クリント・イーストウッドの一説によれば引退作と言われる今作がシネコンはおろか、スクリーンで一度もかかることがない。この衝撃的事実は2024年を象徴する事件であり、アメリカ映画の終焉を本気で予感させる>>続きを読む
映画が出来る過程が楽しいように、映画館が出来る過程も我々シネフィルにとってはどれ程かけがえのないものだろうか?北欧フィンランドの鉄鋼の町・カルッキラ。深い森と湖と、今は使われなくなった鋳物工場しかな>>続きを読む
2006年のブータン。国民に愛された国王の退位によって民主化への転換を図るため、選挙の実施を目指して模擬選挙が行われることになる。周囲を山に囲まれたウラの村の高僧はこの報を聞くと、次の満月までに銃を>>続きを読む
1989年に公開され、ミニシアター・ブームの先駆けとなった伝説の傑作がいま4Kとして蘇る。ミュンヘン郊外の田舎町、ローゼンハイムから観光旅行にやってきたミュンヒグシュテットナー夫妻は、ディズニーラン>>続きを読む
『無所住』とは別にプログラムが組まれた今作も準新作と位置付けて良い。新作がスミソニアンならば、今作はパリのポンピドゥー・センターにて開催されたツァイ・ミンリャン監督の全面的なレトロスペクティブに併せ>>続きを読む
これは目の付けどころがひたすらユニークで隙が無い。極めて仲の良い家族に横たわるのは「伝統」かそれとも「革新」かの二項対立である。スペイン・カタルーニャ。三世代にわたる大家族で桃農園を営むソレ家が例年>>続きを読む
素直に面白い。傑作と呼ぶには今一歩何かが足りないが、まだこういう映画が観られるとすれば、Netflixも捨てたものではないという印象を強くする。かつてのNetflix黎明期の巨匠の一本釣りの衝撃は今>>続きを読む
110分間辛抱強くお付き合いしたが、正に不毛な時間に心底げんなりした。生き馬の目を抜くような、猫の手さえも借りたいような2024年最後の1ヶ月に110分間と2000円をドブに捨てる余裕がある人だけは>>続きを読む
予告編やあらすじ等のまともな下調べを殆どせず、初見でスクリーンで観て純粋に驚きたい人間なので、今作も軽いノリで観に行った。だが途中まで観ていて、思いっきり何かに似ていると思ったら、今年のワースト案件>>続きを読む
あえてスパイダーマンという本丸を見せず、事態の周縁だけを見守る形で見切り発車したソニーズ・スパイダーマン・ユニバース通称SSUだったが、途中で徐々にコロンビア・ピクチャーズとMCUとの力関係が後者の>>続きを読む
『地獄の黙示録』のフィリピン・ロケにおける正に地獄巡りのような終着点のない世界を経て、借金で首が回らず全てのコントロールが効かなくなってしまった当時のフランシス・フォード・コッポラが、スタジオ内にセ>>続きを読む
いかにも松竹が作りそうな物語のルックと、いったいどの方面に謝っているんだかと思うようなタイトルにびっくりした。高校生のプラトニックな恋愛に共感とかマジ無理と叫びそうになったものの、これが思ったほど>>続きを読む
日本版予告編では、何か『ワンダー 君は太陽』の正当な続編であるかの如く喧伝されていたが、映画はまったくの別物語というか位相を変える。生まれながらに「トリーチャー・コリンズ症候群」という疾患を患った主>>続きを読む
あまりにも強烈な地獄のような人生で、スクリーンの前で途中何度も会場を出たいと思うほど逡巡したが、あっという間の101分間だった。私の目はスクリーンの前で釘付けだった。いざ観終わったあとに痛烈に喚起さ>>続きを読む
『ルルドの泉』でヨーロッパ映画ファンにはお馴染みの女帝ジェシカ・ハウスナーの新作ということで楽しみだったが、いや〜これがなんとも薄気味悪い怖い映画だった。名門校に赴任してきた栄養学の教師ノヴァク(ミ>>続きを読む
家にTVがないし、一度も本ドラマを観たことがないと前置きしたうえで言うが、普通に面白かった。最後まで興味深く拝見した。10年積み上げて来た複雑な人間関係があるやに見えて、対立構図も明確。外科医の大門>>続きを読む
ここ10年あまりのウォルト・ディズニー・スタジオ作品の中ではよくやっているというか、失礼ながら近年は凡作揃いのディズニー作品の中では『モアナと伝説の海』に続いて、善戦していると言っていい。『アナと雪>>続きを読む
今年のフィルメックスで一番楽しみにしていた作品で、月曜日に観たが客の入りはまばら。日曜はパスしたので状況はわからないが、客の入りは100名弱であまり芳しいとは言えなかった。本人は劇映画を引退したが、>>続きを読む
