niameyさんの映画レビュー・感想・評価 - 2ページ目

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リバー・ランズ・スルー・イット(1992年製作の映画)

3.8

このレビューはネタバレを含みます

常識と教養があり秀才である学者肌の兄と、人懐こいがどこか危うげな芸術家肌の弟という対称的な兄弟が登場する。

家族を扱ったドラマ映画に分類されるのだろうか。フライフィッシングを通して、無言の内に互いの
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コット、はじまりの夏(2022年製作の映画)

3.9

誰でも心の内に静けさを秘めているのではないかと思う。9歳の少女コットについても、それは同じだ。彼女の寡黙は内面の静けさの表出だったように見えた。

沈黙も悪くないとショーンはコットに語る。彼女へのシン
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燈火(ネオン)は消えず/消えゆく燈火(2022年製作の映画)

3.6

夜の闇に浮かぶネオンは人の心を惹きつける。都会的で懐古的なイメージと、幻惑的で退廃的なイメージを併せ持ち、見る者に名状しがたい感情を抱かせる。

ネオンは光の書道という台詞が印象に残った。作る者からの
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哀れなるものたち(2023年製作の映画)

3.8

このレビューはネタバレを含みます

大陸を横断する旅路の果てに、目覚ましい変貌を遂げるベラの姿が描かれる。

日本の情宣ポスターでは、大きなベラの傍らに男性陣が小さく配されている。快不快に関わらず、彼らとの接触が変化の契機になったという
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千年女優(2001年製作の映画)

4.1

千代子は鍵の君を追いかける。最初は彼に預かり物を返すため、最後はただ追いかけたいがために。自己愛というよりは、俳優の職業病のようにも見えた。

言い換えれば、千年女優とは、鍵の君を追いかける自分自身を
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僕らの世界が交わるまで(2022年製作の映画)

3.5

自己愛が強いという意味で、互いに似通っている息子と母親が登場する。賞賛を得るためなら、時として他者の感情をも軽んじてしまうところはそっくりだ。

あらぬ方を向いて交わることのなかった両者が、それぞれ現
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バベットの晩餐会(1987年製作の映画)

4.2

晩餐会のシーンは傑作だった。清貧を旨とする村人たちが、供された豪華な料理に戸惑い、流されまいと抵抗するも、あえなく絆されていく展開に頬が緩んだ。

ローレンスの「拒んだものも与えられる」という台詞が印
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カラオケ行こ!(2024年製作の映画)

3.9

映画を見る部の巻き戻せないビデオデッキも、組長が彫るおよそ絵心の感じられない刺青も、不可逆という意味でいずれも青春の一回性に通じるものがある。

変声期を迎えて合唱部に帰属する自分という立ち位置が揺ら
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ショコラ(2000年製作の映画)

3.9

このレビューはネタバレを含みます

復活祭の説教にもあった通り、心を開いて異質なものを受け入れることが作品のテーマなのだと思う。教会の扉やお店のドアのカットが多いのも気になった。

恍惚とした表情で、レノ伯爵がチョコレートを貪るシーンが
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笑いのカイブツ(2023年製作の映画)

3.7

笑いは、脱力するような、あるべき姿とのギャップによって生じるのだと思う。

その意味で、笑いというものが持っている弛緩した感じと、それを生み出さんとする主人公の緊張感とのギャップに、くすりとも、どきり
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TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー(2022年製作の映画)

3.7

このレビューはネタバレを含みます

向こう側にいる見えない誰かに深入りし、その悪意に翻弄され、最後は破滅するというプロットに既視感を覚えた。

手軽にスリルと高揚感を味わえるという文脈からも、降霊会はSNSの、呪物は違法薬物の暗喩ではな
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枯れ葉(2023年製作の映画)

