想田和弘監督による「観察映画」シリーズ第一弾。
川崎市の市議会議員選挙に出馬した山内和彦という人物が宣伝に明け暮れるさまを淡々ととらえた作品。
この山内和彦という人物は政治にはズブの素人のコイン商。>>続きを読む
前野健太というミュージシャンを被写体にした松江哲明監督のドキュメンタリー作品。
東日本大震災から2カ月後の東京を舞台に、雨のなかギターをもった前野健太が町を歌い歩いてゆく。
町ゆく人は彼の歌に立ち>>続きを読む
『赤い風船』の姉妹編ともいえる中編作品。
『赤い風船』と共通する特徴は、本来ならば感情を描写されることが少ない「風船」や「馬」といったものの感情を繊細に描写していること。
また、子供という純粋な“>>続きを読む
濱口竜介監督による東京藝術大学卒業制作作品。
30代に差し掛かった男女たちの関係が複雑に絡み合うさまをスピーディーな会話劇で描く。
僕が驚いたのは、なんといってもそのセリフの巧さ。
もしこの映画の>>続きを読む
70~80年代は日本パンク映画の先駆的存在としてパンク精神溢れる作品を制作してきた石井聰亙。
彼は90年代に入ってから次第にパンクとは正反対のスピリチュアルな世界観へと方向転換していく。
その極北が>>続きを読む
少年と赤い風船とのつかの間の友情を描いた短編作品。
この映画の色調自体は彩度が薄く灰色っぼくなっているのだが、赤い風船だけは鮮やかな真っ赤をしており、画面にとても映えている。
赤い風船に写し出され>>続きを読む
若松孝二のピンク映画では珍しくカラー作品。
しかし若松の作品に共通する「抑圧に対する衝動的な暴力」はこの作品でも描かれている。
その暴力も若松が好んで用いる「ピストル」というアイテムによるもの。>>続きを読む
障害者アートの制作現場や展覧会の様子を記録した佐藤真監督によるドキュメンタリー作品。
不思議なことに、<障害者>というテーマを扱うとどうしても生じてしまう“社会問題意識”のようなものがこの映画からは>>続きを読む
広島を舞台にフランス人の女優と日本人の男性の行きずりの恋を描いた日仏合作映画。
劇映画デビュー前には優れたドキュメンタリー監督として知られていたアラン・レネは、この映画の冒頭でも戦時中の広島の映像を>>続きを読む
台湾の田舎に住む少年の無軌道な生活を描いた青春映画。
映画自体に明確なストーリーラインがあるわけでもなく、したがって盛り上がり所もないのだが、ホウ・シャオシェン監督は少年の生活のエピソードを切り取る>>続きを読む
特徴的な映像の設計が観る人の感情を揺さぶる映画であった。
具体的に言うと、クローズアップが多用されること。
そのため、会話の場面においてもフレーム内には基本的に一人の人物しか収まらない。
引きの画>>続きを読む
ロードムービーを得意とするドイツの作家ヴィム・ヴェンダースの初期の作品。
米国を訪れたジャーナリストが偶然出会った少女と数日間を共にする物語。
少女の母親は昔の男とややこしい関係になったため、ジャ>>続きを読む
1966年に作られた日本とソ連の合作映画。
親のない少年が父を探しにソ連へと一人で旅立つという物語であり、日本での撮影は衣笠貞之助が監督。
主人公の孤独な少年は異国の地であっても、その抜群のコミュ>>続きを読む
ジム・ジャームッシュのゆるい雰囲気は吸血鬼映画においてどう作用するか。
この映画で一番感心したのは美術。
吸血鬼映画には不可欠である中世の城の一室の雰囲気と、TVやエレキギター等の現代的な家具とが>>続きを読む
日本の若者の刹那的な青春を描いた作品を多く発表した藤田敏八監督が、山口百恵と三浦友和のゴールデンコンビを主演に迎えた作品。
やはり主演が大スターのためか、他の藤田作品と比べて演出面で保守的な印象であ>>続きを読む
初期の市川崑の若々しくて冴え冴えの演出が随所にみられる犯罪コメディ。
およそ当時(50年代)の日本映画では見られないような早いテンポで物語が進んでいく。
台詞の多さゆえに役者は早口で喋ることを余儀>>続きを読む
北野武の作品の中では優しさと人間的な温かみが最も感じられる作品。
