decapさんの映画レビュー・感想・評価

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ライトハウス(2019年製作の映画)

3.4

絶海の孤島にある灯台守の仕事をしにきた二人の男の狂乱。絶望的な閉塞感とストレスをダイレクトに感じる、モノクロでほぼ正方形の画面と不穏な音響。あらゆる欲望や疑念が具現化され、夢か現か分からない酩酊感もた>>続きを読む

オールド・ジョイ(2006年製作の映画)

4.7

かつての友人であった、もうすぐ父になる男と、いまだ自由を謳歌する男が、都会の喧騒から離れ、そして帰る(べき)ところへ戻るだけの話。
かつての友情がどこかぎこちなくなっている二人の微妙な空気が生々しい。
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イン・ザ・ハイツ(2021年製作の映画)

3.4

NYの一角「ワシントンハイツ」に暮らすラティーノの、ラティーノによる、ラティーノのためのミュージカル映画。原作のミュージカルは2005年初演。
会話と歌、ラップが自然と織り交ぜられるながらキャラクター
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ウェンディ&ルーシー(2008年製作の映画)

4.5

職を求めて車で旅をする主人公の孤独と決意。
冒頭の愛犬と戯れながら歩く横移動のロングショットから素晴らしい。ほのぼのとしつつも、流れるハミングを聴いていると孤独感と不穏さをひしひしと感じる。
リーマン
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恐怖人形(2019年製作の映画)

1.3

何かと評判が耳に入ってきた国産オカルトホラー。ネットフリックスに入っていたので観てみたら全力で笑わせにきた。

荒唐無稽なビジュアルを茶化さずに80年代ホラーをやり切っているのは好きだけど、意外と良い
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孤狼の血(2018年製作の映画)

3.4

2作目の評判が良いらしいので観た2018年作。冒頭の「東映」マークで分かるように「仁義なき戦い」などの実録任侠映画オマージュの志高い作品。
警察の悪行と暴力団の仁義が対比され、その間を行き交うように危
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返校 言葉が消えた日(2019年製作の映画)

3.1

台湾の白色テロを題材にしたホラー作品。
60年代の思想弾圧下における青春と静かな闘争を軸に、社会的不安や抑圧がそのままホラーとして具現化されているのが恐ろしい。
クリーチャー的なものやビジュアルがやた
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ワイルド・スピード/ジェットブレイク(2020年製作の映画)

3.7

面倒ごとは全て「ファミリー」で片付ける事でお馴染みのワイルド・スピードシリーズの9作目。
回を重ねるごとにキャラクターも荒唐無稽なアクションの種類も増え続け、膨大なネタと決まり事に溢れながらもそれら全
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すべてが変わった日(2020年製作の映画)

3.9

老夫婦が人生の決着に向き合うような人間ドラマかと思いきや、娘と孫の嫁ぎ先が狂った家族だったというサイコスリラー展開。
とにかく暴力で支配する狂人(に見える)家族が恐ろしすぎる。ビル役のジェフリー・ドノ
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サマーフィルムにのって(2020年製作の映画)

4.4

ぼんくら時代劇オタクの高校生が、周囲を巻き込み自分の撮りたい映画を撮る、という話。
まず脚本が良い。映画という過去を観て今を楽しむ表現が時代劇を扱うことで強調され、未来からの使者というSF要素でその軸
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ブラッド・レッド・スカイ(2021年製作の映画)

2.6

旅客機がハイジャックされた! しかしテロ集団に蹂躙される乗客の中にはヴァンパイアが紛れ込んでいた……というとんでも映画。正直これ以上でもこれ以下でもない作品。

終盤はもはやゾンビ映画的に展開するため
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はちどり(2018年製作の映画)

4.1

正しい生き方が分からなくなる理不尽さのなかで、不明瞭ながら世界を見つめる術を得る14歳。家長父制や暴力が人の尊厳を奪うなか、一人の人としての尊重がこれほどに救いになるとは。セクシュアリティの曖昧さやキ>>続きを読む