ジャ・ジャンクーの新作『風流一代』を『新世紀ロマンティクス』と訳した配給側の判断は正直なところ、非常に微妙だと言わざるを得ない。ある種、昨日のロウ・イエもこのジャ・ジャンクーもコロナ禍に映画製作が頓>>続きを読む
冒頭こそ別に仰々しくPC本体を取り出さんでも、ハードディスクだけあれば再現可能ではと秘かに思ってしまったが、映画監督マオ・シャオルイはコロナが流行る少し前に、偶然にも10年前に未完成だった映画を完成>>続きを読む
ダミアン・レオーネも3作目(というか4作目?)にして完全に軌道に乗ったね。とにかく圧倒的に怖く、悍ましい程観ていられない恐怖描写というか内容は完全にゴア。間違っても私の1個離れた隣に座った人のように>>続きを読む
ホン・サンスの公式的には前作となる『WALK UP』はもう何から何まで無理な映画で、個人的にはこれまで観たホン・サンス作品の中でワーストだと思っている。アパートの階段を昇る度に、キャストたちの関係性>>続きを読む
今週の邦画案件のうちの二大巨頭が、『正体』と今作だとするならば、『正体』は何でもかんでも全てを説明してしまった映画で、今作は何もかもを説明しようとしない対照的な映画で参ってしまう。観終わった後のわけ>>続きを読む
ジェフ・ニコルズという監督はいわゆるゼロ年代の終わりに私を熱狂させた監督の1人である。当時、年間ベスト10に挙げた『テイク・シェルター』や『MUD -マッド-』は21世紀で最も優れたアメリカ映画であ>>続きを読む
『新聞記者』を含めて私は、いま将来を嘱望される藤井道人の映画がさっぱりわからない。確かにジャンルは多岐に渡り、どの映画にもいまの「日本」への異議申し立てがあるのだが、残念ながら一度も説得されたこと>>続きを読む
10代のエイミー(マリサ・アベラ)は、別居中の父ミッチ(エディ・マーサン)と母ジャニス(ジュリエット・コーワン)や、若かりし頃ジャズ歌手だった憧れの祖母シンシア(レスリー・マンヴィル)ら家族に見守ら>>続きを読む
途中までは何の変哲もないラブコメに見える。2人のイケメン君がキャリア・ウーマンを巡って争う話かと思いきや、中盤まで観進めるうちにようやく、その片方の挿話の時制が現代ではなく、過去のものだと判明する。>>続きを読む
『沈まぬ太陽』や『Fukushima 50』の大御所・若松節朗が監督しながらも、『前略おふくろ様』『北の国から』『やすらぎの郷』などの脚本を書いた倉本聰の方が監督よりも前に来る奇妙な仕上がりなのだ>>続きを読む
徹底して軽妙洒脱なのだが、イタリアの巨匠ナンニ・モレッティだけにある種の居直りも垣間見える。チネチッタとは「CINEMA(映画)」と「CITTA'(街)」を組み合わせた造語で、ローマ郊外にある実在の>>続きを読む
角川ラノベだったら一点突破出来るかもしれないが、ひたすら刺々しい雰囲気を纏った心底薄気味の悪い映画である。まず『六人の嘘つきな大学生』というタイトルそのものがミスリードではないか。確かに感情的な綻び>>続きを読む
怒りを抑えながら、社会に順応し全ての感情を抑え込んでいた主人公がある日、その怒りを剥き出しにする。そのターゲットは10億円もの巨額の脱税王だという。いかにも韓国製クライム・サスペンスにありがちな底辺>>続きを読む
芝居が抜群に出来るニコラス・ケイジだから自虐が何だか様になって見えるが、他の役者なら観ていて痛々しくて笑えない。ニコラス・ケイジで良かったし、ニコラス・ケイジだから良かった。監督のクリストファー・ボ>>続きを読む
名古屋という土地を離れられない3人の若者がいる。富井ヒロト(清水尋也)と金森(高杉真宙)は対立するヤクザ組織の組員となり、ある事件をきっかけに散りじりになった。清水尋也扮するヒロトの目は殺伐とした世>>続きを読む
カーリングの神様が実は〇〇でした、というオチなのはわかるのだが、それにしてもいかにも松竹配給映画らしく、あまりにも平和で可もなく不可もない。というか毒にもクスリにもなりそうにない。日本映画にありがち>>続きを読む
ヨーロッパではグローバル資本主義の流入により、更なる貧富の差に歯止めがかからない。各国からいわゆる世紀末映画的な黙示録映画が次々に量産されている。古くはミヒャエル・ハネケだが、現代ではヨルゴス・ラン>>続きを読む
あまりにも壮絶に酷い内容に対し、しばらくショックで起き上がれなかった。あの愛すべき室井慎次こと柳葉敏郎をどこまで愚弄するのかと。織田裕二といかりや長介と深津絵里のいない世界線で、あえて柳葉敏郎主演で>>続きを読む