喜連川風連さんの映画レビュー・感想・評価 - 3ページ目

御用牙(1972年製作の映画)

-

三隅研次節炸裂。エキセントリックな自主映画のような実験的編集の数々に痺れた。

画面を2分割して右側には勝新太郎が歩き、左側には江戸の巨大な地図がスクロール。

左側が北町奉行所にズームインした瞬間に
>>続きを読む

トップガン マーヴェリック(2022年製作の映画)

4.5

スターウォーズとバックトゥーザフューチャーの面白い部分を詰め合わせたかのような超良質娯楽映画。ここまで面白いとは正直思わなかった。

フィルムカメラの制約から解き放たれた戦闘機が劇場の画面すら狭しと飛
>>続きを読む

トップガン(1986年製作の映画)

-

ゴジラ映画のお約束のような薄い人間ドラマ×米軍協力の実機を活用したど迫力の映像。

冒頭10分のカッコよさは伝説級。

戦闘機の赤い逆光も濡れ場の青い逆光もそれぞれカッコいい。

男が戦う時は逆光にせ
>>続きを読む

犬王(2021年製作の映画)

-

湯浅政明作品の底流に流れる「熱」が大好きだ。

ピンポンのぺこvsドラゴン。マインドゲームラストのクジラを駆け上がるシーン。映像研の上映シーン。この作品は徹頭徹尾こうした熱量で出来上がっている。

>>続きを読む

シン・ウルトラマン(2022年製作の映画)

4.0

フェティッシュ庵野&樋口炸裂!我らの庵野が帰ってきた!

最序盤からウルトラQのテーマに始まり、特捜隊のテーマ!オマージュの数々に胸が熱くなる。

だが、それが本題ではない。この映画はウルトラマンに見
>>続きを読む

白い巨塔(1966年製作の映画)

-

傲慢と過信が己の失墜を招く、古今東西に伝わる神話のような白い巨塔。

唐沢版のファンだったが、田宮版を初視聴。さすが橋本忍脚本、2時間半に美しくまとめられている。ナレーションと字幕のタイミングが素晴ら
>>続きを読む

兵隊やくざ(1965年製作の映画)

-

「無理が通って合理が引っ込む」これが軍隊だ。殴ってもビンタしても動じない男。勝新太郎の圧倒的存在感。無頼漢のカッコよさ。

暴力と恐怖政治が横行する旧日本軍。

軍隊は襟の星の数じゃねえ!メンコの数が
>>続きを読む

無法松の一生(1958年製作の映画)

-

現代では絶滅した男のヒーロー像。

喧嘩っ早いが、人情味があって、己の仕事のルールは誰が相手でも曲げない。

病死した男の未亡人とその子供を見守り、家族同然に世話するが、決して未亡人には手を出さない。
>>続きを読む

江分利満氏の優雅な生活(1963年製作の映画)

-

「薄いカルピスというのは、山手線がちょうど大塚、巣鴨、駒込、田端あたりを走る時の味気なさに似てると思わないかね?」

映画編集の玉手箱のような映画!

アニメーション、ストップモーション、合成編集、ス
>>続きを読む

小早川家の秋(1961年製作の映画)

-

小津安二郎が撮る「関西」と老境の恋。

ひょいっと、撮っているようでありとあらゆるカットが計算し尽くされている。

火葬され、燃える炎を見る5人のショットは綺麗に扉の中に収まる。高さの整った器や額縁。
>>続きを読む

男はつらいよ 奮闘篇(1971年製作の映画)

-

時代の流れによって失われた「時間」の数々。

列車の待ち時間。列車の移動時間。便りを待つ時間。

沼津から東京へ行くのだけでも、大事件。上野東京ラインで1本、迷ったらGoogleマップで調べる我々とは
>>続きを読む

男はつらいよ 純情篇(1971年製作の映画)

-

帰る場所があるのは弱さか強さか。

登場人物が皆、普段いる場所ではない場所に行こうとするものの、結局「自分たちの居場所」へ帰っていく。

まるで正月に帰省して、Uターンしていく日本人や映画を見て日常に
>>続きを読む

男はつらいよ 望郷篇(1970年製作の映画)

