と思いつつ実はひとつも出演作品を観ていなかったのだが、本作は噂にたがわず気抜いてみられるエロティックコメディだった。60年代のフェミニンな>>続きを読む
起きてしまった事象と、その地底ふかくに根をはり震えるかなしみを天秤にかけたとしても、なによりも重いのは命の方であるのはかわらない。けれども、単純に裁いて解決することなど、ほんとうはひとつもないのだ。そ>>続きを読む
わからないことだらけだよな、生きていくの。どこかに行きたくても叶わない。なにものにもなれないと、自分の空っぽさについて思いを馳せている頃。しかし、どこにも行けないからこそ、見えるものの解像度が高くなる>>続きを読む
あおい空に雲がまばらに浮かんでいて、むかつくくらい初夏らしい空だった。死ははなれた岸まで泳いで向かうものではなく、生きていることのすぐ隣にあって、時々すっと目の前に現れたりするのだと知った日だった。ぼ>>続きを読む
人の暗部にこそ真理があるのだとして、その暗闇に手を伸ばしてみても、何があるのかすべて紐解くことはきっとできない。黒の宇宙に手を泳がせて、てさぐりで触れたその生々しい感触が脳内にこびりつく時、唯一の真理>>続きを読む
はじめて観た時、声をころして泣いた。人はたったひとりで生きていくには頼りないし、あまりにもわからないことが多すぎる。暗がりにいかないと、正しさよりもたいせつなものの光を見失ってしまうこともある。さびし>>続きを読む
誰かを愛していることと、愛しているその人の正しさを信じることは、かならずしも一心同体ではなくていいのだということを知る季節。すきとおった金髪を風にあおがせ、まだ何ひとつこの世の汚染を見ていないというよ>>続きを読む
幼いころ大切にしていたものの中で、今でも同じように大切に思えているものはいくつあるだろうか。両手でかかえるほどだったはずなのに、今脳内にぽつりぽつりと靄のように浮かぶそれらは、あのころよりもずっと少な>>続きを読む
卒業の季節になると、どの卒業ソングよりも思い出す合唱曲がある。彼ら彼女らの無垢さをのこした瞳に、少しずつ翳りが見えだしていくのを見ていて、頭の中で響いていたのもその歌の一節だった。人も獣だ。自分の心と>>続きを読む
より完全にと言って平気で死を踏み台にし、これも仕方ないのだとあくまで同様に被害者であることを、免罪符のように口にする。人っていつの世もかわらない。すぐに理性を捨てられるし、さも正常だという顔だって得意>>続きを読む
外を歩いている時はさして他人のことなど気にしないのに、電車やバスの座席に座っている時は、なぜか視線を左上からゆっくりと横移動させて自分のいる空間を観察してしまう癖がある。あそこにいる人は今日は何時に起>>続きを読む
そう、一瞬にしてその人だけがすべて例外になってしまうことってある。側から見たらやめておいた方がいいのは一目瞭然なのに、脳が酔わされることを待ち望んでしまうのだ。あなたがほしいと所有欲をきれいに包装した>>続きを読む
坂道をすべりおりながら、担任の先生の真似をしながら、ぴょこぴょこと跳ねながら、きゃはきゃはと登校していく子たちが愛らしすぎる。クラスで飼っているカメの力試しに精を出して、顔を林檎のようにまっかにして叫>>続きを読む
目の前の景色をうつくしいと眺めながら、足下の花を踏みつけていることには気づかない。わかりやすい罪ばかり指さして己の正義を振りかざすのに、その手で誰かを嘲って握りつぶしたりする。それが「普通の人間」だと>>続きを読む
うつくしい朝をむかえるためにあるような日光が何枚もの帯になって差し込む部屋から出なかったペトラは、やってくる女性たちと言葉をかわしても、目線はあわせなかった。背中をむけあったり、虚空を見つめたり、鏡に>>続きを読む
死ぬかもしれないと思っていたのに、まだ生きていたからふたりで暮らしていこう。虚実が真実へと変化した瞬間。まるで絶望からふたりで光を紡いでいくようなうつくしい場面だった。なんでもない人たちの生活や時がた>>続きを読む
いつからか神さまの手のひらに転がされるのにもなれたころ、この世におこる事象ははじまってしまえばおわってしまうことを理解した。その速度はその時々でかわるのだけれど、きまって自分の生きるスピードよりも去っ>>続きを読む