海辺の映画館―キネマの玉手箱(2019年製作の映画)

4.1

目眩がするほどの膨大な情報量が、画面の隅々まで意味を持たせた暗喩やユーモアとともに限界まで詰め込まれた3時間。映画内映画を観る観客が当事者へ変化する時、この映画という嘘を見ている経験が、自分>>続きを読む

死霊魂(2018年製作の映画)

4.3

長いカットや膨大な上映時間によって、単なる鑑賞を体験に変える3部構成が見事。隠蔽された信じがたい証言の数々や、荒野に散乱する人骨を写した情景のなか、珍しくワン・ビン監督自身が姿を見せることに>>続きを読む

アルプススタンドのはしの方(2020年製作の映画)

3.5

「しょうがない」で抑圧し、斜に構えて自分を納得させてた端の方の青春。気持ちを伝えることの意味を丁寧に扱い、ヒール役までを肯定する優しい青春群像劇で美しい。全体主義的な努力讃歌は嫌いだが、そのきっ>>続きを読む

ディック・ロングはなぜ死んだのか?(2019年製作の映画)

2.3

タイトルから想像できていたような下らない映画。だけどその下らなさによる悲劇こそ、当事者の必死さや苦悩がより辛いものだと共感できる。理由を聞いて泣き笑うジークの妻の表情が全てを物語る

プロジェクト・パワー(2020年製作の映画)

2.4

特殊能力のエフェクトとか新鮮に描いているのに、よくある午後ロー的なアクション映画に落ち着いてしまった。劇中のラップとニュートのシーンは良かった

僕の好きな女の子(2019年製作の映画)

4.0

気を遣う恋愛感情と親密な友情。人による空気の変化がとにかくリアルで些細な演出が丁寧。渡辺大知は屈託のない笑顔で哀しさを表現できるのが凄すぎる。「3Dメガネ」を得る件も美しい。前野健太の曲>>続きを読む

君が世界のはじまり(2020年製作の映画)

3.5

苛立ちの日々を生きる2000年代のような青春群像劇。中心にいられない人の憂鬱かと思ったらまんまとひっくり返された。『ブレックファストクラブ』や『台風クラブ』も想起させ、スカさずにブルーハーツに向き>>続きを読む

2分の1の魔法(2020年製作の映画)

4.6

序盤の「よくある家族モノ」の些細な描写が伏線だと気付かされ、実はこの話の中心人物は主人公とは別だと分かる優しいクライマックスに嗚咽。CGなのに表情だけの演技も凄いし、脚本が素晴らしすぎる。>>続きを読む

ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー(2019年製作の映画)

4.3

ヒエラルキー意識で閉じ籠る「優等生」の世界の解放。リアルと幻想が最高のバランスで、映画が終わる頃には登場人物全員が愛おしくなる。モリーと車の関係性も上手いし、ボーダーたちなどの配役も音楽も完璧。そして>>続きを読む

幸せへのまわり道(2019年製作の映画)

4.0

人生を変えるほどの感情への向き合い方。「1分間の沈黙」のシーンまで、この映画自体が一種のセラピーだと気づかなかった。人が忍耐と寛容を為し得るとどうなるのかを、トム・ハンクスが“演技していない”フレッド>>続きを読む

ペンギン・ハイウェイ(2018年製作の映画)

3.5

さっぱりとした爽やかなモノを欲して観た2年前のアニメ。絵が美しい。そして絵が動くことの高揚感に溢れつつ、決めるところはほとんど止めた絵で哀愁を誘うのだから素敵。台詞回しも心地よく宇多田ヒカルで締めるの>>続きを読む

もう終わりにしよう。(2020年製作の映画)

4.1

時間を費やして生きる意味と価値。気まずさを内包したホラーな前半から、行為よりも思考を優先した観念的な後半への流れが震える。現実と妄想、他者と自身の違いさえ曖昧になり、理屈を求める思考が邪魔になるこの体>>続きを読む

