イホウジンさんの映画レビュー・感想・評価 - 2ページ目

イホウジン

イホウジン

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007 スペクター(2015年製作の映画)

3.7

クレイグボンド過去作のいいとこ全部盛り

今作を因数分解してみると、①『カジノ・ロワイヤル』でのボンドが殺し屋である必然性への問いかけと、本気で愛するボンド・ウーマン②『慰めの報酬』での激しいアクショ
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竜とそばかすの姫(2021年製作の映画)

3.5

内なる身体の発現、分離、統合

今作の面白さの大部分が、「U」の身体を増幅するという仕組みにあるように感じる。『サマーウォーズ』以来SNSがすっかり社会に浸透し、ネット社会の良い面も悪い面も広く大衆に
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KCIA 南山の部長たち(2018年製作の映画)

3.8

韓国版の本能寺の変

軍事革命の政権は市民革命によるそれと比べて持続可能性に乏しいのは、歴史を見れば明らか。

バッファロー’66(1998年製作の映画)

1.0

なんでこんな自己満足な弱者への暴力と八つ当たりの肯定男が主人公の映画が「ミニシアターブーム」とやらで評価されたのか、正直理解しかねる。
あまりにも腑に落ちなすぎて、ここ半月映画に対する興味関心がすっか
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花とアリス(2004年製作の映画)

3.5

岩井俊二、ラブコメやってみた

ひたすら蒼井優と鈴木杏を愛でる映画だ。いかに2人のかわいさと若々しさを表現するかに徹して、ストーリーも配役も全てそのための付加要素として機能している。三角関係の恋愛描写
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スワロウテイル(1996年製作の映画)

4.6

もはや「スワロウテイル」という一つのジャンル

世界観だけでここまで強烈な映画が生まれることはそう多くないだろう。ましてや実写映画では尚更だ。「ブレードランナー」や「攻殻機動隊」を思わせる世界の中で、
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新世紀エヴァンゲリオン劇場版 DEATH(TRUE)2/Air/まごころを、君に(1997年製作の映画)

4.0

【Air/まごころを、君に】
全人類を巻き込んだシンジの親離れの物語

今作のシンジは、新劇Qにさえも勝るほどのクズっぷりを発揮する。せっかく中心的な登場人物たちが自分と人類の未来のために闘うのに、そ
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ハッピーアワー(2015年製作の映画)

4.7

【全体】
人間の衝動はどこから来るか?

第1部,2部,3部を大体一日おきぐらいに鑑賞したが、まるで私の日常と映画の世界がシームレスに繋がっているかのような感覚をおぼえた。もし私が関西の人間だったら、
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天国と地獄(1963年製作の映画)

3.9

この世で報われるのは勝ち組ばかり

今作で『パラサイト』への強い影響を感じさせられるのは、その階級が三層構造である点だ。どちらも表面的なあらすじだけ追えば富裕層と貧民の対立を描くものであるが、蓋を開け
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殺人の追憶(2003年製作の映画)

4.0

半径数メートルの狂気と悪

今更ネタバレもなにもないので言ってしまうと、今作が異色なのは犯人像が終始はっきりしない点であろう。登場人物たちは血眼になって犯人を追うが、犯人は彼らの執念を嘲笑うかのように
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雨に唄えば(1952年製作の映画)

3.9

【2021年1本目】
何重もの虚構の世界たるハリウッド

誰にでも分かるようなストーリーでありながら、構造は意外と複雑だ。映画内における現実と虚構が何度もすれ違い、時にそれらが交錯したり、虚構が1周回
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或る夜の出来事(1934年製作の映画)

3.7

「心の壁」を乗り越え壊した先にある真実の愛

30年代にしてここまで洗練された大衆向けの恋愛映画があったとは、思わず驚かされる。無駄のない展開、出来事一つ一つを通して鮮明になっていく登場人物たちの個性
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幕末太陽傳(1957年製作の映画)

3.8

世渡りに奮闘する人間たちの躍動

これといった統一的なストーリーがない分、普通ならサイドストーリーに押し込まれそうな諸々の展開にスポットライトが当たっている。遊郭での客の奪い合いから高杉晋作のクーデタ
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君も出世ができる(1964年製作の映画)

4.1

理想と希望に溢れたかつての日本社会の夢

今作を観て、60年代に哀愁を抱く人たちの気持ちが少し分かったような気がする。確かにこんな夢のような社会が現実にあったかと思うと、今日の日本社会の混沌に嫌悪感を
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按摩と女(1938年製作の映画)

3.8

孤独な者たちの逃避行

喜劇としての体裁を保ちつつも、常になんとも言えない重さがつきまとう。主人公の男と彼が惚れる女、2人と交流する子どもとその縁戚の4人は、皆が苦しい過去やそれによる避けられない現実
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ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q(2012年製作の映画)

4.0

絶望の世界に輝く希望は、次なる絶望の引き金

これは3.11後の日本の映画だ。決して戦後日本の映画ではない。そしてこれは3.11後のエヴァンゲリオンであり、決して以前のエヴァンゲリオンではない。日本社
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惑星ソラリス(1972年製作の映画)

