喜連川風連さんの映画レビュー・感想・評価 - 4ページ目

由宇子の天秤(2020年製作の映画)

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残酷な正義の結末。

映像ディレクター「私はどっちの味方もすることはできませんが、光を当てることはできます」

なるほど、映像を撮るとはなにかに光を当てる行為なのか。だが「光を当てる」だけを切り取れば
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(2005年製作の映画)

4.5

手塚治虫の奇子のようなある環境に閉じ込められ育った女の話。老人に飼われた少女に向けられる視線は、欲望か?愛か?美学か?

痴人の愛や雪国しかり中年男の少女に捧げられる欲望はなぜこうも気持ち悪いのだろう
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恋人たち(2015年製作の映画)

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時代の写し鏡のような映画。繰り返される湿っぽい地獄。保健課のシーンや弁護士とのトラブルのシーンは全て実話らしい。

7年ごとに新作を上梓する橋口監督の時代の記録。

橋口さん自身、現実にとことん絶望し
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スカイ・クロラ The Sky Crawlers(2008年製作の映画)

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平和のためには戦争が必要で、戦争があるから人類は平和を保っていられるというパラドックス。パトレイバーの時から変わらないテーマ性。

函南は主人公ではあるが、モブキャラのような存在。

戦争映画で、これ
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オールド(2021年製作の映画)

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過ぎ去る時間が早まってしまうビーチに集められた人間たちが織りなすドラマ。集められた10人の人生を一気に追体験する。

宇多丸さんもおっしゃっていたが、これは哲学的な寓話である。

過去のケンカも大きな
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ドライブ・マイ・カー(2021年製作の映画)

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切るべきところを切り、残すべきところを見せ、謎を提示して、それを3時間かけて説明しきるものの、体感時間は100分に満たない不思議な映画。

村上春樹っぽさがきついところもあるが、語りのシーンが驚くほど
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マッドマックス 怒りのデス・ロード(2015年製作の映画)

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編集うますぎ!スマッシュカット、めまいショットがバチバチに決まっている。徹頭徹尾アクション。北斗の拳のような世紀末。語らない主人公。

165億の予算。ナミブ砂漠でのロケ。ラグビー場3つ分の撮影所。1
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アンダーグラウンド(1995年製作の映画)

4.5

宗教的色彩の強い叙事詩だった。

動物と爆撃。自転車のライトに照らされるなか、出産。爆撃の中、セックス。原液をぶち込んだような印象的なシーンが続く。

息子が初めて太陽を見るシーンがいい。メイキングを
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音響生命体ノイズマン(1997年製作の映画)

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スタジオ4℃の初期作。

鉄コン筋クリートの背景作画で、AKIRAをやっている。音楽は菅野よう子。作画監督は湯浅正明。

現在のアニメの礎のようなデジタル技術をふんだんに使った演出。

音と映像のコラ
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野球狂の詩(1977年製作の映画)

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木之内みどりのアイドル映画に見せかけて、野村克也のセリフ付きシーンがある。

女湯に突っ込んだり、退団選手の背中を女の子に洗わせたり、おじさんがいきなり抱きついたり、今のご時世ならセクハラまっしぐらの
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座頭市物語(1962年製作の映画)

4.5

達人同士の勝負はほんの一瞬で片がつく。

凛とした間と暗闇がもたらす陰影が勝新太郎の佇まいと調和し、芸術の域に達している。

夜は提灯を持って歩き、屋内はしっかり暗い。これだけでも、平成版座頭市の何億
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岬のマヨイガ(2021年製作の映画)

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エンディング・羊文学。
これだけでも見てよかった。

正直、内容は詰め込みたい要素と描きたいエンディングから逆算して物語を構築しているため、物語が転がっていない。

業をもった人間(欲深い人や間違いを
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佐々木、イン、マイマイン(2020年製作の映画)

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序盤、部屋→工場→部屋→飲み屋→工場→飲み屋と似たようなシーンが繰り返される単調さに映像として全く加速していない・・・と思っていたが、その演出すらも、全部ラスト10分のためにあった。

佐々木が道化を
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モダン・タイムス(1936年製作の映画)

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映画の究極理想は、無音でも楽しめることなのではないか?という暴論を考えたことがある。これは一つの回答か?

この映画のすごいところは、序盤に無音映画としての極致をいきながら、巧妙に後半部分、トーキー映
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8 Mile(2002年製作の映画)

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ロッキー、8 mile、ナルト
負け犬のサクセスストーリー。

ラストのラップシーンだけでも一見の価値あり。

ダサいダサくないとかどうでもいいからお前の音をかき鳴らせ!

人情紙風船(1937年製作の映画)

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人生はまるで小川に浮かぶ紙風船のように流れるままに。歌舞伎『髪結新三』(原作 河竹黙阿弥)が原作の本映画。

天気や小道具が、饒舌に物語を語り、序盤30分で長屋の人々の生活を紹介しきってしまう見事さ。
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天使のくれた時間(2000年製作の映画)

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映画なら可能にする「もしあの時違った道を行ったら」

照明使いが美しい。
全体的に暗めのトーンだが、それがかえって現実感が無くていい。

加えて、顔の陰影でジャックの感情を表現する。

ジャックが家族
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東京オリンピック(1965年製作の映画)

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記録の記録。市川崑の芸術作品。

五輪の記録映像にも関わらず、鉄球で壊される東京のシーンから始まるのはあまりに有名。

あらゆる競技の肉体美に注目したカメラワーク。
新体操のモンタージュ。

様々な競
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イリュージョニスト(2010年製作の映画)

