イホウジンさんの映画レビュー・感想・評価 - 6ページ目

イホウジン

イホウジン

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レ・ミゼラブル(2012年製作の映画)

4.1

まさにミュージカルの映画化の最骨頂

ハリウッドがミュージカルを映画化するにあたって本気を出したら傑作になったのは、もはや必然的な事のように思える。原作のミュージカルこそ観なくとも、この映画がそれに多
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i-新聞記者ドキュメント-(2019年製作の映画)

-

結局望月さんをヒーロー視していないか?

確かに情報として興味深いものはあった。官房長官会見に記者クラブ以外の人間が入る厳しさや、東京新聞社内の軋轢などなどまだまだ知らないことは多いなと痛感させられた
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アイリッシュマン(2019年製作の映画)

4.2

必殺仕事人兼中間管理職はつらいよ

とりあえずメインの3人の名前だけでこの映画が良作であることは確定している。そのうえ3人とも特別出演ではなくあくまで主要な登場人物として動いているのが、もはや奇跡に近
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象は静かに座っている(2018年製作の映画)

4.6

等身大の映像美が織り成す、等身大の登場人物たちの等身大の絶望と希望。

4時間近くのストーリーや映像は、まるで観客の呼吸に合わせているかのようなテンポである。まさに観客の24時間の1/6を登場人物に委
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お嬢ちゃん(2018年製作の映画)

3.7

現代の日本の停滞感に潜む「そこそこの幸福感」。

同時代が表象されている映画として2019年だと「ジョーカー」や「天気の子」,「新聞記者」などが挙げられるが、これもまた空気感は異なれどそれらと同類のジ
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去年マリエンバートで(1961年製作の映画)

4.4

冒頭からラストまで全ての映像が神がかってる。

全く古さを感じさせないどころか新鮮ささえもある映像美が、この映画の最大の魅力であろう。そしてこの魅力は公開当時以上に現在進行形で高まり続けている。
制作
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リトアニアへの旅の追憶(1972年製作の映画)

-

誰もが自己中心的(決して“自分勝手”ではない)に物事を考えられるようになると、逆に世界はより良くなるのかもしれない。

映画内で描かれることは、前日談と帰郷,帰国ついでのオーストリア観光の3つしかない
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アップグレード(2018年製作の映画)

3.8

かなり生々しい“シンギュラリティ”の描かれ方。

全体はミステリーとアクションの組み合わせの構成でありながら、最後のどんでん返しが秀逸。話の後半までのほとんどのパートで後の展開の予想がつくし、AIとの
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時計じかけのオレンジ(1971年製作の映画)

4.2

相容れないはずの自由と秩序という二つの概念の根底に共通する「悪」。

エログロ描写についてはその類の映画を何個か観れば見慣れるが、それでもこの映画は相当に悪趣味である。むごいと言うよりは気持ち悪い。ベ
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瀧の白糸(1933年製作の映画)

4.3

万人向けの雛形に沿った恋愛映画ながら、型破りなほどにシリアスな展開。

“エンタメ産業の不安定さ”“資本主義社会の必然的な苦しみ”を描くという意味では、監督の遺作の「赤線地帯」にも通ずるものがある。社
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バーフバリ 伝説誕生<完全版>(2015年製作の映画)

3.6

全編ハイライト状態。

2時間半以上もある長めの映画のはずなのだが、それでも全編にわたり大規模なアクションシーンがあるという、なかなか濃い構成となっている。普通なら終盤に持ってきそうな展開も容赦なく序
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宮本から君へ(2019年製作の映画)

3.8

男性の「弱さ」と女性の「強さ」。

確かに靖子の強さも魅力だが、それ以上に重要なのは宮本含む男性陣の弱々しさだろう。日本社会の男性優位性への抵抗のために、女性の強さの前に男性の弱さを炙りだしたような映
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灰とダイヤモンド(1957年製作の映画)

3.9

戦争が遺した倦怠感。
主人公の笑い方はジョーカーのよう。

戦勝国でありながら戦後永らくソ連の影響下に置かれたポーランドだからそこ描ける“戦争”映画である。戦争それ自体の描写こそないが、その背景に戦争
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典座 -TENZO-(2019年製作の映画)

3.8

宗教の存在意義を宗教者の視点で問い直す。

ドキュメンタリーと劇映画が混在している構成が面白い。どちらも内容に抜かりなく、接続にも無理がない。
現代における宗教を考える時は、基本的にはそれを信仰する
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ジョーカー(2019年製作の映画)

4.2

この映画を手放しに賞賛することを私の良心が許さない。
と、感じてしまうほどに頭に焼き付く作品である。

この映画の最も恐ろしい点は、映画内における被害者にも加害者にもそしてそれらの取り巻きにも我々が成
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見えない目撃者(2019年製作の映画)

3.9

完全な悪の中でこそ、はじめて正義の存在感が光る。

とにかくスリラー展開の時の緊張感が凄まじい。従来の邦画の商業映画のクオリティを遥かに凌ぐ勢いである。この緊張感の要因の一つには動と静の的確な使い分け
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パーフェクトブルー(1998年製作の映画)

4.2

日本のエンタメビジネスの裏に潜む狂気。
古さを感じさせないリアリティ。

今監督作品にしては美術面での独自の世界観は他作より薄めだし(というかキャラデザインが江口寿史ということに驚き)、展開のカオスさ
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千年女優(2001年製作の映画)