4.0

この世界は誰かの記憶が生み出した虚構かもしれない。

確かに難解なストーリーだ。登場人物たちはあまり多くを語らず声を出しても観念的なセリフばかりで、物語の具体性は皆無と言ってもいいほどである。劇中の問
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ラストエンペラー(1987年製作の映画)

4.0

「政治に翻弄される個人」に身分の上下は関係ない

さながら年末に放送される、大河ドラマのダイジェスト版だ。軽快なテンポで様々な歴史的事象が発生し、怒涛の生涯とともにそれらが回顧されていく。ただしそれは
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ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破(2009年製作の映画)

3.8

人の心は学べるものか

今作の異色さといえば、なんといっても綾波の感情表現の多さだろう。いつになく喋るし、いつになく表情が動く。シンジの味噌汁に始まるこの出来事こそ、新劇の世界線をテレビアニメ版からず
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ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序(2007年製作の映画)

3.5

アイデンティティを辛うじて保たせる「利他」

あまりにも虫が良すぎる。
95年版を同時進行で観てる反動かもしれないが、物語に介入するはずのノイズが確信犯的に排除されているように見える。テレビアニメ版に
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燃ゆる女の肖像(2019年製作の映画)

4.6

静かに、でも熱く激しく燃え上がる心

まさに極上の映画体験だ。テーマから映像,演技,音楽に至る何から何まで、全てがひたすらに美しい。静と動が入り交じる、ジェットコースターのような映画である一方、その基
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太陽を盗んだ男(1979年製作の映画)

4.0

退屈な欲望の果てにある自滅

『AKIRA』の10年近く前にこんな邦画が製作されていたとは!
確かに今作は非常にばかばかしい映画だ。市井の理科教師が原爆を製造する設定自体もぶっ飛んでるし、その上で突き
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007 スカイフォール(2012年製作の映画)

4.0

古いか新しいかの二元論を越えた、精神としての007

シリーズ50周年という記念碑的作品でありながら、実際に物語として展開されていくのは、007という存在とコンテンツの、自己否定の繰り返しである。終始
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007/慰めの報酬(2008年製作の映画)

3.4

全てが前作の弔い合戦

完全に初見殺しの映画だ。いきなり劇中に登場しない人物名が出てくるし、前作を考慮しないと感情の揺らぎも上手く理解できない。シリーズものなので逐一突っ込むのもアホらしいが、正直「一
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キューティー&ボクサー(2013年製作の映画)

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芸術の現実と、それでも残る希望

今作で観客に突きつけられるのは、芸術家の果てしない現実だ。非日常や夢を民衆に与えてくれる(存在として期待される)芸術家は、自分の存在をも非日常的なものとしてセルフプロ
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劇場版「鬼滅の刃」無限列車編(2020年製作の映画)

3.9

“炎”は消えるからこそ美しい

アクションが山盛りでアトラクションのように楽しめる映画だが、実は問題提起には一貫したものがある。それは「老いや絶望といった人生の時の流れを受け入れられるか?」という問い
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ストーカー(1979年製作の映画)

4.4

夢が叶うことは幸せなのか?

今作は言ってしまえばロードムービーの一つである。旅人が“目的地”に向かう中で起こる心情の変化を主題とし、またその過程でゴールよりもなにか大切なものを手に入れるので、物語自
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シカゴ7裁判(2020年製作の映画)

4.1

多様性と連帯の狭間にみる、アメリカのしなやかさ

確かにこの映画は、法廷でのやり取りが場面の中心となる「裁判もの」の一つであろう。しかしながら今作はその着地点において、ありがちなカタルシス(例えば逆転
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007/カジノ・ロワイヤル(2006年製作の映画)

3.8

危険な仕事は決して心を満たさない

エンタメとシリアスの配分がなかなか絶妙なスパイ映画だ。オープニングのパルクールの追撃の躍動感は同時代の他のスパイ映画にも負けない派手なアクションで、いきなり驚かされ
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ノッティングヒルの恋人(1999年製作の映画)

3.7

現代版「ローマの休日」

今作は『ローマの休日』の90年代版リメイクという見方ができる。時代の変遷に伴う社会や価値観の変化こそあれど、身分違いの恋愛や上流階級なりの苦しさなど、かなり意識的なところが多
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書を捨てよ町へ出よう(1971年製作の映画)

3.5

アングラカルチャーへの冷や水

大林監督の映画を「玉手箱」と喩えるのなら、寺山の今作は「雑然とした収納箱」と言うほうがいいだろう。意外と物語が凡庸な割に、部分部分に強烈な描写を取り入れていたり、全体的
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田園に死す(1974年製作の映画)

4.1

愛おしくも憎たらしい過去の記憶

とことん自省的,主観的な映画だ。観客が自らの解釈や考え方を組み込む余地はなく、もはや彼は終始、監督の内面の吐露を見続ける「目撃者」である。だが、その他者を寄せ付けない
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丹下左膳餘話 百萬兩の壺(1935年製作の映画)

4.0

お金がお金の役割を終えるとき

今作はタイトルの通り、百万両の値打ちがある古い壺の在処をめぐるコメディ映画だ。ただ物語を追うだけでも、テンポよく色んな展開が繰り広げられとても面白い。しかし今作がまた魅
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