4.5

「博徒を殺すのにナイフはいらねえ、雨の3日も降りゃ、死んじまう」

「まくら、すまねえけど、さくら出してくれ。あぁいけねえ、呂律まで回んなくなっちまった」

「止めるなよ!絶対止めるなよ!(サクラチラ
>>続きを読む

南極物語(1983年製作の映画)

-

小さい頃に何度も何度も観た。

今考えてみれば、ヴァンゲリスの音楽が好きでそれ目当てに何度も見ていたのかもしれない。

ブレードランナーや炎のランナーを担当したヴァンゲリス音楽の絶頂期。

高倉健(昭
>>続きを読む

夢と狂気の王国(2013年製作の映画)

-

「自分のかけがいのないものを大切にしたい人は、ここに来ない方がいい」

「宮崎駿さんは、若いエキスを吸って自分の力にしている」

アニメという夢を背負った狂気の王国、スタジオジブリ。

しきりに映され
>>続きを読む

海がきこえる(1993年製作の映画)

-

背景がとても美しい。水彩画の個展を見ているような風景が連続する。動画は江口寿史風の人物が数多く登場する。

回想シーンの四隅を白く囲う演出を初めて見た。

思春期の背伸びしたい女の子、それに気づかない
>>続きを読む

紅の豚(1992年製作の映画)

-

宮崎駿さんによる自分のための映画作り宣言。

紅の豚以前の宮崎映画では、純粋に子供の為の映画として存在していた。それが紅の豚以後で、ガラッと変わる。

宮崎駿さん自身、紅の豚を作った後、自分のために映
>>続きを読む

ゲド戦記(2006年製作の映画)

-

人間の心に巣食う、光と闇の根源的な争いを描いた原作ゲド戦記。

アニメ版では序盤で父を殺してしまうため、物語の引っ張りが弱い。開始5分でルークがダースベイダーを殺すようなイメージ。

感情移入して物語
>>続きを読む

魔女の宅急便(1989年製作の映画)

-

13歳で新卒入社したキキちゃんの宅配日記。

持っているスキルは空を飛べる(車を運転できる)くらいのもので、社会の荒波に揉まれる。まるで現代の新卒一斉入社の社員のようだ。

夢とかやりたいことの前に誰
>>続きを読む

天空の城ラピュタ(1986年製作の映画)

-

宮崎さんの鉄板・囚われの少女と真っ直ぐな少年のボーイミーツガール。

未来少年コナンの総決算。

無茶苦茶やっても炊事・洗濯・食事・睡眠をしっかり描くからこそ伝わるリアル。

ナウシカから一貫する高度
>>続きを読む

硫黄島(1959年製作の映画)

-

硫黄島の戦いを描いた映画と思いきや、現代劇だった。

終戦後も硫黄島を戦い、生き残った男の奇妙な戦後を振り返る。実話を元にしている。

終戦からわずか14年での公開。とんでもないリアルなディティールが
>>続きを読む

コーヒー&シガレッツ(2003年製作の映画)

-

クセになるリズム感。世界中のシネフィルが真似しただろうな。

それぞれの飲み方・吸い方に現れる人間性を垣間見ながら、ズレた2人や似たような2人を眺める。

コーヒーの嗜み方に生活が現れ、タバコの吸い方
>>続きを読む

ボス・ベイビー(2017年製作の映画)

-

真面目な子ども向け娯楽アニメーション。

テーマは「家族愛」で一貫しており、構成は脚本の教科書のような転がり方。

物語を単純化するために敵役や両親が、テンプレ処理されており、大人が見るには少し説教く
>>続きを読む

さがす(2022年製作の映画)

4.5

「死にたいと言っていた人で本当に死にたがっていた人はいませんでした」

突如失踪した父。それを必死に探す娘。
カメラは主に手持ちで役者の動きをとらえる。

RPGゲームのように後ろをついていく絵が多い
>>続きを読む

崖の上のポニョ(2008年製作の映画)