生きている、それそのものが祈りでしかないのだと、本作を観ている間は信じていたいと思った。皆、神様の溜息の中で生きているみたいだった。自分ではどうにもできない何か大きなことに押しつぶされそうになりながら>>続きを読む
きれいなだけの箱の中に閉じ込められた人形のように微笑んで、しあわせだと自分に言い聞かせる。羨まれる生活は、意志を売り渡して手に入れたものだから、牢獄に等しい。喉元を掻きむしる要求を飲み込めるだけ飲み込>>続きを読む
生きている、しろくゆれる。
風にゆれる花びらのように、かすかに、目をこらさなければ見えないくらいにゆれている。目に見えているものがどれほどあるだろう。見えないものを見えないまま、ただそ>>続きを読む
エンターテイメントとしての殺し。建前は潰すためにある。「バカヤローコノヤロー」って言ってなくちゃやっていけない世界、というのはきっと闇社会だけではないよな。まじ笑えないけど、笑うしかないのさ。
ひとつの夜とみっつの部屋。本屋に並ぶどの本にも描かれてないけれど、こころでこっそり開く本のたいせつな場所に書きとめておきたいぼんやりとしたランプのような物語。ひとりの人間がまなざすことができるのはほん>>続きを読む
ジョニー・サンダースはめちゃくちゃ格好いいのに、くるおしいほどに愛おしいんだよ。画面越しでしか見たことはないけど。バンドの時もすきだけど、ソロで歌ってるほうがのびやかで素敵な気がする。今にもふらふらと>>続きを読む
夏が特別なんて都市伝説かと思っていたけど、映画の中に映る夏は時々わたしを魅力的にいざなってささやく。おまけに耳を震わせながら憧憬をさそう音楽がこんもり。うん、当たり前にだいすきだよ。鮮やかだったはずの>>続きを読む
3部作完結。
2作目の広げまくった風呂敷をどう畳むのかしらと思ってたけど、こうきたか。父への復讐という名の大人への通過儀礼だったのでは、知らんけど。ヘンリーとスーザンの狂った関係性にはだんだん笑けてく>>続きを読む
時々、何も知らない自分が観てしまっていいのかしらと慄いてしまうドキュメンタリー作品に出会う。見る、という視線に含まれる暴力性について考えてしまう。知る、という後戻りできない責任について考えてしまう。本>>続きを読む
この世界には、優劣ではなくて、ちがいだけがある。意味はなくて、運だけがある。すべては特別なんかではなく、たいしたことはない。どれもおなじような河川敷にころがる石ころたちが、ある日少年の手の中で魅力的に>>続きを読む
暗闇の中からわたしたちははじまったのだから、そこへいつか還らなければいけない。まばたきのすきに花火が消えていくのと同じくらいの速さで爆発が起こってから、さまざまな生きものが生まれたり死んだり進化したり>>続きを読む
嘘ばっかりの世界で、たったひとつでもほんとうのことを探していたはずなのに、いつの間にか雲をつかまえに空を滑って歩いていた。あの天使が見つけた、ぱっと世界にあたらしい色彩が生まれてしまう恋の正体をあばき>>続きを読む
点滅して脳に焼きつく光。反復につぐ反復による残像。けたけた笑い声。映像に溶けていく音楽。瞼を閉じて見る夢はほんとうはこんなかたちをしていたのだと錯覚してしまう。
大人になるって、守られるものがなくなって、ほんとうにたったひとりになることなんだわ。わたしはこれまでいろんなものや人に肩や脚を支えてもらって、やっと立っていられたようなものだし、よそ見をしていても何に>>続きを読む
「たとえ同じものを食べ、同じものを見ていたとしても、なんでこんなに違うんだろう。あなたのように食べ、あなたのように見ることができたらいいのに。
欠点でさえ同じになりたい。傷や、痛みや、狂ったところも。>>続きを読む
目に見えない弾丸も、一瞬で肌を貫く実弾も、容赦なく日常に飛び交う。何も武装せずに突き進めば、きっと身も心もぼろぼろになるでしょう。凡ゆる危険をうまくかわす方法が自然と目に入ってくるくらい、ここではただ>>続きを読む
この景色見たことあるな。と、はじめて見たはずなのに、直感で感じることが時々ある。それは自分が水とやわらかな膜に守られて胎内にいた頃のとおい記憶に眠る夢。あるいは、母の目が見つめた景色を、お腹にいたわた>>続きを読む