梅田さんの映画レビュー・感想・評価 - 5ページ目

ベネデッタ(2021年製作の映画)

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冷風が当たる席でガタガタ震えながら観るハメになってかなり視聴体験が毀損された気もするけど、良かった。聖女か詐欺師か?というミステリー仕掛けを楽しむこともできるし、大袈裟なくらい格調高いコスチュームプレ>>続きを読む

エル(1952年製作の映画)

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ファム・ファタールものかと思ったら真逆で、童貞こじらせ脚フェチおじさん(ブニュエル曰く自分の分身だそう)が猜疑心と嫉妬心の中で発狂しながら妻を虐待していくというサスペンス。展開は突拍子もないけど、物事>>続きを読む

対峙(2021年製作の映画)

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銃乱射事件の加害者の両親と被害者の両親とが、混じりっけなしの2対2で対峙し話し合うドラマ。フィクションということにはなっているけど、事実を元に脚色した物語ですと言われても全く疑わないであろう、ただなら>>続きを読む

カップルズ(1996年製作の映画)

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間抜けばかりの大人たちとずる賢い少年たちの群像劇。“カップルズ”と言うほどカップルが強調されるわけではなかった(原題は『麻雀』)。
「キスは不吉」という迷信に支配されながら、不良になりきれない少年と少
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みんなのヴァカンス(2020年製作の映画)

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赤いクレジットの画面から青みがかった冒頭のショットへの接続と、朝チュンの穏やかなラストショットから青画面のエンドクレジットへの繋ぎ、どっちもバチンと音が聞こえるくらいキマってて、そこだけ取り出しても最>>続きを読む

アザー・ミュージック(2019年製作の映画)

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インディー華やかなりし時代はとっくに終わってしまったけど、ある時代の記録として、僕がかつて夢中になっていた音楽のまさに中心地にはこんな人たちがいたのだという光景を見られたのは感慨深かった。反面、いけす>>続きを読む

ボーンズ アンド オール(2022年製作の映画)

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正直グァダニーノの映画のどういうとこが凄いとか全くわからないんだけど、これはロードムービーとしてめちゃ良かった(『ノマドランド』を思い出したり)。マーク・ライランスの怪演も見応えあるし、テイラー・ラッ>>続きを読む

誰もがそれを知っている(2018年製作の映画)

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ファルハディらしく緻密な脚本で進行していくサスペンスではあるんだけど、ガチガチに固まったプロットをなぞっていくような印象はなく、しっかり余白を取って一族とその界隈の中に渦巻く猜疑心とか恐怖をじっくり描>>続きを読む

フェイブルマンズ(2022年製作の映画)

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フィルムはそこにあるものを必然として撮ってしまう、悪を美しく撮ることだってできてしまう、素晴らしい映画を目にしても現実の問題は何ひとつ解決しない、映画は残酷な暴力だ、そんな呪いのようなことを自覚しなが>>続きを読む

THE NET 網に囚われた男(2016年製作の映画)

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今まで一作も観たことなかったけど、観るのにもなんだか言い訳が必要な気がするキム・ギドク映画。北朝鮮と韓国の国境付近で漁をする男が、船のエンジン故障で南側に流されてスパイの嫌疑を掛けられる。過酷な取り調>>続きを読む

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス(2022年製作の映画)

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1年も楽しみに待ってただけあって、いやー、これは楽しかった。シャン・チーですら巨大モンスターとのCGバトルみたいなんだったのと比べて、荒唐無稽なワイヤーアクション中心の即物的な格闘がむしろ新鮮で良かっ>>続きを読む

暗殺のオペラ(1970年製作の映画)

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ぼやっと観てたらわからなくなっちゃったところもあったけど、ベルトルッチのこの瑞々しく大胆な編集と美しい構図に惹かれる。プロットはミステリー仕掛けで面白いけど、裏切りを詰問されるシーンのアクションがギャ>>続きを読む

草原の実験(2014年製作の映画)

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舞台設定や時代が一切明かされないまま映画が進み、しかもセリフが一切ないという攻めた作りだけど、意外に音楽は情緒豊かで、歌詞こそないものの呻き声のようなボーカルも入ってた。
盛大な前振りからの一発ネタと
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ノースマン 導かれし復讐者(2022年製作の映画)

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バキバキのマッチョの血みどろ復讐劇!
『ウィッチ』『ライトハウス』にも通じる、フォークロアとしての北欧神話要素もある。というかある意味、フォークロアそのものをストレートに題材にしてるのが逆に新鮮だし、
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ロボコップ(1987年製作の映画)

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初めて観たけどめっちゃ面白い。ストップモーションでロボ動かしたり最強サイボーグの造形だったりはターミネーターに先駆けてるのね。楽しかった。
それにしても警察は民営化され令状主義も捨てられてるとは、近未
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エンパイア・オブ・ライト(2022年製作の映画)

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ロジャー・ディーキンスの撮影が盤石でマジでかっこよくて素晴らしいんだけど、脚本の中にあるいろんな要素がなにかうまく噛み合ってない感が。非常に乱暴に言うと、結局は最後に「映画を観ると嫌なことも全部忘れて>>続きを読む

収容病棟(2013年製作の映画)

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ワンビンの映画を観るのは『死霊魂』に次いで2作目。あちらはカメラに向かって被写体が滔々と自分の体験を語るというスタイルだったけど、こちらは精神病院に収容された患者たちを、カメラの存在をできるだけ透明に>>続きを読む

アントマン&ワスプ:クアントマニア(2023年製作の映画)

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同じ感じでほぼ全編グリーンバックでも面白いガーディアンズってすごいんだなぁと…。

SHE SAID/シー・セッド その名を暴け(2022年製作の映画)