3.8

「映画の没入」をとことん使い倒す。

この物語の見どころはなんと言っても“リアルな世界”“回想の世界”“シナリオのある演技の世界”“即興的な演技の世界”の4層構造を、ほぼ等価に扱った点である。映画にお
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狼煙が呼ぶ(2019年製作の映画)

4.0

「男の子の言う“かっこよさ”」の詰め合わせ。

・制作背景
・古い拳銃の登場シーン(男のロマンって感じ。)
・切腹ピストルズの音楽(あの内容はやはり祭囃子が最適である。)
・俳優たちの登場シーン(浅野
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エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ(2018年製作の映画)

3.3

「レデイ・バード」の二番煎じ。

同時代的な生活の描写の中に普遍を見出そうとした点は良かったと思う。主人公はSNSを人並みに使えてその上YouTuberまでしている8年生と、なかなか現代を謳歌している
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タロウのバカ(2019年製作の映画)

3.9

【夏の映画マラソン 27】
(このマラソンは今日で終わりです)
現代日本の「無敵の人」の作り方

冒頭はかなり露骨にやまゆり園の事件のメタファーである。強烈な描写の連続で序盤から緊張感が漂う。そしてそ
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フリーソロ(2018年製作の映画)

-

【夏の映画マラソン 26】
実は誰もが“人生”という壁をフリーソロしているのかもしれない。

ドキュメンタリーでも主人公にありがちな心理的な葛藤のようなものが全然なく、むしろ周囲の人達の方が葛藤してし
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砂の器(1974年製作の映画)

3.5

【夏の映画マラソン 25】
ピアニストの過去に秘められた社会の無意識下の暴力。

この映画の見どころはなんといっても「宿命」の流れるピアニストの回想パートである。特にパートの序盤のセリフを極限まで減ら
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ミツバチのささやき(1973年製作の映画)

4.1

【夏の映画マラソン 24】
「死」の抽象的なイメージに取り憑かれていく主人公。

映画フランケンシュタインの鑑賞,村外れの廃屋にいる“誰か”の存在の認知をきっかけに主人公とその姉は傍から見てかなり気持
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エル・スール(1982年製作の映画)

3.9

【夏の映画マラソン 23】
「知らない幸せ」は本当に幸せなのか?

監督の類似作の「ミツバチのささやき」との大きな違いは主人公の父親も物語上での主張がある点であろう。娘が父親の秘密を一部でも共有したこ
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ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド(2019年製作の映画)

4.2

【夏の映画マラソン 22】
虚構の津波が現実に襲いかかってくる。

恐らく「完璧なB級映画」と表現するのが相応しい映画だ。別に1969年の社会情勢に対する批評的な言及がある訳でもなければ、特段深い思想
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天気の子(2019年製作の映画)

3.8

【夏の映画マラソン 21】
まさに現代の日本であり、「ジブリの時代」からの新しいフェーズを感じさせられる。

確かにツッコミどころは多い。恋愛映画としては随分空想じみた内容である割にリアルを追求してる
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ニュー・シネマ・パラダイス(1989年製作の映画)

4.3

【夏の映画マラソン 20】
朝ドラみたいな安心感のある映画。

2時間強とは思えない情報量である。主軸に“映画”があるのは確かだが、そこから派生するストーリーがとても多い。“映画”が主体に来る訳では無
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脱獄広島殺人囚(1974年製作の映画)

3.8

【夏の映画マラソン 19】
色んな破天荒な行動も一周回って愛らしくなる。

罪の意識なんてものが頭の中にない主人公のキャラクターはひたすらに強烈である。途中からこれに「時間感覚の麻痺」が合わさってます
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バンビ、ゴジラに会う(1969年製作の映画)

-

意味不明というか意味を求めない方がいい。
クレジットが全体の半分を占めてるのが笑える。
手作り感が良い。

COLD WAR あの歌、2つの心(2018年製作の映画)

3.9

【夏の映画マラソン 18】
省略の美。

まるで長めの映画のダイジェスト版を観ているかのような感覚に陥るくらい、あらゆる場面が省略されている。ここまでデフォルメされるとストーリーさえも観客個々人で解釈
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ソナチネ(1993年製作の映画)

4.6

【夏の映画マラソン 17】
北野武のどこまでも深そうな黒目がこの映画の全て。

この映画の最大の魅力は、無邪気で美しい生の物語と残酷なまでに無機質な死の物語が同時に展開する不協和音である。ヤクザ映画と
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タレンタイム〜優しい歌(2009年製作の映画)

4.2

【夏の映画マラソン 16】
愛の限界と希望。

とにかく校内音楽コンクールというミクロな話題と、マレーシアの社会構造を中心とした普遍的な社会の軋轢というマクロな話題の繋げ方がひたすら見事である。恋愛や
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仁義なき戦い(1973年製作の映画)

3.8

【夏の映画マラソン 15】
やってることはヤバいのに、どこか愛らしい。

やはりこの映画の1番の要は「血の盃」なのであろう。自分の意思で割ることが可能な実物の盃とは違い、自力ではどうしようも出来ずしか
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野火(2014年製作の映画)

4.3

【夏の映画マラソン 14】
この映画で大事なのは「何も起きない」ということ。

いわゆる戦争映画では、大体「激しい映像+エモーショナルな心理描写+戦争を否定する体のメッセージ」で構成されるが、本作にお
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メランコリック(2018年製作の映画)

3.9

【夏の映画マラソン 13】
やりたいことを全部盛りしたおもちゃ箱のような映画。

この映画は内容や心理描写云々というよりは「映画のあらゆるジャンルをアクロバットに組み合わせたこと」に注目すべきな気がす
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