-

言語化不要のアニマ(生命)がモーション(動き)している映画。

日本製フル手書きアニメーション最後の大花火。

宮崎アニメの中でも1番対象年齢を下げて作ったと思われる作品。

「曇りなき眼」を描き続け
>>続きを読む

乱れる(1964年製作の映画)

4.5

これが成瀬巳喜男版堕落論か。

戦中に結婚した19歳の女が、夫に先立たれ戦後未亡人となる。その後、嫁入りした家を支える。

戦死してもなお家庭を支える貞淑な妻として家庭を盛り立ててきた高峰秀子は、そう
>>続きを読む

おもひでぽろぽろ(1991年製作の映画)

4.5

高畑勲以降、アニメは完全に大人の鑑賞に耐える娯楽となった。91年の邦画興行収入1位。田舎への旅を通じて、11歳のある時期を回想する。

水彩画のような回想パートと細部まで細かく再現された現代パートのバ
>>続きを読む

火垂るの墓(1988年製作の映画)

-

戦争という状況を通じて、14歳と4歳が「社会」に投げ出される。

作品全体に貫かれる「働かざる者食うべからず」の精神。

これを残酷と捉えるかリアルと捉えるか。殴られた清太を警察は助けるものの、決して
>>続きを読む

恋の罪(2011年製作の映画)

-

日常に潜む、女性のリビドーを園子温視点で描く。

性衝動に取り憑かれた3人の女。

凄惨な事件に出くわす女刑事は心のバランスを取るために不倫をしている。

文豪の貞淑な妻は非日常として性衝動を持つ。
>>続きを読む

不思議惑星キン・ザ・ザ(1986年製作の映画)

4.5

ようやく見られた。。大好物なシュール映画だった。見た目がおっさんの悪ふざけみたいな挨拶の数々。

何が顔2回叩いて「クー!」だ。最高。子ども騙しの演奏に拍手喝采って。

1人映画館で爆笑してたが、周り
>>続きを読む

ばるぼら(2019年製作の映画)

-

バルボラ。黒手塚と言われる時代に書かれた手塚治虫社会派時代の作品。

「掃き溜めのような大都市の片隅で見つけた女。ばるぼら」

カメラはしきりに、東京の暗部を捉え、風俗街・浮浪者・ドブ・溝などを写す。
>>続きを読む

エッシャー通りの赤いポスト(2020年製作の映画)

-

役者による「役者のための」映画。園子温氏によるワークショップが元となった映画で、後半の爆発のさせ方は「カメラを止めるな」を意識しているように思った。

ありとあらゆる人物が現れては消えていく。主人公は
>>続きを読む

台風クラブ(1985年製作の映画)

-

台風がもたらす空間の閉鎖性。

雨が人を遮る。その中で人間たちは宴に酔いしれる。

結婚による人生のゴールを思い、虚無を感じる担任の梅宮。外に出られない台風の中、カラオケに興じ、叔父の入れ墨を見て見な
>>続きを読む

サマーフィルムにのって(2020年製作の映画)

-

王道なんだけど、王道じゃない漫画的青春映画。

勝新太郎を語り座頭市で盛り上がる女子高生。これだけでもおじさんは大歓喜だろうし、若者にとっても見たことのない映像体験になる。

春日太一氏が指摘するよう
>>続きを読む

マトリックス レザレクションズ(2021年製作の映画)

-

時間が経てば経つほどに難しい続編の制作。いわゆるマトリックス警察が育っていく。マトリックスとは哲学だ!いやカンフーだ!いやいやバレットタイムだ!

ウォシャオスキー自身、うんざりするほどに聞かされてき
>>続きを読む

ラストナイト・イン・ソーホー(2021年製作の映画)

-

青春映画の装いでレトロホラータイムトラベルミュージカル映画をスタイリッシュに撮った映画は見たことがなかった。

序盤からのカットの流れ・照明使いの美しさ、さすがエドガーライト、お見事。

わずか5分弱
>>続きを読む