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『スポットライト』『ペンタゴン・ペーパーズ』の系譜に連なるアメリカのジャーナリズムもの。ある職業人の仕事そのものを丹念に描くのは昨年の『ダーク・ウォーターズ』とかにも通じるし、政治的な話題は抜きにして>>続きを読む

トマホーク ガンマンvs食人族(2015年製作の映画)

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美しい妻を蛮族に攫われた男がその妻を取り戻しに行く話。女性もただのお姫様ではなく医師として活躍したりはするものの、白人男4人が人喰いの未開部族を「抹殺すべき悪」と認定し、この世から根絶やしにするという>>続きを読む

別れる決心(2022年製作の映画)

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パク・チャヌクの映画は前作『お嬢さん』しか観てないけど、それと比べるとかなり重厚というか、飛び道具的なエログロもない現代劇。支配と被支配、恋慕と嫉妬、独占欲みたいな要素と感情を、ミステリー仕掛けのプロ>>続きを読む

ボルベール <帰郷>(2006年製作の映画)

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なんだこれめちゃくちゃ面白い。いわゆるふつうの社会規範とか論理の世界をごく自然に踏み越えている感じがものすごく映画的だと思う。「だってその規範って、男社会が作ったモノでしょ?」とでも言わんばかりに、女>>続きを読む

アンダーカヴァー(2007年製作の映画)

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もうSOS使っちゃうんかい、とか結局その形見の拳銃使わないんかい、とか、いい意味で予想をガンガン裏切って展開していくサスペンス映画。陰影のバリっとした照明がかっこいい。ホアキン・フェニックスの彫りの深>>続きを読む

哀しみのトリスターナ(1970年製作の映画)

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監督:ルイス・ブニュエル×主演:カトリーヌ・ドヌーヴ。
父と夫という相容れない二面性でトリスターナを支配しようとするドン・ロペの描写にはいつものブニュエル節を感じる。というか、聖女とフェルナンド・レイ
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さらば愛しきアウトロー(2018年製作の映画)

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もちろんロバート・レッドフォード筆頭にキャストはみんな良かったけど、なんかシシー・スペイセクがいい感じの老婦人をやっていることにかなりグッときてしまった。
先に『グリーン・ナイト』を観たけど、デヴィッ
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バビロン(2021年製作の映画)

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お得意の頭に一発かましてやる系の長回しもあれば、手持ちカメラを振り回しながら高速で切り替わる編集もあるし、最後は映画史そのものをサンプリングしてやろうという大風呂敷を広げていくその根性とツラの厚さ、個>>続きを読む

ザ・コミットメンツ(1991年製作の映画)

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ダブリンといえば音楽映画。仲間内でバンドを作ってワイワイやるだけの話だけど、なんか異様なほどおもしろかった。音楽がいいのはもちろんだけど、口の悪い労働者階級のやり合いが愉快で、2時間弱ずっと笑いながら>>続きを読む

ビッグ・アメリカン(1976年製作の映画)

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アルトマンの映画で、冒頭に示されるモチーフとポール・ニューマンの空虚なヒーロー顔だけでだいたい内容は想像つく通り、まぁシニカルに「アメリカ」を描く映画。途中ちょっと観るのがダレてしまった。

暴力脱獄(1967年製作の映画)

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ポール・ニューマンの世俗を超越したスマイルと青空がめちゃくちゃフォトジェニック。ゆで卵大食い競争、ライフルで撃たれるカメ、みんなに奪われていく山盛りの臭い飯、走り疲れて悲劇的な死を遂げる犬、などなど、>>続きを読む

冬の旅(1985年製作の映画)

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アニエス・ヴァルダの映画を初めて観た。タイトルから漠然とロメール映画みたいなのを想像して観に行ったら真逆だった。寒々しい風景を、本当に薄汚い格好をしたタフな少女が歩いている、それだけの映画。ストイック>>続きを読む

チョコレートな人々(2022年製作の映画)

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障がいのある人、介護や子育てで忙しい人、性的マイノリティなどいろんな人で作るチョコレートブランドのドキュメンタリー。いやもうほんとにケチのつけようのないくらい素晴らしい話で、さすが東海テレビ。
しかし
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ONCE ダブリンの街角で(2007年製作の映画)

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音楽にまつわるほろ苦なラブストーリー。手持ちカメラでの撮影やジャンプカットの多用などかなりインディー感強め。
長いレコーディングのシーンはドキュメンタリーのような雰囲気すらあるけど、この曲がかなり良か
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そして僕は途方に暮れる(2022年製作の映画)

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おもしろかった。冒頭に映されるキネ旬のバックナンバーが語るとおり、実は映画作家ワナビーを描いた映画。メタな演出含めて細かな仕掛けがいろいろある映画だったけど、中でも豊川悦司の「観客は飽きてるぞ」という>>続きを読む

KUSO(2017年製作の映画)

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そういえばこんなんあったなと思い観た。確かにナンセンスで気色悪いけど、言うほどずっとグロいわけではなかった。しかしカレー作りながら観たのは失敗だった。

忘れられた人々(1950年製作の映画)

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メキシコ貧民街の不良少年たちを描いたルイス・ブニュエル監督作。基本的にはリアリズムなタッチなんだけど要所で幻想的なショットが挟まるので気が抜けない。とくにペドロ少年が罪悪感から悪夢を見るシーン、あまり>>続きを読む

イニシェリン島の精霊(2022年製作の映画)

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凡庸で無邪気な悪意と果てしない退屈に支配された孤島の中で、とある人間関係がこじれる話。
本土では内戦が起こっていて、ドンパチの音は島にも日常的に届いているけど、島の人間はほとんどなんの関心も抱かない。
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