在りし日の歌(2019年製作の映画)

4.0

運命を受け入れる生活の帰結。念願のワン・シャオシュアイの新作。一人っ子政策の30年史を巡り、家族の在り方を日々の生活の集積に見つける。完璧なカメラワークと丁寧な作劇がとにかく心地よい

宇宙でいちばんあかるい屋根(2020年製作の映画)

2.9

あの家庭の病理は日和見主義なのに我が強い父親なのではないのか。加茂水族館の大水槽は2005年には無いのでは、など細部や脚本が緩いのが気になりつつも清原果耶の魅力を眺めるアイドル映画であった

行き止まりの世界に生まれて(2018年製作の映画)

4.3

人生をコントロールをする方法であるスケートボードとトラウマに向き合う、一生で一度きりのドキュメント。登場人物全てに寄り添い、かといって甘やかさない厳しさも併せ持つ視点は見事だし、なにより彼ら>>続きを読む

キューティーズ!(2020年製作の映画)

3.5

ムラ社会的な「保守的な女らしさ」への反抗で自由に見える「現代的な女らしさ」に逃げ込むも、そこにもある客観的な搾取の構造に気づくという生き辛さ。配信停止運動にまで発展してる問題も、まさに作品の主>>続きを読む

mid90s ミッドナインティーズ(2018年製作の映画)

3.6

あの頃の「報われなさ」と懐かしい音楽の数々。デル・ザ・ファンキー・ホモサピエンやハーモニー・コリンの客演や、トレントレズナーのスコアなどはニヤニヤ要素。でも人生をコントロールできない理由>>続きを読む

ふたつのシルエット(2020年製作の映画)

4.3

竹馬監督の37分の新作。ありがちな恋愛を軸に、“あの頃”と「もういろいろやってない」“今”との切なく儚いすれ違いや重なりを映画的に語り尽くす。全てが端的なのにいちいち身に染み渡り、スマートな語り口>>続きを読む

TENET テネット(2020年製作の映画)

3.4

時間を文字通り操作したスパイ映画。時間の逆行と順行を同じ画面に収める狂気的な演出と、主人公の役名を「protagonist」にしてしまう大胆さは凄いが、「難解」というよりは明らかな説明不足と脚本の稚拙>>続きを読む

足跡はかき消して(2018年製作の映画)

4.0

安易に癒すことも難しい傷に向き合う、なんとも優しい一品。
PTSDで苦しむ父への愛と、現状の生活で浮かぶ疑問の矛盾に悩み、精神的に自立する姿を表情や最低限の演出で映し出す贅沢さ。
どんなに優しく差し伸
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悪魔はいつもそこに(2020年製作の映画)

3.4

信仰心の皮を被った欲望によるアメリカの暴力史。
さまざまな悲劇が絡み合う群像劇の中、アノニマスな暴力性を表現するには豪華キャストが仇になっている気もした。でも、真っ直ぐに信じ過ぎてしまうことの異常性と
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エノーラ・ホームズの事件簿(2020年製作の映画)

3.2

シャーロック・ホームズの妹が解く世界の不条理。
自由に生き方を選べない絶望と、恫喝の暴力性をきちんと描いているのは好感だしちゃんと怖い。
女性の幸せな生き方を一面的にしか描けなかったのは残念にも思える
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鵞鳥湖の夜(2019年製作の映画)

3.6

『薄氷の殺人』のディアオ・イーナンによる、中国ノワール映画の最先端。
迷走一歩手前感のあるケレン味溢れるショットの連続と重苦しい雰囲気がとてもよい。
フレッシュな殺陣や鮮やかな色彩、印象的な液体の
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マティアス&マキシム(2019年製作の映画)

3.4

「優しい事が警戒される嫌な世の中」でのコミュニケーションの難しさ。
仲間内だからこそ大事な話ができない苛立ちと、自分以外と本当の話をして理解し合っているのではという嫉妬のシーンは、その当事
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