その優しさと温かみは、この映画を観ると誰もが感じるであろう「懐かしさ」に起因しているように思う。
少年と近所のおじさんの夏の数日間>>続きを読む
脚本・石井隆、監督・曽根中生によるロマンポルノの系譜においては名作と位置付けられている作品。
ブルーフィルムのモデルの女に魅せられた男の話。
このシリーズは他に『赤い淫画』を観ているが、やはり映像>>続きを読む
イーストウッドの骨太(過ぎる?)演出がみられる超ヘビー級映画。
僕にとっては怖くて怖くて仕方ない作品。
「自分の主張が誰にも信じてもらえない」という状況を軸に物語が展開していく。
主人公に感情移入>>続きを読む
これまでのイーストウッドとは少し毛色が違う作品。
というのも、この映画ではメンバーの四人が観客に逐一語りかけてくるというメタ的な演出が多用されるからだ。
しかし、一見ドラマを壊しかねないその演出が>>続きを読む
色々な部分が“微妙な”映画。
でもその微妙さが良いように作用している。
登場人物それぞれの距離感も微妙。
しかしその距離感が嘘っぽくなくて観ていて心地よかった。
また被写体に対する距離感も微妙で>>続きを読む
物語に反して、映像自体は秩序のある整った印象を受ける映画。
画面の構図は全体的に直線によって構成されている。
トイレのタイル等の直線的な物の配置、またカメラのポジションも水平が多い。
しかしその不>>続きを読む
ロメール作品の中ではかなりのお気に入りとなった。
対称的な女の子の日常生活を四つのエピソードに分けて描く。
第一話の「青い時間」は、<二人だけが共有する一瞬>に至るまでを丁寧に描くことで、二人の気>>続きを読む
エリック・ロメールの軽妙で都会的な恋愛劇が楽しめるオムニバス。
ロメールの多くの作品に共通することだが、男女が歩くだけのショットが積み重なって構成されている。
その中で紡がれる会話はとても面白くて>>続きを読む
殺人が主人公の映画。
個人的に街をフラフラ歩くだけの映画とかが好きだったりするのだが、この映画の序盤はそれにあたる。
中盤はそんな主人公が衝動的に殺人を起こす。(観客にも予期できないタイミングで)>>続きを読む
男たちが鉄砲で遊ぶ映画。
劇中、いい歳したオッサンが紙くずでサッカーをして遊ぶシーンが象徴するように、オッサンたちは戯れるように鉄砲を使う。
有名なジャスコ(死語?)での銃撃戦はエスカレーターや鏡>>続きを読む
偶然によって起こる3つの人生を描いた作品。
一人の男が列車に乗るか、乗れないか、または乗ることを諦めるかで3通りの物語が展開するため、一粒で3つの味が楽しめる。
僕ならどのような話を作るか、シナリ>>続きを読む
血の噴き出し方と決闘の間抜けさがたまらん。
シュヴァンクマイエルのグロさと間抜けさを融合させたセンスには毎度心を打たれる。
フィリップ・ガレルの作品は初めて。
アントニオーニとロメールを足して二で割ったようだと思った。
しかし、両者と決定的に違うのはその表現の方法(撮影や編集の諸々)だ。
例えば、男女の会話場面では一方>>続きを読む
廃棄予定の電車に愛着をもっている鉄道職員が廃棄前に電車を無断で秘密裏に走らせる話。
鉄道会社にバレたらヤバイから、客が来ると厄介になる。
状況次第で客が邪魔者に早変わりする様が面白い。
僕は不条理>>続きを読む
イタリア製猟奇ミステリを「ジャーロ」と呼称するが、僕はそのジャンルが好きだ。
ミステリの形態をとっていながらも謎解きではなく「殺し」と「美女」に重点を置く。
つまり、<誰が>殺したかよりも<どのよう>>続きを読む
90年代にJホラーが好んで扱った「インターネットとアイデンティティ」というテーマをアニメというアプローチで描いたサイコスリラー作品。
同時期に「Serial Experiments Lain」という>>続きを読む
どつき漫才のコンビが憎み合い、殺し合いにまで発展するというシニカルなコメディ。
イグレシア監督のドラマは二つのキャラクター(または共同体)が憎み合うことから始まる。
憎み合い、立場がコロコロと逆転し>>続きを読む