3.6

このレビューはネタバレを含みます

タイトルの由来が気になった。つむじ風に吹き上げられる落ち葉は、数々の不運な巡り合わせに翻弄されるアンサとホラッパの比喩なのではないかと思えた。

両者の関係性はなかなか進展しない。その過程がもどかしい
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PERFECT DAYS(2023年製作の映画)

4.1

ドラマ映画には、見知らぬ誰かの私生活を覗き見ることへの、僅かなきまりの悪さがある。だが、それにも関わらず主人公の日常から一時も目が離せなかった。

矜持ある彼の人となりに惹きつけられたのだと思う。繰り
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Winter boy(2022年製作の映画)

4.0

終盤でリュカがギターを持つシーンは、中盤でリリオが弾き語りするシーンと対になっていて、どこか返歌を思わせる。

コンキリエの歌詞に、凪は戻らないという一節がある。世の無常を歌ったこの楽曲は、混乱の最中
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ポトフ 美食家と料理人(2023年製作の映画)

3.9

これほどまでに厨房のシーンをじっくり映した作品は、過去に観たことがない。

劇伴を排して食材を調理する音だけが響くなか、自然光を使って長回しで撮影した色味豊かな料理風景には見応えがあり、聴覚と視覚が同
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屋根裏のラジャー(2023年製作の映画)

3.5

このレビューはネタバレを含みます

イマジナリの仲介により、家族の絆が修復されていく様を描いた作品に見えた。

どちらかと言えば、ラジャーの存在を信じてもらえずにいるアマンダよりも、夫亡き後に生活を立て直すことで手一杯のリジーに感情移入
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窓ぎわのトットちゃん(2023年製作の映画)

3.9

原作既読。書籍に比べると、映画には明確な話の軸があったように思う。それは泰明ちゃんとの関係性の変化と、戦争による日常の変質という二つの軸だ。

様々なエピソードが自由に散りばめられた原作も好きだが、一
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市子(2023年製作の映画)

3.7

捉えどころのない市子の人物像に底知れぬ闇を感じた。その無気力さは諦観に由来するものだろうか。また、その不安定さは後悔に由来するものだろうか。

ラストシーンで、誰もいない細道を鼻歌混じりに歩く彼女の姿
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ウェンディ&ルーシー(2008年製作の映画)

3.8

ロードムービーは、帰る場所があるものと、ないものに分けられると思う。

本作は後者で、土地に根ざした生活の基盤を持たないまま、主人公は放浪の旅人として目的地を目指す。それ故か、強烈な心許なさが全編に充
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ナポレオン(2023年製作の映画)

3.7

ジョゼフィーヌへの愛着と祖国フランスへの忠誠の狭間で揺れるナポレオンの姿が描かれる。カリスマ性ある英雄というよりは、苦悩し続ける指揮官に見えた。

何かに取り憑かれたように、ナポレオンは周辺国に戦争を
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ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)

4.2

終戦を迎えた日本が舞台で、政府は登場しない。米国もソ連との摩擦を恐れて介入せず、民間でゴジラに立ち向かうことになるというプロットは新鮮だった。

「生きて、抗え」というキャッチコピーの通りテーマは「生
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シチリア・サマー(2022年製作の映画)

3.8

このレビューはネタバレを含みます

劇中で、国旗を手にしてワールドカップの優勝に沸く民衆の姿が映し出される。

そのシーン故に、乗り捨てられたバイクに残された国旗のカットが強いインパクトを放ち、同じ集団に帰属しながら疎外感を抱く個人の存
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理想郷(2022年製作の映画)

3.7

移住先で気ままに振る舞う新参の夫婦についても、一線を越えた行動に出る隣家の兄弟についても、誰に肩入れするでもなく、平等な映し方がなされていた。

行き着くところまで行き、主人公の妻が兄弟の母親にかける
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⻤太郎誕生 ゲゲゲの謎(2023年製作の映画)