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絵で語る。これぞ映画。なんでも説明しない。余白があって大変いい。

「あいつはもう終わりだ」とセリフで語らず、閑古鳥が鳴く客席をしきりに映す。

黒澤明の「まあだだよ」のように人生最後に撮るような雰囲
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大誘拐 RAINBOW KIDS(1991年製作の映画)

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冒頭の関西弁と3人の大根芝居は見ていてつらかったが、樹木希林、北林谷栄、緒形拳が物語を引っ張り始めてからの面白さ。

冒頭3人の拙い演技すらも後半を引き立たせるための計算だったんではないか?と思わせる
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濡れ髪牡丹(1961年製作の映画)

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時代劇ラブコメ。ツンデレのヒロインがヤクザの女親分。

強い女親分の原型。最後は「男に頼るのが女」という結末で終わってしまい時代性を感じた。

画面が顔で埋め尽くされ、長く回しても決して飽きることはな
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生きてるだけで、愛。(2018年製作の映画)

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躁鬱とADHDと過眠症を併発している女の子。

お皿を何度でも割るし、買い物すらまともにできない。あれだけ遅刻しないように念じても遅刻してしまう。

「ヤスコちゃんさ、よく今まで生きてこれたよね」
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サマーウォーズ(2009年製作の映画)

4.0

夏が来たので再視聴。

デジタルネイティブにとっての非日常は、親戚が大集合する田舎にある。それが電脳世界と結びつくイナカタルシス。

なに一つ無駄シーンのない美しい構成。
その代わりに少年の課題解決が
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未来のミライ(2018年製作の映画)

3.0

多くの人が書かれているが、4歳児でこのボキャブラリーとしゃべりは「脚本」を感じさせてならない。

寂しかったらお母さんに抱きついて何も言わないのではなく、すぐ「寂しかった!!」と言ってしまう。

主演
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独立愚連隊西へ(1960年製作の映画)

4.5

ちきしょう。なんて粋で気持ちいい映画なんだ。

戦争娯楽コメディ。愚連隊!!!Ye!!

苦しい時こそ、笑顔の男がカッコいいんだこりゃ。

マカロニウエスタンを中国大陸でやってみたシリーズ。

「そう
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街の上で(2019年製作の映画)

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壁の穴から下北沢の若者生活を覗き見ているような気持ち悪い心地よさ。

少し距離をおいたドキュメンタリー風の長回し・ワンカメ。
そこに映画的な奇跡の一滴を垂らし、下北沢系名画が誕生した。

城定さんの家
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HELLO WORLD(2019年製作の映画)

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既視感のある映像表現をセカイ系の文脈で再構築。

冴えない男が窓際の可憐な少女を救ったら世界も救われてしまった系。

東宝らしく過去のヒット作を研究し、売れる要素てんこ盛りだった。

・MVのように日
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三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実(2020年製作の映画)

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「僕の心はふるえ 熱情がはねっかえる」

戦後の虚無と戦って自身の美学と共に死んだ三島由紀夫。

全共闘が日本に蔓延しつつあった米国由来の猥雑さに対抗したという意味では、三島も共通の敵と戦っていた。
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運び屋(2018年製作の映画)

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職人が工房で熟練の技をふるった真面目な作り。

作品にしっかり「重み」がある。

老境映画にも関わらず、追いつ追われつのサスペンス要素が最後まで飽きさせない。

バーでの振る舞いや女性のリードの巧みさ
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二百三高地(1980年製作の映画)

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脚本の笠原和夫氏が日露戦争に関する資料を大量にかき集め、時系列を記した絵巻物まで作ったと言われる超意欲作。

当時としては破格の12億の予算。

明治天皇・三船敏郎
乃木希典・仲代達矢
児玉源太郎・丹
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ウォールフラワー(2012年製作の映画)

4.7

色々な記憶を忘れて行ったり、写真が色あせてもこの瞬間だけは現在進行形で永遠だ。

「無限を感じる」なんていい台詞なんだ。

何者でもない苦しさ。フラッシュバックする過去の記憶。相手の幸せを願うばかりに
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セブンティーン・アゲイン(2009年製作の映画)

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父親が17歳に若返ってしまい、家族内でラブコメをする珍妙な映画だった。

車かっ飛ばすシーンの撮影と編集が上手い。

新しい出会いを描くには、学校ほど楽な装置はないなと再確認。

わかりやすく作るため
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ランボー(1982年製作の映画)

3.5

らんぼおおおおお!!!!!

倫理観に欠ける方が映画は面白い。

歩道をバイクで快走するシーン、街で銃をぶっ放す気持ち良さよ!

理不尽に対しての圧倒的な復讐と暴力はカタルシスになる。

ベトナムでの
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レオン 完全版(1994年製作の映画)

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ナタリーポートマンに世界中の人がやられた。

変則的なファムファタル。
年齢を12歳にすることで純愛を描くのは、宮崎駿的。

日々のルーティンワークをこなしてきた男のもとに、美少女が転がり込む。

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ラブ&ポップ(1998年製作の映画)

4.7

ああ90年代。何に絶望していたんだろう。97年。世紀末の香り。

当時を知らないが、なんたる虚無か。屈折か。女子高生は若さを売り、不況下で自信喪失のおじさんは金で女を買う。女子高生に高いご飯をおごり、
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ときめきに死す(1984年製作の映画)

4.0

オープニングの編集が本当にかっこいい。誰彼かまわず、「寒いですか?」と問う男。

コミュニケーション不全の男が自身の力を過信し、挫折する。
ときめきに死す=中二病に恥じて死ぬ

ヒットマンとして育てら
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