3.8

飄々とした鬼太郎の父と、抜け目のない水木という組み合わせが絶妙だった。両者が次第に打ち解けて、夜の墓場で酒を酌み交わすシーンが印象に残った。

エンドロールを介して墓場鬼太郎にリンクさせる演出は秀逸で
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正欲(2023年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

原作既読。終盤で夏月が発する台詞に「普通のことです」という文言が追加されており、鳥肌が立った。そして、「いなくならないから」と彼女は続ける。

件の対話を通して、妻と息子に去られた啓喜の立ち位置は、普
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青すぎる、青(2023年製作の映画)

3.5

鹿児島の町並みを背景に映し出される、日常と非日常の間を楽しむ作品だった。

理解の及ばないものばかり溢れているこの世界で、不明の袋小路に迷い込み、悶絶する主人公の姿が瑞々しく描かれていた。青さとは若さ
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レオン 完全版(1994年製作の映画)

4.2

寡黙な殺し屋と大人びた少女という異色の組合せによる、刺激的な作品だった。

キーアイテムとなる鉢植えの観葉植物は、大地に根を下ろしていない言わば根なし草という意味で、レオンのみならずマチルダの投影でも
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ハネス(2021年製作の映画)

3.8

近しい誰かが大きな不幸に見舞われたとき、周辺の人々は悲嘆に暮れながらも、それをゆっくりと内在化させて、良くも悪くも新たな日常を取り戻していく。

起きた悲劇を乗り越えた家族もあれば、乗り越えられなかっ
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ダンサー イン Paris(2022年製作の映画)

4.0

バレエのキャリアが絶たれるかも知れないからと、エリーズは別の生き方を模索し始める。彼女を見守る人がいて、その背中を押す人がいて、誰もが温かい。

コンテンポラリーダンスと出会ったエリーズは、次第に元の
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愛にイナズマ(2023年製作の映画)

3.8

不思議なタイトルは、観る者が、深い家族愛にイナズマに打たれたような衝撃を受けるという意味なのだと解釈した。

映画の企画を奪われた花子が、疎遠になった家族と共に反撃に出る物語だと予想していた。だが、実
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ショーシャンクの空に(1994年製作の映画)

4.0

寡黙なアンディは滅多に内面を見せない。彼が行動に出て、その意図が初めて分かるという構成に面白さを感じた。

希望についての物語と解釈した。屋上でビールを振る舞い、レコードを所内放送で流したのは、仲間に
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ザ・クリエイター/創造者(2023年製作の映画)

3.6

なぜ被造物ではなく創造者をタイトルに持ってきたのかと不思議に感じていた。

ややあって、この作品の表向きのテーマが人類とAIの戦争であるのなら、裏のテーマは創造者の生涯やその意志にあったのではないかと
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(2023年製作の映画)

3.8

出生前診断で中絶することと重度障害者を殺害することの何が違うのかなど、重い問い掛けが続く。観る者に逃げ道を与えない鋭利な刃物のような作品だった。

これまで本音と建前を使い分けながら生きていた。口を閉
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大雪海のカイナ ほしのけんじゃ(2023年製作の映画)

3.8

雪海や天膜が広がり、軌道樹がそびえ立つ独創的な世界観に圧倒される。劇中で、それらが単なる舞台装置ではないことが明かされ、謎が解けた気がした。

前作に続き、今作も文字が重要な役割を果たす。看板や端末の
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グリーンマイル(1999年製作の映画)

3.9

コーフィは不思議な力で相手に命を分け与える。その姿を、相手から命を奪う死刑囚監房の看守であるポールの目を通して描き出すところが面白いと感じた。

奇跡を起こしても世界に苦しみが尽きないとコーフィは嘆く
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アンダーカレント(2023年製作の映画)

3.6

時に自分の内面さえ把握することは難しい。ましてや、他人の深淵を理解することなどできようか。そう考えると我々は永遠に分かり合えないのかも知れない。

堀さんは何も言わずにいなくならないでねとかなえは言う
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